LTV(顧客生涯価値)とは?計算方法・向上施策・活用事例を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

顧客1人あたりの売上を最大化したいけれど、何から手をつければいいか分からない...

「LTVを高めましょう」「LTVを意識した経営が重要」...こうした言葉を耳にする機会が増えたものの、「具体的にどう計算するの?」「どうすれば高められる?」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この記事では、LTV(顧客生涯価値)の基本概念から計算方法、向上施策、CACとの関係までを、SaaS/サブスクビジネスの実務担当者向けに解説します。

この記事のポイント:

  • LTV(Life Time Value)とは、顧客1人が取引開始から終了までにもたらす利益の総額
  • サブスクリプション型では「月次MRR ÷ 解約率」で計算するのが一般的
  • LTV/CAC比率3:1以上が健全な目安とされている
  • LTV向上施策は「購買単価」「購買頻度」「継続率」の3軸で考える
  • 新規顧客獲得には既存顧客維持の約5倍のコストがかかる

1. LTV(顧客生涯価値)が重要視される理由

近年、LTVが重視されるようになった背景には、いくつかの市場環境の変化があります。

人口減少による市場飽和: 日本の総人口は平成20年の12,808万人をピークに減少を続けています(令和3年:12,550万人)。新規顧客を獲得できるパイが縮小する中で、既存顧客との関係構築がより重要になっています。

顧客獲得コストの上昇: 3rd Party Cookie規制の進展やデジタル広告の競争激化により、顧客獲得コスト(CAC)は年々上昇しています。新規獲得に依存するビジネスモデルでは、収益性の維持が難しくなっています。

サブスクリプション型ビジネスの台頭: 継続購入を前提としたサブスクリプション型サービスが増加し、「顧客を獲得して終わり」ではなく「継続的な関係構築」が事業成長の鍵となっています。

新規獲得と既存維持のコスト差: 新規顧客の獲得には、既存顧客の維持に比べておよそ5倍のコストがかかると言われています。LTVを高めて既存顧客を維持する方が、効率的に収益を拡大できます。

こうした背景から、「いかに顧客と長く付き合い、1人あたりの収益を最大化するか」というLTV経営の考え方が広まっています。

2. LTVの定義と計算方法

(1) LTVの定義と基本概念

LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引開始から終了までに企業にもたらす利益の総額を示す指標です。顧客の「生涯」にわたる価値を数値化することで、マーケティング投資の判断や顧客セグメントの優先順位付けに活用できます。

注意: LTVは「Loan to Value(ローン・トゥ・バリュー)」という不動産投資の指標と略語が同じですが、まったく別の概念です。本記事では顧客生涯価値としてのLTVを解説します。

(2) 基本的な計算式(平均単価×頻度×期間)

最も基本的なLTVの計算式は以下の通りです:

LTV = 平均顧客単価 × 粗利率 × 購買頻度 × 取引期間 - 顧客の獲得・維持コスト

より簡易的な計算式:

LTV = 平均購入価値 × 購入頻度 × 顧客ライフスパン

例えば、平均購入額が1万円、年間購入回数が4回、平均顧客継続期間が3年の場合:

LTV = 1万円 × 4回 × 3年 = 12万円

(3) サブスクリプション型・Eコマース型での計算方法

ビジネスモデルにより、適した計算方法が異なります:

サブスクリプション型(SaaS等):

LTV = 平均月次収益(MRR) ÷ 月次解約率

例えば、月次MRRが10万円、月次解約率が5%の場合:

LTV = 10万円 ÷ 0.05 = 200万円

この計算式は、解約率が一定と仮定した場合の推定LTVを算出します。

Eコマース型:

LTV = 平均注文価値 × 年間購入頻度 × 平均顧客ライフスパン

例えば、平均注文額が5,000円、年間購入回数が6回、平均継続期間が2.5年の場合:

LTV = 5,000円 × 6回 × 2.5年 = 75,000円

LTV計算には推定値や仮定が含まれるため、定期的に見直して精度を高めることが重要です。

3. 業界別LTVの目安とベンチマーク

(1) SaaS・サブスクリプション型ビジネスの目安

SaaS/サブスクリプション型ビジネスでは、以下の指標が参考にされることが多いです:

指標 目安・健全水準
月次解約率(チャーンレート) 3%以下が理想、5%以下が許容範囲
LTV/CAC比率 3:1以上
CAC回収期間 12ヶ月以内

解約率が5%の場合、平均顧客継続期間は約20ヶ月(1 ÷ 0.05)となります。解約率を下げることがLTV向上に直結します。

(2) Eコマース・小売業の目安

Eコマースや小売業では、商材や購入頻度により大きく異なります:

業種 典型的な顧客ライフスパン
消耗品・日用品 2-5年
アパレル 1-3年
高額商材(家電等) 単発〜数年

リピート購入が見込める商材ほどLTVが高くなりやすく、LTV向上施策の効果も出やすい傾向があります。

(3) LTV/CAC比率の適正水準

LTV/CAC比率は、顧客獲得への投資効率を測る重要な指標です:

  • 3:1以上: 健全な水準。顧客獲得投資が十分に回収できている
  • 1:1〜3:1: 注意が必要。獲得コスト削減かLTV向上が必要
  • 1:1未満: 危険水準。顧客獲得するほど赤字が拡大

ただし、適正比率は業界やビジネスモデルにより異なります。成長フェーズでは一時的に比率が低くなることもあります。

4. LTV向上施策(購買単価・頻度・継続率)

LTVを向上させるには、「購買単価」「購買頻度」「継続率」の3つの軸から施策を考えます。

(1) 購買単価を上げる施策(アップセル・クロスセル)

アップセル: 現在利用しているプランやサービスよりも上位のものを提案します。

  • 上位プランへのアップグレード提案
  • 機能追加オプションの提案
  • 利用量に応じた従量課金の導入

クロスセル: 関連する他の商品・サービスを提案します。

  • 関連商品のレコメンド
  • バンドル(セット)販売
  • 関連サービスの紹介

アップセル・クロスセルは、顧客のニーズを理解した上で適切なタイミングで提案することが重要です。押し売りにならないよう、顧客にとってのメリットを明確に伝えます。

(2) 購買頻度を上げる施策(リピート促進)

リピート購入の促進:

  • 定期購入・サブスクリプション化
  • リピート購入特典の提供
  • 購入タイミングに合わせたリマインド

エンゲージメント向上:

  • メールマーケティングによる継続的な接点
  • コンテンツ配信による価値提供
  • コミュニティ形成による関係強化

購買頻度を上げるには、顧客が「また買いたい」「また使いたい」と思える体験を提供することが基本です。

(3) 継続率を高める施策(チャーン防止)

解約予兆の検知と対応:

  • 利用状況のモニタリング(ログイン頻度、機能利用率など)
  • 解約リスクが高い顧客への先回りフォロー
  • カスタマーサクセス体制の構築

顧客満足度の向上:

  • オンボーディング支援の強化
  • サポート品質の向上
  • 定期的な顧客フィードバックの収集と改善

スイッチングコストの構築:

  • データ蓄積による価値向上
  • 他システムとの連携強化
  • カスタマイズによる最適化

解約率(チャーンレート)の改善は、LTV向上に最も直接的に効果を発揮します。

5. LTVとCAC(顧客獲得コスト)の関係

(1) CACの定義と計算方法

CAC(Customer Acquisition Cost / 顧客獲得コスト)とは、新規顧客1人を獲得するためにかかるコストです:

CAC = 顧客獲得にかかった総コスト ÷ 獲得した顧客数

顧客獲得コストには、広告費、マーケティング人件費、営業人件費、ツール費用などが含まれます。

例えば、月間のマーケティング・営業費用が500万円で、獲得した新規顧客が50社の場合:

CAC = 500万円 ÷ 50社 = 10万円

(2) LTV/CAC比率の見方(3:1以上が目安)

LTV/CAC比率は、顧客獲得投資の効率を測る指標です:

LTV/CAC比率 = LTV ÷ CAC

例えば、LTVが200万円、CACが50万円の場合:

LTV/CAC比率 = 200万円 ÷ 50万円 = 4(4:1)

一般的にLTV/CAC比率が3:1以上であれば健全とされています。ただし、業界やビジネスモデル、成長フェーズにより適正値は異なります。

(3) ユニットエコノミクスの考え方

ユニットエコノミクス(Unit Economics)とは、顧客1人あたりの収益性を分析する考え方です。SaaS/サブスクリプションビジネスでは特に重要視されています。

