顧客の手間を減らして継続率を高めたいけれど、どうすればいいか分からない…
B2B SaaS企業のカスタマーサクセス担当者やマネージャーの多くが、「顧客体験を改善したい」「解約率を低減したい」といった課題を抱えています。しかし、「エフォートレス・カスタマーサクセスとは何か?」「顧客の手間をどう減らせばいいのか?」「具体的にどんな施策を実施すればいいのか?」といった疑問は尽きません。
この記事では、エフォートレス・カスタマーサクセスの概念と実践方法を、実務視点で詳しく解説します。
この記事のポイント:
- エフォートレスは顧客が最小限の労力で最大限の成果を得られる体験を指す
- CES(カスタマーエフォートスコア)が高い顧客の96%が批判者になる
- セルフサービス強化(FAQ整備、ナレッジベース、詳細マニュアル)が顧客の自己解決を促進
- 2025年、カスタマーサクセス導入企業の約80%でAI導入・活用が進む
- AI活用企業の74.5%が効果を実感、6割以上が新規売上増加で業績向上
1. エフォートレス・カスタマーサクセスとは?
(1) エフォートレス(Effortless)の定義
エフォートレス(Effortless)は、顧客が最小限の労力で最大限の成果を得られる体験を指します。
(出典: Helpfeel「エフォートレスとは何か?顧客の負担を減らすCXの新しい形」https://www.helpfeel.com/blog/effortless-customer-cx-is)
カスタマーサクセスにおけるエフォートレスとは、顧客がサービスを活用する際の「手間」「労力」「時間」を最小化し、スムーズに成功体験を実現できる状態を作ることです。
エフォートレスの具体例:
- FAQ・ナレッジベースで自己解決できる
- 初期設定が簡単で、すぐに使い始められる
- 問い合わせなしで問題が解決する
- 使いたい機能がすぐに見つかる
(2) 「The Effortless Experience」の概念
「The Effortless Experience(邦題:エフォートレス思考)」は、顧客ロイヤルティ向上には顧客の努力を減らすことが重要であると提唱した書籍です。
(出典: Support Times「顧客体験におけるエフォートレスの重要性」https://www.supporttimes.com/entry/2019/11/01/173505)
The Effortless Experienceの主張:
- 顧客は優れたサービスよりも「努力を要しなかったこと」に満足する
- 顧客の努力を減らすことが、顧客ロイヤルティ向上の鍵
- カスタマーサポートの目的は「問題を解決すること」ではなく「顧客の努力を減らすこと」
この概念は、カスタマーサクセスにも応用でき、顧客の手間を減らすことで継続率を高められます。
(3) カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
エフォートレスは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの両方に重要です。
| 項目 | カスタマーサポート | カスタマーサクセス |
|---|---|---|
| 対応方法 | 受動的(問い合わせに対応) | 能動的(問題が起きる前に支援) |
| エフォートレスの実現方法 | FAQ整備、問い合わせ対応の効率化 | セルフサービス強化、プロアクティブサポート |
| 目的 | 問題解決 | 顧客の成功体験を提供 |
| KPI | CES(カスタマーエフォートスコア)、解決時間 | CES、チャーンレート、LTV |
カスタマーサクセスでは、問題が起きる前にエフォートレス体験を提供することで、顧客の手間を減らし、継続率を高めます。
2. CES(カスタマーエフォートスコア)と測定方法
(1) CESとは何か
CES(Customer Effort Score:カスタマーエフォートスコア)は、顧客が問題解決に要する労力を測る指標です。
(出典: tayori「CES(カスタマーエフォートスコア)とは?重要性と改善するための3つの方法」https://tayori.com/blog/customer-effort-score/)
CESの測定方法:
- 顧客に「問題を解決するためにどれだけの努力が必要でしたか?」と質問
- 7段階評価(1: 非常に簡単、7: 非常に難しい)で回答してもらう
