SaaS営業で成果を出すために本当に必要なこと
SaaS営業組織を立ち上げたい企業の多くが、「仕事内容は理解したが組織が機能しない」「ツールを導入したが成果が出ない」という悩みを抱えています。多くの方が悩むSaaS営業。結論は、仕事内容や必要スキルを理解するだけでなく、MA/SFA実装と部門間連携の業務プロセス構築を同時に進めることで実現します。
SaaS(Software as a Service) とは、クラウド型のソフトウェアサービスをサブスクリプションモデルで提供する形態です。国内SaaS市場は2024年1.4兆円から2028年には2兆円へと1.5倍の拡大が予測されており(IDC Japan予測)、別の調査では2023年9,200億円から2024年9,800億円を経て2025年には1兆円突破が見込まれています(推定)。市場の急成長に伴い、SaaS営業への関心が高まっています。
ただし、市場規模の予測値は複数あり変動可能性があることに留意が必要です。この記事では、SaaS営業の仕事内容、必要なスキル、そして組織立ち上げの実践ステップを解説します。
この記事で分かること
- SaaS営業の定義と一般営業との違い
- インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割分担
- SaaS営業に必要なスキルとキャリア展望
- SaaS営業組織の立ち上げステップとチェックリスト
- MA/SFA実装と運用定着の具体的な方法
SaaS営業とは|一般営業との違いと市場動向
SaaS営業とは、クラウド型ソフトウェアサービスのサブスクリプション販売を行う営業活動です。一般営業は「売り切り型」で一度の販売がゴールですが、SaaS営業は顧客の成功と継続利用がゴールである点が大きく異なります。
LTV(Lifetime Value) とは、顧客生涯価値です。一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を指し、SaaS営業ではLTV最大化が重要な目標となります。チャーン率(解約率) は、一定期間における顧客の解約割合であり、SaaSビジネスでは重要なKPIです。SaaS企業の年間顧客離脱率は13%がグローバル相場とされており(日本でも類似傾向)、チャーン率の管理が営業成果を左右します。
SaaS市場の成長性を示すデータとして、CAGR11.6%で2029年には3.4兆円との予測もあります(スマートキャンプ)。ただし、これらは推定値のため変動可能性があることに留意が必要です。
SaaS市場の成長性と将来性
SaaS市場の成長予測は複数存在します。IDC Japanは2024年1.4兆円から2028年2兆円への成長を予測しており、スマートキャンプは**CAGR(年平均成長率)**11.6%で2029年3.4兆円と予測しています。CAGRとは、複数年にわたる成長率を年率換算した指標(Compound Annual Growth Rateの略)です。
Research Nesterによる予測では、日本のSaaS市場規模は2025年122億米ドル、2026年138億米ドル、2035年には381億米ドルに達し、2026-2035年のCAGRは13.5%とされています。予測値にブレがあるため、これらは参考データとして捉え、自社の戦略策定に活用することが推奨されます。
最新トレンドとしては、AI統合によるSaaS営業の効率化、業界特化型のVertical SaaSによるBtoB導入単価向上と継続率の改善が挙げられます。
SaaS営業の仕事内容|インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス
SaaS営業は分業制(THE MODEL型)が一般的で、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの役割に分かれます。インサイドセールスはリモート中心の電話・メールによるリード獲得・商談設定を行う営業職、フィールドセールスは訪問営業中心で契約クロージングを行う営業職(高単価BtoB案件を担当)、カスタマーサクセスは導入後の定着支援・アップセル・解約率低減を担当する営業職です。
マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスという流れで顧客を獲得・育成し、長期的な関係を構築することが重要です。
【比較表】役割分担表
| 役割 | 主な業務 | 活動形態 | 主なKPI | 必要スキル | 平均年収(業界相場) |
|---|---|---|---|---|---|
