カスタマーサクセスとは何か|定義と注目される背景
「カスタマーサクセス」という言葉を聞くようになったものの、「具体的に何をするのか分からない」「カスタマーサポートと何が違うのか」と疑問に感じていませんか?
カスタマーサクセスは、SaaS・サブスクリプション型ビジネスの普及とともに急速に広まった概念で、顧客が製品・サービスを最大限に活用し、ビジネス成功を実現できるよう能動的に支援する活動です。バーチャレクス・コンサルティングの2024年調査では、カスタマーサクセスに取り組む企業の61.0%が効果を実感しており、過去3年間で最高値を記録しています。
この記事では、カスタマーサクセスの定義、カスタマーサポートとの違い、具体的な業務内容、主要KPI、組織構築のポイントを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- カスタマーサクセスは顧客の成功を能動的に支援する活動で、SaaS・サブスクリプション型ビジネスで不可欠
- カスタマーサポートは受動的、カスタマーサクセスは能動的。前者はコストセンター、後者はレベニュードライバー
- 主な業務はオンボーディング、タッチモデル構築、アップセル・クロスセル
- 主要KPIはチャーンレート(解約率)、LTV(顧客生涯価値)、NPS
- 2024年調査では導入企業の61.0%が効果実感、57.4%が売上高改善を報告
カスタマーサクセスとは何か|定義と注目される背景
カスタマーサクセスは、SaaS・サブスクリプション型ビジネスの成長とともに重要性が高まっています。
カスタマーサクセスの定義(能動的な顧客成功支援)
**カスタマーサクセス(Customer Success / CS)**とは、顧客が製品・サービスを最大限に活用し、ビジネス成功を実現できるよう能動的に支援する活動です。
定義の要点:
- 能動的な支援: 顧客が問題を抱える前に先回りして対応
- 成功体験の実現: 顧客が期待する成果(ROI、業務効率化等)を達成できるよう伴走
- 長期的な関係構築: 契約更新・アップセル・クロスセルを含む全プロセスをカバー
日立ソリューションズによると、「商品・サービスを購入した顧客へ能動的に関わり続け『顧客の成功体験』を実現させる取り組み」と定義されています。
SaaS・サブスクリプション型ビジネスの普及
カスタマーサクセスが注目される背景には、ビジネスモデルの変化があります。
SaaS・サブスクリプション型ビジネスの特徴:
- 継続課金型: 顧客が契約を継続することで収益が積み上がる
- 初期費用の回収: 導入時の営業コストやシステム構築費用を、継続課金で回収
- 解約のリスク: 顧客が価値を感じなければ即座に解約可能
従来の買い切り型ビジネスとは異なり、サブスクリプション型では「売って終わり」ではなく、「継続利用してもらう」ことが収益の鍵となります。そのため、顧客の成功を支援するカスタマーサクセスが不可欠になりました。
2024年の市場動向(61.0%が効果実感)
バーチャレクス・コンサルティングの「2024年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」によると、カスタマーサクセスに取り組む企業の状況は以下の通りです:
主な調査結果:
- 61.0%が効果を実感(過去3年間で最高値)
- SaaS/サブスク業界では認知度80%超、66.7%が具体的な成果を実感
- 57.4%が売上高改善、52.9%が利益率改善を報告
- 60%以上が新規顧客数・新規売上の増加を実感
これらのデータから、カスタマーサクセスがビジネス成果に直結する重要な活動であることが分かります。
カスタマーサクセスの基本概念と役割
カスタマーサクセスの役割と組織内での位置づけを理解しましょう。
顧客が成功体験を得るための先回り支援
カスタマーサクセスの本質は、「顧客が期待する成果を実現できるよう先回りして支援する」ことです。
先回り支援の例:
- 製品の利用が停滞している顧客に対して、活用方法を提案
- 契約更新のタイミングより前に、導入効果を可視化してROIを示す
- 新機能リリース時に、顧客の課題解決に役立つ機能を紹介
顧客が困ってから対応するのではなく、問題が起きる前に能動的にアプローチすることで、顧客満足度と継続率を高めます。
解約防止から契約更新・アップセルまで
カスタマーサクセスは、オンボーディング(導入・活用支援)から契約更新、アップセル・クロスセルまでを一貫してカバーします。