- CESが低い(1〜3)ほど、顧客の努力が少なく、良い体験
(2) CESの測定方法
CESの具体的な測定方法は以下の通りです:
質問例:
- 「今回のサポート体験はどうでしたか?」
- 「問題を解決するためにどれだけの努力が必要でしたか?」
- 「サービスを使い始めるのはどれだけ簡単でしたか?」
評価スケール:
- 7段階評価: 1(非常に簡単)〜 7(非常に難しい)
- 5段階評価: 1(非常に簡単)〜 5(非常に難しい)
CESの計算:
- CES = 「簡単」と回答した顧客の割合(1〜3点の割合)
- 高いCES(簡単と回答した顧客が多い)ほど、良い体験
(3) CESと顧客ロイヤルティの関係(CESが高い顧客の96%が批判者に)
CESと顧客ロイヤルティには強い関係があります。
(出典: tayori「CES(カスタマーエフォートスコア)とは?重要性と改善するための3つの方法」https://tayori.com/blog/customer-effort-score/)
CESと顧客ロイヤルティの関係:
- CESが高い(努力が多い)サービス体験をした顧客の96%が批判者になる
- CESが低い(努力が少ない)サービス体験をした顧客は、推奨者になる可能性が高い
- CESは従来のCSAT(顧客満足度)よりも顧客ロイヤルティとの関係が強い
顧客の努力を減らすことが、顧客ロイヤルティ向上と解約率低減に直結します。
3. エフォートレス体験を実現する具体的施策
(1) セルフサービス強化(FAQ整備、ナレッジベース、詳細マニュアル)
セルフサービス強化は、顧客が自己解決できる環境を確立することで、CESを下げる効果的な施策です。
(出典: OPENPAGE「【実用的】カスタマーサクセスサイトの構築をステップ別で解説」https://www.openpage.jp/blog/cs-website)
セルフサービス強化の具体例:
- FAQ整備: よくある質問を網羅的にまとめ、検索しやすくする
- ナレッジベース: 機能別・用途別に詳細な使い方を解説
- 詳細マニュアル: 初期設定から高度な活用方法まで段階的に解説
- 動画チュートリアル: 実際の操作画面を見せながら使い方を解説
- チャットボット: 簡単な質問はAIが自動回答
顧客が自己解決できる環境を確立することで、問い合わせ対応コストを削減し、顧客の手間も減らせます。
(2) WebサイトのFAQページ改善(導線明確化)
WebサイトのFAQページを改善し、分かりやすい場所に配置してトップページからの導線を明確にすることが重要です。
(出典: Helpfeel「エフォートレスとは何か?顧客の負担を減らすCXの新しい形」https://www.helpfeel.com/blog/effortless-customer-cx-is)
FAQページ改善のポイント:
- トップページから1クリックでFAQページにアクセスできる
- 検索機能を充実(キーワード検索、カテゴリ絞り込み)
- よく検索されるキーワードを分析し、FAQを追加
- 関連FAQを自動表示(「この質問を見た人はこんな質問も見ています」)
FAQページの改善により、顧客が問い合わせ前に自己解決できる確率が高まります。
(3) プロアクティブサポート(問題発生前の先回り支援)
プロアクティブサポートは、問題が発生する前に先回りして支援することで、顧客の手間を減らします。
プロアクティブサポートの具体例:
- システムメンテナンス前に事前通知(「明日の深夜2時〜4時にメンテナンスを実施します」)
- よくあるトラブルの予防策を事前に案内(「この設定をしておくとエラーが起きにくいです」)
- 新機能のリリース時に使い方ガイドを自動配信
- ヘルススコアが低下した顧客に早期アプローチ(「最近ログインが減っていますが、何かお困りですか?」)
プロアクティブサポートにより、顧客が問題に直面する前に解決策を提供でき、CESを下げられます。
(4) オンボーディング最適化
オンボーディング最適化は、新規顧客がサービスを使い始めるまでの手間を最小化します。
オンボーディング最適化の具体例:
- 初期設定の簡素化: 必要最低限の設定だけで使い始められる
- インタラクティブなチュートリアル: 実際に操作しながら学べる
- テンプレート提供: ゼロから設定せず、テンプレートを選ぶだけで開始
- 進捗バーの表示: 「あと3ステップで完了」と進捗を可視化
- オンボーディング完了の報酬: 完了後に「おめでとうございます!」とポジティブなフィードバック
