部門間でKPIが分断される課題
先に答えを言うと、部門間KPI統一は、指標の定義を揃えるだけでなく、MA/SFA連携によるデータ一元化と共通ダッシュボード構築まで実装することで初めて機能する。
KPI(Key Performance Indicator) とは、重要業績評価指標のことで、KGI達成に向けた中間プロセスの達成度を測る指標です。
2025年のBtoB企業経営者を対象にしたリード獲得実態調査によると、「リードの質が理想通り」と答えたのは51.4%にとどまり、48.6%が質に課題を感じているという結果が報告されています(調査対象は限定的)。この課題の背景には、マーケティングと営業で異なるKPIを追いかけており、リードの質に対する認識がズレていることがあります。
この記事で分かること
- 部門間でKPIが分断される原因と課題
- KPIツリーによる全社目標と部門目標の紐づけ方
- マーケティングと営業のKPIを連携させる方法
- 部門間KPI統一の具体的な進め方
- MA/SFA連携によるデータ一元化と共通ダッシュボード構築
KPIツリーとは|全社目標と部門目標を紐づける仕組み
KPIツリーは、全社目標と各部門のKPIを因果関係で接続し、一貫した目標管理を実現する仕組みです。
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標のことで、売上や利益など最終的に達成すべきゴールを数値化した指標です。
KSF(Key Success Factor) とは、重要成功要因のことで、KGI達成のために必要な成功要因を特定したものです。例として「年間売上成長率20%」「市場シェア5%増加」などが挙げられています。
KPIツリーとは、KGIを頂点に、各部門のKPIを因果関係で接続した階層構造です。全社と部門の目標を紐づけることで、各部門が追う指標が全社目標にどう貢献するかを明確にできます。
KPIツリーを設計することで、マーケティングが追う「リード数」や「MQL数」と、営業が追う「商談数」や「受注率」が、最終的に同じKGI(売上・利益)に紐づいていることを可視化できます。
MQL/SQLとは|マーケと営業の接点を定義する
MQL(Marketing Qualified Lead) は、マーケティングが認定した見込み顧客を指します。SQL(Sales Qualified Lead) は、営業が認定した商談見込み顧客を指します。
MQL/SQLの定義が部門間で統一されていないと、以下の問題が発生します。
- マーケティングが「リードを渡した」と思っていても、営業が「使えないリード」と判断する
- 営業がフォローしたリードが、実はマーケティングの基準ではMQLに達していない
- 部門間でリードの質に対する認識がズレ、互いの貢献が見えにくくなる
MQL/SQLの定義を明確にし、部門間で合意することが、KPI統一の第一歩です。
マーケティングと営業のKPIを連携させる方法
共通のKGI(売上・利益)を起点に、マーケティング・営業のKPIを連動させることが重要です。
2025年の調査によると、リードの質に関する課題解決のために実施していることとして、ターゲットの見直し(36.6%)、データ分析の強化(24.7%)、コンテンツ/セミナー内容見直し(22.6%)が挙げられています(調査対象は限定的)。これらの施策を効果的に進めるには、マーケティングと営業が同じデータを見て改善に取り組む仕組みが必要です。
【比較表】マーケティング・営業KPI連携表
| 段階 | マーケティングKPI | 営業KPI | 連携ポイント |
|---|---|---|---|
| 認知獲得 | Web流入数・広告表示回数 | (なし) | 認知施策の効果を共有 |
| リード獲得 | リード数・CVR | (なし) | 獲得チャネル別の質を分析 |
| リード育成 | MQL数・スコアリング進捗 | (なし) | MQL基準を部門間で合意 |
| 引き渡し | MQL→SQL転換率 | SQL数・フォロー率 | 引き渡し基準を明文化 |
| 商談 | (なし) | 商談数・商談化率 | リードソース別の商談化率を分析 |
| 受注 | 受注貢献リード数 | 受注数・受注率・売上 | 受注に至ったリードの共通点を分析 |
リード引き渡し基準の明文化
リード引き渡し基準(MQL定義)を明文化することで、部門間の認識ズレを防ぐことができます。
MQL定義の例:
- 属性条件: ターゲット業種・企業規模・役職
- 行動条件: 資料ダウンロード・セミナー参加・料金ページ閲覧
- スコア条件: 一定のリードスコアに達している
引き渡しルールの例:
- MQL認定後、営業への引き渡しは24時間以内
- 引き渡し時に必ず顧客情報(業種・課題・興味のある製品)を共有
