マーケティング組織立ち上げが「体制だけ」で終わる問題
最も重要なのは、マーケティング組織の立ち上げで成果を出すには、体制設計と同時にMA/SFAを活用したデータドリブンな運営基盤を構築し、戦略を「動く仕組み」として実装することが不可欠であるということです。
2024年1月、日本マーケティング協会は34年ぶりにマーケティングの定義を刷新しました。デジタル化の進展により、マーケティング組織に求められる役割は大きく変化しています。しかし、多くの企業がマーケティング組織を立ち上げる際、「体制を作ること」に注力するあまり、実際に成果を出すための運営基盤の構築がおろそかになるケースが見られます。
MA(Marketing Automation) とは、マーケティング活動を自動化するツールです。リード育成、メール配信、スコアリングなどを効率化します。
SFA(Sales Force Automation) とは、営業活動を自動化・効率化するシステムです。商談管理、顧客情報一元化、活動可視化を実現します。
この記事で分かること
- マーケティング組織の定義・役割と主要な組織形態
- 立ち上げの具体的な手順と進め方
- フェーズ別の体制設計と役割分担(比較表付き)
- 立ち上げ成功のためのチェックリスト
- KPI設計と改善サイクルの回し方
この記事では、従業員50-300名のシリーズA〜B段階のBtoB企業でマーケティング組織を新規に立ち上げる責任者・事業部長を対象に、体制設計から運営基盤構築までを解説します。
マーケティング組織とは|役割と組織形態の基礎知識
マーケティング組織とは、企業のマーケティング活動を担う専門部門であり、リード獲得から商談創出支援まで幅広い業務を担当します。組織形態は企業規模やフェーズによって異なりますが、基本的な役割を理解しておくことが立ち上げの第一歩です。
デマンドセンターとは、マーケティングとインサイドセールスを統合し、リード獲得からナーチャリング、商談創出までを一元管理する組織形態です。
CoE(Center of Excellence) とは、特定機能(データ分析など)を集中的に担当する中央組織です。専門性を高め、全社に展開する役割を持ちます。
インサイドセールスとは、電話・メール・オンラインなど非対面で行う営業活動です。リードのフォローアップや商談化を担当します。
組織形態としては、集中型(マーケティング機能を一つの部門に集約)、分散型(各事業部にマーケティング担当を配置)、マトリックス型(機能別中央組織と事業別チームを組み合わせる)の3つが代表的です。小規模企業(50名未満)では集中型が標準であり、大企業ではマトリックス構造が多く見られます。
マーケティング組織の主要な業務領域
マーケティング組織が担う業務は多岐にわたります。主な業務領域としては、以下が挙げられます。
- リード獲得: Webサイト、広告、展示会、ウェビナーなどを通じた見込み客の獲得
- リードナーチャリング: メール配信やコンテンツ提供を通じた見込み客の育成
- 商談創出支援: 育成したリードを営業部門に引き渡し、商談につなげる
- ブランディング・PR: 企業や製品の認知度向上、ブランドイメージの構築
- マーケティングデータ分析: 施策効果の測定、改善のためのデータ分析
これらの業務を効果的に遂行するためには、MA/SFAを活用したデータ基盤の整備が不可欠です。
よくある失敗パターン:「人を採用して後から考える」アプローチ
「まずは人を採用して、戦略は後から考える」というアプローチは誤りです。 体制だけ作っても、データ基盤やプロセス設計がなければ属人化し、成果が出ないまま組織が空回りします。
具体的には、以下のような問題が発生しがちです。
- 担当者ごとにやり方がバラバラで、ノウハウが蓄積されない
- リードの管理が属人化し、引き継ぎができない
- 施策の効果測定ができず、改善が進まない
- 営業部門との連携がうまくいかず、リードが無駄になる
これらの問題を避けるためには、組織設計と同時にデータ基盤・プロセス設計を行うことが重要です。
マーケティング組織立ち上げの手順と進め方
立ち上げの手順は、「顧客像の言語化と社内共有」→「ツール導入」→「Web施策見直し」→「インサイドセールス設置」→「分業化」の順で進めることが推奨されます。この順番を守ることで、成果につながる組織を構築できます。
専任担当の配置とCRM/MA導入を初期段階で行うことが重要です。デジタルマーケティング支援の契約継続率は85%以上(2021年4月〜2022年3月、日本標準産業分類中分類30業種対象)という調査結果があり、継続率を目標とした改善サイクルを回すことが成功の鍵となります。
初期フェーズで整備すべきデータ基盤
MA/SFAは立ち上げ初期から導入することが推奨されます。ただし、ツール導入だけでは成功しません。社内文化の浸透と運用ルール整備が成功の鍵となります。
初期フェーズで整備すべきデータ基盤としては、以下が挙げられます。
- 顧客データベース: リード情報を一元管理できる仕組み
- リードスコアリング: 見込み度合いを数値化する仕組み
- 商談管理: 営業との連携に必要な情報共有基盤
- 施策効果測定: 各施策のROIを測定できる仕組み
これらの基盤を整備することで、属人化を防ぎ、データに基づいた意思決定が可能になります。
フェーズ別の体制設計と役割分担