オンボーディングの手間を減らすことで、タイムトゥバリュー(顧客が価値を感じるまでの時間)を短縮できます。
4. カスタマーサクセスツールと業務効率化
(1) 4タイプのツール(コミュニティ構築、顧客状態把握、利用ガイド、問い合わせ効率化)
カスタマーサクセスツールは、4タイプに分類されます。
(出典: ASPIC「カスタマーサクセスツールおすすめ15選。タイプ別の機能や効果も」https://www.aspicjapan.org/asu/article/9506)
1. コミュニティ構築型:
- ユーザーフォーラム、Q&A、イベント管理
- 例: Commune、inSided
2. 顧客状態把握型:
- ヘルススコア管理、チャーン予測
- 例: Gainsight、ChurnZero
3. 利用ガイド型:
- オンボーディング支援、チュートリアル作成
- 例: Appcues、WalkMe
4. 問い合わせ効率化型:
- FAQ管理、チャットボット、ヘルプセンター
- 例: Zendesk、Intercom
これらのツールを組み合わせることで、顧客の手間を減らし、カスタマーサクセスチームの業務を効率化できます。
(2) 工数削減・解約率低減・LTV増加の効果
カスタマーサクセスツールの導入により、以下の効果が期待できます:
工数削減:
- 自動メール配信により、手動での連絡作業を削減
- FAQ・ナレッジベースにより、問い合わせ対応工数を削減
- ヘルススコア自動計算により、顧客状態の把握工数を削減
解約率低減:
- ヘルススコアでリスク顧客を早期発見
- プロアクティブサポートで問題発生前に支援
- セルフサービス強化で顧客の自己解決を促進
LTV増加:
- オンボーディング最適化により早期の価値実感
- アダプション支援により継続利用を促進
- エクスパンション活動によりアップセル・クロスセル
(3) AIやChatGPTの自然言語処理技術の活用
2025年、カスタマーサクセス導入企業の約80%でAI導入・活用が進んでいます。
(出典: VirtualEx「【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(2)】『AI活用』74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感」https://www.virtualex.co.jp/news/2025/03/2025CS-research-2.html)
AI活用の具体例:
- チャットボット: 簡単な質問はAIが自動回答(24時間365日対応)
- FAQ自動生成: 問い合わせ内容を分析し、FAQを自動作成
- ヘルススコア予測: AIが顧客の利用パターンから解約リスクを予測
- パーソナライズ提案: 顧客の利用状況に応じて最適なコンテンツを自動提案
- 自然言語検索: 顧客が自然な言葉で検索しても、関連FAQを表示
AI活用企業の74.5%が効果を実感、6割以上が新規売上増加で業績向上を達成しています。
ただし、AI導入だけでは効果が出ず、適切な運用体制とスキルが必要です。
5. 2025年のカスタマーサクセス市場動向とAI活用
(1) AI導入企業の約80%で効果実感(74.5%)
2025年の調査では、カスタマーサクセス導入企業の約80%でAI導入・活用が進み、74.5%が効果を実感しています。
(出典: VirtualEx「【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(2)】『AI活用』74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感」https://www.virtualex.co.jp/news/2025/03/2025CS-research-2.html)
AI活用の効果:
- 問い合わせ対応の自動化により、工数削減
- チャットボットにより、24時間365日対応が可能
- ヘルススコア予測により、解約リスクの早期発見
- パーソナライズ提案により、顧客満足度向上
AI活用は、エフォートレス体験を実現する重要な施策です。
(2) 6割以上が新規売上増加で業績向上
AI活用企業の6割以上が「新規売上増加」で業績向上を達成しています。
業績向上の理由:
- 顧客の自己解決率向上により、カスタマーサクセスチームがエクスパンション活動に注力できる
