シリーズA段階のマーケ組織構築で直面する課題
限られたリソースで成果を出せるマーケ組織を構築するために必要なのは、MA/SFAを活用した再現性あるリード獲得・商談化プロセスを最優先で構築し、属人的な営業から脱却することです。
シリーズAとは、スタートアップの資金調達ラウンドの一つで、シード後に行われ、主にPMF(Product Market Fit) 確認後の顧客獲得加速とスケール準備を目的とします。PMFとは、プロダクトが市場のニーズに適合している状態を指し、シリーズA段階ではPMF確認後の成長施策が主眼となります。
しかし、BtoB企業の約8割のマーケティング担当者が「やりたい施策を十分に実行できていない」と回答しており、少人数体制(3名以下)での運用が一般的です。シリーズA段階のスタートアップは、限られたリソースの中でマーケティング成果を出さなければならないという構造的な課題を抱えています。
本記事では、シリーズA段階のマーケ組織を「少人数でも成果が出る仕組み」で構築するための実務ガイドを提供します。
この記事で分かること
- シリーズA段階のマーケ組織が抱える構造的課題
- マーケ組織立ち上げに必要な要素とチェックリスト
- 1-3名体制での役割分担とプロセス設計
- MA/SFAを活用した再現性あるリード獲得プロセスの構築方法
シリーズA段階のマーケ組織が抱える構造的課題
シリーズA段階のマーケ組織が直面する最大の課題は、少人数体制でのリソース不足と、組織拡大時の連携課題の両方に対処しなければならない点です。
前述の通り、BtoB企業では少人数体制(3名以下)での運用が一般的であり、約8割のマーケティング担当者が施策を十分に実行できていないと感じています。しかし、単に人を増やせば解決するわけではありません。4名以上の中規模・大規模組織でも、チーム間の情報共有や施策の連携不足が43.8%、戦略と現場の実行の分断が39.3%と課題として挙げられています。
組織拡大だけでは根本的な解決にならないことを理解した上で、プロセス設計を先行させることが重要です。
少人数体制でのリソース不足
少人数体制では、施策の実行が担当者個人の能力に依存しやすく、リソース不足が常態化する傾向があります。
リソース不足への対応策として、外注検討が22.6%、新施策検討が20.4%、予算増額が17.2%、人材採用が12.9%という調査結果があります。注目すべきは、人材採用が12.9%と最も低い点です。多くの企業が採用以外の解決策—外注活用やツール導入による効率化—を模索していることがわかります。
組織拡大時に発生する連携課題
シリーズB以降を見据えると、組織拡大時に発生する課題を先取りして対策しておく必要があります。
4名以上の組織では、チーム間の情報共有や施策の連携不足が43.8%、戦略と現場の実行の分断が39.3%という課題が報告されています。これは「人を増やしても連携がうまくいかない」という状態を示しており、早期からプロセス設計とツール整備を進めることの重要性を示唆しています。
シリーズAマーケ組織の立ち上げに必要な要素
シリーズAマーケ組織を立ち上げる際は、目的設定、人員体制、ツール整備、施策選定、KPI設計の観点から必要な要素を整理することが重要です。
MA(マーケティングオートメーション) とは、マーケティング活動を自動化・効率化するツールを指します。少人数体制での効率的なリード獲得・ナーチャリングに活用されます。
2025年度BtoB企業の施策実施率は、SNSが36.4%、広告が29.0%(前年比10.0pt減)、展示会が27.1%、セミナー/ウェビナーが18.7%、SEOが13.1%となっています。また、注力施策としてはWeb広告運用強化が26.2%、展示会・イベント出展が17.7%、セミナー・ウェビナー開催が12.8%と報告されています。
【チェックリスト】シリーズAマーケ組織立ち上げチェックリスト
- マーケティングの目的・ゴールを明確に定義している
- ターゲット顧客(ICP)を具体的に設定している
- マーケ担当者の役割と責任範囲を明確にしている
- CEO/経営陣との連携体制を構築している
- MAツールの導入・設定を完了している
- SFA/CRMとの連携設計を行っている
- リード獲得からナーチャリングまでのプロセスを設計している
- MQL/SQLの定義と営業への引き渡し基準を設定している
- 優先する施策を選定している(Web広告、展示会、セミナー等)
- 施策ごとのKPIを設定している
- 予算配分を決定している
- 外注する領域と内製する領域を整理している
- 定期的な振り返りミーティングの体制を構築している
- チャネル別のパフォーマンス計測の仕組みを整備している
- シリーズB以降のスケール計画を検討している
優先すべきマーケティング施策の選定
シリーズA段階では、限られたリソースを効果的に配分するために、施策の優先順位を明確にすることが重要です。
ROAS(Return On Advertising Spend) とは、広告費用対効果を指し、広告投資に対してどれだけの売上が得られたかを示す指標です。
