レイターステージの営業が直面する組織課題
多くの人が見落としがちですが、レイターステージの営業は、属人化した営業から脱却し、MA/SFAを活用した仕組み化を進めることで、IPOに向けて再現性のある営業組織を構築できます。
レイターステージとは、スタートアップの成長過程における最終段階で、事業が安定し収益基盤が確立した状態を指します。この段階ではイグジット(IPOやM&Aによる株式売却)に向けた準備が主眼となります。
経済産業省の資料によると、日本のスタートアップ数は2021年の16,100社から2025年には25,000社へと1.5倍に増加しています。この成長に伴い、レイターステージに到達する企業も増加していますが、多くの企業が営業組織のスケールアップに課題を抱えています。
この記事で分かること
- レイターステージの定義と企業規模の目安
- 成長ステージ別の営業課題と対策の違い
- 属人化した営業から脱却する仕組み化のアプローチ
- 自社の仕組み化状況を診断できるチェックリスト
レイターステージの定義と企業規模の目安
レイターステージは、スタートアップが収益基盤を確立し、IPO/M&A準備に注力する段階です。2023年時点の一般相場として、売上高30億円以上、従業員数30〜100人が目安とされています。ただし、この数値は業種や事業モデルにより大きく変動するため、あくまで参考値として捉えてください。
ARR(年間経常収益) は、SaaS企業などで用いられる年間の継続収益指標です。SaaS企業の場合、ARRを基準としてステージを判断するケースも多くみられます。
レイターステージでは組織としての成熟度も求められます。2025年の調査では、レイターステージ企業の取締役会設置率は75%に達し、多様性を重視する企業も63%と、ガバナンス強化が標準化している傾向がみられます。
アーリー・ミドル・レイターステージの違い
各成長ステージでは、企業の主眼となる課題が異なります。
- アーリーステージ: PMF(プロダクトマーケットフィット)の達成が最優先。少人数で試行錯誤しながら市場適合を検証する段階
- ミドルステージ: 成長の加速が主眼。営業人員の増加と売上拡大に注力し、組織の急拡大が起こる段階
- レイターステージ: 収益の安定化とイグジット準備が中心。再現性のある体制構築とKPI管理が求められる段階
成長ステージ別の営業課題と対策比較
レイターステージの営業課題を理解するには、各ステージでの課題の変遷を把握することが重要です。スタートアップサーベイ2025では、741社(シード期からIPO直前まで)を対象に、組織管理の複雑化について分析が行われています。
よくある失敗パターンとして、「レイターステージになれば営業は安定する」と考え、アーリー・ミドルで確立した営業スタイルを変えずに組織だけを拡大するケースがあります。この場合、属人化が加速し、IPO準備に必要なKPI可視化・再現性のある体制が構築できなくなります。
また、Startup Culture Lab.の2025年度レポートによると、レイターステージ入社者は基本給が高い傾向がある一方、創業期社員はストックオプション(SO) が優位となり、報酬の不均衡が組織課題として発生することが報告されています。ストックオプションとは、従業員が自社株式を一定価格で購入できる権利で、創業期社員のインセンティブとして活用されます。
【比較表】アーリー・ミドル・レイターステージの営業課題と対策
| ステージ | 主な営業課題 | 対策 | KPI管理の特徴 |
|---|---|---|---|
| アーリー | PMF検証と初期顧客獲得 | 創業メンバーが直接営業、顧客フィードバックを収集 | 売上・顧客数などシンプルな指標 |
| ミドル | 営業人員の急拡大と教育 | 採用強化、OJT中心の教育、成功事例の共有 | 商談数・受注率などの活動指標を追加 |
| レイター | 属人化脱却、KPI体制構築 | MA/SFA活用、プロセス標準化、評価制度整備 | CAC/LTV、ARRなど経営指標と連動 |
属人化脱却と営業プロセスの仕組み化
属人化した営業から脱却するには、営業プロセスの可視化・標準化と、それを支えるツール活用が不可欠です。
参考として、2024年時点で国内SaaS企業のうちARR100億円を超える企業は12社存在し、上位5社のCAGR(年平均成長率)は過去5年間で25%を超えています。これらの企業では営業プロセスの仕組み化が進んでいるケースが多いとされていますが、SaaS業界に限定したデータのため、他業種への一般化には注意が必要です。
CAC/LTV比は、顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比率で、1.5未満が健全な営業効率の目安とされています。レイターステージでは、この指標を継続的にモニタリングし、営業効率を可視化することが求められます。
MA/SFAを活用したKPI管理体制の構築
IPO準備に向けては、営業KPIの可視化・管理体制の構築が必須です。MA/SFAツールを活用することで、以下のような体制を整備できます。
- リード管理の一元化: 獲得経路、ステータス、商談化率の可視化
- パイプライン管理: 商談フェーズごとの進捗と確度の管理
- 営業活動の記録: 訪問・架電・メールなどの活動履歴の蓄積
- レポーティングの自動化: 経営層・投資家向けレポートの効率化
ツールの選定にあたっては、自社の規模や業種に合った機能を見極めることが重要です。
営業ナレッジの標準化と引き継ぎ設計
トップセールスのナレッジを組織全体で共有する仕組みを構築することで、営業力の底上げを図れます。
- 営業プレイブック: 商談の進め方、よくある質問への回答、競合との差別化ポイントをドキュメント化
- 商談録画: オンライン商談を録画し、成功事例・失敗事例を教材として活用
- 成功事例の蓄積: 受注に至った案件の要因分析を共有し、再現性を高める
- 引き継ぎフロー: 担当変更時の情報引き継ぎ手順を標準化
レイターステージ営業の仕組み化チェックリスト
自社の仕組み化状況を診断するために、以下のチェックリストを活用してください。
【チェックリスト】レイターステージ営業の仕組み化チェックリスト
- 営業KPI(CAC/LTV比、商談化率、受注率など)が定義・可視化されている
- MA/SFAツールが導入され、営業活動が記録されている
- リード獲得から受注までのパイプラインが可視化されている
- 営業プロセス(商談フェーズ、活動内容)が標準化されている
- 営業プレイブックが整備され、定期的に更新されている
- 商談録画や成功事例の共有が行われている
- 新人営業向けのオンボーディングプログラムが整備されている
- 担当変更時の引き継ぎフローが標準化されている
- 営業評価制度がKPIと連動している
- 創業期社員とレイターステージ入社者の報酬バランスが検討されている
- 経営層・投資家向けの営業レポートが定期的に作成されている
- 営業組織の責任者がKPI管理を担っている
診断結果の目安
- 10項目以上該当: 仕組み化が進んでいます。継続的な改善を推進してください
- 6〜9項目該当: 仕組み化の途上です。未対応項目を優先的に整備してください
- 5項目以下該当: 仕組み化の初期段階です。基盤整備から着手してください
まとめ:IPOに向けた再現性のある営業組織構築
レイターステージの営業組織構築において、最も重要なのは「属人化からの脱却」と「仕組み化の推進」です。
- アーリー・ミドルステージで成功した営業スタイルをそのまま継続するのではなく、組織規模に合わせた体制へと進化させる
- MA/SFAを活用して営業プロセスを可視化・標準化し、KPI管理体制を構築する
- 営業ナレッジを組織全体で共有し、再現性のある営業力を底上げする
- 評価・報酬制度を整備し、創業期社員とレイターステージ入社者のバランスを取る
まずは本記事のチェックリストで自社の現状を診断し、優先的に取り組むべき課題を特定してください。属人化した営業から脱却し、MA/SFAを活用した仕組み化を進めることで、IPOに向けて再現性のある営業組織を構築できます。