- ヘルススコア予測により、アップセル・クロスセルのタイミングを最適化
- AI活用により、顧客体験が向上し、口コミ・紹介が増加
AI活用は、コスト削減だけでなく、売上増加にも貢献します。
(3) 成功企業の46%が外部専門家を活用
カスタマーサクセス成功企業の46%が外部専門家を活用しています。
(出典: VirtualEx「【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(5)】カスタマーサクセス成功企業46%が『外部専門家活用』」https://www.virtualex.co.jp/news/2025/03/2025CS-research-5.html)
外部専門家活用のメリット:
- 早期の課題認識と対策が可能
- 他社の成功事例を参考に、効率的に立ち上げ
- 自社にノウハウがなくても、専門家のサポートで成功確率を高められる
外部専門家を活用することで、カスタマーサクセスの立ち上げ・運用をスムーズに進められます。
(4) 認知度の課題(経営層の78.6%が「聞いたことがない」)
カスタマーサクセスの認知度には課題があり、経営層の78.6%が「聞いたことがない」と回答しています。
(出典: VirtualEx「【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(1)】カスタマーサクセス、経営層の78.6%が『聞いたことがない』」https://www.virtualex.co.jp/news/2025/03/2025CS-research-1.html)
認知度向上のための取り組み:
- カスタマーサクセスの成果を定量的に示す(チャーンレート低減、LTV向上)
- 経営層向けのセミナー・勉強会を開催
- 他社の成功事例を共有し、投資対効果を説明
カスタマーサクセスの認知度が低いことは課題ですが、成果を示すことで社内理解を促進できます。
6. まとめ:エフォートレスで継続率を高めるために
エフォートレスで継続率を高めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です:
1. エフォートレス体験の理解:
- 顧客が最小限の労力で最大限の成果を得られる体験を提供
- 「The Effortless Experience」の概念を応用
- CES(カスタマーエフォートスコア)を定期的に測定
2. セルフサービス強化とプロアクティブサポート:
- FAQ整備、ナレッジベース、詳細マニュアルで自己解決を促進
- WebサイトのFAQページ改善(導線明確化)
- プロアクティブサポート(問題発生前の先回り支援)
- オンボーディング最適化(初期設定の簡素化)
3. カスタマーサクセスツールとAI活用:
- 4タイプのツール(コミュニティ構築、顧客状態把握、利用ガイド、問い合わせ効率化)を組み合わせる
- AI活用企業の74.5%が効果を実感、6割以上が新規売上増加
- チャットボット、FAQ自動生成、ヘルススコア予測などを活用
4. 2025年のトレンドと成功のポイント:
- カスタマーサクセス導入企業の約80%でAI導入・活用が進む
- 成功企業の46%が外部専門家を活用
- 認知度の課題があるため、社内理解の促進が重要
エフォートレス・カスタマーサクセスは、顧客の手間を減らすことで継続率を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化する効果的なアプローチです。CESが高い(努力が多い)顧客の96%が批判者になるため、顧客の努力を減らすことが顧客ロイヤルティ向上の鍵となります。
まずはCESを測定し、顧客がどこで手間を感じているかを把握しましょう。セルフサービス強化、プロアクティブサポート、オンボーディング最適化により、顧客の手間を減らし、エフォートレス体験を実現できます。
次のアクション:
- CES(カスタマーエフォートスコア)を測定する
- FAQ・ナレッジベースを整備し、セルフサービスを強化する
- WebサイトのFAQページを改善(導線明確化)
- プロアクティブサポートの施策を設計する
- オンボーディングプロセスを見直し、手間を減らす
- AI活用(チャットボット、FAQ自動生成)を検討する
- 定期的にCESを測定し、継続的に改善する
エフォートレス・カスタマーサクセスで、顧客の手間を減らし、継続率とLTVを最大化しましょう。
