成熟期の営業が難しい理由と本記事の目的
成熟期の営業は「全方位」から「選択と集中」へ転換し、MA/SFAデータを活用して勝てる顧客に営業リソースを集中させることで成果を維持・拡大できる——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
市場成長が鈍化し、競合との競争が激化する成熟期において、従来の営業手法が通用しなくなったと感じている方は少なくありません。成長期にある日本企業の42.0%が翌年以降に成熟期へ移行し、成熟期で安定する傾向があるという調査結果があり、多くの企業が経験する段階です。
一方で、営業職の新規求人倍率は3.66倍(2025年時点)と高水準であり、人材採用だけでは営業力の強化が難しい状況です。
この記事で分かること
- 成熟期の定義と営業環境の変化
- 成熟期に陥りがちな営業の課題と自己診断方法
- 既存顧客からの収益最大化アプローチ
- MA/SFAデータを活用した営業リソース配分の最適化方法
- 成熟期でも成果を出すための具体的なアクション
成熟期とは何か:定義と営業環境の変化
成熟期とは、市場成長が停滞し、競争激化・シェア争いが中心となる企業ライフサイクルの段階です。成長期のように市場全体が拡大するのではなく、限られたパイを競合と奪い合う状況になります。
重要なのは、成熟期は衰退期とは異なるということです。RNOA(正味営業資産利益率) は営業活動の効率性を測る指標ですが、成熟期企業が最も高い収益性を示す傾向があるとされています。成熟期は「終わり」ではなく、むしろ収益を安定的に確保できる段階でもあります。
ただし、日本企業と米国企業では成熟期への対応が異なる傾向があります。米国企業では成熟期企業の24.7%が成長期に戻る傾向があるのに対し、日本企業は成熟期を維持するケースが一般的です。この違いを踏まえ、日本企業では成熟期を前提とした戦略転換が重要になります。
成熟期の営業に見られる典型的な変化
成熟期に入ると、営業環境には以下のような変化が現れます。
- 価格競争の激化: 製品・サービスの差別化が難しくなり、価格が主要な競争要因になる
- 新規顧客獲得コストの上昇: 市場全体のパイが拡大しないため、競合から顧客を奪う必要があり、獲得コストが上昇する
- 既存顧客の重要性増大: 新規獲得が難しくなる分、既存顧客の維持・深耕が収益の柱になる
- 差別化要因の変化: 製品スペックではなく、提案力やサポート品質での差別化が求められる
成熟期に陥りがちな営業の課題と診断方法
成熟期の営業で最も注意すべきは、成長期と同じ営業スタイルを続けてしまうことです。新規開拓重視・広範囲アプローチを維持したまま、リソースを分散させて成果が出ないまま疲弊するパターンは、多くの企業で見られる失敗パターンです。
日本のBtoB営業担当者の顧客活動時間は全体の10-25%にとどまるという調査があります(ただし、この数値は製造業中心のデータであり、全業種への一般化には注意が必要です)。成熟期において限られた顧客活動時間をどこに集中させるかが、成果を分ける重要な判断になります。
また、製造業の34歳以下の若年就業者数は2004年の347万人から2024年の259万人へ約25%減少しており、人材確保だけでは営業力の維持が難しい環境です。
成長期の営業手法が通用しなくなるサイン
以下のサインが複数当てはまる場合、営業戦略の転換を検討すべきタイミングです。
【チェックリスト】成熟期突入サイン診断チェックリスト
- 新規顧客の成約率が過去と比較して低下している
- 競合との価格競争が激しくなり、値引き要請が増えた
- 顧客獲得コスト(CAC)が上昇傾向にある
- 新規リードの数が頭打ちになっている
- 市場全体の成長率が鈍化している
- 競合他社との差別化が製品スペックでは難しくなった
- 営業人材の採用が難しくなっている
- 既存顧客の売上比率が上昇している
- 営業担当者あたりの売上が横ばいまたは低下傾向
- 見込み顧客の検討期間が長期化している
- 提案の失注理由として「価格」が増えている
- 市場シェアの維持に注力するようになった
既存顧客からの収益最大化アプローチ