主要な指標:

  • LTV: 顧客1人あたりの生涯価値
  • CAC: 顧客1人あたりの獲得コスト
  • LTV/CAC比率: 投資効率
  • CAC回収期間: 獲得コストを回収するまでの期間

ユニットエコノミクスが健全であれば、顧客を増やすほど利益が拡大します。逆に不健全であれば、成長するほど赤字が膨らむことになります。

6. まとめ:LTV経営を成功させるポイント

LTVは、顧客との長期的な関係構築を重視する経営において欠かせない指標です。成功させるためのポイントを整理します:

LTV経営のポイント:

  • 現状のLTVとCACを把握し、改善目標を設定する
  • 購買単価・頻度・継続率の3軸で向上施策を検討する
  • 解約率(チャーンレート)の改善を最優先で取り組む
  • LTV/CAC比率を定期的にモニタリングする
  • 短期的な売上だけでなく、長期的な顧客価値を重視する

次のアクション:

  • 自社のLTVとCACを計算してみる
  • 解約理由を分析し、チャーン防止施策を検討する
  • カスタマーサクセス体制の構築・強化を検討する
  • CRMツールを活用した顧客データの一元管理を進める

LTV向上と新規獲得のバランスは、事業フェーズや市場環境により異なります。ただし、新規獲得コストは既存維持の約5倍かかるため、特に市場が飽和している状況では、LTV向上を優先することが効率的な成長につながります。まずは現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問:

Q: LTV計算の期間はどう設定すべきですか? A: サブスクリプション型なら顧客の平均契約期間、Eコマースなら過去データから平均購入期間を算出します。一般的には3〜5年程度で設定することが多いです。解約率が高いほど期間は短くなります。定期的にデータを見直し、実態に合わせて調整することが重要です。

Q: SaaSビジネスでのLTV計算方法は? A: 「月次MRR ÷ 月次解約率」で算出するのが一般的です。例えば、月次MRRが10万円、月次解約率が5%なら、LTV = 200万円となります。ARR(年次経常収益)で計算する場合も同様の考え方で、「ARR ÷ 年次解約率」で算出できます。

Q: LTVの目標値はどう設定すればよい? A: LTV/CAC比率3:1以上が健全の目安とされていますが、業界・ビジネスモデルにより異なります。まず現状のLTVとCACを把握し、段階的に改善目標を設定することをお勧めします。いきなり高い目標を掲げるよりも、着実に改善を積み重ねることが重要です。

Q: LTV向上と新規獲得、どちらを優先すべき? A: 新規獲得コストは既存維持の約5倍かかると言われています。市場が飽和している状況ではLTV向上を優先する方が効率的です。ただし、成長フェーズでは新規獲得も重要になります。自社の事業フェーズと市場環境を踏まえてバランスを判断してください。

よくある質問

Q1LTV計算の期間はどう設定すべきですか?

A1サブスクリプション型なら顧客の平均契約期間、Eコマースなら過去データから平均購入期間を算出します。一般的には3〜5年程度で設定することが多いです。解約率が高いほど期間は短くなります。定期的にデータを見直し、実態に合わせて調整することが重要です。

Q2SaaSビジネスでのLTV計算方法は?

A2「月次MRR ÷ 月次解約率」で算出するのが一般的です。例えば、月次MRRが10万円、月次解約率が5%なら、LTV = 200万円となります。ARR(年次経常収益)で計算する場合も「ARR ÷ 年次解約率」で算出できます。

Q3LTVの目標値はどう設定すればよい?

A3LTV/CAC比率3:1以上が健全の目安とされていますが、業界・ビジネスモデルにより異なります。まず現状のLTVとCACを把握し、段階的に改善目標を設定することをお勧めします。

Q4LTV向上と新規獲得、どちらを優先すべき?

A4新規獲得コストは既存維持の約5倍かかると言われています。市場が飽和している状況ではLTV向上を優先する方が効率的です。ただし、成長フェーズでは新規獲得も重要になります。自社の事業フェーズと市場環境を踏まえて判断してください。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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