営業KPIツリーが形骸化する企業の共通点と本記事の目的
多くの人が見落としがちですが、営業KPIツリーは、設計だけでなくSFA/MAへの実装と部門間連携の仕組みまで含めて構築することで、目標達成に機能する指標管理が実現できます。
KPIツリーとは、KGI(最終目標)を頂点として、それを達成するためのKPI(中間指標)を階層的に可視化した図解手法です。営業組織でKPIツリーを導入する企業は増えていますが、「作っただけで運用されていない」「マーケとインサイドセールスでKPIがバラバラ」という課題を抱えるケースが多いのではないでしょうか。
この記事で分かること
- KPIツリーの基本概念とKGI・KPI・KSFの関係
- 営業KPIツリーの具体的な作り方(四則演算による分解手順)
- 営業で使われる代表的なKPI項目と目安
- SFA/MAへの実装と部門間連携で形骸化を防ぐ方法
KPIツリーとは|KGI・KPI・KSFの関係を理解する
KPIツリーを効果的に設計するには、まずKGI・KPI・KSFの関係性を正しく理解することが重要です。これらの指標をセットで考えることで、整合性のあるKPIツリーを構築できます。
KGI・KPI・KSFの違い
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標のことで、企業やプロジェクトの最終的なゴールを数値化した指標です。営業組織では「年間売上○億円」「新規顧客○社獲得」などがKGIに該当します。
KPI(Key Performance Indicator) とは、重要業績評価指標のことで、KGI達成のための中間目標・プロセスを数値化した指標です。KGIは企業全体の最終目標を示す指標、KPIはKGI達成のための中間目標・プロセス指標であり、セットで考えることが重要とされています。
KSF/CSF(Critical Success Factor) とは、重要成功要因のことで、KGI達成のカギになる要因です。KGI達成のカギになる要因(KSF/CSF)は3〜5個程度に絞るのが一般的とされています。多すぎると焦点がぼやけ、少なすぎると重要な要素を見落とすリスクがあります。
営業KPIツリーの作り方|実践フロー
営業KPIツリーは四則演算で表現できる要素に分解することがポイントです。売上=受注件数×平均受注単価、受注件数=商談数×受注率のように数式で分解することで、各指標の因果関係が明確になります。
【フロー図】営業KPIツリー作成フロー
flowchart TD
A[KGI設定: 年間売上目標を決定] --> B[KSF特定: 売上に影響する要因を3-5個に絞る]
B --> C[四則演算で分解: 売上=受注件数×平均単価]
C --> D[さらに分解: 受注件数=商談数×受注率]
D --> E[フェーズ別KPI設定: リード→MQL→SQL→受注]
E --> F[担当部門へのKPI割り当て]
F --> G[SFA/MAへの実装・運用ルール整備]
KGIから逆算して分解する手順
営業KPIツリーは四則演算で表現できる要素に分解することがポイントです。具体的には以下のように分解します。
- KGI(最終目標)を設定する: 例)年間売上3億円
- 売上を要素分解する: 売上 = 受注件数 × 平均受注単価
- 受注件数をさらに分解する: 受注件数 = 商談数 × 受注率
- 商談数を分解する: 商談数 = SQL数 × 商談化率
- 各指標に目標値を設定する: 逆算で必要な数値を算出
このように四則演算で分解することで、「売上を上げるには商談数を増やすか、受注率を上げるか、平均単価を上げるか」という選択肢が明確になります。
The Model型のフェーズ別KPI設計
The Modelとは、BtoBセールスの分業モデルで、マーケ→IS→FS→CSの各フェーズで役割を分担し、KPIを設定する手法です。BtoBではThe Model型の「リード獲得→MQL→SQL→受注」の各フェーズごとにKPIを紐付けると運用しやすいとされています。
各フェーズの担当部門とKPIの例:
- マーケティング: リード獲得数、MQL数、MQL転換率
- インサイドセールス: SQL数、商談化率、架電数
- フィールドセールス: 商談数、受注件数、受注率
- カスタマーサクセス: 継続率、アップセル率、NPS
