SaaSスタートアップ営業の仕組み化ガイド|成長フェーズ別に解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1610分で読めます

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SaaSスタートアップの営業が注目される背景

多くの方が悩むSaaSスタートアップの営業組織づくり。結論は、SaaSスタートアップの営業成果は個人の能力ではなく、成長フェーズに応じた営業プロセスの仕組み化と適切なツール整備によって決まります。

日本のSaaS市場は急速に拡大しています。調査機関の予測によると、日本SaaS市場は2026年に138億米ドル規模に達し、CAGR13.5%で2035年まで成長が続くとされています。この成長に伴い、SaaS業界での営業人材への需要も高まっています。

民間調査によると、2026年の転職市場では営業職の求人倍率が前年比138.2%、カスタマーサクセス職は前年比212.5%と大幅に増加しています。SaaSスタートアップで働く営業職への関心はかつてないほど高まっていると言えるでしょう。

しかし、市場の成長に対応するには、個人の営業力に頼った属人的な営業体制では限界があります。本記事では、SaaSスタートアップの営業組織が直面する課題と、その解決策について解説します。

この記事で分かること

  • SaaS営業の基本的な分業体制と各役割の特徴
  • 成長フェーズ別の営業課題と対応策
  • 属人的営業から仕組み化された営業への移行方法
  • SaaSスタートアップ営業で求められるスキルとマインドセット

SaaS営業の基本的な分業体制と役割

SaaS営業組織は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部署で構成されることが一般的です。この分業体制により、リード獲得から契約継続までの一連のプロセスを効率的に管理できます。

効率的な営業組織の例として、トヨクモは従業員73人という少数精鋭の体制で2024年12月期に売上高31.5億円を達成しています。この事例は、適切な分業体制と仕組み化によって高い営業効率を実現できることを示しています。

ただし、分業体制は企業規模やフェーズによって最適な形が異なります。創業初期から4部署すべてを整備する必要はなく、自社の状況に応じた段階的な組織設計が重要です。

インサイドセールスの役割

インサイドセールスとは、電話やメールなどの非対面チャネルでリードを育成し、商談設定までを担当する営業職種です。

インサイドセールスの主な役割は、マーケティング部門から引き継いだリードに対してアプローチし、購買意欲を高めた上でフィールドセールスに商談を渡すことです。見込み顧客との最初の接点となるため、顧客の課題を正確に把握するヒアリング力が求められます。

フィールドセールスとカスタマーサクセスの連携

フィールドセールスは、対面での商談・クロージングを担当し、顧客との信頼関係構築を行う営業職種です。インサイドセールスから引き継いだ商談を成約に導くことが主な役割です。

契約後はカスタマーサクセスがバトンを受け取ります。カスタマーサクセスは、契約後の顧客のサービス活用を支援し、解約防止とアップセルを担当する職種です。

LTV(顧客生涯価値) とは、1顧客が契約期間を通じてもたらす収益の総額を指します。SaaSビジネスではサブスクリプションモデルが基本となるため、契約後のカスタマーサクセスの活動がLTVに大きく影響します。フィールドセールスとカスタマーサクセスの連携は、持続的な収益確保の鍵となります。

成長フェーズ別の営業課題と対応策

SaaSスタートアップは、成長フェーズごとに異なる営業課題に直面します。自社がどのフェーズにいるかを把握し、適切な対応策を講じることが重要です。

調査によると、LTV・NRRなどの成功指標の体系化が完了し定期改善している企業はわずか9.6%にとどまります。また、顧客対応の標準化率は7%と低く、仕組み化意欲があってもリソース不足で停滞している企業が32.6%存在します。

LTV(顧客生涯価値) は1顧客が契約期間を通じてもたらす収益の総額、NRR(純収益維持率) は既存顧客からの収益が前期比でどの程度維持・成長しているかを示す指標です。NRRが100%を超えていれば、アップセルが成功していると判断できます。

Rule of 40とは、成長率と利益率の合計が40%以上であるべきとするSaaS企業の健全性指標で、投資家が重視する指標の一つです。

【比較表】成長フェーズ別の営業課題と対応策一覧

フェーズ 主な課題 対応策
立ち上げ期 顧客理解の不足、初期顧客の獲得 創業者自身による営業、顧客ヒアリングの徹底
拡大期 属人化からの脱却、採用・教育の体制構築 営業プロセスの標準化、MA・SFA導入
成熟期 効率性の維持、マルチプロダクト展開 KPI体系の精緻化、部門間連携の強化

参考として、未上場SaaSスタートアップの従業員規模ではSmartHRが1,487名、LayerXが500名超、上場企業ではfreeeが1,901名、サイボウズが1,321名となっています。

立ち上げ期:プロダクトマーケットフィットの確立

立ち上げ期の最大の課題は、顧客が本当に必要としているものを見極めることです。この時期は創業者やコアメンバー自身が営業を担当し、顧客の声を直接聞くことが重要になります。

営業活動を通じて得られた顧客フィードバックは、プロダクト改善に直結します。売上数字よりも、顧客理解を深めることを優先すべきフェーズです。

拡大期:営業組織のスケール

拡大期の課題は、属人的な営業から脱却し、再現性のある営業プロセスを構築することです。調査によると、仕組み化意欲があってもリソース不足で停滞している企業が32.6%存在し、この時期の対応が後の成長を大きく左右します。

拡大期に仕組み化を後回しにすると、営業担当者ごとに成果のばらつきが生じ、組織としてスケールできなくなるリスクがあります。

「属人的営業」から「仕組み化された営業」への移行

「優秀な営業を採用すれば売上は伸びる」という考え方は誤りです。プロセス設計やツール整備を後回しにした結果、属人的な営業から脱却できずスケールできなくなる企業は少なくありません。これがSaaSスタートアップ営業でよくある失敗パターンです。

