MAツール選定で成果を出すために知っておくべきこと
結論から言えば、MAツールは、ツール選定だけでなく、MA設定と運用体制構築を同時に進めることで初めて成果を出せます。
MA(マーケティングオートメーション) とは、見込み客の獲得から育成までのマーケティング業務を管理・自動化・効率化するツールです。リード管理やスコアリング、メール配信の自動化などを実施します。
MAツールは多くのBtoB企業で導入が検討されていますが、実際の導入率は全体で1.2%、上場企業でも14.6%と決して高くありません(2021-2022年調査)。導入率が低い理由の一つは、ツールを導入しただけでは成果が出ず、MA設定や運用体制の構築が不可欠であることを認識せずに失敗するケースが多いためと考えられます。
この記事で分かること
- MAツールの基本機能とBtoB企業での役割
- 費用相場と価格帯別の機能比較
- 導入後に失敗する理由と成果を出すための運用ポイント
- 選定から運用定着までの実践ステップ
- BtoB企業に適したMAツールの選定基準
この記事では、MAツールの選定だけでなく、導入後のMA設定と運用体制構築まで含めた実践ガイドを提供します。
MAツールとは何か - 基本機能とBtoB企業での役割
MAツールは、リード獲得から育成、商談化までのマーケティング業務を自動化・効率化するツールです。MA市場は成長を続けており、2024年の市場規模は約612億円(4億810万米ドル)、2033年までに約1,272億円(8億4,810万米ドル)へ成長すると予測されています(CAGR 8.5%、IMARC Group)。国内でも2021年に約600億円の市場規模が、2026年には865億円に達する見込みです(矢野経済研究所)。
MAツールは、従来手作業で行っていたマーケティング業務を自動化し、リードの獲得から育成、営業への引き渡しまでを一気通貫で管理できる点が特徴です。
MAツールの主要機能
MAツールの主要機能には以下のようなものがあります。
リード管理: Webフォームやランディングページから獲得したリード情報を一元管理します。企業名、担当者名、連絡先、興味関心などのデータを蓄積し、営業活動の基盤とします。
リードスコアリング: リードスコアリングとは、見込み顧客の購買意欲や優先度を点数化し、営業効率を高める手法です。行動スコア(Webサイト訪問、資料ダウンロード、メール開封など)と属性スコア(企業規模、役職、業種など)を組み合わせて評価します。
リードナーチャリング: リードナーチャリングとは、見込み顧客(リード)を育成し、購買意欲を高めて商談化・売上につなげるプロセスです。メール配信の自動化により、リードの興味関心に応じたコンテンツを適切なタイミングで配信します。
フォーム・ランディングページ作成: リード獲得のためのフォームやランディングページを簡単に作成できます。
分析・レポート: リード獲得数、メール開封率、コンバージョン率などのKPIをダッシュボードで可視化し、マーケティング施策の効果測定を行います。
これらの機能により、BtoB企業はリード獲得から育成、商談化までのマーケティングプロセスを効率化できます。
CRM/SFAとの違いと連携の重要性
MAツールとCRM/SFAは、それぞれ異なる役割を持ちます。
CRM(顧客関係管理) とは、Customer Relationship Managementの略で、顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング活動を最適化するシステムです。SFA(Sales Force Automation)は営業活動の自動化・効率化に特化したツールで、商談管理や営業プロセスの可視化を行います。
MAツールはマーケティング部門が主に使用し、リード獲得・育成に焦点を当てます。一方、CRM/SFAは営業部門が使用し、商談管理や顧客フォローに焦点を当てます。
両者を連携させることで、マーケティング部門で獲得・育成したリードを営業部門へスムーズに引き渡し、リードから商談化、受注までを一気通貫で管理できます。この連携が不十分な場合、せっかく獲得したリードが営業部門で活用されず、成果につながらないケースが多く見られます。
おすすめMAツールの比較と選び方
BtoB企業がMAツールを選定する際は、費用相場、機能、向いている企業規模などを総合的に比較することが重要です。以下の比較表と選定基準を参考にしてください。
