SFA導入だけでは解決しない営業プロセスの課題
先に答えを言うと、営業プロセス見直しは可視化や標準化だけでは不十分であり、戦略設計から実装・定着まで一貫したアプローチと専門家支援が成果を出す鍵です。
営業プロセスとは、リード獲得から商談化、受注、アフターフォローまでの営業活動を標準化した一連の流れを指します。営業のDX(SFA等の活用)に取り組んでいる企業は約70%にのぼる一方で(三菱総研調査、2025年)、新規開拓を「紹介」に頼る企業の59.0%が「KPIを設定していない」と回答しています(BtoB中小企業新規開拓実態調査、2024-2025年)。
この数字が示すのは、ツールを導入しても運用設計が伴わなければ成果につながらないという現実です。SFA導入済みでも活用できていない、営業が属人化して成果がバラつく、マーケとの連携がうまくいかない——こうした課題を抱える企業は少なくありません。
この記事で分かること
- 営業プロセスの基本構造と見直しを検討すべきタイミング
- 自社の営業プロセスに問題があるかを判断するチェックポイント
- 課題タイプ別の改善アプローチと比較
- 実装・定着まで見据えた改善の進め方
営業プロセスの基本構造と見直しの起点
営業プロセスを見直す前に、まず標準的な構造を理解し、どのタイミングで見直しが必要になるかを把握することが重要です。
営業担当者との初回面談前に85%の購買担当者が購買先候補を絞り込んでいるという調査結果があります(BtoB購買プロセス白書2025、バイヤー600名調査。ただし業種・規模により変動する可能性があります)。この数字は、営業プロセスの設計において顧客起点の視点がいかに重要かを示しています。
営業プロセスの定義と標準的なステップ
営業プロセスは一般的に5〜8ステップ程度に分解するのが日本BtoBの相場とされています。代表的な流れは以下の通りです。
- リード獲得(マーケティング活動による見込み顧客の発掘)
- アポイント取得(商談機会の創出)
- 初回商談(課題ヒアリング・ニーズ把握)
- 提案(ソリューション提示・見積り)
- クロージング(契約交渉・受注)
- アフターフォロー(導入支援・継続フォロー)
自社のプロセスがこれらのステップのどこで停滞しているかを把握することが、見直しの起点になります。
The Model型組織と営業プロセスの関係
The Model型組織とは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部門で分業する営業組織モデルです。IT/SaaS業界を中心に普及しています。
この分業体制では、MQL(Marketing Qualified Lead) からSQL(Sales Qualified Lead) への引き渡し基準が曖昧だと、部門間で認識のズレが生じやすくなります。営業プロセスの見直しでは、こうした部門間の接続点を明確にすることが重要です。
営業プロセス見直しが必要な兆候と課題の見つけ方
自社の営業プロセスに問題があるかを判断するには、定量的な指標と定性的な兆候の両面から確認することが有効です。
新規開拓ツールの活用状況では、全体の42.0%が「ほぼ手動」、「紹介」を主力とする企業では61.5%が「ほぼ手動」と回答しています(BtoB中小企業新規開拓実態調査)。また、新規開拓を紹介に頼る企業の59.0%がKPIを設定していないという実態もあります。こうした状況は、プロセスが属人的で改善サイクルが回っていないサインです。
【チェックリスト】営業プロセス見直しの優先度判断チェックリスト
- 担当者によって商談化率・受注率に大きなバラつきがある
- 営業プロセスの各ステップにKPIが設定されていない
- リードから受注までの進捗が一元管理されていない
- SFA/CRMを導入しているが入力が徹底されていない
- マーケティングから営業へのリード引き渡し基準が曖昧
- トップセールスのノウハウが言語化・共有されていない
- 新規開拓が紹介や既存顧客からの口コミに依存している
- 商談の進捗状況を把握するのに個別に確認が必要
- 営業会議で定量データに基づく議論ができていない
- 受注・失注の原因分析が体系的に行われていない
上記の項目に半数以上該当する場合は、営業プロセスの見直しを優先的に検討すべき状況です。
属人化のサインと定量的な把握方法
属人化の程度を測定するには、担当者別の商談化率・受注率のバラつきを確認するのが効果的です。BtoB企業の約7割が4名以上の営業チーム体制で動いており、情報共有と仕組みで成果を出す企業が勝ち残ったとされています(ferret One調査、2025年5月)。