営業体制強化の成功例として、Sansanは2026年5月期第2Qで営業体制強化により契約件数・契約当たり月次ストック売上高が堅調に成長し、解約率0.53%(前年比+0.14pt)を維持しています。

【チェックリスト】SaaSスタートアップ営業組織フェーズ別整備チェックリスト

  • ターゲット顧客像の明文化
  • 営業プロセスの可視化(リード→商談→成約→継続)
  • 各フェーズの担当部署・役割の定義
  • リードの定義とスコアリング基準の設定
  • 商談ステージの定義と進捗管理方法の確立
  • MA(マーケティングオートメーション)ツールの選定・導入
  • SFA/CRMの選定・導入とデータ入力ルールの策定
  • 営業資料・提案書のテンプレート整備
  • 営業トークスクリプトの作成
  • 顧客対応マニュアルの整備
  • KPI(LTV・NRR・解約率等)の定義と測定体制の構築
  • 営業会議の定期開催とアジェンダの標準化
  • 営業担当者の採用基準の明確化
  • オンボーディングプログラムの整備
  • 部門間(マーケ・IS・FS・CS)の引き継ぎルールの策定

営業プロセスの標準化

営業プロセスの標準化は、仕組み化の第一歩です。調査によると、顧客対応の標準化率はわずか7%にとどまっており、多くの企業がこの課題を抱えています。

標準化のポイントは、営業活動の各ステップを明文化し、誰が担当しても同じ品質のアウトプットが出せる状態を目指すことです。営業トークスクリプトや提案書テンプレートの整備から始めることが効果的です。

MA・SFAを活用した営業効率化

MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)は、営業プロセスの効率化に欠かせないツールです。ただし、ツール導入が目的化してはいけません。

重要なのは、自社の営業プロセスに合ったツールを選定し、データ入力や活用のルールを明確にすることです。ツールはあくまで手段であり、仕組み化された営業プロセスがあってこそ効果を発揮します。

SaaSスタートアップ営業で求められるスキルとマインドセット

SaaSスタートアップの営業には、従来型の営業とは異なるスキルとマインドセットが求められます。転職市場では、営業職の求人倍率が前年比138.2%、カスタマーサクセス職は前年比212.5%と大幅に増加しており、これらのスキルを持つ人材への需要は高まっています。

カスタマーサクセスは、かつては営業の延長として捉えられることもありましたが、現在では独立した専門職として確立しています。顧客の成功を支援し、長期的な関係構築を担う重要な役割です。

また、AIネイティブSaaSの成長速度は従来のSaaSを上回る傾向があり(ただしグローバル傾向が強いため、日本市場への直接適用には注意が必要)、AI活用が営業効率化の一つの方向性となっています。

データドリブンな意思決定力

SaaS営業では、感覚や経験だけでなく、データに基づいた意思決定が求められます。LTV(顧客生涯価値)NRR(純収益維持率) などのKPIを理解し、自身の営業活動がこれらの指標にどう影響するかを把握することが重要です。

調査によると、LTV・NRRなどの成功指標の体系化が完了し定期改善している企業はわずか9.6%です。逆に言えば、早期からデータドリブンな営業体制を構築できれば、競合優位につながります。

まとめ|SaaSスタートアップ営業で成果を出すために

本記事では、SaaSスタートアップの営業組織が直面する課題と、その解決策について解説しました。

重要なポイントを整理すると、以下のようになります。

  • SaaS営業組織は、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部署体制が基本
  • 成長フェーズごとに課題が異なり、早期からの仕組み化が成長のボトルネック解消につながる
  • 「優秀な営業を採用すれば売上は伸びる」という考え方は誤りであり、プロセス設計とツール整備が不可欠
  • データドリブンな意思決定力やカスタマーサクセスの専門性など、SaaS特有のスキルが求められる

繰り返しになりますが、SaaSスタートアップの営業成果は個人の能力ではなく、成長フェーズに応じた営業プロセスの仕組み化と適切なツール整備によって決まります。

自社の営業組織に課題を感じている場合は、まず現状のフェーズを把握し、本記事で紹介したチェックリストを活用して整備すべき項目を洗い出すことから始めてみてください。専門家への相談も有効な選択肢の一つです。

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よくある質問

Q1SaaSスタートアップの営業に転職するにはどんなスキルが必要ですか?

A1データドリブンな意思決定力、顧客課題への深い理解、変化への適応力が求められます。特にカスタマーサクセス職は専門性が高まっており、2026年の転職市場では求人倍率が前年比212.5%と大幅に増加しています。LTVやNRRなどSaaS特有のKPIへの理解も重要です。

Q2SaaS営業の分業体制はいつから整備すべきですか?

A2企業規模やフェーズによって最適なタイミングは異なりますが、早期からの着手が望ましいです。調査によると、仕組み化意欲があってもリソース不足で停滞している企業が32.6%存在します。属人的営業から脱却できないまま成長すると、後から仕組み化することが難しくなります。

Q3SaaS営業で重要なKPIは何ですか?

A3LTV(顧客生涯価値)とNRR(純収益維持率)が特に重要です。LTVは1顧客が契約期間を通じてもたらす収益の総額、NRRは既存顧客からの収益維持・成長度合いを示します。ただし、調査によるとこれらの体系化が完了し定期改善している企業はわずか9.6%であり、早期整備が競合優位につながります。

Q4小規模なSaaSスタートアップでも営業組織の仕組み化は必要ですか?

A4必要です。トヨクモは従業員73人で2024年12月期に売上高31.5億円を達成しており、少数精鋭でも効率を重視した組織設計が可能です。小規模だからこそ、早期に仕組みを整備することで、成長フェーズへの移行がスムーズになります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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