エクセルで営業管理|顧客管理・案件管理・活動記録の方法と限界

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/9

エクセルでの営業管理、本当に自社に合っているか不安...

B2B企業の営業現場では、エクセルで顧客情報や案件を管理している企業が今でも多く見られます。「導入コストがかからない」「使い慣れている」という理由でエクセル管理を続けているものの、「データがバラバラで最新情報が分からない」「複数人で同時に更新できない」といった課題に直面していませんか。

一方で、SFA(営業支援システム)やCRMの導入には月額コストがかかり、「本当に今移行すべきなのか」と迷う担当者も少なくありません。

この記事では、エクセルでの営業管理方法(テンプレート・運用のコツ)と、SFA/CRM移行を検討すべきタイミングの判断基準を実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • エクセル営業管理は営業担当者5名以下・月間商談数50件以下なら十分対応可能
  • 顧客管理・案件管理・営業活動記録の3つのテンプレートで基本を押さえる
  • Microsoft 365のクラウド共有機能を活用すれば複数人での同時編集も可能
  • 営業担当者5名以上、月間商談数50件以上になるとSFA/CRM移行を検討すべき
  • エクセル管理の限界は「バージョン管理」「データの属人化」「セキュリティリスク」

1. エクセルで営業管理をする理由とメリット

まず、なぜ多くの企業がエクセルで営業管理を続けているのか、そのメリットを整理します。

(1) エクセル営業管理の3つのメリット(コスト、柔軟性、習熟度)

エクセルでの営業管理には、以下の3つの明確なメリットがあります。

①コスト面での優位性
Microsoft Officeを既に導入している企業であれば、追加コストなしで営業管理を始められます。SFA/CRMは月額数万円〜数十万円のコストがかかるため、立ち上げ期や小規模組織ではエクセルが現実的な選択肢です。

②自由なカスタマイズ性
エクセルは項目追加・削除、計算式の変更などが自由にでき、自社の営業プロセスに合わせた管理シートを柔軟に作成できます。SFA/CRMは設定変更に制約がある場合もあり、この点はエクセルの強みです。

③操作の習熟度が高い
多くのビジネスパーソンがエクセルの基本操作に慣れているため、新たなツールの習得コストがかかりません。新人でもすぐに入力・閲覧ができる点は、運用上の大きなメリットです。

(2) エクセル営業管理が適する企業規模

エクセルでの営業管理が適しているのは、以下のような企業です。

  • 営業担当者5名以下
  • 月間商談数50件以下
  • 営業プロセスがシンプル(複雑な部門間連携が不要)

この規模であれば、ファイル共有やデータ更新の頻度も限定的で、エクセルで十分に管理可能です。

(3) エクセルとSFA/CRMの使い分け

エクセルとSFA/CRMは、企業の成長段階によって使い分けるのが現実的です。

エクセルが適する段階:
創業期〜初期成長期。営業メンバーが少なく、商談数も限定的。データ共有の頻度が低い。

SFA/CRMが適する段階:
成長期〜拡大期。営業メンバーが増え、商談数が増加。マーケティング・カスタマーサクセスなど部門間連携が必要になった段階。

エクセルは「使い続けるべきツール」ではなく、「初期段階で有効なツール」と捉えるのが適切です。

2. エクセル営業管理の3つの基本テンプレート

エクセルでの営業管理を始める際、以下の3つのシートを作成するのが基本です。

(1) 顧客管理シート(会社名、担当者、連絡先等)

顧客情報を一元管理するシートです。最低限、以下の項目を含めます。

  • 会社名
  • 担当者名
  • 部署・役職
  • メールアドレス
  • 電話番号
  • 住所
  • 業種
  • 従業員数
  • 担当営業(自社)
  • 顧客ステータス(見込み客/既存顧客/休眠顧客)

条件付き書式を使って、顧客ステータスごとに色分けすると視認性が向上します。

(2) 案件管理シート(商談ステータス、金額、確度等)

個別の商談案件を管理するシートです。以下の項目が推奨されます。

  • 案件名
  • 顧客名(顧客管理シートと紐づけ)
  • 商談ステータス(初回訪問/提案/見積提示/契約締結/失注)
  • 受注見込み金額
  • 受注確度(A/B/C)
  • 受注予定日
  • 次回アクション
  • 担当営業

VLOOKUP関数を使って、顧客名から顧客管理シートの詳細情報を自動表示させると便利です。

(3) 営業活動記録シート(日報、訪問履歴等)

