SaaS企業のABM導入で成果が出ない原因
SaaS企業のABM導入で成果を出すための答えは明確です。ターゲットアカウント選定だけでなく、MA/SFA連携によるデータ統合と営業・マーケ部門の連携体制まで含めて設計することで、商談化率向上につながる仕組みを構築できます。
日本のSaaS市場は2024年時点で9,800億円規模、年平均成長率(CAGR)11.6%と急成長を続けています。この成長市場において、BtoB企業でABMを実践している企業の約80%が成果を実感しているという調査結果があります(2025年IDEATECH社調査)。
しかし多くのSaaS企業が、ABMを「ターゲット企業を選んでアプローチすること」と捉え、MA/SFAとのデータ連携や部門間の体制構築を後回しにしています。その結果、従来のリードジェネレーションと変わらない活動に終わってしまうケースが少なくありません。
この記事で分かること
- ABMの定義とSaaSビジネスにおける位置づけ
- ABMとリードジェネレーションの違いと選択基準
- ABM導入のメリットと期待できる成果
- MA/SFA連携を含めたABM導入ステップ
- SaaS企業向けABM導入準備チェックリスト
ABMとは|SaaS企業における位置づけと基本概念
ABM(アカウントベースドマーケティング) とは、重要なターゲット企業を特定し、営業・マーケティングが連携して企業単位でアプローチする戦略です。不特定多数へのアプローチではなく、自社にとって価値の高い企業に集中的にリソースを投下します。
国内MA(マーケティングオートメーション)市場は2027年度に220億円予測、CAGR 12.0%で成長中です(ITR調査)。この市場拡大を背景に、MAツールとSFA(営業支援システム)を連携させたABM実践が広がっています。
ABMの基本的な考え方は、ICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客像) を明確に定義し、そのプロファイルに合致する企業をターゲットとして選定することから始まります。
ABMがSaaSビジネスと相性が良い理由
SaaSビジネスはサブスクリプション型のビジネスモデルであり、顧客獲得後の継続利用が収益の源泉となります。LTV(顧客生涯価値) の最大化が経営上の重要指標となるため、「量より質」を重視するABMのアプローチと本質的に一致します。
単発の受注を追うのではなく、長期的に価値を提供できる企業との関係構築を重視する点で、SaaSとABMは相性が良いと言えます。
ABMとリードジェネレーションの違い|SaaS企業の選択基準
ABMとリードジェネレーションは排他的なアプローチではなく、両方を組み合わせる企業も多いです。それぞれの特徴を理解した上で、自社に合った活用方法を検討することが重要です。
【比較表】ABM vs リードジェネレーション 施策比較表
| 項目 | ABM | リードジェネレーション |
|---|---|---|
| アプローチ対象 | 特定のターゲット企業 | 不特定多数 |
| 起点 | 企業(アカウント)単位 | 個人(リード)単位 |
| 営業・マーケ連携 | 必須(一体で設計) | 分業が一般的 |
| コンテンツ | 企業ごとにカスタマイズ | 汎用的なコンテンツ |
| KPI | ターゲット企業からの商談数 | リード獲得数 |
| 適した商材 | 高単価・長期契約 | 比較的低単価・短期決済 |
| 初期投資 | 高め(体制構築が必要) | 比較的低め |
ABMとリードジェネを組み合わせる方法
多くのSaaS企業では、新規リードはリードジェネレーションで広く獲得し、その中から重要なターゲットアカウントをABMで深耕するという併用パターンを採用しています。
具体的には、リードジェネレーションで獲得したリードの中からICPに合致する企業を抽出し、ABMの対象としてナーチャリングを強化する流れです。
SaaS企業がABMを導入するメリットと期待できる成果
ABM導入によって期待できる成果を、調査データと事例から確認します。ただし、成功事例は公開バイアスがあり、失敗事例はほとんど公開されていない点に注意が必要です。
グローバル調査によると、ABM実践企業の平均ROIは137%、収益増加は64.1%という結果が報告されています(Foundry調査)。ただし、この数値はグローバル調査であり、日本市場にそのまま適用できない可能性があります。
Forrester 2024年調査では、ABM実践企業の23%がROIが従来施策の1.5〜3倍になったと回答しています。すべての企業で大幅な成果が出るわけではなく、適切な設計と運用が前提となります。
国内事例として、SaaS企業B社ではパイロット導入(50社対象)で3ヶ月後に40%が商談化に成功したという報告があります。この事例が示すように、全社一気導入ではなく、小規模なパイロットで手応えを確認してから展開する方法が推奨されます。
SaaS企業のABM導入ステップとMA/SFA連携の設計
ABMの導入で失敗するパターンの多くは、ターゲット企業を選んでアプローチするだけで、MA/SFAとのデータ連携や営業・マーケ部門の体制構築を後回しにしているケースです。ABMツールを入れれば自動で成果が出るという考え方は誤りです。
国内企業のインサイドセールス導入率は40.6%(HubSpot Japan 2024年調査)であり、IS部門との連携も含めた体制設計が重要になります。
【チェックリスト】SaaS企業向けABM導入準備チェックリスト
- ICP(理想的な顧客像)を具体的な基準で定義している
- ターゲットアカウントリストを50社程度でパイロット作成している
- MA/SFAのデータ連携設計を完了している
- 営業・マーケ部門の役割分担と連携ルールを決めている
- マーケティングKPIを「リード数」から「ターゲット企業からの商談獲得企業数」に変更している
- ターゲット企業ごとのエンゲージメント状況を可視化できる仕組みがある
- インサイドセールスとの連携フローを設計している
- パイロット期間と評価基準を設定している
ターゲットアカウント(ICP)の選定方法
ICPの定義では、「年商50億円以上」「従業員300名以上」「特定業界」など、具体的な基準でリスト化することが重要です。曖昧な基準では、結局すべての企業がターゲットになってしまい、ABMの効果が薄れます。
既存顧客の中からLTVが高い企業の共通点を分析し、それをICPの基準として設定する方法が実践的です。
MA/SFA連携によるデータ統合と営業・マーケ連携
ABM成功の前提条件は、MA/SFA連携によるデータ統合です。ターゲットアカウントの行動データ(Webサイト訪問、コンテンツダウンロード、メール開封など)をスコアリングし、営業に連携することで、適切なタイミングでのアプローチが可能になります。
インテントデータ(購買意向を示すデータ)の活用も広がっていますが、まずはMA/SFAの基本的なデータ連携を確立することが優先です。
マーケティングKPIを「リード数」から「ターゲット企業からの商談獲得企業数」へシフトすることで、営業・マーケ部門が同じ目標に向かって連携しやすくなります。
まとめ|SaaS企業がABMで成果を出すために
本記事では、SaaS企業におけるABM導入の考え方、リードジェネレーションとの違い、導入ステップを解説しました。
BtoB企業でABMを実践している企業の約80%が成果を実感しているという調査結果がありますが、これは適切に設計・運用されたABMの話です。ターゲット選定だけでなく、MA/SFA連携によるデータ統合と営業・マーケ部門の連携体制まで含めて設計することが、商談化率向上につながる仕組みを構築するための鍵となります。
記事内で紹介した「SaaS企業向けABM導入準備チェックリスト」を活用して、自社の準備状況を確認してみてください。50社程度のパイロットで手応えを確認してから本格展開することで、リスクを抑えながらABMの効果を検証できます。
