SaaSユニットエコノミクス|LTV/CAC比3倍の基準と計算方法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1810分で読めます

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SaaSビジネスでユニットエコノミクスが重要な理由

ユニットエコノミクスの改善には、LTV/CACの正確な計測基盤を整えた上で、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門が連携した改善サイクルを回すことが不可欠です——本記事ではこの結論を詳しく解説します。

ユニットエコノミクスとは、1顧客(契約単位)あたりの収益性を測る指標です。主にLTV÷CACで算出し、事業の持続可能性を評価するために使われます。SaaSビジネスにおいては、新規顧客の獲得コストと顧客がもたらす生涯価値のバランスを見極めることが、健全な成長の鍵となります。

この記事で分かること

  • ユニットエコノミクスの基本概念とLTV・CACの計算方法
  • 日本BtoB SaaS市場における適正値と判断基準
  • LTV向上・CAC削減のための具体的な改善施策
  • 部門連携による計測・改善サイクルの回し方

国内上場SaaS企業30社の従業員1人あたりARR(年間経常収益) は、平均2,114万円、中央値1,940万円とされています(2024年3月末時点)。ARRとは、サブスクリプション型ビジネスの年間ベースの定期収益で、MRR×12で算出されます。このようにSaaS企業の収益性は注目を集めており、ある国内SaaS大手企業は2025年6月期に営業黒字化を達成し、ユニットエコノミクス重視でCAC回収期間の短縮を実現したと報告されています(ただし個別企業事例のため、一般化には注意が必要です)。

ユニットエコノミクスの基本概念と計算方法

ユニットエコノミクスは、SaaSビジネスの健全性を測る最も重要な指標の一つです。一般的に、LTV/CAC比率で測定し、3以上が健全の目安とされています(ただしこれはグローバル基準であり、日本市場ではCAC回収期間が長くなる傾向があります)。

まずは、ユニットエコノミクスを構成する主要な指標を理解しましょう。

LTV(顧客生涯価値) とは、1顧客が契約期間を通じてもたらす累計収益です。SaaSでは「月次粗利×平均継続月数」等で算出します。

CAC(顧客獲得コスト) とは、1顧客を獲得するために要したマーケティング・営業コストの合計を新規顧客数で割った値です。

チャーンレート(解約率) とは、一定期間内に解約した顧客の割合で、SaaSのLTV計算に大きく影響する重要指標です。

CAC回収期間とは、顧客獲得コストを回収するまでの期間で、CAC÷月次粗利で算出します。一般的には12ヶ月以内が理想とされています。

LTV(顧客生涯価値)の計算方法

LTVの計算方法は主に2つあります。どちらも粗利ベースで計算することを推奨します。売上ベースで計算すると、実際の収益性を過大評価するリスクがあります。

計算式1(平均継続月数ベース): LTV = 月次粗利 × 平均継続月数

計算式2(チャーンレートベース): LTV = 月次粗利 ÷ 月次チャーンレート

(例)

  • 月次粗利: 5万円
  • 平均継続月数: 36ヶ月
  • LTV = 5万円 × 36ヶ月 = 180万円

CAC(顧客獲得コスト)の計算方法

CACは、新規顧客を獲得するために投じたコストを正確に把握するための指標です。

計算式: CAC = (マーケティング費用 + 営業費用)÷ 新規獲得顧客数

マーケティング費用には広告費、イベント費、コンテンツ制作費などが含まれます。営業費用には営業人件費、インサイドセールス費用などが含まれます。

参考値として、SaaSのS&M(営業・マーケティング)比率(売上比)は、Series Bで40-60%、Series C以降で30-45%が目安とされています。

ユニットエコノミクスの適正値と判断基準

ユニットエコノミクスの適正値は、LTV/CAC比率3以上が健全の目安とされています。ただしこれは業界の経験則であり、自社のビジネスモデルや市場環境に応じた検証が必要です。

よくある失敗パターンとして、ユニットエコノミクスを一度計算して「3倍以上だから大丈夫」と安心し、定期的なモニタリングや部門別の改善施策に落とし込まないまま放置してしまうケースがあります。この考え方は誤りです。ユニットエコノミクスは継続的にモニタリングし、改善サイクルを回すことで初めて意味を持ちます。

日本BtoB SaaSにおける適正値の考え方

日本市場には特有の傾向があり、グローバル基準をそのまま適用すると厳しい評価になる可能性があります。

日本BtoBエンタープライズSaaSのCAC回収期間は18〜24ヶ月が相場とされています。これはグローバル標準の6〜12ヶ月より長い傾向にあります。日本企業の意思決定プロセスが長いことや、営業サイクルの特性が影響していると考えられます。

また、日本SaaSのACV(年間契約単価)の相場は、2024年時点でセグメント別に以下のような目安があります:

  • SMB(中小企業向け): 10〜50万円
  • Mid-Market(中堅企業向け): 50〜200万円
  • Enterprise(大企業向け): 200〜300万円

ターゲットセグメントによってユニットエコノミクスの目標値は異なります。自社のターゲットに応じた目標設定が重要です。

ユニットエコノミクス改善の基本施策

ユニットエコノミクスの改善は、LTV向上とCAC削減の両面からアプローチします。以下の施策マトリクスを参考に、自社の状況に応じた優先順位を検討してください。

【比較表】ユニットエコノミクス改善施策マトリクス

改善軸 施策カテゴリ 具体的な施策例 担当部門 期待効果
LTV向上 チャーン率低減 オンボーディング強化、ヘルススコア管理 CS 解約率の改善
LTV向上 アップセル/クロスセル 上位プラン提案、追加機能販売 CS/営業 顧客単価の向上
LTV向上 ARPU向上 価格改定、プラン設計の見直し 経営/事業企画 収益性の改善
CAC削減 リード獲得効率化 コンテンツマーケティング、SEO強化 マーケ 獲得単価の低減
CAC削減 成約率向上 リードスコアリング、提案資料改善 営業/マーケ 商談効率の改善
CAC削減 営業効率化 インサイドセールス導入、SFA活用 営業 人件費の最適化

