解約率が高くて困っている...チャーン対策で何から始めればいいのか分からない
B2B SaaS企業のカスタマーサクセスマネージャーの多くが、「解約率が高止まりしている」「どうすれば解約を防げるのか」「チャーン対策で具体的に何をすべきか」といった悩みを抱えています。カスタマーサクセスの重要性は理解していても、実践的な施策が分からず、手探りで対応している方も多いでしょう。
この記事では、カスタマーサクセスにおけるチャーン対策を、チャーン予兆検知の仕組みと具体的な介入アクション設計を中心に解説します。成功事例とともに、実践的な情報をお届けします。
この記事のポイント:
- チャーンレートの計算方法は「失った顧客数÷期初の顧客数」、BtoB平均5.0%、BtoC平均7.05%
- チャーンには種類があり、カスタマーチャーン(顧客数ベース)とレベニューチャーン(売上ベース)、グロスとネットに分類される
- オンボーディング強化、ヘルススコア設計、CRMツール活用、顧客教育が具体的施策
- SPEEDAの事例では1.3%→1.0%(1年で改善)、別企業では2%→0.1%まで大幅改善
- 解約の90%は契約時にすでに決まっている、プリセールス段階から適切な提案が重要
1. チャーンとは何か(基礎知識)
(1) チャーンの定義
「チャーン(churn)とは?カスタマーサクセスに必須の指標」(出典: CloudCircus)によれば、チャーンとは顧客が継続利用を前提としたサービスを解約することです。「乗り換えを繰り返す移り気なユーザー」に由来する言葉で、SaaSやサブスクリプション型ビジネスの心拍数とも言える指標とされています。
カスタマーサクセス(Customer Success)は、顧客の成功を支援し、製品の価値を最大化することで解約率を抑制する活動です。SaaS・サブスクリプション型ビジネスでは必須の取り組みと言われています。
(2) チャーンの種類(カスタマー・レベニュー)
「チャーンレートとは?種類から計算方法まで徹底解説!」(出典: Commune)によれば、チャーンには以下の種類があります。
カスタマーチャーン(Customer Churn): 顧客数ベースの解約率。失った顧客数÷期初の顧客数で算出します。
レベニューチャーン(Revenue Churn): 売上ベースの解約率。失った売上÷期初の売上で算出します。
顧客数は少なくても、高額プランの顧客が解約するとレベニューチャーンが大きくなるため、両方の指標を追跡することが重要です。
(3) グロスとネットの違い
グロス・レベニューチャーン(Gross Revenue Churn): 解約・ダウングレードによって失われた売上のみを集計します。
ネット・レベニューチャーン(Net Revenue Churn): グロスからアップセル・クロスセルで増えた売上を差し引いた数値です。
ネット・レベニューチャーンがマイナス(負の値)になれば、解約・ダウングレードによる売上減少を、アップセル・クロスセルによる売上増加が上回っていることを意味します。これは健全な成長を示す指標とされています。
2. チャーンレートの計算方法と目安
(1) 計算方法
「チャーンレートとは?平均・目安や計算方法、解約率を下げる方法を解説」(出典: Sansan)によれば、チャーンレートの計算式は以下の通りです。
計算式:
チャーンレート = 失った顧客数 ÷ 期初の顧客数
計算例:
- 月初の顧客数: 100社
- 月末の解約数: 5社
- チャーンレート = 5 ÷ 100 = 5.0%
チャーンレートは月次で継続的に測定し、健全な目安と比較して改善施策を立案することが推奨されます。
(2) 業界別平均値
「チャーンレートとは?平均・目安や計算方法、解約率を下げる方法を解説」(出典: Sansan)によれば、業界別の平均値は以下の通りです。
- BtoBサブスクリプション: 月次5.0%
- BtoCサブスクリプション: 月次7.05%
- ソフトウェア業界: 4.8%
- 小売・教育業界: 7%
「チャーンレートとは?種類から計算方法まで徹底解説!」(出典: Commune)によれば、月あたり平均3~10%とされています。
チャーンレートの業界平均は業界・企業規模により異なるため、自社の業界平均と比較しないと改善目標を誤る可能性があります。
(3) 企業規模別の目安
中小企業: 3~7% 大企業: 0.5~1%
企業規模が大きいほど、安定した顧客基盤を持つため、チャーンレートは低くなる傾向があると言われています。
3. チャーン発生の原因分析
(1) オンボーディング不足
「チャーンレートとは何か?種類や算出方法・解約を防ぐ4つの対策を解説」(出典: SORA)によれば、オンボーディング不足は短期解約を招くと指摘されています。
オンボーディング不足の影響:
- 「使い方が分からない」と感じる
- 「期待した効果が得られない」と感じる
- 導入初期に解約が集中する
解約の多くは導入初期に発生するため、顧客がスムーズにサービスを活用できるよう初期サポートに注力すると効果が高いと言われています。
(2) 顧客接点不足
顧客接点が不足すると、活用状況が芳しくないユーザーに連絡が取れず、ロイヤルティ低下→解約の流れが生まれます。
顧客接点不足のリスク:
- 利用状況を把握できない
- 課題を早期発見できない
- 解約の予兆を見逃す
テックタッチツール(自動化ツール)で、一定規模の顧客に効率的に接点を持つ方法も検討すべきです。
(3) 製品価値の不一致
