営業KPIを設定しても成果につながらない原因
多くの方が悩む営業KPIの設定と運用。結論は、営業KPIは設定だけでなく、SFA/CRMを活用した継続的なモニタリングと部門間のデータ連携があって初めて成果につながります。
KPI(重要業績評価指標) とは、KGI達成に向けた中間的な成果指標を指します。営業では商談数、受注率、リード数などが該当します。
しかし、KPIを設定しても成果につながらないという悩みを抱える企業は少なくありません。2022年のTSUIDE調査によると、SFA/CRM導入企業の27%が「効率的に活用できていない」と回答しています。また、BtoB営業の38.5%が属人性課題を抱えているとされています。
この記事では、IT・SaaS企業の営業責任者・マネージャー向けに、成果につながる営業KPIの設定方法とSFA/CRM活用による管理方法を解説します。
この記事で分かること
- KPI・KGI・KFSの違いと関係性
- 営業スタイル別のKPI一覧と設定ポイント
- KPI設定でよくある失敗パターン
- SFA/CRM活用によるKPI管理と部門間連携の方法
営業KPIの基本|KGI・KFSとの違いと関係性
KPIを効果的に設定するためには、KGI・KFSとの関係性を理解することが重要です。これらは階層構造を持ち、KGI達成に向けた設計図となります。
KGI(重要目標達成指標) とは、最終的に達成すべき経営目標を指します。年間売上高や新規顧客獲得数などが該当します。
KFS/KSF(重要成功要因) とは、KGI達成に必要な重要要素を指します。商談の質向上や顧客満足度維持などが該当します。
KPIとKGIの違い
KGIとKPIの違いは「最終目標」と「中間指標」の関係にあります。
例えば、KGIが「年間売上高10億円」の場合、それを達成するためのKPIとして「月間商談数50件」「受注率30%」「平均契約単価200万円」などを設定します。KPIは日々の営業活動の中で追跡可能な指標であり、KGI達成に向けた進捗を可視化する役割を担います。
KPIツリーの作り方
KPIツリーとは、KGIからKPIを導出するための階層図です。売上を頂点として、それを構成する要素を分解していきます。
KPIツリーの基本構造:
- 売上(KGI) = 受注件数 × 顧客単価
- 受注件数 = 商談数 × 受注率
- 商談数 = リード数 × 商談化率
- リード数 = 訪問数 × リード獲得率(または広告からの流入数)
このように分解することで、どの指標を改善すれば売上向上につながるかが明確になります。KPIツリーを作成したら、各指標の現状値と目標値を設定し、SFA/CRMのダッシュボードで可視化することが有効です。
営業スタイル別KPI一覧と設定ポイント
営業スタイルによって重視すべきKPIは異なります。自社の営業スタイルに合ったKPIを選定することが、成果につながる第一歩です。
2023年の調査(n=190)によると、BtoBマーケティング担当者が重視するKPIは新規リード獲得数が32.1%で第1位、受注率が11.1%で第2位とされています。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得し、スコアリングで営業へ渡す基準を満たしたリードを指します。
LTV(顧客生涯価値) とは、1顧客が取引開始から終了までにもたらす収益の総額を指します。
【比較表】営業スタイル別KPI一覧表
| 営業スタイル | 主要KPI | 補助KPI | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 新規開拓営業 | 新規リード数、商談化率、新規受注件数 | 訪問件数、提案件数、初回商談設定率 | 活動量と転換率の両方を管理 |
| ルート営業 | 既存顧客売上、アップセル率、リピート率 | 訪問頻度、顧客満足度、クレーム発生率 | 顧客維持と拡大を重視 |
| インサイドセールス | MQL→SQL転換率、架電数、メール開封率 | アポイント獲得数、商談設定数、対応時間 | デジタル指標と効率を管理 |
| カスタマーサクセス | 解約率(チャーンレート)、LTV、NPS | オンボーディング完了率、利用率、問い合わせ対応時間 | 継続利用と満足度を重視 |
自社の営業スタイルに応じて、主要KPIを3〜5個に絞って設定することが推奨されます。指標を増やしすぎると管理が煩雑になり、かえって成果につながりにくくなります。
