Salesforceを使って顧客の成功を支援したいと考えていませんか?
「顧客データはあるけれど、活用できていない」「解約を防ぎたいが、兆候をつかめない」──サブスクリプション型ビジネスを展開する企業の多くが、カスタマーサクセスの体制構築に課題を抱えています。
Salesforceは単なるCRMツールではなく、カスタマーサクセス活動を支える基盤としても活用できます。顧客データの一元管理から、ヘルススコアの可視化、解約防止施策まで、Salesforceエコシステム内でCS活動を最適化することが可能です。
この記事では、Salesforceを活用したカスタマーサクセスの実践方法について、機能・製品の紹介から、ヘルススコア管理、運用ポイント、専用CSツールとの比較まで解説します。
この記事のポイント:
- カスタマーサクセスは「能動的」に顧客の成功を支援する活動、カスタマーサポートは「受動的」な対応
- Salesforceでは Service Cloud、Sales Cloud、CRM Analytics を組み合わせてCS活動を実現
- ヘルススコア設計により解約兆候を早期検知(事例:解約率4% → 2.62%への改善)
- 主なKPIはLTV、チャーンレート(解約率)、NPS、ヘルススコア
- 専用CSツール(Gainsight等)との連携で機能拡張も可能
1. Salesforceで実現するカスタマーサクセスとは
(1) カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、混同されがちですが異なる概念です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの比較:
| 項目 | カスタマーサクセス | カスタマーサポート |
|---|---|---|
| アプローチ | プロアクティブ(能動的) | リアクティブ(受動的) |
| 目的 | 顧客の成功・目標達成を支援 | 顧客の問題・疑問を解決 |
| 時間軸 | 長期的な関係構築 | 短期的な問題解決 |
| 指標 | LTV、チャーンレート、NPS | 応答時間、解決率 |
カスタマーサクセスは、顧客が製品・サービスを通じて目標達成や成功を実現するために、企業側から能動的にサポートする活動です。特にサブスクリプション型ビジネスモデルでは、顧客の継続利用が収益に直結するため、カスタマーサクセスの重要性が高まっています。
(参考:Salesforce公式「カスタマーサクセスとは?」2025年)
(2) Salesforce流カスタマーサクセスの定義
Salesforce社自身もカスタマーサクセスを実践しており、その定義は「Salesforceを使ってビジネスで成果をあげてもらうこと」とされています。
Salesforce流カスタマーサクセスのアプローチ:
- 顧客ごとのゴール確認: 顧客が達成したい目標を明確にする
- 事例・機能の紹介: 目標達成に役立つ事例や機能を提案
- 実装サポート: 機能を実際に使えるようにする支援
- 定着サポート: 継続的に活用してもらうための支援
単にツールを提供するだけでなく、顧客が成果を出せるようになるまでサポートするのがSalesforce流です。
(参考:Salesforceブログ「カスタマーサクセスとは何か?Vol.2 Salesforce流カスタマーサクセスの方法」)
(3) SaaSビジネスでの重要性
SaaS・サブスクリプション型ビジネスでは、カスタマーサクセスが収益に直結します。
カスタマーサクセスが重要な理由:
- 新規顧客獲得コストは既存顧客維持の5〜25倍と言われている
- 解約率を下げることで、LTV(顧客生涯価値)が向上
- 満足した顧客がリファラル(紹介)を生む
- アップセル・クロスセルの機会が増える
カスタマーサクセスツール市場は、2023年から2028年の間に年率10%以上の成長が見込まれており、企業のCS活動への投資は今後も拡大すると予測されています。
2. Salesforceのカスタマーサクセス向け機能と製品
Salesforceには、カスタマーサクセス活動を支援する複数の製品・機能があります。
(1) Service Cloud|顧客管理とコミュニケーション基盤
Service Cloud は、サービス部門担当者が顧客管理やコミュニケーションを行うための製品です。カスタマーサクセスの基盤として活用できます。
Service Cloudでできること:
- 顧客情報の一元管理
- 問い合わせ履歴の管理・可視化
- ケース(問い合わせ)管理と対応フロー
- ナレッジベース(FAQ)の構築
- オムニチャネル対応(電話、メール、チャット等)
顧客が利用中のサービスや問い合わせ内容を一元管理することで、担当者は即座に必要な情報を把握し、パーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。
(2) Sales Cloud|契約管理と更新プロセス
Sales Cloud は営業向けのCRM/SFAツールですが、カスタマーサクセスでも契約管理や更新プロセスの管理に活用できます。
Sales Cloudの活用シーン:
- 契約情報の管理(開始日、終了日、金額など)