成熟期の営業戦略の中核は、既存顧客からの収益最大化です。新規顧客獲得のコストが上昇する成熟期において、すでに関係構築ができている既存顧客からの追加収益を得ることが、効率的な成長戦略となります。
新規事業で事業化に至る企業は1割未満という調査結果があり、顧客獲得・運用安定化の段階で失敗する企業が多いとされています。この傾向を踏まえると、成熟期では新規事業開拓よりも既存顧客の深耕を優先することが合理的です。
LTV最大化のための具体的施策
LTV(顧客生涯価値) とは、一顧客から得られる収益の総額を指します。成熟期では既存顧客のLTV最大化が重要な戦略となります。
具体的な施策としては、以下が挙げられます。
- アップセル・クロスセル: 既存顧客に上位プランや関連サービスを提案する
- 継続利用促進: 解約率を下げ、顧客の利用期間を延ばす
- カスタマーサクセス強化: 顧客の成功を支援し、満足度と継続率を向上させる
- 定期的なフォローアップ: 顧客との接点を維持し、追加ニーズを早期に把握する
- 顧客の声の活用: 既存顧客の成功事例を新規提案に活用する
MA/SFAデータを活用した営業リソース配分の最適化
成熟期の営業で成果を出すには、限られたリソースを「勝てる顧客」に集中させることが重要です。そのためには、MA/SFAに蓄積されたデータを活用した意思決定が有効です。
2024年度国内SFA市場規模は617億円(前年度比14.9%増)であり、2024〜2029年度のCAGRは11.8%と予測されています。多くの企業がSFAを導入している背景には、データに基づく営業活動の効率化ニーズがあります。
SFA(Sales Force Automation) とは、営業活動を自動化・効率化するシステムです。商談管理、顧客情報一元化、活動可視化などの機能を通じて、営業リソースの最適配分を支援します。
事例として、ある上場企業がSFA/MA活用で新規クライアント商談数200%増を達成したという報告があります(ただし、個別企業事例のため一般化には注意が必要です)。
【フロー図】営業リソース配分最適化フロー
flowchart TD
A[MA/SFAデータ収集] --> B[顧客セグメンテーション]
B --> C{優先度判定}
C -->|高優先| D[重点アプローチ]
C -->|中優先| E[定期フォロー]
C -->|低優先| F[自動化対応]
D --> G[商談・提案]
E --> H[ナーチャリング]
F --> I[メール・コンテンツ配信]
G --> J[成果測定・フィードバック]
H --> J
I --> J
J --> B
データに基づく顧客セグメンテーション
MA/SFAデータを使った顧客セグメンテーションでは、以下の観点で顧客を分類します。
- 購買履歴: 過去の購買金額、頻度、直近の購買時期
- エンゲージメント: メール開封率、Webサイト訪問頻度、資料ダウンロード履歴
- LTV予測: 過去データに基づく将来収益の予測値
- 成約確度: 商談ステージ、競合状況、予算確保状況
これらのデータを組み合わせて「勝てる顧客」を特定し、営業リソースを集中させることで、成熟期でも効率的に成果を出すことが可能になります。
まとめ:成熟期の営業は「選択と集中」で成果を出す
成熟期の営業で成果を出すためのポイントを整理します。
成熟期の定義と特徴
成熟期とは市場成長が停滞し、競争激化・シェア争いが中心となる段階です。成熟期は衰退期ではなく、むしろ収益性が高い段階でもあります。日本企業の42.0%が成長期から成熟期へ移行するというデータがあり、多くの企業が経験する段階です。
避けるべき失敗パターン
成長期と同じ営業スタイル(新規開拓重視・広範囲アプローチ)を続け、リソースを分散させて成果が出ないまま疲弊するパターンは避けるべきです。
成功のための戦略転換
成熟期の営業は「全方位」から「選択と集中」へ転換し、MA/SFAデータを活用して勝てる顧客に営業リソースを集中させることで成果を維持・拡大できます。
本記事で紹介したチェックリストで自社の状況を診断し、リソース配分最適化フローを参考に、成熟期に適した営業戦略への転換を検討してみてください。