【比較表】主要MAツール比較
| ツール分類 | 月額費用相場 | 主な機能 | 向いている企業 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 低価格国産ツール | 1万円〜10万円 | リード管理、メール配信、フォーム作成、基本的なスコアリング | 従業員50-300名のBtoB中小企業、MAを初めて導入する企業 | 高度な分析機能や外部連携が制限される場合がある |
| 中価格帯ツール | 10万円〜30万円 | リード管理、高度なスコアリング、ナーチャリングシナリオ、CRM/SFA連携 | 従業員300-1,000名のスケールアップ企業、MA運用経験がある企業 | 初期設定に一定の知識と工数が必要 |
| 大企業向けツール | 30万円〜50万円以上 | 全機能、高度な分析、ABM機能、グローバル対応、外部システム連携 | 従業員1,000名以上の大企業、複雑なマーケティングプロセスを持つ企業 | 運用負荷が高く、専任担当者が必要 |
BtoB中小企業向けMAツールの月額費用相場は1万円〜10万円、大企業向けで10万円〜50万円以上が一般的です(2024年時点)。ただし、契約規模(ユーザー数・リード数)により変動するため、個別見積もりを取得することを推奨します。
MAツールの満足度については、ITreviewのレビュー数ベースで全62製品中上位10製品の満足度平均が4.0前後となっています(2026年1月時点)。ただし、導入社数はベンダー自己申告が多いため、ITreviewなどのレビューサイトでユーザー評価を確認することを推奨します。
参考事例として、HubSpot Marketing Hubは導入社数258,000社以上(グローバル公称、日本含む)、月額無料〜96,000円(Professionalプラン)で提供されています(2024年時点)。無料プランと有料プランで機能差が大きいため、自社の要件に合ったプランを選定する必要があります。
費用相場と価格帯別の機能
MAツールの費用は、主に以下の要素で変動します。
ユーザー数: 利用するマーケティング担当者の人数により月額料金が変動します。
リード数: 管理するリード(見込み顧客)の数により料金が変動するケースがあります。リード数が増えると追加料金が発生するプランが一般的です。
機能範囲: 基本機能のみのプランから、高度な分析機能やABM(アカウントベースドマーケティング)機能を含むプランまで、料金帯が分かれています。
価格帯別の主な機能の違い
- 1万円〜10万円: リード管理、メール配信、フォーム作成、基本的なスコアリング機能が中心。BtoB中小企業の初めてのMA導入に適しています。
- 10万円〜30万円: 高度なスコアリング、ナーチャリングシナリオ、CRM/SFA連携、詳細な分析機能が追加されます。MA運用経験がある企業向けです。
- 30万円〜50万円以上: 全機能、ABM、グローバル対応、外部システム連携、専任サポートなどが含まれます。大企業や複雑なマーケティングプロセスを持つ企業向けです。
費用相場は契約規模により大きく変動するため、自社のリード規模や必要な機能を整理した上で、複数ツールの個別見積もりを比較することが重要です。
BtoB企業に適したMAツールの選定基準
BtoB企業がMAツールを選ぶ際は、以下の基準で評価することを推奨します。
CRM/SFA連携の容易さ: 既に使用しているCRM/SFA(Salesforce、HubSpot CRM、国内CRMなど)との標準連携が可能か確認します。連携が容易であれば、マーケティングから営業への引き渡しがスムーズになり、売上向上につながる可能性があります。
日本語UI・サポート: 国産ツールは日本語UI・サポートが充実しており、初めてのMA導入でも運用しやすい傾向があります。外資系ツールは高機能ですが、英語ドキュメントが中心で運用負荷が高まるケースもあります。
リード規模への対応: 自社の現在および将来のリード規模に対応できるか確認します。リード数によって料金が変動するプランが多いため、スケールしやすいツールを選定することが重要です。
BtoB特化機能: リードスコアリング、ナーチャリング、ABM機能など、BtoB企業に必要な機能が充実しているか確認します。