- 更新予定の可視化とアラート設定
- アップセル・クロスセルの商談管理
- 顧客との関係者マッピング
Service Cloudと連携させることで、顧客サポートの履歴と契約情報を紐づけて管理できます。
(3) CRM Analytics|顧客分析と定着化施策
CRM Analytics(旧Tableau CRM / Einstein Analytics)は、Salesforce上のデータを分析・可視化するBIツールです。
CRM Analyticsでできること:
- サービス利用状況の分析
- 解約リスクの予測
- 顧客セグメント別のダッシュボード作成
- AI(Einstein)による予測分析
サービス活用が進んでいない顧客を特定し、定着化・解約防止の施策を実行するための分析基盤として活用できます。
3. ヘルススコア管理と解約防止|CRM Analyticsの活用
(1) ヘルススコアの設計|サービス利用状況の可視化
ヘルススコア とは、顧客の健全性を示す指標です。サービス利用状況、満足度、エンゲージメントなどから算出し、顧客の状態を数値で把握します。
ヘルススコアの構成要素(例):
| 要素 | 内容 | 重み |
|---|---|---|
| ログイン頻度 | 週あたりのログイン回数 | 25% |
| 機能利用率 | コア機能の利用状況 | 30% |
| サポート問い合わせ | 問い合わせ数と解決率 | 20% |
| NPS/満足度 | アンケート結果 | 15% |
| 契約更新 | 更新予定までの期間 | 10% |
ヘルススコアの設計は業種・サービスによって異なります。自社のサービス特性に合わせてカスタマイズすることが重要です。
(2) 解約兆候の早期検知|スコアリングによる管理
ヘルススコアを継続的にモニタリングすることで、解約兆候を早期に検知できます。
スコアリングによる管理のポイント:
- スコア低下時のアラート設定
- 低スコア顧客への優先的なフォロー
- スコア変動のトレンド分析
- 解約に至った顧客のパターン分析
SalesforceのワークフローやEinstein機能を活用することで、スコア低下時に自動でタスクを作成したり、担当者に通知を送ることも可能です。
(3) 成功事例|解約率4% → 2.62%への改善
スコアリングによるユーザー管理で解約兆候を事前にキャッチアップし、解約率を大幅に引き下げた事例が報告されています。
改善事例:
- 解約率: 4% → 2.62%(約35%改善)
- 施策: ヘルススコア低下時のプロアクティブなフォロー
※成果数値は企業規模・業種・運用体制により異なります。上記はあくまで参考値としてご覧ください。
4. Salesforceを活用したカスタマーサクセスの運用ポイント
(1) KPI設定|LTV、チャーンレート、NPS、ヘルススコア
カスタマーサクセスの成果を測定するために、適切なKPIを設定することが重要です。
カスタマーサクセスの主なKPI:
| KPI | 説明 |
|---|---|
| LTV(顧客生涯価値) | 1顧客が生涯にわたってもたらす利益の総額 |
| チャーンレート(解約率) | 一定期間内に解約した顧客の割合 |
| NPS(ネット・プロモーター・スコア) | 顧客ロイヤルティを測定する指標 |
| ヘルススコア | 顧客の健全性を示す複合指標 |
| GRR(グロス・リテンション・レート) | 既存顧客からの維持収益率 |
| NRR(ネット・リテンション・レート) | アップセル・クロスセルを含む収益維持率 |
(参考:Salesforce公式「カスタマーサクセスで重要なKPI13選」2024年、Fullstar「カスタマーサクセスのKPIとは?重要14指標」2024年)
KPIを適切に設定すれば、担当者が変わっても一貫性のある支援を行え、定量的な数値を元に業務改善を図りやすくなります。
(2) 顧客ごとのゴール確認と実装・定着サポート
ツール導入だけでは成果は出ません。顧客ごとに異なるゴールを確認し、実装から定着までをサポートすることが重要です。
運用のステップ:
- オンボーディング: 新規顧客への導入支援、初期設定のサポート
- ゴール設定: 顧客が達成したい目標を明確化
- 活用支援: 機能説明、ベストプラクティスの共有
- 定着確認: 利用状況のモニタリング、追加サポート
- 成果確認: 目標達成度の振り返り、次のステップ提案
(3) 成功事例|SmartHR(継続率99.5%)、オイシックスの施策
カスタマーサクセスに成功している企業の事例を紹介します。
SmartHR:
- 継続利用率: 99.5%という高水準を維持
- 専任のカスタマーサクセスチームによるプロアクティブなサポート
オイシックス:
- Salesforce Marketing Cloud導入により、注文未変更者を63%削減
- データに基づいたパーソナライズされたコミュニケーション
(参考:Techtouch「カスタマーサクセスの事例15選」2024年)
※成果数値は企業規模・業種・運用体制により異なります。
5. 専用CSツールとの比較・連携|拡張オプションの検討
(1) Salesforce単体での限界と拡張性
Salesforceは強力なCRM基盤ですが、カスタマーサクセスに特化した機能は限定的です。
