The Model導入で失敗する企業に共通する落とし穴
The Model(ザ・モデル)導入で成功するには、概念理解と組織設計だけでなく、MA/SFA実装と営業BPRを一体的に進めることが不可欠です。
2025年の営業実態調査(3,000人対象)では、The Model導入企業の7割以上が部門間連携を課題視しているという結果が出ています。これは、単に「概念を理解して組織を分業化すれば成果が出る」という考え方では不十分であることを示しています。
この記事で分かること
- The Model(ザ・モデル)の基本概念と4部門の役割
- 導入企業の7割以上が抱える部門間連携の課題と対策
- MA/SFA実装と営業BPRを一体的に進める重要性
- 自社の導入準備度を診断するチェックリスト
- 実装から運用までのロードマップ
多くの企業がThe Modelの概念を学び、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部門に分業化を試みます。しかし、MA/SFAツールの実装や営業プロセスの見直しを疎かにした結果、データが連携せず部門間の分断が発生するケースが後を絶ちません。
この記事では、The Modelの基本概念から導入時の失敗パターン、そして成功に導くためのMA/SFA実装と営業BPRの進め方まで解説します。
The Model(ザ・モデル)とは:基本概念と仕組み
The Model(ザ・モデル) とは、Salesforce社が提唱したBtoB営業プロセスモデルです。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門に分業し、各々にKPIを設定して営業効率を最大化するフレームワークとして知られています。
従来の「一人の営業担当者がリード獲得から受注、アフターフォローまで担当する」スタイルと異なり、各フェーズの専門家が連携することで、より効率的かつ効果的な営業活動を実現することを目指しています。
The Modelが生まれた背景
The Modelが広く採用されるようになった背景には、BtoB営業の複雑化とSaaS時代の到来があります。
製品・サービスの検討期間が長期化し、複数の意思決定者が関与するBtoB取引では、一人の営業担当者がすべてのプロセスを担うことの限界が明らかになりました。また、SaaSビジネスの普及により、新規獲得だけでなく継続利用(リテンション)の重要性が高まったことも、カスタマーサクセス部門を含めた分業体制への移行を後押ししています。
日本市場においては、効率化を追求するだけでなく、顧客との信頼関係構築とのバランスをどう取るかが重要な検討事項となっています。
MQLとSQLの違いと重要性
The Modelを理解する上で欠かせないのが、MQLとSQLという2つのリード定義です。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が育成し、インサイドセールスに引き渡す基準を満たしたリードのことです。資料ダウンロードやセミナー参加などの行動をスコア化して判定します。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、インサイドセールスが一次対応し、商談価値があると判断してフィールドセールスに引き渡すリードを指します。温度感が高く、受注可能性のあるリードとして位置づけられます。
MQLからSQLへの変換プロセスを明確にすることで、各部門の役割と責任範囲が明確になり、効率的なリード管理が可能になります。
The Modelの4部門と各役割
The Modelは4つの部門が連携して機能します。ある導入企業では、顧客接点数が2倍に増加した事例も報告されています。ここでは各部門の役割を解説します。
マーケティング部門の役割とKPI
マーケティング部門は、リード獲得からMQL創出までを担います。
Webサイト、コンテンツマーケティング、広告、セミナー・ウェビナーなどの施策を通じてリードを獲得し、ナーチャリング(育成)を経てインサイドセールスに引き渡すまでが主な役割です。
主なKPIとしては、リード獲得数、MQL数、MQL転換率などが設定されることが一般的です。ただし、具体的な目標値は業界や企業規模、製品特性によって大きく異なるため、自社の状況に合わせた設定が必要です。
インサイドセールスの役割とKPI
インサイドセールス(SDR: Sales Development Representative) とは、マーケティングから引き継いだリードに対し、メール・電話等で一次対応し、商談化を担う部門です。The Modelの中核機能の一つとして位置づけられています。
ある導入事例では、リード対応率が1年間で40%から88%に向上したという報告があります。インサイドセールス部門を設置することで、リードへの迅速かつ体系的な対応が可能になるためです。
主なKPIとしては、コール数、コネクト率、SQL数、商談創出数などが設定されます。
なお、事業フェーズや企業規模によっては、インサイドセールス部門を置かない方が効率的なケースもあります。特に初期フェーズの企業では、分業による調整コストが効率化のメリットを上回ることがあるため、段階的な導入を検討すべきです。
フィールドセールスとカスタマーサクセスの役割
フィールドセールスは、SQLを受け取り、商談から受注までを担当します。対面やオンラインでの提案活動を行い、契約締結までの責任を負います。
カスタマーサクセスとは、受注後の顧客に対し、継続利用支援・解約防止・LTV向上を担う部門です。SaaS企業を中心にThe Modelで重視される機能として位置づけられています。
ある企業では、カスタマーサクセス部門主導のアップセル提案により、既存顧客へのアップセル率が前年比3倍に達した事例があります。「売って終わり」ではなく「育てて広げる」営業への転換において、カスタマーサクセスの役割は非常に重要です。
The Model導入でよくある失敗パターンと対策
The Model導入で最も多い失敗は、概念理解と組織分業だけでMA/SFA実装を疎かにするパターンです。「分業化すれば成果が出る」という考え方は誤りであり、ツール連携とデータ基盤の整備なしには持続的な成果は期待できません。
2025年の調査で7割以上の導入企業が部門間連携を課題視している事実は、この問題の深刻さを物語っています。
失敗パターン:分業化したのに成果が出ない理由
