シリーズB段階で営業組織の「壁」にぶつかる理由
シリーズB段階の営業組織は、属人的な営業から脱却し、MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化と可視化によって、採用した営業メンバーが早期に成果を出せる再現性のある体制を構築することが成長の鍵です。
「創業メンバーの営業力で成長してきたが、採用したメンバーが思うように成果を出せない」「育成が追いつかず、採用してもすぐに離職してしまう」といった課題を抱えている営業責任者の方は多いのではないでしょうか。
シリーズB段階は資金調達額が数億円〜数十億円(事業によっては50億円規模)に達し、組織規模も30-100名超へと拡大する時期とされています。この急拡大のフェーズでは、属人的な営業スタイルのままでは組織がスケールしません。
この記事で分かること
- シリーズB段階の営業組織に求められる要件
- 属人化から脱却し再現性を構築する方法
- MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化
- 採用と組織拡大で失敗しないためのポイント
シリーズB段階の営業組織に求められる要件
シリーズB段階の営業組織には、「分業体制の構築」と「人材の定着・育成」という2つの要件が求められます。
シリーズB段階では、組織規模が30-100名超に拡大し、創業メンバーだけでは対応しきれなくなります。資金調達額も数億円〜数十億円規模となることが多く、投資家からは営業組織のスケーラビリティが問われるようになります(業界や事業内容により大きく異なります)。
一方、中小企業やスタートアップでは労働分配率が高く賃上げ余力が限定的という調査結果もあります。大企業との賃上げ率差が拡大すると人材流出リスクが高まるため、採用だけでなく定着・育成の仕組みづくりが重要です。
THE MODELとは、マーケティング→IS→FS→CSの分業・連携を標準化したBtoB営業フレームワークです。シリーズB段階では、このTHE MODELの考え方を取り入れ、分業体制を構築することが求められます。
PMF後の営業組織フェーズ
PMF(Product-Market Fit) とは、提供する製品・サービスが市場ニーズと合致し、持続的な需要が見込める状態を指します。
PMF後からシリーズA〜Bにかけては、以下の順序で営業組織を整備していくことが効果的とされています。
- 勝ちパターンの言語化
- 営業プロセスの設計
- SFA/MAの導入
- IS/FS分業体制の構築
- 組織拡大
この順序を飛ばして採用を先行させると、属人的な営業が肥大化するリスクがあります。
属人化からの脱却と再現性の構築
営業組織をスケールさせるには、採用だけでなく、プロセス標準化と営業ノウハウの言語化・仕組み化が不可欠です。
「営業人員を増やせば売上が伸びる」という考え方は、多くの場合うまくいきません。採用だけで営業組織をスケールしようとし、MA/SFAによるプロセス標準化や営業ノウハウの言語化・仕組み化を後回しにしてしまうと、属人営業がそのまま拡大し、採用コスト増大と売上停滞を招きます。
また、BtoB購買プロセスの85%が営業面談前に候補選定が完了しているという調査結果があります。高額取引ほどプロセスが複雑化・長期化する傾向があり、面談前の段階から顧客と接点を持つ仕組みが求められます。
トップセールスのノウハウを形式知化する
トップセールスのノウハウを形式知化し、組織全体で共有することで平均スキルを底上げできます。
形式知化のポイントは以下の通りです。
- 商談の進め方や顧客への説明方法を言語化する
- 成功パターンを録画・テキスト化して共有する
- ロールプレイングで実践的にトレーニングする
属人的なノウハウを組織の資産に変換することが、再現性構築の第一歩です。
MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化
MA/SFAの導入だけでは属人化は解消されません。運用設計とプロセス標準化がセットで必要です。
レベニューサイクルモデルとは、組織体制・データマネジメント・プロセスマネジメントを統合した売上創出の循環モデルです。このモデルを意識し、営業プロセスを以下の5ステップで標準化することが有効です。
- リード獲得
- アプローチ
- 商談
- クロージング
- アフターフォロー
【比較表】営業フェーズ別の標準化ポイント
| フェーズ | 標準化のポイント | MA/SFA活用例 |