営業KPIの具体例|項目一覧と目安
営業KPIを設計する際は、業種や商材に応じて適切な指標を選定することが重要です。以下に代表的なKPI項目と一般的な目安を示します。
【比較表】営業KPI項目一覧表
| KPI項目 | 定義 | 算出式 | 目安(参考値) |
|---|---|---|---|
| リード獲得数 | 新規見込み顧客の獲得件数 | 流入数×転換率 | 業種により変動 |
| MQL数 | マーケティング認定リード数 | リード数×MQL転換率 | 業種により変動 |
| SQL数 | 営業認定リード数 | MQL数×SQL転換率 | 業種により変動 |
| 商談化率 | SQLから商談に至る割合 | 商談数÷SQL数 | 自社実績で設定 |
| 受注率 | 商談から受注に至る割合 | 受注件数÷商談数 | 自社実績で設定 |
| 平均受注単価 | 1件あたりの受注金額 | 売上÷受注件数 | 商材により変動 |
| LTV | 顧客生涯価値 | 平均単価×継続期間×購入回数 | 業種により変動 |
| CAC | 顧客獲得コスト | マーケ費用÷新規顧客数 | 業種により変動 |
※数値はあくまで参考値です。業種・単価帯・チャネルで大きく変動するため、自社実績をもとに設定することを推奨します。
インサイドセールスのKPI例
BtoBインサイドセールスでは、月間20〜40件程度のSQL商談を担当する設計が紹介されることが多く、月間商談数40件などの目標が例示されています。ただし、この数値は業種や商材の単価帯によって大きく変動します。
高単価商材を扱う企業では月間10〜20件程度、低単価商材では月間50件以上を目標とするケースもあります。自社の過去実績と商材特性を踏まえて、達成可能かつ挑戦的な水準を設定することが重要です。
SFA/MA実装と部門間連携でKPIツリーを定着させる
KPIツリーを設計しただけでは成果につながりません。「KPIツリーを作れば営業活動が可視化される」という考え方は誤りで、設計だけで終わらせてしまうとSFA/MAへの実装や部門間のKPI整合がないまま形骸化してしまいます。
形骸化を防ぐには、SFA/MAへの実装と部門間連携の仕組みづくりが不可欠です。
SFA/MAへのKPI実装ポイント
KPIツリーをSFA/MAに実装する際のポイントは以下の通りです。
- ダッシュボード設計: KGI・KPIをリアルタイムで可視化するダッシュボードを構築する
- データ定義の統一: リードステータス、商談フェーズの定義を部門間で統一する
- 自動集計の仕組み: 手動集計ではなく、システムで自動集計できる仕組みを整備する
- レポート運用ルール: 週次・月次でKPIを確認するレビュー会議を設定する
マーケ・IS・営業間のKPI整合
BtoBではThe Model型の「リード獲得→MQL→SQL→受注」の各フェーズごとにKPIを紐付けると運用しやすいとされています。部門間でKPIを整合させるためには、以下の取り組みが有効です。
- 共通のKGIを設定: 最終的な売上目標を部門横断で共有する
- 引き継ぎ基準の明確化: MQL→SQL、SQL→商談の引き継ぎ基準を明文化する
- 定期的なレビュー会議: 部門横断でKPI進捗を確認する場を設ける
- ファネル全体の可視化: マーケからクロージングまでの転換率を一気通貫で追跡する
まとめ|KPIツリーは設計から運用定着まで一気通貫で構築する
営業KPIツリーを形骸化させずに機能させるためには、設計だけでなく、SFA/MAへの実装と部門間連携の仕組みまで含めて構築することが重要です。
本記事のポイントをまとめると以下の通りです。
- KPIツリーはKGIを頂点として四則演算で分解し、各指標の因果関係を明確にする
- The Model型のフェーズ別KPI設計がBtoBでは運用しやすい
- 設計だけで終わらせず、SFA/MAへの実装と部門間のKPI整合を行う
- 定期的なレビュー会議でKPI進捗を確認し、改善サイクルを回す
次のステップとして、まず自社のKGI(最終目標)を明確にし、そこから逆算でKPIツリーを設計してみてください。設計後は、SFA/MAへの実装計画と部門間の連携体制づくりを並行して進めることで、形骸化を防ぎ、目標達成に機能するKPIツリーを構築できます。