カスタマーサクセスのプロセス:
- オンボーディング: 製品導入時の初期設定・トレーニング
- 活用支援: 定期的なチェックイン、活用方法の提案
- 解約防止: 利用が停滞している顧客への早期介入
- 契約更新: 導入効果を可視化し、更新を促進
- アップセル・クロスセル: より高価格プランや関連製品の提案
このプロセス全体を通じて、顧客が成功体験を得られるよう伴走します。
レベニュードライバーとしての位置づけ
カスタマーサクセスは、単なる顧客対応部門ではなく、**レベニュードライバー(収益を生み出す組織)**として位置づけられます。
レベニュードライバーとしての役割:
- 解約率を下げ、LTV(顧客生涯価値)を最大化
- アップセル・クロスセルにより、既存顧客からの収益を拡大
- 顧客満足度を高め、紹介・口コミで新規顧客を獲得
これに対し、カスタマーサポートは**コストセンター(収益を生まず、コストのみが発生する組織)**として位置づけられるのが一般的です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、しばしば混同されますが、目的・アプローチ・KPIが異なります。
能動的 vs 受動的(アプローチの違い)
最大の違いは、顧客へのアプローチ方法です。
| 項目 | カスタマーサクセス | カスタマーサポート |
|---|---|---|
| アプローチ | 能動的(先回り支援) | 受動的(問い合わせ対応) |
| タイミング | 顧客が困る前に介入 | 顧客から問い合わせがあったら対応 |
| 目的 | 顧客の成功体験実現 | 問題解決・疑問の解消 |
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対して受動的に対応し、問題を解決します。一方、カスタマーサクセスは、顧客が問題を抱える前に先回りして支援します。
レベニュードライバー vs コストセンター(組織内位置づけ)
組織内での役割と収益への貢献度も異なります。
組織内位置づけの違い:
- カスタマーサクセス: レベニュードライバー(収益を生み出す)
- 解約防止、アップセル・クロスセルで収益を拡大
- カスタマーサポート: コストセンター(コストのみ発生)
- 顧客対応コスト(人件費・システム費用)が主
この違いにより、予算配分や人員配置の考え方も変わります。
KPIの違い(チャーンレート・LTV vs 対応件数・解決率)
両者で追うべきKPIが異なります。
KPIの違い:
| KPI | カスタマーサクセス | カスタマーサポート |
|---|---|---|
| 主要指標 | チャーンレート(解約率)、LTV(顧客生涯価値)、NPS | 対応件数、解決率、平均対応時間 |
| 目標 | 解約率を下げ、LTVを最大化 | 対応スピードと解決品質を向上 |
カスタマーサクセスは「顧客がどれだけ継続利用し、収益を生み出すか」を重視し、カスタマーサポートは「問い合わせにどれだけ速く正確に対応できるか」を重視します。
混同のリスク
カスタマーサクセスとカスタマーサポートを混同すると、以下のリスクがあります(マイナビニュース):
混同のリスク:
- 組織設計を誤り、カスタマーサクセスが受動的な対応に終始する
- KPI設定を誤り、成果を測定できない
- 収益拡大の機会を逃す(アップセル・クロスセルの機会損失)
両者の違いを明確に理解し、それぞれの役割を正しく設計することが重要です。
カスタマーサクセスの具体的な業務内容と主要KPI
カスタマーサクセスの実務と成果指標を見ていきます。
オンボーディング(導入・活用支援)
オンボーディングは、顧客が製品・サービスの利用を開始する際の導入・活用支援です。
オンボーディングの主な活動:
- 初期設定のサポート
- トレーニング・ワークショップの実施
- 利用開始までの伴走
オンボーディングの質が、その後の継続率に大きく影響します。SmartHRなど成功企業は、オンボーディングに注力しています。
タッチモデルの構築(顧客接点設計)
タッチモデルは、顧客接点を設計し、適切なタイミング・方法で顧客と関わる仕組みです。
タッチモデルの例:
- 利用開始1週間後: 初回チェックイン(活用状況確認)
- 利用開始1ヶ月後: 成果測定・ROI可視化
- 契約更新3ヶ月前: 更新の提案
