クロスセルとは?意味・アップセルとの違い・B2Bでの実践手法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

既存顧客からの売上を伸ばしたいけれど、どうアプローチすべきか分からない...

B2B SaaS企業において、新規顧客の獲得コストは年々上昇傾向にあると言われています。そのため、既存顧客からの売上拡大に注目する企業が増えています。「クロスセルって聞くけど、具体的に何をすればいい?」「アップセルとの違いは?」「押し売りにならないか心配」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、クロスセルの基本的な意味から、アップセルとの違い、B2B SaaSにおける実践手法まで、既存顧客との関係を強化しながら売上を伸ばす方法を解説します。

この記事のポイント:

  • クロスセルとは、購入予定の商品に関連する追加商品を提案し、購入を促す販売手法
  • アップセルとの違いは「追加で買う」か「上位商品に切り替える」か
  • 提案の最適なタイミングは購入の意思決定後、または購入完了時
  • 顧客にとって価値がある提案であることが成功の前提条件
  • CRMを活用した顧客分析でパーソナライズされた提案が可能になる

1. クロスセルが注目される背景

近年、クロスセルへの関心が高まっている背景には、市場環境の変化があります。人口減少により、多くの市場で顧客の奪い合いが激化していると言われています。新規顧客の獲得にかかるコストが上昇する中、既存顧客からの売上拡大が重要な経営課題となっています。

B2B SaaS企業にとって、LTV(顧客生涯価値)の向上は事業成長の鍵を握ります。一般的に、既存顧客への追加販売は新規顧客獲得よりも効率的だと考えられています。既に信頼関係が構築されているため、提案を受け入れてもらいやすい傾向があるためです。

クロスセルは、こうした背景から「顧客単価を高める手法」として注目されています。ただし、単なる売上拡大の手段ではなく、顧客にとって価値のある提案を行うことが前提条件です。

2. クロスセルの基礎知識

クロスセルを効果的に実践するためには、まず基本的な概念を正確に理解することが重要です。

(1) クロスセルの定義:関連商品の追加購入を促す手法

クロスセル(Cross-sell)とは、既存顧客や購入を決めた顧客に対して、購入予定の商品・サービスに関連する追加商品を提案し、購入を促す販売手法です。

具体的な例:

  • ECサイトで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と表示するレコメンド機能
  • ファストフード店で「ポテトもいかがですか?」と提案するセット販売
  • SaaSサービスで基本プランを契約した顧客に、連携可能なオプション機能を提案する

クロスセルの目的は、顧客単価(1人の顧客が1回の取引で購入する金額の平均値)を向上させることにあります。顧客にとって関連性が高く、価値のある商品を提案することで、双方にメリットのある取引を実現できます。

(2) アップセルとの違い:上位商品への切り替えとの比較

クロスセルとよく混同される概念に「アップセル」があります。両者の違いを理解しておくことで、適切な場面で適切な手法を選択できます。

クロスセル(Cross-sell):

  • 意味: 関連商品を「追加で」購入してもらう
  • イメージ: 「AとBをセットで買う」
  • タイミング: 購入の意思決定後、または購入完了時が効果的
  • 例: 基本プランを契約した顧客に、連携オプションを提案する

アップセル(Up-sell):

  • 意味: より上位の商品・プランに「切り替えて」もらう
  • イメージ: 「AではなくA+を買う」
  • タイミング: 購入の検討段階で提案するのが効果的
  • 例: スタンダードプランを検討中の顧客に、プレミアムプランを提案する

両者は排他的な関係ではなく、顧客の状況に応じて使い分けることが重要です。新規契約時はアップセル、契約後の利用が定着した段階ではクロスセルが効果的なケースが多いと言われています。

3. クロスセルの実践手法

概念を理解したところで、実際にクロスセルを行う際の具体的な手法を見ていきます。

(1) 提案の最適なタイミング:購入決定後が効果的

クロスセルの成否を分けるのが「タイミング」です。一般的に、以下のタイミングが効果的とされています。

効果的なタイミング:

  • 購入の意思が確定した後(契約直前)
  • 購入完了時(決済完了後の画面表示など)
  • サービス利用が定着した段階(契約から一定期間経過後)
  • 顧客から問い合わせや相談があった時

避けるべきタイミング:

  • 購入を検討中の段階(本来の購入を迷わせる可能性がある)
  • 顧客が課題を抱えている最中(まず課題解決を優先すべき)
  • 契約直後で利用が定着していない段階

「購入後、または購入の意思が決定した顧客」に対してアプローチするのがクロスセルの基本です。購入前に追加商品を提案すると、本来の購入自体を見送られるリスクがあります。

(2) CRMを活用した顧客分析とレコメンド

クロスセルの成功率を高めるためには、顧客理解に基づいた提案が欠かせません。CRM(顧客関係管理システム)を活用することで、データに基づいた提案が可能になります。

CRMで分析すべきデータ:

  • 購入履歴・利用履歴(どの機能をよく使っているか)
  • 問い合わせ内容(どのような課題・要望があるか)
  • 契約期間・更新状況(ロイヤルティの高さ)
  • 属性情報(企業規模、業種、部門)

データを活用した提案例:

  • 特定の機能を頻繁に利用している顧客に、関連するオプション機能を提案
  • 同業種・同規模の他社が導入しているオプションを紹介
  • 利用状況から予測される課題に対して、解決策となる追加サービスを提案

