PMF達成後に営業が伸び悩む構造的な原因
多くの人が見落としがちですが、PMF後の営業成功は、GTM戦略の策定だけでなく、MA/SFA連携による営業プロセスの可視化とマーケティング・インサイドセールスとの連携設計まで実装することで、再現性のある売れる仕組みが構築できます。
GTM戦略(Go-To-Market戦略) とは、どの顧客に・どんな価値を・どう届けるかを体系的に設計する市場参入戦略です。PMFを達成したスタートアップが次のステージに進む際、このGTM戦略と営業プロセスの整備が成長の鍵を握ります。
SaaS営業のノルマ達成率は2012年の74%から2024年には51%に低下しているというデータがあります。この傾向からも、構造化されたGTM戦略と営業体制の重要性が高まっていることがわかります。
さらに、グローバル調査によると、営業・マーケティングチームの81%が営業プロセスを見直し・修正していないと報告されています(日本単独データではないため、日本市場では異なる可能性があります)。PMF達成後も従来のやり方を続けていては、スケールに対応できません。
この記事で分かること
- PMF前後で変わる営業活動の要件とGTM戦略の重要性
- 「増員すれば売上が伸びる」という誤解がなぜ失敗するのか
- MA/SFA連携による営業プロセスの可視化方法
- IS/FS分業体制の設計ポイント
- PMF後営業体制構築チェックリスト
PMF前後で変わる営業活動の要件
PMF前とPMF後では、営業活動に求められる要件が大きく異なります。PMF前は「売れるかどうかの検証」がメインですが、PMF後は「売れる仕組みのスケール」が焦点となります。
ICP(理想顧客プロファイル) とは、LTV・受注率が高いセグメントを基準に定義した理想的な顧客像です。PMF後の営業では、このICPを明確に定義し、GTM戦略に基づいた体系的なアプローチが必要になります。
【比較表】PMF前後の営業活動比較表
| 項目 | PMF前 | PMF後 |
|---|---|---|
| 目的 | 製品・市場適合の検証 | 売れる仕組みのスケール |
| 営業スタイル | 創業者・少数精鋭による属人的営業 | プロセス化された組織営業 |
| ターゲット | 幅広く検証 | ICPに基づく絞り込み |
| KPI | 顧客フィードバック、PMF達成指標 | 営業効率指標(CAC回収期間、LTV/CAC等) |
| プロセス | 柔軟に変更・実験 | 標準化・型化が必要 |
| 体制 | フラット、少人数 | IS/FS分業、マーケ連携 |
GTM戦略とICP定義の重要性
GTM戦略を策定する際、最も重要なのがICPの定義です。ICPに合わないリードは商談化率が低く、営業リソースを浪費する原因となります。
ICP定義のポイントは以下の通りです。
- 既存顧客分析: LTVが高い顧客、受注率が高かったセグメントを分析
- 属性の明確化: 業種、企業規模、部門、役職などを具体化
- 課題の特定: そのセグメントが抱える具体的な課題を言語化
- マーケとの共有: ICPをマーケティング部門と共有し、リードの質を担保
「増員すれば売上が伸びる」が失敗する理由
PMF達成後に「営業を増員すれば売上も伸びる」と考え、属人的な営業活動を続けたまま人員を増やしてしまい、プロセスが標準化されず営業効率が下がる——これはよくある失敗パターンです。この考え方は誤りであり、成果にはつながりません。
グローバル調査によると、新入営業が完全戦力になるまで平均5.3ヶ月かかるとされています(日本市場では異なる可能性があります)。プロセスが属人化したまま増員すると、この立ち上がり期間がさらに長期化し、営業効率が下がります。
営業リーダーが挙げる連携障壁として、以下のような課題が報告されています。
- チーム間コミュニケーションの欠如: 38%
- 目標・戦略の不一致: 30%
- 営業インプットなしでのマーケ活動: 27%
- ツールがバラバラ: 26%
これらの障壁は、プロセス標準化とツール統合によって解消できる課題です。増員の前に、まず営業プロセスの整備が必要です。
MA/SFA連携による営業プロセスの可視化
MA/SFA連携により、営業プロセスを可視化し、属人化から脱却することができます。調査によると、営業プロフェッショナルの約20%(5人に1人)が営業とマーケがあまり連携していない、または全く連携していないと回答しています。
