10人営業組織が直面する「属人化」という壁
営業チームの属人化から脱却したいなら、10人営業組織は属人的なマネジメントから脱却し、業務プロセスの標準化とデータ可視化を同時に進めることで、スケーラブルな営業体制に移行できます。
10人前後の営業組織を率いる営業部長やIS責任者の多くが、「エース営業に依存してなんとか回している」「気合いと根性でカバーしている」という状況に悩んでいます。この属人的な運営を続けていては、組織の拡大も再現性のある成果創出も困難です。
この記事で分かること
- 10人営業組織に適した役割設計と権限委譲の考え方
- 営業プロセスを標準化し、属人化を解消する具体的手順
- MA/SFAを活用したデータ可視化の実践方法
- 仕組み化の進捗を確認できるチェックリスト
10人営業組織に適した役割設計と権限委譲
10人営業組織では、欧米型の完全分業モデルをそのまま適用するのではなく、日本企業の特性を踏まえた役割設計が重要です。
日本企業の営業部門は「営業」「営業企画」「営業推進」を内包した統合型組織が多く、欧米のようにSalesとMarketingが完全分業されていない傾向があります。この特性を無視して分業を進めると、オーバーヘッドが大きくなりすぎるリスクがあります。
10人規模の営業組織では、以下のような構成が現実的です。
- フィールドセールス:5〜6人(既存顧客対応+新規商談)
- インサイドセールス:1〜2人(リード育成・アポ獲得)
- 営業企画:1人(KPI管理・仕組み化推進)
- マーケティング:1〜2人(リード獲得施策)
ポッド型チームとは、マーケ・インサイド・フィールド・CS機能を1つのチームに混成配置する組織設計です。2ポッド×5人構成にすることで、少人数でも各機能を混成配置し、リードから商談までの流れをチーム内で完結させることができます。
MQL/SQLは、リードの成熟度を分類する指標です。MQL(Marketing Qualified Lead)はマーケ認定リード、SQL(Sales Qualified Lead)は営業認定リードを指し、この分類を共有することで引き渡しタイミングを標準化できます。
プレイヤー型からマネジメント型への移行ステップ
プレイヤー社長やエース営業がマネジメントへ移行するには、段階的な権限委譲が必要です。
移行のステップは以下の通りです。
- 商談の引き継ぎ:まず既存顧客の一部を他メンバーに引き継ぐ
- 意思決定の委譲:見積もり承認や値引き判断の権限を段階的に移譲
- 情報共有の仕組み化:週次ミーティングや日報で情報を可視化
- マネジメント時間の確保:プレイング比率を徐々に下げる
完全分業の米国型モデルを10人規模に適用すると、各ポジションの人数が薄くなりすぎて機能しないケースがあります。日本企業では、一人が複数の役割を柔軟に担う設計が現実的です。
営業プロセスの標準化で属人化を解消する
営業プロセスを標準化しないまま運営を続けると、属人化が固定化し、拡大も改善もできなくなります。
よくある失敗パターン:「エース営業の個人力に依存してなんとか回す」「気合いと根性でカバーする」といった属人的な運営を続け、業務プロセスの標準化やツール活用を後回しにしてしまうパターンでは、成果が出ません。
セールス&マーケ領域で5つ以上のITツールを利用している企業でも、70%以上がExcelやスプレッドシートで投資対効果を計測しているという調査結果があります。ツールを導入しても、プロセス設計が不十分では効果を発揮できません。
SFA(セールスフォースオートメーション) とは、営業活動を支援・管理するツールです。商談管理、顧客情報管理、売上予測などを自動化し、属人化を防ぐ基盤となります。
【比較表】営業プロセス標準化の段階別実施項目表
| 段階 | 実施項目 | 成果物 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 商談ステージの定義 | ステージ定義書 | 営業企画 |
| 第1段階 | 勝敗分析の実施 | 勝敗パターン一覧 | 営業企画 |
| 第2段階 | KPIの設定・共有 | KPIダッシュボード | 営業企画 |
| 第2段階 | 進捗共有ルールの策定 | 週次MTGアジェンダ | マネージャー |
| 第3段階 | SFA/CRMへのデータ入力ルール化 | 入力マニュアル | 営業企画 |
| 第3段階 | 商談スクリプトの整備 | トークスクリプト | フィールド |
