0→1営業が難しい理由は「仕組み不在」にある
0→1営業で成功するには、個人のスキルや精神論ではなく、初期段階からMA/SFA連携とプロセス設計を意識した仕組み化によって再現性を持たせることが不可欠です。
PwC Japan調査(売上10億〜1兆円超の日本企業対象、2024年12月発表)によると、新規事業で投資回収まで至っている案件を1件でも持つ企業は全体の約2割、目標とする主力事業化に到達している企業は1割未満とされています。新規事業の営業立ち上げは、それほど難易度が高い取り組みです。
BtoB営業パーソン317名を対象とした調査では、営業組織の課題として「営業プロセスが属人化している」が38.5%で最多でした(調査対象は限定的)。0→1フェーズだからといって仕組み化を後回しにすると、属人化という課題がそのまま1→10フェーズに持ち越されてしまいます。
0→1フェーズ営業とは、新規事業の立ち上げ段階で、売上最大化ではなく顧客課題と解決策のFit検証を目的とする営業活動です。
この記事で分かること
- 0→1営業と既存営業の根本的な違い(目的・KPI・成功基準)
- 1人目営業が最初にやるべきターゲット設定と仮説検証の進め方
- 属人化・ツール導入後回しという失敗パターンの回避方法
- 1→10への移行を見据えたプロセス設計とチェックリスト
0→1営業と既存営業の違い|目的・KPI・成功基準
0→1営業と既存営業の最大の違いは、目的そのものにあります。既存営業が「売上最大化」を目的とするのに対し、0→1営業は「顧客課題と解決策のFit検証」が目的です。
価値仮説とは、誰のどんな課題に、どのような価値を提供するかを定義した仮説であり、0→1フェーズで検証対象となります。成長仮説は、どのチャネルで、どのような経済性(CAC/LTV等)でスケールできるかを定義した仮説です。
ICP(Ideal Customer Profile) とは、自社にとって理想的な顧客の属性・特徴を定義したプロファイルです。受注率が高くLTVが高い顧客像を明確にすることで、限られたリソースを集中投下できます。
【比較表】0→1 / 1→10 フェーズ別プロセス比較表
| 項目 | 0→1フェーズ | 1→10フェーズ |
|---|---|---|
| 目的 | 顧客課題とのFit検証 | 売上・シェア拡大 |
| KPI | 検証件数、仮説修正回数、顧客インタビュー数 | 受注数、MRR/ARR、商談化率 |
| 成功基準 | PMF達成、再現可能な勝ちパターン確立 | 売上目標達成、組織拡大 |
| 営業担当者像 | 仮説検証者、プロセス設計者 | 実行者、目標達成者 |
| ツール活用 | ログ取得・仮説検証のためのSFA | 効率化・スケールのためのSFA/MA |
| 組織体制 | 少人数(1〜数名) | 分業体制(IS/FS/CS) |
0→1フェーズのKPI設計の考え方
0→1フェーズでは、既存営業と同じ受注率・案件数KPIで管理すると構造的に失敗しやすくなります。BtoB中小企業で「紹介」を主力とする企業のうち、「明確に設定されたKPIはない」が59.0%という調査結果もあります。KPI設計自体が重要な課題です。
0→1フェーズで設定すべきKPI例は以下の通りです。
- 検証件数: 顧客インタビューや商談を何件実施したか
- 仮説修正回数: 価値仮説・成長仮説を何回更新したか
- ICP精度: ターゲット顧客像がどれだけ具体化されたか
- 再現性の有無: 同じ手順で同じ結果が出るか
1人目営業が最初にやるべきこと|ターゲット設定と仮説検証
1人目営業が最初に取り組むべきは、ICPの定義とターゲット設定です。調査によると、リード数未達の原因1位は「施策がターゲットに刺さっていない」で40.9%、次いで「施策の数や頻度が少ない」が27.3%、「リードのフォローアップが不十分」が25.0%でした(調査対象は限定的)。
ターゲット設定が曖昧なまま営業活動を始めると、どれだけ活動量を増やしても成果につながりにくくなります。
ICP定義のポイントは以下の通りです。
- 業種・業態: どの業界の企業が最も課題を感じているか
- 企業規模: 従業員数、売上規模の目安
- 役職・部門: 誰が意思決定者・推進者になるか
- 課題: どのような課題を抱えているか
- 導入トリガー: どのようなタイミングで検討を始めるか
顧客インタビューを複数回実施し、課題構造や意思決定プロセスを把握することが重要です。
仮説検証サイクルの回し方
0→1フェーズでは、仮説→検証→修正のサイクルを高速で回すことが求められます。
仮説検証の基本ステップは以下の通りです。
- 仮説立案: ターゲット・課題・解決策・チャネルの仮説を立てる