日々の営業活動を記録するシートです。

  • 日付
  • 担当営業
  • 顧客名
  • 活動内容(訪問/電話/メール/オンライン商談)
  • 商談内容(要約)
  • 次回アクション
  • 案件ID(案件管理シートと紐づけ)

このシートは営業日報としても機能し、マネージャーが営業活動の進捗を把握するのに役立ちます。

(4) 無料テンプレート活用のポイント

一から作成するのは大変なため、以下のような無料テンプレートを活用するのが効率的です。

テンプレートをそのまま使うのではなく、自社の営業プロセスに合わせて項目をカスタマイズすることが重要です。

3. エクセル営業管理を成功させる運用のポイント

エクセル管理を効果的に運用するには、以下の4つのポイントを押さえましょう。

(1) 入力ルールの明確化(更新頻度、項目定義)

エクセル管理で最も重要なのは、入力ルールを明文化することです。

  • 更新頻度: 「営業活動後24時間以内に更新」など、具体的なルールを設定
  • 項目の定義: 「商談ステータス」の各段階(初回訪問/提案/見積提示等)の定義を明確化
  • 入力形式: 日付は「YYYY/MM/DD」、金額は「半角数字のみ」など、統一ルールを設定

ルールが曖昧だと、データの品質が低下し、分析や報告に使えなくなります。

(2) 条件付き書式で視覚化(色分け、進捗表示)

条件付き書式を活用すると、データの視認性が大幅に向上します。

活用例:

  • 受注確度が「A」の案件を緑、「C」を赤で色分け
  • 次回アクション期日が過ぎた案件を黄色でハイライト
  • 受注見込み金額が一定額以上の案件を太字で強調

マネージャーが一目で優先案件を把握でき、営業担当者も自分のタスクを見落としにくくなります。

(3) VLOOKUP/ピボットテーブルでデータ連携

エクセルの強みは、関数を使ったデータ連携です。

VLOOKUP活用例: 案件管理シートに顧客名を入力すると、顧客管理シートから担当者名・連絡先が自動表示される

ピボットテーブル活用例: 営業担当者別の受注見込み金額、商談ステータス別の案件数を自動集計

これにより、手動での集計作業が不要になり、レポート作成が効率化されます。

(4) Microsoft 365の共有機能活用

従来のエクセルは「同時編集ができない」という大きな課題がありましたが、Microsoft 365(旧Office 365)のクラウド共有機能を使えば、OneDrive・SharePoint経由でリアルタイム共同編集が可能です。

注意点:

  • マクロ・VBAを含むファイルは共同編集に対応していない場合がある
  • インターネット接続が必須

クラウド共有により、エクセル管理の最大の弱点が一部解消されています。

4. エクセル営業管理の限界と課題

エクセルには明確な限界もあります。以下の4つの課題を認識しておきましょう。

(1) 同時編集の困難さ(ファイルロック)

Microsoft 365を使わない場合、複数人が同時に同じファイルを編集できません。ファイルを開いた人が優先され、他のメンバーは「読み取り専用」でしか開けません。

これにより、営業メンバーが増えると「ファイルが開けない」「更新できない」といった問題が頻発します。

(2) バージョン管理の課題(先祖返り)

複数人がファイルをコピーして更新すると、どれが最新版か分からなくなる問題が発生します。

最悪の場合、古いデータで最新データを上書きしてしまう「先祖返り」が起きます。これを防ぐには、ファイル名に日付・バージョン番号を付ける運用が必要ですが、管理が煩雑になります。

(3) データの属人化とVBA保守リスク

エクセルで高度な自動化を実現しようとすると、VBA(マクロ)を使う必要があります。しかし、VBAを作成した担当者が退職すると、誰も保守できなくなるリスクがあります。

これは「技術的負債」と呼ばれ、長期的には大きな課題となります。

(4) セキュリティリスク(情報漏洩)

