データ連携「ツール導入」で終わっていませんか
データ連携の成功事例とは何か。データ連携の成功事例は、ツール導入だけでなく、MA/SFA設定から実装・運用定着までの一気通貫支援により実現します。
MA/SFAツールを導入したものの、外部システムとのデータ連携ができておらず、手動でのデータ入力・転記作業が残っている——そんな課題を抱えていませんか。過去にデータ連携ツールを導入したが、実装・設定が不十分で運用定着せず、結局手作業に戻ってしまった経験がある企業も少なくありません。
DX動向2025(IPA)によると、日本企業の「経営層発信・奨励」回答率は米国・ドイツを上回るものの、「成功事例評価制度」導入率は相対的に低いと報告されています。つまり、経営層のDX推進意欲は高いにもかかわらず、実行フェーズで成果を出すための仕組みが不足している企業が多いのです。
この記事で分かること
- データ連携で解決できる代表的な課題(データ分散、手作業、二重入力等)
- 具体的な成功事例と成果のポイント
- データ連携の主な方法(EAI・ETL・API連携)とツール選定の考え方
- MA/SFAデータ連携の実装と運用定着のポイント
- データ連携プロジェクトを成功に導くチェックリスト
データ連携で解決できる代表的な課題
データ連携は、部門やシステムごとに分断されたデータを統合し、組織横断での活用を可能にする取り組みです。
データサイロとは、部門やシステムごとにデータが分断・孤立し、組織横断での活用が困難な状態を指します。MA/SFA導入済み企業でも、外部システム(チャット、ERP、Webフォーム等)とのデータ連携ができていなければ、データサイロの状態に陥っている可能性があります。
データ連携で解決できる代表的な課題には、以下のようなものがあります。
- データ分散: 営業・マーケ・カスタマーサポートでそれぞれ別のシステムを使い、顧客情報が分散している
- 手作業・二重入力: 異なるシステム間でデータを転記する作業が発生し、工数がかかっている
- リアルタイム性の欠如: データ更新が遅れ、タイムリーな意思決定ができない
- 分析精度の低下: データが分断されているため、全体像を把握した分析ができない
MA/SFA間のデータ分断と手作業の問題
MA/SFA導入済み企業が抱える典型的な課題は、ツール間のデータ連携不足です。
「ツールを導入すればデータ連携が自動化される」という考えは誤りです。実際には、運用設計やKPI連携まで含めた設計がなければ、ツールを導入しても手作業は残り続けます。
よくある問題として、MAで獲得したリード情報をSFAに手動で転記している、SFAの商談結果をMAに反映できていない、顧客のWeb行動データと商談データが紐付いていない、といったケースが挙げられます。これらの問題を解決するには、ツール導入だけでなく、データの流れを設計し、運用ルールを整備することが不可欠です。
データ連携の成功事例から学ぶ成果のポイント
データ連携プロジェクトを成功させた企業では、どのような成果が出ているのでしょうか。具体的な事例を見ていきます。
中小企業白書(2025年版)によると、DXデータ連携を導入した企業では、社員1人当たり売上高が8.6%増加(2017→2021年比較)、労働時間が15.9%減少、不良率が97%減少という成果が報告されています(ただし、これは回答企業限定のサンプル調査であり、全業界平均ではない点に留意が必要です)。
成功事例に共通するポイントとして、以下が挙げられます。
- 明確な課題設定: 解決すべき課題を具体的に定義している
- 段階的な導入: 小規模なAPI連携から始め、段階的に統合範囲を拡大している
- 運用体制の整備: 人材育成・環境整備を並行して実施している
- 部門横断の連携: IT部門だけでなく、営業・マーケ部門を巻き込んでいる
中小製造業の共同DX開発事例
中小企業がデータ連携プロジェクトを成功させた事例を紹介します。
中小企業白書2025年版によると、中小製造業8社による共同DX開発事例では、データ連携により顧客社数が5倍(20社→100社超)、従業員数が2.3倍(13人→30人)に増加したと報告されています。
この事例のポイントは、複数の企業が共同で開発を行ったことです。単独では費用面で難しいプロジェクトも、同業他社との連携により実現できた好例です。中小企業でデータ連携を検討している場合、共同開発も選択肢として検討する価値があります。
データ統合プラットフォーム構築事例
大企業におけるデータ統合プラットフォーム構築の事例も見ていきます。
トリドールHDは、人流・GIS・顧客データを統合するプラットフォームを構築し、売上予測精度の向上、Web広告CTRの改善、スタッフシフトの最適化を実現しています。CDP(Customer Data Platform) とは、複数チャネルから顧客データを収集・統合し、一元管理するマーケティング基盤プラットフォームです。トリドールHDのようなデータ統合基盤は、CDPの考え方を活用した事例といえます。
静岡銀行は、りそなHD・ブレインパッドと連携し、顧客データ一元管理・営業DX推進基盤を構築しています(2024年度本格化)。この事例で特筆すべきは、人材育成・環境整備を並行して実施し、運用定着を実現している点です。ツール導入だけでなく、使いこなすための体制づくりにも投資したことが成功の鍵となっています。
データ連携の主な方法とツール選定の考え方
データ連携の方法は、大きく分けてEAI・ETL・API連携の3種類があります。自社の状況に合わせて適切な方法を選択することが重要です。
「大規模投資が必要」という認識は誤解です。既存のMA/SFAが提供するAPI連携機能を活用すれば、小規模な連携から段階的に拡張することが可能です。最初から全システムを統合しようとするのではなく、最も効果が高い部分から始めることが現実的なアプローチです。
【チェックリスト】データ連携プロジェクト成功チェックリスト