LTV向上のための施策

LTV向上のためには、チャーンレート(解約率) の改善が最も効果的です。解約率が1%改善するだけでも、LTVに大きな影響を与えます。

具体的な施策として、以下の3つのアプローチがあります:

  • チャーン率低減: オンボーディングプロセスの強化、顧客ヘルススコアの管理、プロアクティブなサポート体制の構築
  • アップセル/クロスセル: 既存顧客への上位プラン提案、関連サービスの追加販売
  • ARPU向上: 適切な価格設定、機能別の料金体系設計

カスタマーサクセス部門の役割が重要であり、顧客の利用状況を可視化し、解約リスクの高い顧客に早期介入する仕組みが効果的です。

CAC削減のための施策

CAC削減では、リード獲得から成約までの各プロセスの効率化を図ります。

  • リード獲得効率化: オーガニック流入の強化(SEO、コンテンツマーケティング)、広告のROI改善
  • 成約率向上: リードスコアリングによる優先度付け、営業プロセスの標準化
  • 営業効率化: インサイドセールスの活用、SFA/MAデータに基づく効率的なアプローチ

S&M比率はSeries Bで40-60%、Series C以降で30-45%が目安とされており、成長ステージに応じた投資配分の最適化が求められます。

ユニットエコノミクスの計測・改善サイクル

ユニットエコノミクスは一度計測して終わりではなく、継続的なモニタリングと改善サイクルが重要です。以下のチェックリストを活用し、自社の計測・改善状況を確認してください。

【チェックリスト】ユニットエコノミクス計測・改善チェックリスト

  • LTVの計算式を定義している(粗利ベース推奨)
  • CACの計算式を定義している(含めるコスト項目を明確化)
  • セグメント別(SMB/Mid-Market/Enterprise)にLTV/CACを分けて計測している
  • チャーンレートを月次で計測している
  • CAC回収期間を把握している
  • ダッシュボードで主要指標を可視化している
  • 月次でユニットエコノミクスをレビューする会議体がある
  • マーケ・営業・CSの各部門がKPIを共有している
  • 改善施策の効果を定量的に測定している
  • セグメント別の投資判断ができる状態になっている
  • コホート分析でLTVの推移を追跡している
  • リードソース別のCAC・LTVを把握している

部門連携による改善サイクルの回し方

ユニットエコノミクスの改善には、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門が連携することが不可欠です。

マーケティング部門はリード獲得コストの最適化とリードの質向上を担います。リードソース別のCAC・成約率を分析し、効率の良いチャネルへの投資を判断します。

営業部門は商談効率の向上と成約率の改善を担います。リードスコアリングに基づく優先度付けにより、高確度の案件に集中できる体制を構築します。

カスタマーサクセス部門はLTV向上の中心的な役割を担います。オンボーディング支援、解約防止、アップセル/クロスセルの推進により、顧客の長期的な成功を支援します。

各部門が同じダッシュボードを見ながら、定期的にKPIをレビューする会議体を設けることで、部門間の連携が強化されます。

まとめ:計測基盤と改善サイクルでユニットエコノミクスを最適化する

本記事では、SaaSビジネスにおけるユニットエコノミクスの基本概念から改善施策まで解説しました。

重要なポイントをまとめると:

  • LTV/CAC比率3以上が健全の目安とされるが、これは業界の経験則であり、自社データでの検証が必要
  • 日本BtoB SaaSはグローバル標準よりCAC回収期間が長い傾向(18〜24ヶ月が相場)があり、この特性を考慮した目標設定が重要
  • LTV向上(チャーン率低減、アップセル/クロスセル)とCAC削減(リード獲得効率化、成約率向上)の両面からアプローチする
  • 一度計測して終わりではなく、継続的なモニタリングと改善サイクルが不可欠

ユニットエコノミクスの改善には、LTV/CACの正確な計測基盤を整えた上で、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門が連携した改善サイクルを回すことが不可欠です。本記事で紹介したチェックリストを活用し、まずは自社の計測状況を確認するところから始めてみてください。

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よくある質問

Q1ユニットエコノミクスの適正値はいくつですか?

A1LTV/CAC比率3以上が健全の目安とされています。ただしこれは業界の経験則であり、自社のビジネスモデルや市場環境に応じて検証が必要です。日本BtoB SaaSはグローバル標準より回収期間が長い傾向があり、18〜24ヶ月が相場とされています。

Q2CAC回収期間の目安はどのくらいですか?

A2グローバル標準では12ヶ月以内が理想とされますが、日本BtoBエンタープライズSaaSでは18〜24ヶ月が相場です。ターゲットセグメント(SMB/Mid-Market/Enterprise)に応じた目標設定が重要です。

Q3LTVはどのように計算しますか?

A3「月次粗利×平均継続月数」または「月次粗利÷月次チャーンレート」で算出します。売上ベースではなく粗利ベースで計算することで、実際の収益性を正確に把握できます。

Q4ユニットエコノミクスを改善するにはどうすればよいですか?

A4LTV向上(チャーン率低減、アップセル/クロスセル)とCAC削減(リード獲得効率化、成約率向上)の両面からアプローチします。マーケティング・営業・カスタマーサクセスの部門連携で改善サイクルを回すことが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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