顧客が期待した価値と、実際の製品価値が一致しない場合、解約につながります。
不一致の原因:
- 過剰な期待を持たせるマーケティング
- 顧客のニーズを正確に把握しない提案
- 製品の使いこなしができない
(4) 契約時の適切性
「解約率は、仕組みで下げる。カスタマーサクセス起点の組織変革」(出典: Uzabase)によれば、解約の90%は契約時にすでに決まっていると言われています。
プリセールス段階で適切な顧客に適切な提案をすることが、カスタマーサクセスの成功の前提条件です。
契約時の適切性を確保するポイント:
- ターゲット顧客の明確化
- 製品とのフィット感の確認
- 期待値の適切な設定
4. チャーン対策の具体的施策
(1) オンボーディング強化
「SaaS企業の解約防止戦略|チャーンを防ぐカスタマーサクセスの実践法」(出典: CloudCircus)によれば、オンボーディング強化が重要な施策とされています。
オンボーディング強化の内容:
- 初期設定のサポート(画面共有で手厚く支援)
- 使い方トレーニング(オンラインセミナー、動画マニュアル)
- 早期の成功体験(初回の成果を出すまで伴走)
- 定期的なフォローアップ(導入後1ヶ月は週次で確認)
(2) ヘルススコア・アラート設計
顧客をアクティビティデータで分類し、ハイリスク顧客を早期発見する仕組みが重要です。
ヘルススコアの設計要素:
- ログイン頻度(週次・月次)
- 機能利用状況(コア機能の利用有無)
- サポート問い合わせ履歴(不満の兆候)
- NPS(Net Promoter Score)スコア(推奨度0~10点)
ログイン頻度・機能利用状況・サポート問い合わせ履歴から自動アラートを設定し、先回りの対応が可能になります。
(3) データ活用とCRMツール
「顧客管理システムでチャーン防止!顧客離脱を食い止める最適施策」(出典: NoCoderi)によれば、CRMシステムによるチャーン防止が主流になっています。
CRMシステムの活用:
- 顧客セグメント分け(健全顧客・リスク顧客・ハイタッチ顧客)
- チャーン警告アラート(ヘルススコア低下時に自動通知)
- 自動フォローアップシナリオ(利用が減少した顧客に自動メール)
- フィードバック収集フォーム(解約理由の定量化)
- ダッシュボード分析(チャーン率の可視化)
NPS連携の活用:
- 低スコア顧客(0~6点): フォローサポート
- 高スコア顧客(9~10点): アップセル・クロスセル提案を自動化
(4) 顧客教育とトレーニング
顧客教育(カスタマートレーニング)の重要性が増加しています。製品の使い方理解を早め、オンボーディング体験を改善し、価値実感までの時間を短縮できます。
顧客教育の方法:
- オンラインセミナー(ウェビナー)
- 動画マニュアル・チュートリアル
- ナレッジベース(FAQ、使い方ガイド)
- ユーザーコミュニティ(事例共有、Q&A)
5. 成功事例と改善プロセス
(1) SPEEDAの事例(1.3%→1.0%)
「解約率は、仕組みで下げる。カスタマーサクセス起点の組織変革」(出典: Uzabase)によれば、SPEEDAの事例では1.3%から1.0%への改善に約1年かかったと報告されています。
SPEEDAの改善施策:
- 解約原因の定量分析(なぜ解約したかをデータ化)
- ハイリスク顧客の早期発見(ヘルススコア設計)
- 先回りの介入(解約予兆に対する能動的なアプローチ)
- 組織全体でのカスタマーサクセス意識の浸透
(2) 別企業の大幅改善事例(2%→0.1%)
「解約率は、仕組みで下げる。カスタマーサクセス起点の組織変革」(出典: Uzabase)によれば、別の企業では2%から0.1%まで大幅改善した事例もあると報告されています。
大幅改善の共通点:
- 長期視点での施策実行(1年以上)
- 契約前の適切性確認(ターゲット顧客の明確化)
- オンボーディングの徹底強化
- データドリブンな意思決定(KPI継続測定)
短期的な改善を求めると本質的な解決にならないため、1年以上の長期視点での施策実行が必要です。
6. まとめ:継続的な改善のポイント
カスタマーサクセスにおけるチャーン対策は、オンボーディング強化、ヘルススコア設計、CRMツール活用、顧客教育の4つの柱で構成されます。SPEEDAの事例(1.3%→1.0%、1年)や別企業の大幅改善事例(2%→0.1%)が示すように、長期視点での継続的な取り組みが成果につながります。
継続的な改善のポイント:
- チャーンレートを月次で継続測定し、業界平均と比較する
- 解約原因を定量分析し、根本的な改善施策を立案する
- オンボーディングを強化し、導入初期の解約を防ぐ
- ヘルススコアとアラートで、ハイリスク顧客を早期発見する
- 契約前の適切性確認を徹底し、ターゲット顧客に絞る
次のアクション:
- 自社のチャーンレートを計算し、業界平均と比較する
- 解約理由を定量的に分析する(アンケート、インタビュー)
- ヘルススコアの設計を開始する(ログイン頻度、機能利用状況など)
- CRMツールの導入または活用を検討する
- オンボーディングプロセスを見直し、初期サポートを強化する
※ディスカウントなどの対症療法では根本解決しません。製品価値の提供、サポート体制の改善、オンボーディング強化など本質的な対策が必要です。新規顧客獲得より既存顧客維持の方がコスト効率が高く、LTVを最大化できるため、カスタマーサクセスへの投資は長期的に大きなリターンをもたらします。