チーム規模が大きくなるほど、属人的な運用ではスケールしません。「担当者間で商談化率が2倍以上異なる」「特定の担当者に案件が集中している」といった状況は、プロセス標準化の必要性を示しています。
営業プロセス課題別の改善アプローチ
課題のタイプによって、取るべき改善アプローチは異なります。よくある失敗パターンとして、SFAを導入すれば営業プロセスが自動的に改善される、または営業担当者の意識改革だけで属人化が解消できると考えてしまうことがあります。この考え方は誤りです。
リード獲得に課題を感じる企業の取り組みとして、ターゲットの見直し36.6%、データ分析の強化24.7%、コンテンツ/セミナー内容見直し22.6%が上位に挙がっています(BtoB経営者リード獲得調査2025)。つまり、多くの企業がプロセス上流の改善に取り組んでいるのが実態です。
【比較表】営業プロセス課題別の改善アプローチ比較表
| 課題タイプ | 主な症状 | 改善アプローチ | 必要な取り組み |
|---|---|---|---|
| プロセス未定義 | 営業活動が標準化されていない | プロセス設計 | ステップ定義、KPI設計 |
| 可視化不足 | 進捗が把握できない | SFA活用強化 | 入力ルール徹底、ダッシュボード構築 |
| 属人化 | 担当者間で成果バラつき | ナレッジ共有 | 成功パターン言語化、研修体制 |
| 部門間断絶 | MQL→SQL引き渡しで停滞 | 連携強化 | 引き渡し基準明確化、定期ミーティング |
| KPI不整合 | 部分最適に陥っている | 統合KPI設計 | 全体最適の指標設計、目標連動 |
| ツール未活用 | SFA入力が定着しない | 運用定着支援 | 入力負荷軽減、インセンティブ設計 |
可視化・標準化のアプローチと限界
可視化や標準化は営業プロセス改善の第一歩ですが、それだけでは不十分です。プロセスを図示し、ステップを定義しても、それが実際の営業活動に反映されなければ意味がありません。
SSOT(Single Source of Truth) とは、データを一元管理し、組織全体で唯一の信頼できる情報源とするアプローチです。可視化の先にあるのは、このSSOTを実現し、データに基づいた意思決定ができる状態を作ることです。
SFA/CRM活用による改善の進め方
営業のDXに取り組む企業は約70%に達していますが、SFA/CRMを導入すれば自動的に営業プロセスが可視化されるわけではありません。プロセス定義とKPI設計が先に必要であり、ツールはその実行手段に過ぎません。
効果的な活用のためには、まず入力すべき項目と入力タイミングのルールを明確にし、営業担当者の負荷を最小限に抑える設計が重要です。
営業プロセス改善の実装と定着に必要なこと
戦略設計から実装・定着まで一貫して取り組むことが、営業プロセス改善を成果につなげる鍵です。
BtoBマーケティングの課題第1位は「人手不足・体制が整っていない」で34.3%を占めています(ferret One Ask One調査、2025年)。社内リソースだけでプロセス改善を進めるのが難しいケースは少なくありません。また、BtoB中小企業の新規開拓手法は「既存顧客・知人からの紹介」が60.7%で突出しており(BtoB中小企業新規開拓実態調査)、既存の営業スタイルからの変革には相応の労力が必要です。
こうした状況では、戦略と実装の両面をサポートできる専門家の支援を検討することも選択肢の一つです。
部門間連携とマーケティングとの接続
購買担当者の85%が初回面談前に候補を絞り込んでいる現状を踏まえると、営業プロセスの改善はマーケティングとの連携なしには成立しません。
マーケティング部門が創出したリードが営業に引き渡される際の基準(MQL→SQL)を明確にし、両部門が同じ指標で成果を測定できる体制を構築することが重要です。
まとめ:営業プロセス見直しを成果につなげるために
本記事では、営業プロセス見直しの必要性、課題の見つけ方、改善アプローチ、そして実装・定着の進め方を解説しました。
要点を整理すると以下の通りです。
- 営業プロセスは5〜8ステップに分解し、各ステップのKPIを設定することが基本
- SFA導入済みでも活用できていない企業は多く、ツール導入だけでは改善しない
- 課題タイプに応じた適切なアプローチを選択することが重要
- 実装・定着まで見据えた一貫した取り組みが成果を左右する
チェックリストで自社の状況を確認し、優先的に取り組むべき課題を特定することから始めてみてください。営業プロセス見直しは可視化や標準化だけでは不十分であり、戦略設計から実装・定着まで一貫したアプローチと専門家支援が成果を出す鍵です。