無料トライアル・PoC実施: 無料トライアルやPoCを活用し、自社のリード規模で実際に3ツール程度を試してから本格導入することを推奨します。実際に操作してみることで、UI/UXの使いやすさや運用負荷を体感できます。
MAツール導入で失敗する理由と成果を出すための運用ポイント
MAツールを導入しても成果が出ない企業が少なくありません。国内企業のMA導入率が全体で1.2%、上場企業でも14.6%と低い背景には、ツール導入後の運用体制構築の失敗があると考えられます。
よくある失敗パターン
失敗パターン1: ツール導入で満足し、MA設定を後回しにする
「MAツールを選んで導入すれば自動的に成果が出る」と思い込み、MA設定や運用体制の構築を後回しにする失敗パターンがあります。この考え方は誤りです。MAツールはあくまでツールであり、スコアリングルールやナーチャリングシナリオを設定しなければ、リードの優先順位付けや自動育成は実現しません。
高額な外資系ツールほど効果が高いと思われがちですが、中小企業では運用負荷が増大し、ROIが出ず撤退するケースが多いのが実情です。導入率が1.2%と低迷している一因もここにあります。
失敗パターン2: 運用体制が整わず活用されない
担当者のアサインが不明確、KPI設定がない、PDCAサイクルが回らないなど、運用体制が整わずMAツールが活用されないケースがあります。特に、マーケティング担当者が少ない中小企業では、MA運用が後回しになりがちです。
失敗パターン3: CRM/SFA連携が不十分で営業部門と分断される
マーケティング部門でリードを獲得・育成しても、営業部門へのスムーズな引き渡しができず、リードが放置されるケースがあります。CRM/SFA連携が不十分だと、マーケティングと営業が分断され、せっかくのリードが商談化されません。
成果を出すための運用ポイント
成果を出すためには、以下の運用ポイントを押さえることが重要です。
MA設定の初期構築: スコアリングルール(行動スコア・属性スコアの定義)、ナーチャリングシナリオ(メール配信フロー、コンテンツ準備)、フォーム/LP作成(リード獲得導線の整備)をツール導入と同時に進めます。
運用体制の整備: 担当者をアサインし、KPI(リード獲得数、商談化率、受注率など)を設定し、PDCAサイクルを回す体制を構築します。
CRM/SFA連携による営業部門との連携体制: マーケティング部門で育成したリードを営業部門へスムーズに引き渡すルールを整備します。リードスコアが一定基準を超えたら自動的に営業へ通知するなど、連携の仕組みを構築します。
成功事例: SHANON MARKETING PLATFORM導入事例では、物流会社で受注件数前年比264%増を実現しています(2025年データ、ベンダー公称)。この事例では、MA設定と運用体制を整備し、マーケティングと営業の連携を強化したことが成果につながったと報告されています。ただし、ベンダー公称事例であり第三者検証はされていないため、他の要因(営業強化、市場拡大等)も含む可能性があることに留意が必要です。
MAツール選定から運用定着までの実践ステップ
MAツールで成果を出すには、選定から運用定着までを一気通貫で進めることが重要です。以下のチェックリストとステップを参考にしてください。
【チェックリスト】MAツール選定+運用定着チェックリスト
ツール選定
- 自社の課題整理(リード獲得・育成・商談化のどこに課題があるか)
- 要件定義(必要な機能、予算、リード規模、CRM/SFA連携要件)
- 3-5ツールのリストアップと比較表作成
- 既存CRM/SFAとの連携可否の確認
- 費用相場の確認と予算との整合性チェック
- 無料トライアル・PoCの実施(3ツール程度)
- UI/UXの使いやすさ評価
- 日本語サポートの有無確認
- 契約条件(最低契約期間、解約条件)の確認
- ツールの選定と契約
MA設定
- スコアリングルールの設計(行動スコア・属性スコアの定義)
- ナーチャリングシナリオの設計(メール配信フロー)
- コンテンツの準備(メールテンプレート、ホワイトペーパー等)
- フォーム・ランディングページの作成
- CRM/SFAとの連携設定
- テストリードでの動作確認
- リードの引き渡し基準の設定(スコア閾値等)
- ダッシュボード・レポート設定
運用体制構築
- MA運用担当者のアサイン
- KPIの設定(リード獲得数、商談化率、受注率等)
- マーケティング部門と営業部門の連携ルール整備