- 検証設計: 何をもって仮説が正しいと判断するかを決める
- 検証実施: 顧客インタビュー、商談、トライアル提供などで検証
- 結果分析: 仮説どおりだったか、どこにズレがあったかを分析
- 仮説修正: 結果を踏まえて仮説を更新し、次のサイクルへ
このサイクルを回す過程で得られた知見をすべてログとして残すことが、1→10フェーズへの移行に不可欠です。
よくある失敗パターン|属人化とツール導入後回し
0→1フェーズでよくある失敗パターンは、「ツール導入は後回し」と考え、属人的な営業活動に終始してしまうことです。この考え方は誤りです。
よくある失敗パターン: 「0→1フェーズだからまずは人力で回せばいい」と考え、SFA/CRMの導入を後回しにする。結果として検証・改善のデータが残らず、再現性のある勝ちパターンが構築できない。1人目営業が離職すると、すべてのナレッジが失われてしまう。
営業組織の課題として「営業プロセスが属人化している」が38.5%で最多という調査結果からも、属人化は多くの企業が抱える共通課題であることがわかります(サンプル数317名の民間調査)。
また、「スーパー営業マンを採用すれば解決する」という期待も誤りです。属人的に売れる人を採用しても、その人がいなくなれば成果もゼロになります。1人目営業に求めるべきは「売れる人」ではなく「誰でも真似できる手順書を作れる人」です。
「紹介・人脈頼みで十分」という考え方も失敗につながります。KPIもプロセスもない再現性ゼロの営業になりやすく、1→10フェーズで必ず壁にぶつかります。
0→1から1→10への移行を見据えたプロセス設計
0→1フェーズから1→10への移行を見据えたプロセス設計が重要です。日本企業のインサイドセールス導入率は40.6%にとどまり、米国の80%超と比較すると低い水準です(HubSpot調査)。しかし、早期からSFA/CRM導入とログ設計を行う企業は増加傾向にあります。
プロセス設計のポイントは以下の通りです。
- ログ設計: 何を記録するかを最初に決める(商談内容、顧客の反応、成約/失注理由など)
- ステージ定義: 商談をどのステージで管理するかを決める
- 引き継ぎルール: マーケ→IS→FSの引き継ぎ基準を設計する
- 振り返り運用: 週次・月次での振り返りミーティングを設計する
【チェックリスト】0→1営業 立ち上げ前チェックリスト
- ICPが明文化されている
- 価値仮説が言語化されている
- 成長仮説が言語化されている
- 検証すべき仮説の優先順位が決まっている
- 顧客インタビューのスクリプトが用意されている
- SFA/CRMの導入が完了している(または計画がある)
- ログ項目(何を記録するか)が決まっている
- 商談ステージが定義されている
- 仮説検証サイクルの期間が設定されている
- 振り返りミーティングの頻度が決まっている
- 1人目営業の採用基準が明確になっている
- 「手順書を作れる人」を採用する方針が固まっている
- マーケ/IS/FS間の引き継ぎルール案がある
- KPI案が設計されている(検証件数、仮説修正回数など)
- 専門家支援の活用有無を検討している
最低限導入すべきツールと運用設計
0→1フェーズでも、最低限SFA/CRMは導入すべきです。特定ツールの推奨は避けますが、以下のカテゴリを検討してください。
- SFA/CRM: 商談管理、顧客情報管理、活動ログの蓄積
- MA(必要に応じて): リードナーチャリング、スコアリング
- 会議ツール: オンライン商談、録画・文字起こし
ツール導入で重要なのは「何を記録するか」のログ設計です。記録すべき基本項目は以下の通りです。
- 商談日時、顧客名、担当者
- 顧客の課題・ニーズ
- 自社の提案内容
- 顧客の反応・懸念点
- 次のアクション
- 成約/失注理由(終了時)
まとめ|0→1営業は仕組み化で再現性を持たせる
0→1営業の成功は、個人のスキルや精神論ではなく、初期段階からプロセス設計とツール活用を意識した仕組み化によって決まります。
本記事のポイントを整理します。
- 0→1営業の目的は「売上最大化」ではなく「顧客課題とのFit検証」
- 既存営業と同じKPIで管理すると構造的に失敗しやすい
- ツール導入後回し・属人化は1→10フェーズで必ず課題化する
- 1人目営業には「売れる人」ではなく「手順書を作れる人」を期待する
- 早期からSFA/CRM導入とログ設計を行うことで再現性を確保
0→1営業 立ち上げ前チェックリストを活用して、自社の準備状況を確認してみてください。仕組み化によって再現性を持たせることが、0→1フェーズの成功と1→10への円滑な移行を実現する鍵です。