- 解決すべき課題を具体的に定義している
- 連携対象のシステム・データを洗い出している
- データの流れ(どこからどこへ、どのタイミングで)を設計している
- 連携方式(EAI/ETL/API)を選定している
- 必要なデータ項目とフォーマットを定義している
- データの整合性を保つルールを決めている
- エラー発生時の対応方法を定めている
- IT部門以外の関係部門(営業・マーケ等)を巻き込んでいる
- 運用担当者を決めている
- 運用ルール・マニュアルを作成している
- テスト計画を立てている
- 段階的な導入スケジュールを設定している
- 効果測定のKPIを設定している
- 定期的な振り返りの仕組みを用意している
- 人材育成・教育の計画を立てている
EAI・ETL・API連携の違いと使い分け
主要なデータ連携方式の特徴を比較します。
EAI(Enterprise Application Integration) とは、企業内の複数アプリケーション間でデータやプロセスを連携・統合するミドルウェア・ツールです。リアルタイム性が高く、複雑な業務プロセスの連携に適しています。
ETL(Extract Transform Load) とは、複数データソースからデータを抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)するデータ統合プロセスです。大量データのバッチ処理や、データウェアハウスへの連携に適しています。
API連携とは、Application Programming Interfaceを介してシステム間でリアルタイムにデータを交換する連携方式です。SaaSツール間の連携に広く使われており、比較的低コストで導入できるケースが多いです。
| 方式 | 特徴 | 適したケース |
|---|---|---|
| EAI | リアルタイム連携、プロセス統合 | 複雑な業務フロー連携 |
| ETL | バッチ処理、大量データ変換 | データウェアハウス構築 |
| API連携 | リアルタイム、SaaS間連携 | MA/SFA間のデータ同期 |
MA/SFA連携を検討している場合は、まずAPI連携から始め、必要に応じてEAIやETLを検討するアプローチが現実的です。
MA/SFAデータ連携の実装と運用定着のポイント
MA/SFAデータ連携を成功させるには、ツール導入だけでなく、実装から運用定着までを見据えた取り組みが必要です。
データ連携ツールを導入しただけで終わり、実装・設定が不十分で運用定着せず、結局手作業に戻ってしまう——これはよくある失敗パターンです。静岡銀行の事例でも示されているように、人材育成・環境整備を並行して実施することが運用定着の鍵となります。
「IT部門だけで完結できる」という考えも誤りです。営業・マーケ部門を巻き込んだ運用ルール策定が必要であり、データを入力・活用する現場の声を反映しなければ、定着は難しくなります。
【管理シート】MA/SFAデータ連携設計シート
連携元システム,連携先システム,データ項目,連携タイミング,連携方式,担当者,備考
MA,SFA,リード情報(会社名・担当者名・メール),リアルタイム,API,マーケ担当,スコア○○以上で自動連携
SFA,MA,商談ステータス,日次バッチ,API,営業企画,ステータス変更時に更新
Webフォーム,MA,問い合わせ情報,リアルタイム,Webhook,マーケ担当,即時リード登録
計算列の定義:
- 連携元システム: データの発生元となるシステム名
- 連携先システム: データを受け取るシステム名
- データ項目: 連携する具体的なデータ項目名
- 連携タイミング: リアルタイム/日次バッチ/週次バッチ等
- 連携方式: API/Webhook/CSV取込/手動等
- 担当者: 連携設定・運用の責任者
- 備考: 連携条件や注意事項
運用定着を実現する体制づくり
実装後の運用定着には、適切な体制づくりが欠かせません。
DX推進部署をハブとして、全社でデータ活用できる体制を構築することが成功の鍵です。特定の担当者だけがシステムを理解している状態では、その担当者がいなくなった途端に運用が止まってしまいます。
運用定着のために実施すべきことは以下のとおりです。
- 運用ルールの明文化: データ入力ルール、更新タイミング、エラー時の対応方法を文書化する
- 担当者への教育: システムの使い方だけでなく、なぜこのデータ連携が必要なのかを理解してもらう
- 定期的な振り返り: 週次・月次でデータ連携の状況を確認し、問題があれば改善する
- 成功体験の共有: データ連携により効率化できた事例を社内で共有し、活用意欲を高める
成功事例に学ぶデータ連携プロジェクトの進め方
本記事では、データ連携の成功事例から学ぶ成果のポイントと、実装・運用定着までのステップを解説しました。
要点を整理すると、以下のようになります。
- 課題を明確に: データサイロや手作業の問題を具体的に定義する
- 段階的に導入: 小規模なAPI連携から始め、効果を確認しながら拡大する
- 体制を整備: IT部門だけでなく、営業・マーケ部門を巻き込む
- 運用定着を重視: 人材育成・環境整備を並行して実施する
中小企業白書(2025年版)の事例では、DXデータ連携導入企業で社員1人当たり売上高が8.6%増加、労働時間が15.9%減少、不良率が97%減少という成果が報告されています(特定事例の成果であり、全業界平均ではありません)。適切な設計と運用体制があれば、データ連携は確かな成果をもたらす可能性があります。
まずは本記事のチェックリストを活用し、自社の現状を確認することから始めてみてください。
データ連携の成功事例は、ツール導入だけでなく、MA/SFA設定から実装・運用定着までの一気通貫支援により実現します。ツール選定で終わるのではなく、実装から運用定着まで見据えたプロジェクト推進が、成功への道筋です。