- リード引き渡しのフロー確認
- 週次・月次レポート作成ルールの整備
- PDCAサイクルの運用開始
- 定期的な設定見直し(スコアリングルール、シナリオ改善)
- 営業部門へのフィードバック収集
- ツールベンダーとの定例ミーティング設定
- 運用マニュアル・ナレッジの整備
無料プラン・トライアルから開始し、自社のリード規模で3ツールPoCを実施してから本格導入することを推奨します。
ステップ1: ツール選定
ツール選定は以下の流れで進めます。
課題整理: まず、自社のマーケティングプロセスでリード獲得・育成・商談化のどこに課題があるかを整理します。リード獲得数が不足しているのか、獲得したリードが育成されず放置されているのか、商談化率が低いのかを明確にします。
要件定義: 課題に基づき、必要な機能、予算、リード規模、CRM/SFA連携要件を定義します。例えば、「月間リード獲得数500件、予算月額10万円以内、Salesforceと標準連携、リードスコアリング機能必須」などの要件を明確にします。
比較検討: 要件に基づき、3-5ツールをリストアップし、比較表(機能・費用・向いている企業)で評価します。各ツールの公式サイト、ITreviewなどのレビューサイトで情報を収集します。
PoC実施: 無料トライアルを活用し、3ツール程度を実際に試します。実際のリードデータを少量投入し、スコアリングやメール配信を試すことで、UI/UXの使いやすさや運用負荷を体感できます。
契約・導入: PoCの結果を踏まえ、最も自社に適したツールを選定し、契約します。契約条件(最低契約期間、解約条件)を確認し、初期費用・月額費用の見積もりを取得します。
ステップ2: MA設定と運用体制構築
ツール選定後、すぐにMA設定と運用体制構築を開始します。ツール導入と同時に進めることが重要です。
スコアリングルール設定: 行動スコア(Webサイト訪問5点、資料ダウンロード10点、ウェビナー参加20点など)と属性スコア(役職、企業規模、業種など)を定義します。合計スコアが一定基準(例: 50点)を超えたリードを「ホットリード」として営業へ引き渡します。
ナーチャリングシナリオ構築: リードの興味関心に応じたメール配信フローを設計します。例えば、資料ダウンロード後に関連ケーススタディを配信、ウェビナー参加後に個別相談を案内するなど、段階的に購買意欲を高めるシナリオを構築します。
フォーム/LP作成: リード獲得のためのフォームやランディングページを作成し、Webサイトやキャンペーンに組み込みます。
運用体制整備: MA運用担当者をアサインし、KPI(リード獲得数、商談化率、受注率など)を設定します。マーケティング部門と営業部門の連携ルール(リード引き渡し基準、フィードバック収集方法)を整備し、PDCAサイクルを回す体制を構築します。週次・月次でレポートを作成し、スコアリングルールやナーチャリングシナリオを改善していきます。
まとめ: MAツールは選定と運用体制構築を同時に進めることで成果を出せる
この記事では、MAツールの選定から運用定着までの実践ガイドを提供しました。
要点整理
- 費用相場とBtoB向け機能: BtoB中小企業向けで月額1万円〜10万円、大企業向けで10万円〜50万円以上が相場です。CRM/SFA連携、リードスコアリング、ナーチャリング機能など、BtoB特化機能を重視して選定します。
- 失敗パターン回避: 「MAツールを導入すれば自動的に成果が出る」という誤解を避け、MA設定(スコアリング、ナーチャリングシナリオ)と運用体制構築(担当者、KPI、営業連携)を同時に進めることが重要です。
- 実践ステップ: 課題整理→要件定義→比較検討→PoC→契約の流れでツールを選定し、MA設定と運用体制構築を並行して進めます。無料トライアルで3ツールPoCを実施してから本格導入することを推奨します。
次のアクション
まず、自社のマーケティングプロセスで課題を整理し、必要な機能・予算・リード規模を要件定義します。その上で、3-5ツールをリストアップし、無料トライアルで3ツールPoCを実施してください。PoCでは実際のリードデータを使い、UI/UXの使いやすさや運用負荷を体感することが重要です。
MAツールは、ツール選定だけでなく、MA設定と運用体制構築を同時に進めることで初めて成果を出せます。選定と運用体制構築を一気通貫で進めることが、成果創出の鍵です。
