なぜナーチャリングがうまくいかないのか
リードナーチャリングで商談化につながらないと悩んでいるなら、リードナーチャリングの失敗は施策の問題ではなく、MA/SFAデータ連携の不足とマーケ・IS間の連携設計の欠如が原因であり、データに基づくスコアリングと部門横断の引き渡し基準を整備することで商談化につながる仕組みを構築できます。
この記事で分かること
- ナーチャリングが失敗する本当の原因と改善の方向性
- MA/SFAデータ連携によるリード行動の可視化方法
- マーケ・IS部門間の連携設計と運用定着のポイント
- 今日から使えるリードナーチャリング設計チェックリスト
2025年の調査では、48.6%の企業が「リードの質」で理想に達していないと回答しています(2024年比+7.6ポイント)。また、29.9%が「リード育成が難しい」と感じており、これは2024年比で+3.9ポイント増加しています(ただし、BtoB経営者対象調査でありサンプル数は非明記)。
さらに、93.2%の企業がリード獲得コストの上昇を実感しているという調査結果もあります。セミナー申込単価は数年前と比較して大きく上昇しており、コスト効率の観点からも既存リードのナーチャリング強化が重要になっています。
メール配信やコンテンツ施策は実施しているのに商談化につながらない——そのような状況にあるマーケティング担当者は少なくありません。本記事では、ナーチャリングがうまくいかない原因を整理し、MA/SFAデータ連携と部門横断設計による解決策を解説します。
ナーチャリングの本質と陥りやすい誤解
ナーチャリングの本質は「リードの量を増やすこと」ではなく「リードの質を高めて商談化につなげること」です。しかし、多くの企業がこの点を見落としています。
2024年の調査によると、BtoB企業が最も重視するKPIは新規リード獲得数で32.1%を占めています。その理由として「施策でコントロール可能」が58.0%、「経営側の要求」が43.5%、「ナーチャリング前提戦略」が34.8%となっています。この結果から、獲得数に偏重した戦略を取る企業が多いことがわかります。
また、ナーチャリング改善施策として最も多く実施されているのは「発信コンテンツの見直し」で50.5%、次いで「営業への顧客情報提供」34.7%、「受注率の高いチャネル強化」34.2%となっています。
ここで注意したいのが、「メールを送ればナーチャリングになる」「コンテンツを増やせば成果が出る」という考え方は誤りであるということです。施策の量を増やすことに注力し、MA/SFAとのデータ連携やインサイドセールス部門との連携設計を後回しにしてしまうパターンでは成果が出ません。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得し、一定の基準を満たしたリードのことです。営業へ引き渡す前段階として位置づけられますが、このMQLの定義が曖昧なまま運用している企業が多いのが実態です。
MAツール導入≠成果ではない理由
MAツールを導入すれば自動的にナーチャリングがうまくいくわけではありません。日本のMA市場規模は2024年に4億810万米ドルで、2033年までに8億4810万米ドルへ成長する見込みです(年平均成長率8.5%)。市場が拡大し多くの企業がMAツールを導入する一方で、運用定着に苦労しているケースも増えています。
MAツールはあくまで「仕組みを動かすための道具」です。運用体制・コンテンツ設計・部門間連携が伴わなければ、ツールだけでは成果につながりません。
ナーチャリングが失敗する主な原因・パターン
読者が自社の課題を特定できるよう、ナーチャリングが失敗する主な原因をパターン別に整理します。2025年の調査では、48.6%が「リードの質」で理想に達しておらず、29.9%が「リード育成が難しい」と回答しています。また、改善の方向性として「ターゲット見直し」36.6%、「データ分析強化」24.7%が挙げられています。
【比較表】ナーチャリング失敗パターンと改善策一覧
| 失敗パターン | 原因 | 改善策 |
|---|---|---|
| リード定義が曖昧 | マーケとISでMQL/SQLの定義が合意されていない | 両部門でリード定義を明文化し、スコアリング基準を設定する |
| MA/SFA連携なし | リード行動データが可視化されていない | MA/SFAを連携し、リードの行動履歴を一元管理する |
| 部門間連携の欠如 | マーケとISが別々に動いている | 週次のすり合わせミーティングを設置し、引き渡し基準を合意する |
| 施策偏重 | コンテンツ量を増やすことに注力 | スコアリングに基づく優先度付けで効率化する |
| 効果測定なし | 施策の成果が見えない | MQL化率・商談化率などのプロセスKPIを設定する |
CPA(Cost Per Acquisition) とは、顧客獲得単価のことで、1件のリード獲得にかかったコストを示す指標です。リード獲得コストが上昇する中、ナーチャリングによる既存リードの活用がより重要になっています。
