シリーズA調達後の営業組織構築ガイド|失敗パターンと実践チェックリスト

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1211分で読めます

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シリーズA調達後に営業組織構築が急務となる理由

多くの方が悩むシリーズA段階の営業組織づくり。結論は、シリーズA段階の営業組織構築は、属人的な営業から脱却し、SFA/MA活用とKPI設計を整備することで、再現性のある組織的営業体制へ移行できるということです。

シリーズAとは、シード期を経て事業検証が進んだスタートアップが、本格的な事業展開に向けて数億〜十数億円規模の資金を調達する投資ラウンドを指します。2025年上半期の日本スタートアップ資金調達総額は3,399億円(デット除く、前年同期比4%増)に達しており(INITIAL「Japan Startup Finance 2025 H1」)、スタートアップ投資は堅調に推移しています。投資ラウンド別シェアを見ると、シリーズAは19%、シード期は17%を占めており(デシセンス「シリーズA投資とマーケティング組織整備ガイド」2025年)、シリーズAは成長ステージへの重要な転換点となっています。

しかし、資金調達はゴールではなくスタートです。調達後に営業組織を構築し、再現性ある成長モデルを確立できるかどうかが、次のラウンドへの道筋を決めます。

この記事で分かること

  • シリーズAの定義と企業特性
  • 営業組織構築で陥りやすい失敗パターン
  • 具体的な構築ステップとチェックリスト
  • フェーズ別アクションとKPI設計の実践方法

シリーズAとは何か:投資ラウンドと企業特性の基礎知識

シリーズA段階の企業は、プロダクトの初期検証を終え、本格的な市場展開に向けて動き出すフェーズにあります。

日本経済団体連合会の調査(約25,000社対象、2024年)によると、スタートアップ1社あたりの平均資金調達額は3.1億円、中央値は7,760万円です。シリーズA単体の公的統計は限られていますが、一般的に数億〜十数億円規模の調達を行うケースが多いとされています。

PMF(Product Market Fit) とは、プロダクトが市場のニーズに適合している状態を指し、シリーズA前後で達成・証明すべき重要マイルストーンです。シリーズA段階では、PMFの達成を前提として、「再現性ある成長モデル」の構築が求められます。その中心となるのが営業組織の整備です。

ARR(Annual Recurring Revenue) は年間経常収益を指し、SaaS企業の事業規模を示す主要指標です。投資家はARRの成長率やユニットエコノミクスを重視するため、営業組織がこれらのKPIを達成できる体制になっているかが問われます。

シリーズA段階の組織規模と営業の役割

シリーズA段階の企業では、少人数兼務体制(1-3名程度)から専任チーム体制(5-10名以上)への移行が典型的です。この段階で営業に期待される役割は主に3つあります。

再現性ある獲得モデルの構築:トップセールス個人に依存した営業から脱却し、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの分業体制を設計します。

プロダクト改善のフィードバックループ:顧客の声を開発チームに還元し、PMFの深化や新機能開発に活かす役割を担います。

投資家向けデータ作り:パイプライン総額、ステージ別コンバージョン、クロージング率などを可視化し、次のラウンドに向けた成長性を証明するデータを整備します。

シリーズA企業が陥りやすい営業組織構築の失敗パターン

シリーズA調達後に最も陥りやすい失敗パターンは、採用を急ぎすぎて、営業プロセスやKPIを整備しないまま人員を増やしてしまうことです。これは多くの企業が経験する落とし穴であり、属人的な営業のまま組織が肥大化して収拾がつかなくなるリスクがあります。

2025年の調査では、75%超の企業人事が「人手不足」を感じているという結果が報告されています(リクルートマネジメントソリューションズ「2025年人事調査レポート」)。人手不足を背景に採用を急ぐ気持ちは理解できますが、プロセスが未整備のまま人員を増やすと、以下のような問題が発生します。

  • 営業手法が属人的なまま固定化される
  • KPIが曖昧で、成果の再現性が検証できない
  • マネジメント負荷が増大し、既存メンバーのパフォーマンスも低下する
  • 採用した人材が早期離職するリスクが高まる

