営業プロセスのKPI、何を設定すればいい?
営業チームの成果を可視化・改善したいと考えているものの、「どのKPIを設定すべきか分からない」「数字を追っているだけで改善につながっていない」という悩みを抱えている営業責任者やマネージャーは少なくありません。
営業管理ツールの利用状況調査によると、現在もエクセル・スプレッドシートが第1位となっており、一方でSFA/CRMの次回導入予定率は36.7%と高く、データドリブンな営業管理への移行が進んでいます。
この記事では、営業プロセスKPIの設定方法、主要指標の一覧、改善のポイントを解説します。
この記事のポイント:
- 営業プロセスは「集客→フォロー→販売→ファン化」の4段階で捉える
- KPI設定前にKGI(最終目標)を明確化し、3〜5個の指標に絞り込む
- 各プロセスのKPIを設定し、ボトルネック(課題)を発見・改善する
- 設定して放置せず、定期的なモニタリングとPDCAサイクルが不可欠
- SFA/CRMを活用するとデータ一元化・リアルタイム更新で分析効率が向上
営業プロセスKPIの基礎知識
KGI・KFS・KPIの違いと関係性
営業のパフォーマンス管理において、KGI・KFS・KPIは密接に関連しています。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | Key Goal Indicator(重要目標達成指標) | 年間売上10億円 |
| KFS | Key Factor for Success(重要成功要因) | 商談数の増加、受注率の向上 |
| KPI | Key Performance Indicator(重要業績評価指標) | 月間商談数50件、受注率25% |
設計フロー
- KGI(最終目標)を設定: 達成したいビジネス目標を定量化
- KFS(成功要因)を特定: KGI達成に最も影響を与える要素を分析
- KPI(中間指標)を設定: KFSを達成するための測定可能な指標を設定
営業プロセスの4段階
営業プロセスは、一般的に以下の4つの段階で捉えられます:
1. 集客
- 見込み客(リード)の獲得
- マーケティング活動との連携
2. 見込み客フォロー
- リードの育成(ナーチャリング)
- 商談化へ向けたアプローチ
3. 販売・見極め
- 提案・商談
- クロージング・受注
4. ファン化
- 顧客維持・フォローアップ
- アップセル・クロスセル
各段階にKPIを設定することで、営業プロセス全体を可視化し、どこにボトルネック(課題)があるかを特定しやすくなります。
営業プロセス4段階別の主要KPI
各営業プロセスで設定すべき主要KPIを解説します。
集客段階のKPI
主要指標
| KPI | 計算方法・説明 |
|---|---|
| 新規リード数 | 期間内に獲得した見込み客の総数 |
| MQL数 | Marketing Qualified Lead。マーケティング活動で獲得した有望リード |
| SQL数 | Sales Qualified Lead。営業がアプローチ対象と判断したリード |
| リード獲得単価(CPL) | 広告費等÷リード数 |
設定のポイント
- マーケティング部門との連携が重要
- MQL→SQLへの移行率も合わせて追跡することで、リードの質を評価
フォロー段階のKPI
主要指標
| KPI | 計算方法・説明 |
|---|---|
| 商談獲得数 | リードから商談化した件数 |
| 初回面談数 | 新規顧客との初回面談件数 |
| 商談化率 | 商談獲得数÷リード数×100 |
| アポイント獲得率 | アポイント成功数÷架電数×100 |
設定のポイント
- 商談化率が低い場合、リードの質かアプローチ方法に課題がある可能性
- フォローのタイミング・頻度も影響するため、行動量と合わせて分析
販売段階のKPI
主要指標
| KPI | 計算方法・説明 |
|---|---|
| 提案件数 | 正式な提案書を提出した件数 |
| 受注率(成約率) | 受注件数÷商談件数×100 |
| 平均受注額 | 総受注金額÷受注件数 |
| 受注サイクル(リードタイム) | リード獲得から受注までの平均日数 |
設定のポイント
- 受注率が低い場合、提案内容や価格設定、競合状況を分析
- 受注サイクルが長い場合、商談プロセスのどこで停滞しているかを特定
ファン化段階のKPI
主要指標
| KPI | 計算方法・説明 |
|---|---|
| LTV(顧客生涯価値) | 顧客が生涯で支払う金額の予測値 |
| チャーンレート(解約率) | 解約顧客数÷期首顧客数×100 |
| NPS(推奨者スコア) | 顧客が他者に推奨する度合いを示すスコア |
| アップセル率 | 既存顧客への追加販売成功率 |
設定のポイント
- 新規獲得だけでなく、既存顧客の維持・拡大も重要な営業活動
- LTVとCPL(獲得単価)を比較することで、顧客獲得の費用対効果を評価
KPI設定の実践的手順
ステップ1: KGIを明確化する
まず、営業チームが達成すべき最終目標(KGI)を明確にします。
KGIの例
- 年間売上高:10億円
- 新規顧客獲得数:年間50社
- 営業利益率:15%
KGIは経営目標と整合させ、達成可能かつ測定可能な数値で設定します。
ステップ2: 営業プロセスを分析する
自社の営業プロセスを4段階で整理し、各段階の現状を把握します。
分析のポイント