営業KPI設定でよくある失敗パターン
KPIを設定しても成果につながらない場合、多くは運用面に問題があります。ここでは、よくある失敗パターンを取り上げ、改善の方向性を示します。
失敗パターン1: Excelで手動集計し、月次でしか確認しない
KPIをExcelで手動集計している企業は、進捗確認が月次になりがちです。2025年10月のPRIZMA調査(1,034名対象)によると、SFA/CRM入力実態は即時入力率40.2%、1日まとめ入力32.2%であり、活用は営業会議での数値確認が48.6%で最多とされています。リアルタイムでの進捗確認ができなければ、問題が発生しても対応が遅れます。
失敗パターン2: SFA/CRMは導入済みだが活用できていない
前述の通り、SFA/CRM導入企業の27%が「効率的に活用できていない」と回答しています。ツールを導入しても、入力ルールが曖昧であったり、ダッシュボードが設定されていなければ、KPI管理には活用できません。この考え方は誤りであり、ツール導入後の運用設計が重要です。
失敗パターン3: 部門ごとにKPIがバラバラ
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスで異なるKPIを追いかけ、データが連携されていないケースが多く見られます。マーケ→IS→FSの流れでリード情報が引き継がれなければ、商談化率の改善は困難です。BtoB営業の38.5%が属人性課題を抱えているとされており、部門間連携の不備がその一因となっています。
SFA/CRM活用によるKPI管理と部門間連携
KPIを成果につなげるには、SFA/CRMを活用した継続的なモニタリングと部門間データ連携が不可欠です。
矢野経済研究所の調査によると、SFA/CRM導入率は32.1%で、2020年の16.1%から約2倍に増加しています。導入企業が増える中、いかに活用するかが差別化のポイントになります。
また、受注率向上のための取り組みとしては、「発信するコンテンツの見直し」が50.5%、「営業部門への詳細な顧客情報の提供」が34.7%、「受注率の高いチャネルでの施策強化」が34.2%とされています。部門間での情報共有がKPI改善に直結することがわかります。
【チェックリスト】KPI設定・運用チェックリスト
- KGI(最終目標)を明確に定義している
- KGIからKPIを導出するKPIツリーを作成している
- KPIは3〜5個に絞り込んでいる
- 各KPIに数値目標と期限を設定している
- KPIの定義(計算式・集計ルール)を明文化している
- SFA/CRMでKPIを自動集計できる設定をしている
- ダッシュボードでリアルタイムに進捗確認できる
- 入力ルール(入力タイミング・必須項目)を明文化している
- 入力漏れ・遅延に対するアラート設定をしている
- マーケ・IS・FSで共通のリード定義(MQL/SQL)を設定している
- 部門間のデータ連携(リード引き渡しルール)を設計している
- 定期的なKPIレビュー会議を実施している
- KPI未達時の分析・改善プロセスを設計している
- 事業フェーズや戦略変更に応じてKPIを見直す仕組みがある
まとめ|営業KPIはSFA/CRM活用と部門間連携で成果が決まる
本記事では、営業KPIの基本から、営業スタイル別のKPI一覧、SFA/CRM活用による管理方法までを解説しました。
要点を整理します。
- KPI・KGI・KFSの関係: KGI(最終目標)→KFS(成功要因)→KPI(中間指標)の階層で設計
- 営業スタイル別KPI: 新規開拓、ルート営業、インサイドセールス、カスタマーサクセスで重視すべき指標は異なる
- よくある失敗: Excel手動集計、SFA/CRM未活用、部門間KPI不連携
- 成功のポイント: SFA/CRMでリアルタイム管理、部門間データ連携、定期的な見直し
2024年度のHubSpot Japan調査(従業員51〜5,000名企業1,545名対象)によると、CRM導入率は37.2%で前年比+1.0pt増加しています。SFA/CRM活用は着実に広がっており、導入企業は活用度合いが差別化のポイントになります。
繰り返しになりますが、営業KPIは設定だけでなく、SFA/CRMを活用した継続的なモニタリングと部門間のデータ連携があって初めて成果につながります。
本記事のチェックリストを活用して自社のKPI設定・運用状況を診断し、改善の方向性を見つけてください。