|---|---|---|
| リード獲得 | リードソースの分類・スコアリング基準の統一 | MAでリード情報を一元管理 |
| アプローチ | 初回接触のタイミング・方法のルール化 | SFAで対応履歴を記録 |
| 商談 | 商談ステージの定義・移行条件の明確化 | SFAでパイプライン管理 |
| クロージング | 見積もり・契約プロセスの標準化 | SFAで受注予測を可視化 |
| アフターフォロー | 導入後フォローのタイミング・内容の統一 | MAでオンボーディングメール自動化 |
データの一元管理と可視化
SSOT(Single Source of Truth) とは、MA/SFAのデータを一元管理し、全部門が同じデータを参照できる状態を指します。
シリーズB段階では、プロダクト別組織から機能別組織への移行がトレンドとなっています。SFA/CRMを強化し、データを一元管理することで、意思決定の効率化が図れます。
現場ヒアリングの重要性
経営層主導の理想プロセス設計は、現場との乖離により形骸化するリスクがあります。
プロセス設計の際は、現場の営業担当者へのヒアリングが必須です。実際の商談で何が起きているか、どこにボトルネックがあるかを把握した上で、プロセスを設計しましょう。
採用と組織拡大のポイント
シリーズB段階での採用は、単に人数を増やすのではなく、再現性のある体制を前提とした計画が必要です。
営業支援企業がシリーズBで累計8億円を調達し、営業人材不足解決に向けて組織体制を拡大した事例があります。この事例でも、採用だけでなくプロセスの仕組み化を並行して進めています。
一方、中小企業やスタートアップでは労働分配率が約8割に近く、大企業と比較して賃上げ余力が限定的という調査結果があります(中小企業全体の統計であり、シリーズBスタートアップのサンプルは限定的)。報酬以外の魅力づけや成長機会の提供が、人材定着の鍵となります。
【チェックリスト】シリーズB営業組織構築チェックリスト
- 現状の営業プロセスを棚卸ししたか
- トップセールスのノウハウを言語化したか
- 勝ちパターンを組織で共有しているか
- SFA/MAの運用ルールを明文化したか
- リードスコアリングの基準を統一したか
- 商談ステージの定義と移行条件を明確にしたか
- IS/FS分業の役割分担を決めたか
- 引き継ぎルール(IS→FS)を設計したか
- KPIを部門横断で可視化しているか
- 定例ミーティングで進捗を共有しているか
- 採用計画とオンボーディングを整備したか
- 新人が早期に成果を出せる仕組みがあるか
- トレーニングプログラムを用意したか
- 人材定着のための施策を検討したか
IS/FS分業体制の構築
IS(インサイドセールス) とは、非対面で電話・メール等を活用してリード育成・商談化を担う営業職種です。FS(フィールドセールス) とは、対面での商談・クロージングを担う営業職種で、インサイドセールスから引き継いだリードを受注につなげます。
THE MODELに基づくIS/FS分業体制では、以下の連携が重要です。
- ISはリードを育成し、商談可能な状態でFSに引き継ぐ
- FSは商談に集中し、クロージングに注力する
- 両者の間で引き継ぎ基準を明確に定義する
分業体制を構築することで、各役割に特化したスキル向上と効率化が実現します。
まとめ:プロセス標準化と可視化で再現性のある営業組織を構築する
本記事では、シリーズB段階の営業組織構築について、属人化からの脱却とMA/SFAを活用したプロセス標準化のポイントを解説しました。
ポイントの整理
- シリーズB段階では組織規模が30-100名超に拡大し、分業体制と人材定着・育成の仕組みが求められる
- 採用だけでスケールしようとすると、属人営業が肥大化するリスクがある
- トップセールスのノウハウを形式知化し、組織全体で共有することが再現性構築の第一歩
- MA/SFAは導入するだけでなく、運用設計とプロセス標準化がセットで必要
- IS/FS分業体制を構築し、各役割に特化した効率化を図る
明日から取り組めるアクション
- 現状の営業プロセスを棚卸しする
- トップセールスのノウハウを言語化する
- SFA/MAの運用設計を見直す
シリーズB段階の営業組織は、属人的な営業から脱却し、MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化と可視化によって、採用した営業メンバーが早期に成果を出せる再現性のある体制を構築することが成長の鍵です。