バーチャレクス・コンサルティングの調査によると、タッチモデルを構築している企業の44.3%が効果を実感しており、未構築企業(41.8%)を上回ります。
アップセル・クロスセル
カスタマーサクセスは、既存顧客からの収益拡大も担います。
アップセル・クロスセルの例:
- アップセル: より高価格・高機能なプランへの移行を提案
- クロスセル: 関連する別の製品・サービスを販売
顧客が成功体験を得ていれば、自然とアップセル・クロスセルの提案が受け入れられやすくなります。
主要KPI(チャーンレート・LTV・NPS)
カスタマーサクセスの主要KPIは以下の通りです:
主要KPI:
- チャーンレート(解約率): 一定期間における顧客の解約割合(低いほど良い)
- LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値): 1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額(高いほど良い)
- NPS(Net Promoter Score): 顧客ロイヤルティを測る指標(推奨度)
これらのKPIを定期的にモニタリングし、PDCAサイクルを回すことで、カスタマーサクセスの成果を最大化できます。
カスタマーサクセス組織の構築と成功事例
実際の組織構築のポイントと成功事例を紹介します。
組織設計のポイント
カスタマーサクセス組織を構築する際のポイント:
組織設計のポイント:
- 専任チームの設置: カスタマーサポートと別組織とし、役割を明確化
- マーケティング・営業との連携: リード情報や顧客情報をシームレスに引き継ぐ
- ツール導入: CRM・CSツールで顧客情報とKPIを可視化
小規模企業では営業担当者がカスタマーサクセスを兼務するケースもありますが、成長に伴い専任チームを設置するのが一般的です。
SmartHRの成功事例(継続率99.5%)
SmartHRは、カスタマーサクセス成功企業の代表例です(テックタッチ調査)。
SmartHRの成功要因:
- **継続率99.5%**という高い継続率を実現
- オンボーディングからアップセルまで一貫した支援
- 顧客の成功体験を重視した組織文化
SmartHRの事例は、カスタマーサクセスの効果を示す代表例として広く知られています。
タッチモデル構築企業の効果実感率(44.3%)
バーチャレクス・コンサルティングの調査では、タッチモデルを構築している企業の方が効果を実感しています。
タッチモデルの効果:
- 構築企業: 44.3%が効果を実感
- 未構築企業: 41.8%が効果を実感
顧客接点を設計し、計画的に関わることが、カスタマーサクセスの成果を最大化する鍵です。
導入効果(57.4%が売上高改善)
カスタマーサクセス導入企業の多くが、ビジネス成果を実感しています。
導入効果(2024年調査):
- 57.4%が売上高の改善を報告
- 52.9%が利益率の改善を報告
- 60%以上が新規顧客数・新規売上の増加を実感
これらのデータは、カスタマーサクセスが単なる顧客対応ではなく、収益拡大に直結する重要な活動であることを示しています。
まとめ:カスタマーサクセスを始めるために
カスタマーサクセスは、SaaS・サブスクリプション型ビジネスにおいて不可欠な活動です。
重要なポイント:
- カスタマーサクセスは顧客の成功を能動的に支援し、解約防止・LTV最大化を実現
- カスタマーサポートとは目的・アプローチ・KPIが異なり、レベニュードライバーとして位置づけられる
- オンボーディング、タッチモデル構築、アップセル・クロスセルが主な業務
- 主要KPIはチャーンレート・LTV・NPS
- 2024年調査では導入企業の61.0%が効果実感、57.4%が売上高改善を報告
次のアクション:
- カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを組織内で共有
- 専任チームの設置または兼務体制の構築を検討
- CRM・CSツールを導入し、顧客情報とKPIを可視化
- オンボーディングプロセスを設計し、導入支援を強化
- タッチモデルを構築し、定期的な顧客接点を設計
カスタマーサクセスに取り組むことで、顧客満足度と継続率を高め、持続的な成長を実現しましょう。
※この記事は2024年時点の情報です。統計データや業界動向は変化する可能性があるため、最新情報は調査元でご確認ください。