よくある誤解「採用を増やせば売上が伸びる」の危険性

「採用を増やせば売上が伸びる」という考え方は誤りです。営業組織のスケールには、まずプロセス設計と定着化が必要です。どのような顧客にどのようなアプローチで商談化し、受注に至るのか。このプロセスが言語化・標準化されていなければ、新しく入ったメンバーは暗中模索を強いられ、立ち上がりに時間がかかります。

成功している企業では、まず少人数でプロセスを確立し、そのプロセスを新メンバーに移植できる状態を作ってから採用を拡大しています。順序を逆にすると、組織は肥大化するものの成果は伴わないという状況に陥ります。

シリーズA段階の営業組織構築ステップ

営業組織構築は、MA/SFA導入、分業設計、KPI設定の順序で進めることが効果的です。これらを整備することで、属人的な営業から脱却し、再現性のある組織的営業体制へ移行できます。

2025年の調査では、CPA(Cost Per Acquisition) の高騰対策として、SNS強化を55.9%、SEOを52.4%、CRMを47.6%の企業が計画しているという結果が出ています(デシセンス「シリーズA投資とマーケティング組織整備ガイド」)。また、広告依存度は2025年に16.1%まで低下(前年比-10ポイント)しており、データドリブンなマーケティングへのシフトが進んでいます。CPAとは顧客獲得単価を指し、1件の顧客を獲得するために要したマーケティング・営業コストの総額です。

【チェックリスト】シリーズA段階 営業組織構築チェックリスト

  • ターゲット顧客の定義と理想顧客プロファイル(ICP)の言語化
  • リード獲得チャネルの整理と優先順位付け
  • 商談ステージの定義(初回接触〜受注までの段階設計)
  • 各ステージの通過基準の明文化
  • SFA/CRMツールの選定と導入計画の策定
  • リードの流入元・ステータスの一元管理体制の構築
  • インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担の設計
  • カスタマーサクセスの役割と担当範囲の明確化
  • 主要KPIの設定(リード獲得数、商談化率、受注率、CPA)
  • 週次・月次のレビュー会議体制の設計
  • 営業活動の記録ルール(入力項目・頻度)の策定
  • パイプラインレポートの自動化設定
  • 営業プロセスの標準化マニュアルの作成
  • オンボーディングプログラムの設計
  • 目標設定と評価基準の策定
  • マーケティング部門との連携ルール(リード引き渡し基準)の設定

インサイドセールス・フィールドセールス・CSの分業設計

トップセールス依存から脱却するためには、役割分担を明確にした分業体制の設計が不可欠です。

インサイドセールスは、リードの初期対応と商談化を担当します。インバウンドで獲得したリードに対して迅速にアプローチし、ニーズのヒアリングと案件化の判断を行います。商談化したリードをフィールドセールスに引き渡す基準を明確に設定することがポイントです。

フィールドセールスは、商談から受注までのクロージングを担当します。顧客の課題を深掘りし、提案・交渉・契約締結までを一貫して行います。商談の進捗状況をSFAに記録し、パイプラインの可視化に貢献します。

カスタマーサクセス(CS) は、受注後の顧客対応と継続利用の促進を担当します。導入支援、活用促進、アップセル・クロスセルの機会創出を行い、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指します。

各役割にKPIを設定し、責任範囲を明確にすることで、組織として成果を測定・改善できる体制が整います。

フェーズ別アクションとKPI設計の実践

営業組織の構築は一度に完成するものではなく、フェーズごとに重点アクションを設定して段階的に進めていくことが現実的です。

成功事例として、営業データプラットフォームを提供するある企業は、シリーズAで16.5億円を調達し、プロダクトリリース後4ヶ月でARR1億円を達成しています(STARTUP DB「2025年1月 国内スタートアップ資金調達額ランキング」)。ただし、これは個別企業の事例であり、すべての企業で同様の結果が得られるわけではありません。重要なのは、営業組織の構築とKPI設計を早期に整備したことで、再現性のある成長を実現できた点です。

ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりの経済性を指し、LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の比率で事業の持続可能性を評価します。投資家はこの指標を重視するため、営業組織はユニットエコノミクスの改善に貢献できる体制を目指す必要があります。