- 営業がフォローした結果(SQL認定/非認定/理由)をマーケティングにフィードバック
部門間KPI統一の進め方
KPI統一を進めるには、定義の合意からシステム整備まで段階的に取り組む必要があります。
よくある失敗パターンは、「KPIの定義を統一しよう」と合意しても、データがExcelや各ツールに分散したままで終わらせてしまうケースです。この考え方は誤りです。定義を合意しただけでは、部門間の壁は解消されません。
部門間KPI統一の現実的なステップとして、以下が推奨されています。
- 経営目標からの逆算設計
- 営業・マーケの定義統一
- 部門横断の合意形成会議
- システム・レポート整備
- 定期見直し
【チェックリスト】部門間KPI統一チェックリスト
- 経営目標(KGI)を数値で明確にしている
- KGIから逆算してマーケ・営業のKPIを設計している
- KPIツリーを作成し、部門間の関係を可視化している
- MQL(Marketing Qualified Lead)の定義を明文化している
- SQL(Sales Qualified Lead)の定義を明文化している
- MQL/SQLの定義について部門間で合意している
- リード引き渡しの基準とタイミングを明確にしている
- 引き渡し後のフォロー期限を設定している
- 営業からマーケへのフィードバックルールを決めている
- 部門横断の定例会議を設定している
- 共通のデータソース(MA/SFA連携)を構築している
- 共通のダッシュボードで両部門のKPIを可視化している
- KPIの達成状況を定期的にレビューしている
- KPI定義の見直しサイクルを決めている
部門横断の合意形成会議の進め方
部門間で定義・基準を合意するには、定期的な合意形成会議が有効です。
会議で決めるべきこと:
- 共通KGIの確認: 全社として追う最終目標を共有
- 各部門KPIの紐づけ: 各部門のKPIがKGIにどう貢献するかを明確化
- MQL/SQL定義の合意: リードの質の基準を統一
- データ連携の方法: どのデータを、どのシステムで共有するか
- 振り返りサイクル: 定期的なレビューのタイミングと内容
会議は月次程度で定期開催し、KPIの達成状況や課題を共有することで、部門間の連携を強化できます。
MA/SFA連携によるデータ一元化と共通ダッシュボード構築
部門間KPI統一を機能させるには、データの一元化と共通ダッシュボード構築が不可欠です。
ある企業では、MA導入とインサイドセールス立ち上げにより顧客の一元管理を実現し、Webからの反響が10倍、問い合わせからのアポイント獲得率が平均40%に達したという事例があります(ただし、これは特定企業の結果であり、すべての企業で同様の成果が保証されるものではありません)。
データ一元化のポイント:
- リードの流入元をMA/SFAで追跡: どのチャネルから来たリードが受注に至るかを可視化
- MQL/SQL認定のステータスを共有: マーケと営業が同じデータベースでリードのステータスを確認
- 商談・受注情報をマーケにフィードバック: 受注に至ったリードの特徴をマーケ施策に反映
複数KPIを一元管理するダッシュボード設計
BIツールを活用して複数KPIを一元管理することで、部門間で共通の認識を持つことができます。
ダッシュボード設計のポイント:
- 全社KGIを最上位に配置: 売上・利益など経営目標を常に見える位置に
- 部門別KPIを並列表示: マーケ・営業それぞれのKPI達成状況を比較可能に
- ファネル全体を可視化: リード→MQL→SQL→商談→受注の流れを一目で把握
- チャネル別・期間別で切り替え可能に: 分析の粒度を柔軟に変更できる設計
共通ダッシュボードがあることで、週次・月次の振り返り会議でも同じデータを見ながら議論でき、部門間の認識ズレを防ぐことができます。
部門間KPI統一を成功させるために
本記事では、部門間KPI統一の進め方について解説しました。
重要なポイントを振り返ります。
- KPIツリーで全社と部門を紐づける: KGIを頂点に、各部門のKPIを因果関係で接続
- MQL/SQL定義を部門間で合意する: リードの質に対する認識ズレを防ぐ
- 引き渡し基準を明文化する: 属性・行動・スコアの条件を明確に
- 部門横断の合意形成会議を定期開催する: 定義・基準の合意と振り返りを継続
- データ一元化と共通ダッシュボードを構築する: MA/SFA連携で同じデータを見る仕組みを作る
「定義を合意すれば部門連携ができる」という考え方は誤りです。部門間KPI統一は、指標の定義を揃えるだけでなく、MA/SFA連携によるデータ一元化と共通ダッシュボード構築まで実装することで初めて機能します。
チェックリストを活用して、自社の状況を点検し、できていない項目から着手してみてください。