企業の成長フェーズによって、最適なマーケティング組織の体制は異なります。以下の比較表を参考に、自社のフェーズに合った体制を検討してください。
【比較表】フェーズ別マーケティング組織体制・役割分担比較表
| フェーズ | 組織規模 | 推奨体制 | 主な役割・担当 | MA/SFA活用レベル |
|---|---|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 1-2名 | 集中型(兼任含む) | リード獲得、コンテンツ作成、施策実行全般 | 基本機能の活用開始 |
| 成長初期 | 3-5名 | 集中型(専任化) | マーケ担当、IS担当の分業開始 | スコアリング、メール自動化 |
| 成長期 | 6-10名 | 機能別分業 | コンテンツ、広告、IS、データ分析の分業 | 高度なセグメント配信、予測分析 |
| 拡大期 | 10名以上 | マトリックス型 | 機能別専門チーム+事業部連携 | 全社統合データ基盤、AIレコメンド |
ある支援事例では、約1年でリード10,000件を獲得し、問い合わせ2-3倍・商談が大幅に増加したケースがあります(コンサル支援企業の成功事例であり、個別事情に依存するため一般化には注意が必要です)。また、MA導入企業でアポ獲得数や商談数が大幅に向上した事例も報告されています(ベンダー提供の成功事例のため、成功バイアスの可能性があります)。
営業部門・インサイドセールスとの連携設計
マーケティング組織と営業部門の連携は、成果を出すための重要なポイントです。リード引き渡しルールを明確にし、共通KPIを設定することが不可欠です。
連携設計のポイントとしては、以下が挙げられます。
- リード引き渡し基準の明確化: どの段階のリードを営業に引き渡すか、スコアや行動履歴に基づいて定義する
- 共通KPIの設定: リード数だけでなく、商談化率や受注起点KPI(OCI)を重視する
- 定期的な情報共有: マーケと営業が定期的にミーティングを行い、リードの質についてフィードバックする
- ツールの連携: MA/SFAを連携させ、リード情報をシームレスに共有できるようにする
リード数偏重の運用は失敗パターンとして知られています。商談化率や受注金額まで追跡できる仕組みを構築することが重要です。
立ち上げ成功のためのチェックポイント
マーケティング組織の立ち上げには、複数のチェックポイントがあります。以下のチェックリストを活用して、自社の状況を確認してください。
ある事例では、カスタマーサクセス導入企業が初年度・2年目は社内文化が根付かず失敗したものの、粘り強く取り組んだ結果、成功後は大きな効果を達成しました。組織の定着には時間がかかることを認識しておく必要があります。
中小企業向け事例では、HP強化後に問い合わせから見積が大幅に増加したケースもあります(個別企業事例のため一般化には注意が必要です)。
【チェックリスト】マーケティング組織立ち上げチェックリスト
- マーケティング組織のミッション・目標が明確に定義されている
- 経営層からの支援・コミットメントが得られている
- ターゲット顧客像(ペルソナ)が言語化され、社内で共有されている
- MA/SFAの導入・運用ルールが整備されている
- リードの定義・スコアリング基準が設定されている
- 営業部門との連携ルール(引き渡し基準)が合意されている
- 定量的なKPI(CV数、商談化率など)が設定されている
- 施策の効果測定・レポーティングの仕組みがある
- コンテンツ制作のリソース・体制が確保されている
- 定期的な振り返り・改善ミーティングの場が設定されている
- 外部パートナー(広告代理店、制作会社等)との連携体制がある
- 予算配分と投資対効果の管理方法が決まっている
- チームメンバーの役割分担が明確になっている
- ナレッジ共有・ドキュメント管理の仕組みがある
- 採用・育成計画が策定されている
KPI設計と改善サイクルの回し方
成果を測定し改善するためのKPI設計は、マーケティング組織の成功に不可欠です。定量的なKPIを設定し、継続的な改善サイクルを回すことが重要です。
KPI設計のポイントとしては、以下が挙げられます。
- 入口KPI: Webサイト訪問数、資料ダウンロード数、セミナー参加者数など
- 中間KPI: MQL数、SQL数、商談化率など
- 出口KPI: 受注数、受注金額、顧客獲得コスト(CAC)など
デジタルマーケティング支援の契約継続率は85%以上という調査結果があります。継続率を一つの指標として、改善サイクルを回していくことが推奨されます。
改善サイクルの回し方としては、月次・四半期でKPIをレビューし、施策の効果検証と改善策の立案を繰り返すことが効果的です。
まとめ:戦略を「動く仕組み」に変えるために
マーケティング組織の立ち上げは、体制を作ることがゴールではありません。戦略を「動く仕組み」として実装し、継続的に成果を出せる組織を構築することが目的です。
本記事で紹介したチェックリストと比較表を活用し、自社のフェーズに合った体制設計を進めてください。そして、体制設計と同時にMA/SFAを活用したデータドリブンな運営基盤を構築し、戦略を「動く仕組み」として実装することが不可欠です。
組織の定着には時間がかかることを認識し、粘り強く取り組むことが成功への道筋です。初年度で成果が出なくても、改善サイクルを回し続けることで、やがて大きな成果につながります。