- 各段階の件数・転換率を把握
- どの段階で案件が滞留・離脱しているかを特定
- 成功している営業担当者のプロセスを分析
ステップ3: 受注に結び付く要素を3〜5個選ぶ
営業プロセスの中から、受注(KGI達成)に最も影響を与える要素を3〜5個選び、KPIとして設定します。
選定の基準
- 受注との相関が高い指標
- 測定可能で定期的に追跡できる指標
- 営業担当者がコントロールできる指標
KPI数の目安
- 3〜5個が推奨
- 多すぎると管理が煩雑になり、本質的な改善に集中できなくなる
ステップ4: 達成可能な目標値を設定する
各KPIに対して、達成可能で挑戦的な目標値を設定します。
目標設定のポイント
- 過去の実績をベースに現実的な数値を設定
- 業界ベンチマークがあれば参考にする
- 高すぎる目標は逆効果(達成不可能と感じるとモチベーション低下)
事例: 専門商社のKPI見直し成功例
ある専門商社では、当初「訪問数」をKPIとして設定していましたが、成果が伸び悩んでいました。
分析の結果、トップ営業担当者は「量産品の生産スケジュールや発注時期」を追跡し、適切なタイミングで提案していることが判明。KPIを「訪問数」から「生産スケジュール把握件数」「タイミング提案数」に変更したところ、受注率が向上したという事例が報告されています。
この事例が示すように、他社の事例をそのまま適用するのではなく、自社の営業プロセスを分析し、実際に成果につながる要素をKPIに設定することが重要です。
KPI測定・管理ツールの活用
エクセルからSFA/CRMへの移行
営業管理ツールの利用状況調査によると、エクセル・スプレッドシートが最も多く利用されています。一方で、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)の導入が進んでおり、次回SaaS導入予定率は36.7%と高い傾向にあります。
エクセルのメリット・デメリット
- メリット: 導入コストが低い、操作に慣れている
- デメリット: データ入力が手動、リアルタイム更新が難しい、情報共有に手間がかかる
SFA/CRMのメリット
- 顧客情報・営業活動履歴の一元管理
- リアルタイムでのデータ更新・共有
- ダッシュボードによる可視化
- レポート・分析機能
企業規模や予算に応じて、最適なツールを選定することが推奨されます。
ダッシュボード設計のポイント
KPIを効果的に追跡するためには、ダッシュボードの設計が重要です。
設計のポイント
- 3〜5個の主要KPIを一画面で確認できるようにする
- 目標値と実績の比較を表示
- 時系列での推移が分かるグラフ
- 営業担当者別・チーム別の内訳
PDCAサイクルによる継続的改善
KPIは設定して終わりではなく、定期的なモニタリングと改善が不可欠です。
P(Plan): 計画
- KGI・KPIを設定
- 目標値と達成期限を決定
D(Do): 実行
- 営業活動を実施
- データを記録
C(Check): 評価
- 月次・週次でKPI達成状況を確認
- 目標と実績のギャップを分析
- ボトルネックを特定
A(Act): 改善
- 課題に対する改善策を実行
- 必要に応じてKPI・目標値を調整
まとめ:継続的改善のためのKPI運用
営業プロセスKPIの設定方法と主要指標について解説しました。
KPI設定の手順
- KGI(最終目標)を明確化
- 営業プロセス4段階を分析
- 受注に結び付く要素を3〜5個選定
- 達成可能な目標値を設定
- 定期的にモニタリング・改善
主要KPIの例
- 集客段階: 新規リード数、MQL/SQL数、リード獲得単価
- フォロー段階: 商談獲得数、商談化率
- 販売段階: 受注率、平均受注額、受注サイクル
- ファン化段階: LTV、チャーンレート
成功のポイント
- 設定して放置せず、PDCAサイクルで継続改善
- 他社事例の盲目的適用ではなく、自社プロセスを分析
- SFA/CRMの活用でデータ一元化・分析効率向上
次のアクション
- 自社のKGI(最終目標)を確認する
- 現在の営業プロセスを4段階で整理する
- 各段階のKPIを3〜5個設定する
- 月次でのモニタリング体制を構築する
※KPI設定方法やツール選定は組織のビジネスモデル・規模によって異なります。自社の状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。
よくある質問:
Q: 営業で最も重要なKPIは何? A: 最終目標(KGI)によって異なります。売上重視なら受注率・平均受注額、効率重視なら商談化率・受注サイクルが重要になります。自社の営業プロセスを分析し、受注に結び付く要素を3〜5個選定することが推奨されます。
Q: KPI測定にはどんなツールが必要? A: エクセルでも可能ですが、SFA/CRMツールを活用すると顧客情報・営業活動履歴の一元化とリアルタイム更新が可能になり、分析効率が向上します。企業規模や予算に応じて、最適なツールを選定してください。
Q: KPI設定でよくある失敗は? A: 主な失敗パターンとして、①設定して放置(定期モニタリングが必須)②非現実的な目標設定③KPI数が多すぎる(3〜5個推奨)④他社事例の盲目的適用、が挙げられます。
Q: KPIの見直し頻度は? A: 月次での進捗確認が基本です。四半期ごとにKPIの妥当性を検証し、必要に応じて指標や目標値を調整します。ビジネスモデルの変更時は全面的な見直しが必要です。