【比較表】シリーズA営業組織 フェーズ別アクション対応表

フェーズ 期間目安 重点アクション 主要KPI 組織体制
立ち上げ期 調達後1-3ヶ月 ターゲット定義、商談ステージ設計、SFA選定 リード獲得数、初回商談数 創業者+営業1-2名
プロセス確立期 調達後3-6ヶ月 営業プロセス標準化、KPI設定、記録ルール整備 商談化率、パイプライン総額 営業2-4名、CS1名
分業移行期 調達後6-9ヶ月 IS/FS/CS分業、マーケ連携、レビュー体制 受注率、CPA、LTV IS2名、FS2-3名、CS1-2名
スケール準備期 調達後9-12ヶ月 採用計画、オンボーディング整備、目標設定 ARR成長率、ユニットエコノミクス 営業チーム8-10名体制

※期間はあくまで目安であり、企業の状況によって異なります。

SFA/MA活用による営業プロセスの可視化

属人的な営業からの脱却には、SFA/MAツールの導入が効果的です。ただし、ツールを導入するだけでは成果は出ません。業務プロセスの設計と運用の定着化が成功の鍵です。

導入時に押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

優先機能に絞って段階的に活用する:全機能を使いこなす必要はありません。まずはリード管理、商談管理、パイプラインレポートの3機能に集中し、運用を安定させてから機能を拡張していくアプローチが効果的です。

入力ルールを明確に設定する:誰が、何を、いつ入力するのかを明文化し、データの欠損や不整合を防ぎます。

レビュー会議で活用する:入力されたデータを週次・月次のレビュー会議で活用することで、入力の意義をチームに浸透させ、運用定着を促進します。

まとめ:再現性ある営業組織への移行ポイント

シリーズA調達後の営業組織構築において最も重要なのは、採用を急がず、まずプロセスとKPIを整備することです。

本記事で紹介したチェックリストとフェーズ別アクション対応表を活用し、自社の現在地を確認しながら段階的に組織を構築していくことをおすすめします。

失敗パターンである「採用を急ぎすぎて属人営業のまま組織が肥大化する」状況を避けるためには、以下の3点を意識してください。

  • 商談ステージとKPIを先に設計する
  • SFA/MAで営業活動を可視化する
  • プロセスが安定してから採用を拡大する

シリーズA段階の営業組織構築は、属人的な営業から脱却し、SFA/MA活用とKPI設計を整備することで、再現性のある組織的営業体制へ移行できます。この基盤を整えることが、次のラウンドに向けた成長を加速させる鍵となります。

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よくある質問

Q1シリーズA企業の営業組織は何人くらいが適切ですか?

A1シリーズA段階では、少人数兼務体制(1-3名)から専任チーム体制(5-10名以上)への移行が典型的です。ただし、人数よりも役割分担(インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)とプロセス設計が整っているかが重要です。プロセスが確立していないまま採用を急ぐと、属人営業のまま組織が肥大化するリスクがあります。

Q2シリーズAで資金調達する企業の調達額はどのくらいですか?

A2日本経済団体連合会の2024年調査(約25,000社対象)によると、スタートアップ1社あたりの平均資金調達額は3.1億円、中央値は7,760万円です。シリーズA単体の公的統計は限られていますが、一般的に数億〜十数億円規模の調達が行われるケースが多いとされています。

Q3シリーズA段階で営業組織構築に失敗しやすいポイントは何ですか?

A3最も多い失敗パターンは、採用を急ぎすぎて、営業プロセスやKPIを整備しないまま人員を増やしてしまうことです。2025年の調査では75%超の企業人事が「人手不足」を感じていますが、無計画な採用は属人営業の肥大化を招きます。まずプロセスを確立し、再現性を持たせてから採用を拡大することが重要です。

Q4シリーズA企業の営業で重視すべきKPIは何ですか?

A4主要KPIとして、新規リード獲得数、CPA(顧客獲得単価)、商談化率、受注率の4つが基本です。投資家はパイプライン総額やステージ別コンバージョン、ユニットエコノミクス(LTV/CAC比率)の可視化データを重視するため、これらを測定・報告できる体制を整えることが次のラウンドにつながります。

Q5シリーズA調達後、SFA/MAツールは必須ですか?

A5属人的営業からの脱却にはSFA/MA導入が効果的ですが、導入だけでは効果は出ません。成功の鍵は業務プロセス設計と運用の定着化です。全機能を使いこなす必要はなく、まずはリード管理・商談管理・パイプラインレポートの3機能に絞った段階的活用がおすすめです。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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