| インサイドセールス | リード獲得、商談設定、初期ヒアリング | リモート中心(電話・メール) | 商談設定数、商談化率、架電数 | ヒアリング力、コミュニケーション力、スケジュール管理 | 400-600万円 |
| フィールドセールス | 訪問営業、提案、契約クロージング | 訪問営業中心 | 契約数、受注金額、成約率 | 提案力、交渉力、課題発見力、プレゼンテーション能力 | 600-900万円 |
| カスタマーサクセス | 導入後支援、定着促進、アップセル、解約防止 | リモート・訪問の混合 | チャーン率、LTV、アップセル率、顧客満足度 | 顧客理解力、分析力、問題解決力、コミュニケーション能力 | 500-800万円 |
※ 平均年収は業界相場であり、企業や個人により大きく異なります。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスは、リモート中心の電話・メールによるリード獲得・商談設定が主な業務です。マーケティング部門から渡されたリードに対して電話やメールでアプローチし、ニーズをヒアリングして商談設定を行います。
KPIは商談設定数、商談化率、架電数などが一般的です。必要なスキルとしては、短時間で顧客のニーズを引き出すヒアリング力、電話・メールでの円滑なコミュニケーション力、多数のリードを効率的に管理するスケジュール管理能力などが求められます。平均年収は400-600万円が業界相場とされていますが、企業により異なります。
フィールドセールスの役割
フィールドセールスは、訪問営業中心で契約クロージングが主な業務であり、高単価BtoB案件を担当します。インサイドセールスが設定した商談に訪問し、詳細な提案を行い、契約締結まで導きます。
KPIは契約数、受注金額、成約率などが一般的です。必要なスキルとしては、顧客の課題を深く理解し解決策を提案する提案力、価格や条件を調整する交渉力、潜在的な課題を発見する課題発見力、経営層に向けたプレゼンテーション能力などが求められます。平均年収は600-900万円が業界相場とされていますが、企業により異なります。
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスは、導入後の定着支援・アップセル・解約率低減が主な業務です。契約後の顧客に対して、サービスの活用方法を支援し、満足度を高め、追加契約(アップセル)を促進します。
KPIはチャーン率、LTV、アップセル率、顧客満足度などが一般的です。SaaS企業の年間顧客離脱率は13%がグローバル相場であり、チャーン率の管理が重要です。必要なスキルとしては、顧客のビジネスを深く理解する顧客理解力、データを分析して改善提案を行う分析力、顧客の課題を迅速に解決する問題解決力、長期的な信頼関係を構築するコミュニケーション能力などが求められます。平均年収は500-800万円が業界相場とされていますが、企業により異なります。
SaaS営業に必要なスキルとキャリア展望
SaaS営業に共通して必要なスキルは、顧客のニーズを引き出すヒアリング力、KPI・チャーン率などのデータを分析するデータ分析力、SaaS製品を理解し活用するITリテラシー、顧客の成功を第一に考える顧客志向などです。
異業種からSaaS営業へ転職した20-30代の約6割が「労働時間が短くなった」と回答しています(2025年11月5-7日調査、n=1,008名)。これは分業化により業務が効率化される傾向があるためと考えられます。ただし、調査サンプル(n=1,008)に基づく傾向であり、個人により異なることに留意が必要です。また、短期業績目標のプレッシャーや業務分担の曖昧さにより労働時間が長期化するケースもあります。
SaaS営業の平均年収は転職で77万円UPとの見込みもあります(IT・SaaS営業特化エージェントデータ、2026年1月時点)。ただし、これはIT・SaaS営業特化エージェントのデータであり全体を代表しない可能性があります。企業や個人により大きく異なることに留意してください。
異業種からの転職事例
異業種からSaaS営業へ転職した方の約6割が労働時間の短縮を実感しており、平均年収は転職で77万円UPとの見込みもあります。これは分業化により業務が効率化され、データドリブンな営業活動により成果が可視化されやすいためと考えられます。
ただし、全ての企業で同じ結果が得られるわけではなく、企業文化や体制、個人のスキルや経験により異なります。SaaS営業への転職を検討する際は、企業の分業体制やMA/SFA活用状況、KPI設計などを確認することが推奨されます。
SaaS営業組織の立ち上げ方|実践ステップ
よくある誤解として、SaaS営業の基礎知識を学べば組織が機能すると考えることが挙げられます。 しかし、MA/SFA実装や業務プロセス構築、部門間連携を後回しにすると、結果的に営業成果が向上しない失敗パターンに陥ります。