SDR/BDRとは、インバウンドリードの精査やアウトバウンド開拓を担う営業開発担当者です。AE(アカウントエグゼクティブ) とは、商談から受注までを担当するフィールド/インサイドセールス担当者を指します。
MA/SFA連携で実現できることは以下の通りです。
- リードの行動履歴の可視化(Webサイト訪問、メール開封等)
- スコアリングによるリードの優先順位付け
- マーケ→IS→FSへの引き渡しプロセスの標準化
- 商談進捗の可視化とボトルネックの特定
ある企業では、業務標準化により月平均約20時間の残業時間が平均8時間に短縮したという事例があります(特定企業の事例であり、効果は企業規模や業種によって異なります)。
IS/FS分業体制の設計ポイント
IS(インサイドセールス)/FS(フィールドセールス)の分業体制を設計する際のポイントは以下の通りです。
- 役割の明確化: SDR/BDRはリードの精査とナーチャリング、AEは商談以降を担当
- 引き渡し基準の設定: どのような状態のリードをFSに引き渡すかを明文化
- オンボーディング構造の整備: 新入営業の立ち上がり期間を短縮するための型・プレイブックを用意
- フィードバックループの構築: FSからISへ、ISからマーケへのフィードバックを仕組み化
PMF後の営業体制構築の実践ステップ
営業・マーケティングチームの81%が営業プロセスを見直し・修正していないという調査結果があります(グローバル統計)。PMF後の成長フェーズでは、プロセスの見直しと体制構築が不可欠です。
NRR(Net Revenue Retention) とは、既存顧客からの売上維持率です。アップセル・解約を含めた既存顧客ARRの増減率を示す指標で、PMF後の営業体制では重要なKPIとなります。
【チェックリスト】PMF後営業体制構築チェックリスト
- GTM戦略が明文化されている
- ICP(理想顧客プロファイル)が定義されている
- ICPがマーケティング部門と共有されている
- リードスコアリングの基準が設定されている
- MQL/SQLの定義がマーケ・IS間で合意されている
- IS→FSへの引き渡し基準が明文化されている
- MA/SFAのデータ連携が完了している
- 営業プロセスが可視化されている
- 営業プレイブック(型)が言語化されている
- 新入営業向けオンボーディングプログラムがある
- 営業効率指標(CAC回収期間、LTV/CAC等)が設定されている
- NRRが測定・追跡されている
- マーケ・IS・FSの週次/月次ミーティングが設置されている
- ISからマーケへのフィードバックループがある
- 営業プロセスの定期見直しサイクルが決まっている
マーケティング・ISとの連携設計
営業リーダーが挙げる連携障壁(コミュニケーション欠如38%、目標不一致30%等)を踏まえ、以下の施策を実施することが効果的です。
- ICP定義の共有: マーケティングが獲得すべきリードの基準を明確化
- 目標の一貫性: マーケ、IS、FSで一貫したKPIを設定
- ツールの統合: MA/SFA/CRMを連携させ、データを一元管理
- 定期的なすり合わせ: 週次/月次でリードの質や商談化率を振り返り
マーケからのリード供給において、ICPに合わない質の低いリードが多いと、ISのリソースが浪費されます。ICP定義を共有し、質の高いリード供給を実現することが重要です。
まとめ|再現性のある営業プロセスがスケールの鍵
本記事では、PMF達成後の営業体制構築について、GTM戦略からMA/SFA連携、IS/FS分業体制まで解説しました。
PMF後に営業を増員しても売上が伸びない原因は、プロセスの属人化にあります。「増員すれば売上が伸びる」という考え方は誤りであり、まずプロセスの標準化と体制構築が必要です。
記事内で紹介した「PMF後営業体制構築チェックリスト」を活用して、自社の現状を確認してみてください。まずGTM戦略とICP定義の見直しから始め、MA/SFA連携による営業プロセスの可視化を進めることをお勧めします。
PMF後の営業成功は、GTM戦略の策定だけでなく、MA/SFA連携による営業プロセスの可視化とマーケティング・インサイドセールスとの連携設計まで実装することで、再現性のある売れる仕組みが構築できます。