Salesforce単体でできること:
- 顧客情報の一元管理
- 問い合わせ・サポート履歴の管理
- 基本的なレポート・ダッシュボード
- ワークフローによる自動化
専用CSツールが得意なこと:
- 高度なヘルススコア設計・自動計算
- オンボーディングの進捗管理
- チャーンリスク予測(AI活用)
- カスタマージャーニーの可視化
SalesforceはAppExchangeを通じて多くの連携アプリを追加できるため、必要に応じて機能拡張が可能です。
(2) 専用CSツール(Gainsight等)との連携
高度なカスタマーサクセス機能が必要な場合、Gainsight、ChurnZero、Totangoなどの専用CSツールとSalesforceを連携させる選択肢があります。
連携のメリット:
- Salesforceの顧客データを基盤としつつ、高度なCS機能を追加
- ヘルススコアの自動計算・アラート
- プレイブック(対応シナリオ)の自動実行
- チャーンリスクのAI予測
検討のポイント:
- 導入・運用コスト(専用ツールは月額数十万円〜)
- 社内のCS成熟度(まずはSalesforce単体で運用してから検討も)
- Salesforceとの連携実績
(3) 4つのツールタイプ|コミュニティ構築、顧客状態把握、利用方法ガイド、問い合わせ対応
カスタマーサクセスツールは、大きく4つのタイプに分類されます。
カスタマーサクセスツールの4タイプ:
| タイプ | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| コミュニティ構築型 | 顧客同士の交流促進 | Salesforce Experience Cloud |
| 顧客状態把握型 | ヘルススコア・解約予測 | Gainsight、ChurnZero |
| 利用方法ガイド型 | オンボーディング・チュートリアル | WalkMe、Pendo |
| 問い合わせ対応効率化型 | サポート業務の効率化 | Salesforce Service Cloud |
(参考:ASPIC Japan「カスタマーサクセスツールおすすめ15選」2024年)
自社の課題に応じて、適切なタイプのツールを選定することが重要です。
6. まとめ:Salesforceでカスタマーサクセスを体系化する
Salesforceは、カスタマーサクセス活動の基盤として活用できる強力なプラットフォームです。顧客データの一元管理、ヘルススコアの可視化、解約防止施策まで、Salesforceエコシステム内でCS活動を体系化できます。
Salesforceでカスタマーサクセスを実現するポイント:
- Service Cloud で顧客管理・コミュニケーション基盤を構築
- CRM Analytics でヘルススコア・解約リスクを可視化
- KPI(LTV、チャーンレート、NPS)を設定し、定量的に管理
- 顧客ごとのゴールを確認し、実装・定着までサポート
次のアクション:
- 自社のカスタマーサクセス活動の現状を棚卸しする
- SalesforceのService Cloudで顧客情報の一元管理を開始
- ヘルススコアの設計を検討し、解約兆候の可視化に着手
- 必要に応じて専用CSツールとの連携を検討
カスタマーサクセスは長期的な取り組みです。まずは顧客データの一元管理から始め、段階的に高度なCS活動へと進化させていくことをお勧めします。
※この記事は2025年12月時点の情報です。Salesforce製品の機能や料金は変更される可能性があるため、最新情報はSalesforce公式サイトをご確認ください。
よくある質問:
Q: Service CloudとSales Cloudの使い分けは? A: Service Cloudはサービス部門向けで、顧客管理・コミュニケーション・サポートに特化しています。Sales Cloudは営業部門向けで、契約管理・更新プロセス・商談管理に特化しています。カスタマーサクセスではService Cloudをベースに、Sales Cloudで契約情報を連携して活用するケースが一般的です。
Q: 専用CSツールとSalesforceの違いは? A: 専用CSツール(Gainsight等)はヘルススコア・オンボーディング・チャーンリスク予測に特化し、高度な自動化機能を持っています。SalesforceはCRM基盤として顧客データを一元管理でき、拡張性が高いのが特徴です。両者を連携して活用するケースも多く見られます。
Q: Salesforceをカスタマーサクセスに活用する際、カスタマイズは必要? A: 基本的な顧客管理・問い合わせ対応は標準機能で可能です。ヘルススコア設計や自動化シナリオは、業種・サービスに応じてカスタマイズが必要になります。Salesforceのトレイルブレイザーコミュニティ(全世界約1,500万人)の事例を参考に設定することもできます。
Q: 小規模CSチームでも活用できる? A: Service Cloud Starter(月額3,000円/ユーザー程度〜)なら、小規模チームでも導入可能です。まずは顧客情報の一元管理と基本的なサポート業務の効率化から始め、成長に合わせて機能を拡張するのが現実的なアプローチです。