分業化したにもかかわらず成果が出ない企業には、以下の共通点があります。
- MA/SFAツールを導入したが、部門間のデータ連携ができていない
- 各部門のKPIは設定したが、引き渡し基準が曖昧で部門間の軋轢が生じている
- ツール導入だけで満足し、営業プロセスの見直し(BPR)を行っていない
- 組織文化の変革を伴わず、形式的な分業に留まっている
これらの問題は、概念やツールの導入だけでは解決できません。業務プロセス全体を見直し、データが自然に連携する仕組みを構築する必要があります。
成功パターン:部門間連携を機能させる仕組み
部門間連携を機能させるための有効な手段の一つが、バトンミーティングです。
バトンミーティングとは、The Model導入企業が部門間連携を強化するために実施する定期ミーティングです。各部門のKPIと連携条件を明確化し、週次で進捗と課題を共有します。
具体的には以下のような運用が推奨されます。
- 週次で各部門の責任者が集まり、KPI進捗を共有する
- MQL→SQL、SQL→商談の引き渡し基準を明文化し、定期的に見直す
- 部門間で発生した課題を早期に共有し、対策を協議する
- 成功事例・失敗事例を共有し、組織全体で学習する
【チェックリスト】The Model導入準備チェックリスト(組織・ツール・データの3軸診断)
- 経営層がThe Model導入の目的と期待成果を明確に理解している
- マーケティング部門の責任者がアサインされている
- インサイドセールス部門の設置または兼務体制が決まっている
- フィールドセールスの役割と責任範囲が明確化されている
- カスタマーサクセスの体制構築計画がある
- 各部門のKPIが設定されている
- MQLの定義と判定基準が文書化されている
- SQLの定義と判定基準が文書化されている
- 部門間の引き渡しルールが合意されている
- バトンミーティングの運用ルールが決まっている
- MAツールの選定・導入計画がある
- SFA/CRMツールの選定・導入計画がある
- MA-SFA間のデータ連携設計が完了している
- リードスコアリングのロジックが設計されている
- 各ツールの運用担当者がアサインされている
- リードデータの取得・蓄積方法が整備されている
- 顧客データの一元管理体制が構築されている
- 活動履歴(メール・電話・商談)の記録ルールがある
- 部門横断でのデータアクセス権限が設計されている
- レポート・ダッシュボードの要件が定義されている
The Model導入を成功させるMA/SFA実装と営業BPR
概念理解だけでなく、MA/SFA実装まで含めた準備がThe Model導入成功の鍵です。ある企業では商談化率が13%から25%に改善、別の企業では約2倍に向上した事例があります。これらの成果は、適切なツール実装と営業プロセスの見直しが伴って初めて実現できるものです。
MA/SFA連携設計のポイント
MA/SFA連携設計で重要なのは、以下の3点です。
1. データ連携の設計 マーケティングで取得したリード情報、行動履歴、スコアがSFAにスムーズに連携され、インサイドセールスやフィールドセールスが活用できる状態を構築します。
2. ステータス管理の統一 リードのステータス(MQL、SQL、商談中、受注など)を全部門で統一し、どの段階にいるリードが何件あるかをリアルタイムで把握できるようにします。
3. アラート・通知の設計 MQL基準を満たしたリード、長期間フォローされていないリードなどを自動で検知し、担当者に通知する仕組みを構築します。
特定のツールの優劣ではなく、自社の業務フローに合った連携設計を行うことが重要です。
営業BPRの進め方
営業BPR(Business Process Re-engineering)は、段階的に進めることを推奨します。
フェーズ1:現状分析 現在の営業プロセスを可視化し、ボトルネックや非効率な部分を特定します。
フェーズ2:To-Be設計 The Modelの4部門体制を前提に、理想的な業務フローを設計します。
フェーズ3:ギャップ分析 現状とTo-Beのギャップを明確にし、解決策を検討します。
フェーズ4:段階的導入 全面刷新ではなく、優先度の高い部分から段階的に導入します。
日本市場では、効率化を追求しつつも顧客との信頼関係を損なわないよう配慮することが重要です。形式的な分業だけでは顧客離脱のリスクがあるため、各フェーズでの顧客体験を重視した設計が求められます。
【フロー図】MA/SFA実装ロードマップ(The Model導入に必要な実装ステップ)
flowchart TD
A[現状分析・要件定義] --> B[ツール選定・導入計画策定]
B --> C[MAツール導入・初期設定]
C --> D[SFA/CRM導入・初期設定]
D --> E[MA-SFA連携設計・実装]
E --> F[リードスコアリング設計]
F --> G[ステータス管理ルール策定]
G --> H[運用ルール・マニュアル整備]
H --> I[パイロット運用開始]
I --> J[効果測定・改善]
J --> K[本格運用・定着化]
まとめ:The Model導入で営業組織を変革するために
The Model導入を成功させるためには、概念理解と組織設計に加えて、MA/SFA実装と営業BPRを一体的に進めることが不可欠です。
本記事で解説した内容を整理すると、以下のポイントが重要です。
- The Modelは4部門(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)の連携で成果を出すフレームワーク
- 導入企業の7割以上が部門間連携を課題視しており、概念理解だけでは不十分
- 失敗パターンは「分業化したがMA/SFA連携ができていない」ケース
- 成功には、バトンミーティングによる部門間連携の強化が有効
- MA/SFA実装と営業BPRを段階的に進めることで、持続的な成果につながる
まずは本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社の導入準備度を診断してください。すべての項目を満たす必要はありませんが、不足している領域を把握することで、優先的に取り組むべき課題が明確になります。
The Model導入には、概念理解と組織設計だけでなく、MA/SFA実装と営業BPRを一体的に進めることで、分業体制が機能し持続的な成果につながります。段階的な導入を心がけ、自社の状況に合わせた最適な形を模索していくことが成功への近道です。