リード定義が曖昧なまま運用している
MQL/SQLの定義が曖昧だと、マーケティング部門が「質の高いリード」と判断して引き渡しても、インサイドセールス部門では「商談化しにくいリード」と評価される——このようなミスマッチが起こります。
スコアリングとは、リードの属性・行動データを点数化し、商談化可能性を数値で評価する手法です。スコアリング基準をマーケとISで合意し、明文化することがナーチャリング成功の第一歩となります。
MA/SFAデータ連携によるリード行動の可視化
MA/SFAデータ連携により、リードがどのようなコンテンツに興味を持ち、どの段階にいるのかを可視化できます。これにより、適切なタイミングで適切なアプローチを行うことが可能になります。
2025年の調査によると、BtoB企業のリード獲得単価(CPA)目標は5,000円〜10,000円未満が最多で21.8%、次いで10,000円〜15,000円未満が15.3%となっています。この目安を参考に、自社のナーチャリング効率を評価することができます。
MA/SFAデータ連携で可視化できる主な項目は以下の通りです:
- Webサイトの閲覧履歴(どのページを見たか)
- コンテンツのダウンロード履歴
- メールの開封・クリック履歴
- セミナー・ウェビナーへの参加履歴
- 問い合わせ・資料請求の履歴
スコアリング設計の基本と運用のコツ
スコアリング設計では、リードの属性情報と行動情報を組み合わせて点数化します。設計の目安として、以下のような配点が参考になります(ただし、業種や商材により最適な設定は異なります):
- ホワイトペーパーダウンロード: +20点程度
- サービスページ閲覧: +25点程度
- 料金ページ閲覧: +30点程度
- 問い合わせフォーム到達: +40点程度
重要なのは、スコアリングの閾値を設定し、運用しながら改善するサイクルを回すことです。最初から完璧な設計を目指すのではなく、仮説を立てて検証し、定期的に見直すアプローチが効果的です。
マーケ・IS部門間の連携設計と運用定着
ナーチャリングを成功させるには、マーケティング部門とインサイドセールス部門の連携が不可欠です。ナーチャリング改善施策として「営業への顧客情報提供」が34.7%で実施されており、部門間連携の重要性が認識されつつあります。また、2025年の改善取り組みとして「データ分析強化」が24.7%挙げられており、データに基づく連携設計が求められています。
【チェックリスト】リードナーチャリング設計チェックリスト
- MQL(Marketing Qualified Lead)の定義がマーケ・IS間で合意されている
- SQL(Sales Qualified Lead)の定義がIS・営業間で合意されている
- リードスコアリングの基準が明文化されている
- スコアリングの閾値(引き渡し基準)が設定されている
- MA/SFAのデータ連携が完了している
- リード行動履歴が一元管理されている
- ホットリードの引き渡しタイミングが明確になっている
- 引き渡し後の対応期限が設定されている
- ISからマーケへのフィードバックループが設計されている
- 週次のすり合わせミーティングが設置されている
- MQL化率がKPIとして設定されている
- 商談化率がKPIとして設定されている
- CPA(顧客獲得単価)の目標が設定されている
- スコアリング基準の見直しサイクルが決まっている
- ナーチャリングコンテンツの効果測定を実施している
ホットリード引き渡しルールの設計方法
ホットリードの引き渡しを効果的に行うには、以下の3つの要素を設計する必要があります。
1. 引き渡しタイミングの明確化 スコアリングの閾値を超えた時点、または特定の行動(料金ページ閲覧、問い合わせなど)があった時点で引き渡すルールを決めます。
2. 対応期限の設定 引き渡しを受けたISが、どの程度の期間内にコンタクトを取るべきかを設定します。リードの温度感は時間とともに下がるため、迅速な対応が重要です。
3. フィードバックループの構築 ISからマーケへ「このリードは商談化した/しなかった」「引き渡しタイミングは適切だった/早すぎた」などのフィードバックを戻す仕組みを作ります。これにより、スコアリング基準の改善につなげることができます。
ナーチャリングを仕組み化するために
ナーチャリングを属人的な施策から脱却させ、継続的に成果を出す仕組みとして機能させるためには、「施策の量を増やす」アプローチから「データ連携と部門横断設計を整備する」アプローチへの転換が必要です。
本記事で解説したように、リードナーチャリングの失敗は施策の問題ではなく、MA/SFAデータ連携の不足とマーケ・IS間の連携設計の欠如が原因です。データに基づくスコアリングと部門横断の引き渡し基準を整備することで、商談化につながる仕組みを構築できます。
まずは自社の現状をチェックリストで確認し、改善すべきポイントを特定することから始めてみてください。MA/SFA設定から運用定着まで、専門家の支援を活用することで、より短期間で仕組みを整備することも可能です。