| 第4段階 | ダッシュボード設計 | リアルタイム進捗画面 | 営業企画 |
| 第4段階 | 改善サイクルの運用開始 | 月次振り返りMTG | マネージャー |
目標管理とKPI設計の具体的な進め方
KPIとデータ構造を最初に決めてからツール設計に進むことが重要です。逆の順序だと、ツールに合わせた運用になり、効果が限定的になります。
KPI設計のポイントは以下の通りです。
- 行動KPI:架電数、商談数、提案数など、行動量を測定
- 成果KPI:受注数、受注金額、商談化率など、成果を測定
- 品質KPI:顧客満足度、リピート率など、品質を測定
行動ログとスコアを組み合わせることで、案件の見込み度を標準化できます。どの営業でも同じ基準でフォローできる仕組みを作ることが、属人化解消の鍵です。
データ可視化で再現性のある営業組織を作る
MA(マーケティングオートメーション) とは、マーケティング活動を自動化・効率化するツールです。リード獲得から育成、スコアリングまでを管理します。
国内企業626,003社のうちMA導入企業は9,444社(導入率1.5%)、上場企業3,850社中562社(14.6%)が導入済みというデータがあります(2023年調査)。まだ導入企業は限られていますが、BtoBマーケ・営業DXにおいてMA/SFA連携によるデータ可視化は標準化しつつあります。
ただし、ツール導入だけでは属人化は解消されません。プロセス設計とダッシュボード設計まで実施して初めて効果が出ます。
RevOps(Revenue Operations) とは、マーケ・営業・CSを横断してデータと業務プロセスを統合管理する役割・組織です。10人規模では専任を置くのは難しいですが、営業企画がこの機能を兼務する設計が現実的です。
データ可視化で押さえるべきポイントは以下の通りです。
- 商談パイプライン:ステージ別の案件数・金額を常時可視化
- 行動量ダッシュボード:架電・商談・提案の進捗を日次で確認
- コンバージョン率:MQL→SQL→受注の各転換率をモニタリング
10人営業組織の仕組み化チェックリスト
仕組み化の進捗を確認するためのチェックリストを活用してください。役割・プロセス・可視化の3軸で構成しています。
主要取引先1社への売上依存度が50%超の企業が36.2%、30%超〜50%が21.5%、10%超〜30%が33.1%存在するという調査結果があります(製造業中心のデータであり、IT・SaaS業界には直接適用できない可能性があります)。取引依存度が高い場合は、新規開拓プロセスの強化が特に重要です。
【チェックリスト】10人営業組織の仕組み化チェックリスト
- 各メンバーの役割と責任範囲が明文化されている
- マネージャーがマネジメントに50%以上の時間を割いている
- インサイドとフィールドの役割分担が明確になっている
- 権限委譲のルール(値引き承認、契約判断等)が決まっている
- 商談ステージの定義が全員で共有されている
- KPIが設定され、週次で進捗を確認している
- 商談情報がSFA/CRMに入力されている
- 進捗共有のミーティングが定期開催されている
- 商談スクリプトやトーク例が整備されている
- 新人オンボーディングのプログラムがある
- パイプラインダッシュボードで案件状況が可視化されている
- 行動量(架電数・商談数等)が日次で把握できる
- MQL→SQL→受注の転換率をモニタリングしている
- 月次で振り返りと改善を実施している
- 特定顧客への売上依存度を把握し、新規開拓を推進している
まとめ|仕組み化で10人営業組織をスケーラブルにする
10人営業組織を成長させるためのポイントを整理します。
- 役割設計:日本企業の特性を踏まえ、完全分業ではなく柔軟な役割分担を設計
- プロセス標準化:商談ステージ定義、KPI設計、進捗共有ルールの整備
- データ可視化:MA/SFA連携によるパイプライン・行動量・転換率のモニタリング
- 継続改善:チェックリストを活用した定期的な振り返りと改善
10人営業組織は、属人的なマネジメントから脱却し、業務プロセスの標準化とデータ可視化を同時に進めることで、スケーラブルな営業体制に移行できます。
まずは本記事のチェックリストで現状を確認し、できていない項目から着手してみてください。仕組み化を進めることで、エース依存から脱却し、誰でも一定の成果を出せる組織へと進化させることができます。