SaaS営業組織を立ち上げるには、組織設計(分業体制・役割定義)、MA/SFA実装(ツール選定・データ連携)、業務プロセス構築(KPI設計・PDCA体制)の一連のステップを踏む必要があります。
【チェックリスト】SaaS営業組織立ち上げチェックリスト
組織設計軸
- マーケティング・インサイド・フィールド・CSの分業体制を設計した
- 各役割の責任範囲を明確に定義した
- 業務の引き継ぎルール(リード受け渡し、商談引き継ぎ等)を策定した
- 採用計画を策定した(各役割の人数、スキル要件)
- オンボーディング設計を完了した(研修プログラム、OJT計画)
- 評価制度を設計した(KPI連動、インセンティブ設計)
- コミュニケーションルールを策定した(週次ミーティング、情報共有方法)
MA/SFA導入軸
- MA/SFAツールの選定基準を定義した
- ツールベンダーとの要件定義を完了した
- 部門間データ連携設計を実施した(共通フィールド、データフロー)
- API連携要件を文書化した
- データ移行計画を策定した
- 運用ルールを策定した(入力項目、更新頻度、承認フロー)
- ユーザー研修を実施した
- テスト運用を実施した(小規模テスト→本格展開)
KPI設計軸
- 部門別KPIを設定した(インサイド:商談設定数、フィールド:受注金額、CS:チャーン率等)
- KPI達成基準を明確化した(目標値、期限)
- KPIレビュー体制を構築した(週次/月次レビュー)
- ダッシュボードを設計した(KPI可視化、リアルタイム更新)
- 改善サイクルを整備した(PDCA、振り返りミーティング)
- 部門間連携KPIを設定した(リード受け渡し率、商談化率等)
- 顧客満足度測定の仕組みを構築した(NPS、CSAT等)
組織設計と分業体制の構築
THE MODEL型の分業体制を設計する際は、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスの役割分担を明確にすることが重要です。各役割の責任範囲を定義し、業務の引き継ぎルール(どのタイミングでリードを渡すか、商談をどう引き継ぐか)を策定します。
具体的な組織設計ステップとしては、現状分析(既存の営業プロセス、課題の洗い出し)、役割定義(各部門の業務範囲、KPI設計)、採用計画(必要人数、スキル要件、採用スケジュール)、オンボーディング設計(研修プログラム、OJT計画、ナレッジ共有の仕組み)などが挙げられます。
MA/SFA実装と運用定着
「SaaS営業ツールを導入すれば自動的に成果が出る」という誤解は避けるべきです。営業プロセスの整備と運用が不可欠であり、MA/SFA実装と業務プロセス構築を同時に進めることが成功の鍵です。
具体的な実装ステップとしては、ツール選定基準の定義(機能要件、予算、既存ツールとの連携性)、データ連携設計(マーケティング・インサイド・フィールド・CS間でのデータ共有、共通フィールドの設計)、運用ルール策定(入力項目、更新頻度、データ品質管理)、週次レビュー体制の構築(KPI進捗確認、課題共有、改善提案)などが挙げられます。
部門間データ連携の重要性は高く、マーケティングが獲得したリード情報をインサイドセールスに渡し、インサイドセールスが設定した商談情報をフィールドセールスに引き継ぎ、契約後の顧客情報をカスタマーサクセスに連携する流れを、MA/SFAツール上でシームレスに実現することが求められます。
まとめ|SaaS営業の成功にはMA/SFA実装と業務プロセス構築が不可欠
SaaS営業を成功させるためのポイントは以下の通りです。
- SaaS営業は顧客の成功と継続利用(LTV最大化、チャーン率最小化)がゴールであり、一般営業の「売り切り型」とは異なる
- インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの分業制(THE MODEL型)が一般的で、各役割の連携が重要
- SaaS市場は2024年1.4兆円から2028年2兆円へ成長予測があり、キャリアとしての将来性が高い(推定値のため変動可能性あり)
- 組織立ち上げには、組織設計・MA/SFA導入・KPI設計の3軸でチェックリストを活用することが推奨される
SaaS営業の成功は、仕事内容や必要スキルを理解するだけでなく、MA/SFA実装と部門間連携の業務プロセス構築を同時に進めることで実現します。
次のアクションとして、まずは組織設計の現状分析から始め、MA/SFAツール選定、KPI設計を進めることが推奨されます。小規模からテスト運用を開始し、段階的に本格展開することでリスクを低減できます。外部支援を活用することも有効ですが、自社に合った形で進めることが成功への第一歩です。