2025年度BtoB企業の約6割がWeb広告予算の増額を予定しており、リード獲得効果とROASを重視する傾向がみられます。一方で、広告施策の実施率は前年比10.0pt減となっており、単に広告費を増やすのではなく、質を重視した戦略的アプローチへの転換が進んでいます。
シリーズA段階では、すべての施策に手を出すのではなく、自社のターゲット顧客に効果的なチャネルに集中することが推奨されます。
少人数体制での役割分担とプロセス設計
少人数体制でも成果を出すためには、プロセス設計とツール整備を先行させ、属人的なマーケティングから脱却することが不可欠です。
よくある失敗パターンとして、「まずは優秀なマーケターを採用すれば成果が出る」と考え、プロセス設計やツール整備を後回しにするケースがあります。この考え方は誤りです。人に依存した属人的なマーケティングでは、担当者の離職や業務負荷の増大で成果が不安定になり、シリーズBに向けたスケールが困難になります。
シリーズA段階ではCMO未配置で、CEO直下の小規模チームからスタートするケースが一般的です。重要なのは、人員を増やす前に「再現性あるプロセス」を構築しておくことです。
【フロー図】1-3名体制でのマーケ機能分担フロー
flowchart TD
A[戦略・KPI設計<br>CEO/マーケ責任者] --> B[リード獲得施策<br>Web広告/SEO/イベント]
B --> C[リードナーチャリング<br>MA運用/メール配信]
C --> D[MQL判定<br>スコアリング/引き渡し基準]
D --> E[営業連携<br>SFA登録/商談化]
E --> F[振り返り・改善<br>KPIレビュー/施策最適化]
F --> A
subgraph 内製推奨
A
D
F
end
subgraph 外注可能
B
C
end
内製と外注の使い分け
少人数体制では、すべてを内製しようとするとリソースが分散し、どの施策も中途半端になるリスクがあります。内製と外注を適切に使い分けることが重要です。
リソース不足への対応策として、外注検討が22.6%と最も多く選ばれています。
内製すべき領域(コア業務)
- 戦略立案・KPI設計
- MQL/SQLの定義と引き渡し基準設定
- 営業部門との連携・振り返り
- チャネル別パフォーマンスの分析・意思決定
外注可能な領域
- コンテンツ制作(記事、ホワイトペーパー等)
- Web広告運用
- LP制作・改善
- セミナー運営サポート
戦略と意思決定は内製し、実行部分は外注を活用することで、少人数でも効率的にマーケティング活動を展開できます。
MA/SFAを活用した再現性あるリード獲得プロセス構築
属人的なマーケティングから脱却するためには、MA/SFAを活用した再現性あるプロセスを構築することが不可欠です。
MAを活用することで、リード獲得→ナーチャリング→商談化の流れを一気通貫で設計し、担当者に依存しない仕組みを作ることができます。スコアリングによるMQL判定、ナーチャリングメールの自動配信、SFAへのリード情報連携など、プロセスを標準化することで、人員が増えてもスケールしやすい体制が整います。
生成AIをメンバーの80%以上が日常的に活用している組織は全体の12.2%にとどまるという調査結果もあり、ツール活用による効率化の余地は大きいと言えます。
シリーズB以降を見据えたスケール準備
シリーズA段階からプロセス・ツール整備を先行させることで、シリーズB以降のスケール時に発生しがちな混乱を防ぐことができます。
4名以上の組織では、チーム間の情報共有や施策の連携不足が43.8%、戦略と現場の実行の分断が39.3%という課題が報告されています。これらの課題は、プロセスが標準化されていない状態で人員を増やすと顕在化しやすいです。
シリーズA段階で以下を整備しておくことで、スケール時の混乱を最小化できます。
- リード獲得からナーチャリング、商談化までのプロセス定義
- MQL/SQLの基準と営業への引き渡しルール
- 施策ごとのKPIと計測の仕組み
- 定期的な振り返りと改善のサイクル
まとめ:少人数でも成果を出すマーケ組織の作り方
本記事では、シリーズA段階のマーケ組織を構築するための実務ガイドを解説しました。
重要なポイントを整理します。
- BtoB企業では少人数体制(3名以下)での運用が一般的であり、約8割が施策を十分に実行できていない
- 組織拡大だけでは解決しない。4名以上でも情報共有・連携不足が課題になる
- チェックリストを活用して、目的設定から施策選定、KPI設計まで漏れなく整理する
- 「優秀なマーケターを採用すれば成果が出る」という考え方は誤り。プロセス設計が先決
- 内製と外注を使い分け、戦略は内製、実行は外注を活用する
- MA/SFAを活用して再現性あるプロセスを構築し、属人的なマーケティングから脱却する
次のアクションとして、本記事のチェックリストを使って自社の現状を棚卸しし、MA/SFAの導入検討とプロセス設計を進めることをお勧めします。
シリーズA段階のマーケティング組織は、少人数でも成果を出すために、MA/SFAを活用した再現性あるリード獲得・商談化プロセスを最優先で構築し、属人的な営業から脱却することが成長の鍵です。