エクセルファイルは、簡単にコピー・メール添付・USBメモリへの保存ができます。そのため、顧客情報の漏洩リスクが高くなります。

SFA/CRMではアクセスログが残り、権限管理もできますが、エクセルにはそうした機能がありません。

5. SFA/CRM移行のタイミングと判断基準

エクセル管理の限界を感じたら、SFA/CRM移行を検討すべきタイミングです。具体的な判断基準を見ていきましょう。

(1) 閾値1:営業担当者5名以上

営業担当者が5名を超えると、ファイル共有・データ更新の頻度が増え、エクセルでは管理が煩雑になります。

SFA/CRMでは、リアルタイムでデータが同期され、誰が何を更新したかも記録されるため、5名以上の組織では導入メリットが大きくなります。

(2) 閾値2:月間商談数50件以上

月間の商談数が50件を超えると、エクセルでの案件管理が追いつかなくなります。

案件の進捗状況を一覧で把握したり、次回アクションをリマインドしたりする機能が必要になるため、SFA/CRM導入を検討すべきです。

(3) 閾値3:部門間連携が必要な段階

マーケティング部門からのリード情報を営業が引き継ぎ、受注後はカスタマーサクセス部門に引き継ぐ——こうした部門間連携が必要になった段階では、エクセル管理では限界があります。

SFA/CRMは部門間でのデータ共有がスムーズにでき、顧客情報の一元管理が実現します。

(4) SFA/CRM導入時のコストとROI試算

SFA/CRM導入には以下のコストがかかります。

初期費用:
0円〜数十万円(ツールによる)

月額費用:

  • 小規模向け: 月額数万円(HubSpot Starter、Zoho CRM等)
  • 中堅企業向け: 月額10〜30万円(Salesforce、Mazrica等)
  • 大企業向け: 月額30万円以上(Salesforce Enterprise、Microsoft Dynamics等)

ROIは、営業担当者1人あたりの工数削減効果(月5〜10時間程度)と、商談管理の精度向上による受注率改善(5〜10%程度)で評価します。一般的には、導入から6ヶ月〜1年で効果を実感できると言われています。

※料金や機能は変更される可能性があるため、導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。(この記事は2024年11月時点の情報です)

6. まとめ:エクセル管理からの脱却か最適化か

エクセルでの営業管理は、小規模組織や創業期には十分有効な手段です。しかし、営業メンバーの増加や商談数の増加に伴い、限界が見えてきます。

エクセル管理を続けるべき企業:
営業担当者5名以下、月間商談数50件以下、部門間連携が不要な段階

SFA/CRM移行を検討すべき企業:
営業担当者5名以上、月間商談数50件以上、部門間連携が必要な段階

重要なのは、「エクセルかSFA/CRMか」の二者択一ではなく、企業の成長段階に応じた使い分けです。

次のアクション:

  • 自社の営業担当者数・月間商談数を確認する
  • エクセルテンプレートをダウンロードして試してみる(HubSpot、Salesforce、Microsoft公式テンプレート等)
  • SFA/CRM導入を検討する場合は、無料トライアルで実際に操作性を試す
  • 導入コストとROI(工数削減効果・受注率改善)を試算する

自社の営業プロセスに最適な管理方法を選び、営業活動の効率化と成果最大化を目指しましょう。

よくある質問

Q1エクセルでの営業管理はどこまでの規模まで対応できるのか?

A1営業担当者5名以下、月間商談数50件以下が目安です。それ以上になると、同時編集やデータ分散の課題が顕在化し、SFA/CRM導入を検討すべきです。Microsoft 365のクラウド共有機能を使えば複数人での同時編集も可能ですが、マクロ・VBAが動作しない場合があります。

Q2複数人で同時編集したい場合、どのような設定が必要か?

A2Microsoft 365(旧Office 365)のクラウド共有機能を使い、OneDrive/SharePoint経由で保存すればリアルタイム共同編集が可能です。ただし、マクロ・VBAを含むファイルは共同編集に対応していない場合があるため注意が必要です。インターネット接続も必須です。

Q3エクセルとSFA/CRMのどちらを選ぶべきか?

A3営業担当者5名以下・月間商談数50件以下ならエクセルで十分です。それ以上、または部門間連携(マーケティング・カスタマーサクセス等)が必要になった段階でSFA/CRM導入を推奨します。導入コストは月額数万円〜で、ROIは6ヶ月〜1年で評価するのが一般的です。

Q4エクセルテンプレートを自社用にカスタマイズする際のポイントは?

A4必要最低限の項目(会社名、担当者、商談ステータス、金額、次回アクション)に絞り、複雑なVBAは避けましょう。入力ルール(更新頻度、項目定義、入力形式)を明文化し、属人化を防ぐことが重要です。条件付き書式やVLOOKUPを活用すると視認性と効率性が向上します。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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