AIとCRMの連携により、パーソナライズされたレコメンドを自動化する仕組みも普及しつつあります。

4. B2B SaaSにおけるクロスセル成功のポイント

B2B SaaS企業がクロスセルを成功させるために押さえておくべきポイントを解説します。

(1) カスタマーサクセスとの連携とLTV向上

B2B SaaSにおいて、クロスセルとカスタマーサクセスは密接に関連しています。顧客の成功を支援する過程で、追加のニーズが明らかになることが多いためです。

カスタマーサクセスとの連携ポイント:

  • 顧客の利用状況を定期的にモニタリングし、活用度の高い顧客を特定する
  • オンボーディング完了後、次のステップとして活用できる機能を紹介する
  • 定期的なレビューミーティングで、新たな課題やニーズをヒアリングする
  • 解約リスクの高い顧客には、クロスセルよりも課題解決を優先する

クロスセルは「顧客の成功を支援するための提案」という位置づけで行うことが重要です。顧客にとって価値がないものを売り込もうとすると、信頼関係を損なうリスクがあります。

(2) 顧客ニーズに基づいたパーソナライズ提案

画一的な提案ではなく、顧客ごとのニーズに合わせたパーソナライズ提案が成功率を高めます。

パーソナライズのポイント:

  • 顧客の業種・規模に合った事例を添えて提案する
  • 現在の利用状況から、次のステップとして自然な流れで提案する
  • 顧客が抱える具体的な課題に対する解決策として提案する
  • 導入効果を具体的な数値で示す(ROI、工数削減など)

松竹梅の法則を活用: 3段階の価格帯を設定すると、中間の価格帯が選ばれやすい傾向があります(松竹梅の法則)。オプションを提案する際も、複数のパターンを用意し、顧客に選択肢を提供することで、成約率が高まるケースがあります。

5. クロスセル施策の注意点

クロスセルは売上拡大に有効な手法ですが、やり方を間違えると逆効果になる可能性があります。以下の注意点を押さえておきましょう。

(1) 押し売りを避け顧客視点を維持する

クロスセルの前提条件は「顧客にとって価値がある提案であること」です。自社の売上目標を優先した押し売りは、顧客離れの原因になります。

押し売りにならないためのチェックポイント:

  • その提案は顧客の課題解決に本当に役立つか?
  • 顧客の現在の利用状況から、追加サービスを使いこなせる段階にあるか?
  • 顧客にとってコストに見合う価値を提供できるか?
  • 断られた場合も、関係性を維持できる提案方法か?

提案を断られた場合は、すぐに引き下がることも重要です。しつこく繰り返すと、本来のサービスの解約につながるリスクがあります。

(2) 信頼関係を損なわない頻度とタイミング

クロスセルの頻度とタイミングには注意が必要です。頻繁に提案されると、顧客は「売り込まれている」と感じてしまいます。

適切な頻度の目安:

  • 定期レビュー時に関連する提案を行う程度が一般的
  • 顧客から問い合わせがあった際に、関連サービスを紹介する
  • 契約更新のタイミングで、追加オプションの価値を説明する

避けるべきパターン:

  • 毎回の連絡で何かしらの追加提案をする
  • 顧客が課題を抱えている最中に追加販売を優先する
  • 断られた直後に別の追加商品を提案する

信頼関係の構築が先、売上拡大は結果という順序を忘れないことが重要です。

6. まとめ:顧客価値を高めるクロスセル戦略

クロスセルは、既存顧客からの売上を拡大するための有効な手法です。ただし、単なる売り込みではなく、顧客にとって価値のある提案を行うことが前提条件となります。

アップセルとの違いを理解し、購入後・契約後の適切なタイミングで提案することで、成功率を高められます。CRMを活用した顧客分析により、パーソナライズされた提案が可能になります。

次のアクション:

  • 自社のクロスセル可能な商品・サービスを整理する
  • CRMデータから、クロスセル提案の候補となる顧客を特定する
  • カスタマーサクセスチームと連携し、提案のタイミング・方法を設計する
  • 提案後の成約率・顧客満足度を測定し、改善を続ける

顧客との信頼関係を維持しながら、双方にメリットのあるクロスセルを実現していきましょう。

よくある質問:

Q: クロスセルとアップセルの違いは何ですか? A: クロスセルは「関連商品を追加で購入してもらう」手法で、アップセルは「より上位の商品・プランに切り替えてもらう」手法です。クロスセルは購入後・契約後のタイミングで、アップセルは購入検討段階でのアプローチが効果的とされています。

Q: クロスセルを提案する最適なタイミングは? A: 購入の意思決定後、または購入完了時が最適です。B2B SaaSの場合は、オンボーディング完了後や定期レビュー時など、顧客がサービスを活用できている段階での提案が効果的です。購入前に提案すると、本来の購入を見送られるリスクがあります。

Q: クロスセルで失敗しないためのポイントは? A: 最も重要なのは「顧客にとって価値がある提案かどうか」です。関連性の低い商品を提案したり、頻繁に売り込んだりすると、顧客離れにつながるリスクがあります。顧客の課題解決に役立つ提案を、適切なタイミング・頻度で行うことが成功の鍵です。

よくある質問

Q1クロスセルとアップセルの違いは何ですか?

A1クロスセルは「関連商品を追加で購入してもらう」手法で、アップセルは「より上位の商品・プランに切り替えてもらう」手法です。クロスセルは購入後・契約後のタイミングで、アップセルは購入検討段階でのアプローチが効果的とされています。

Q2クロスセルを提案する最適なタイミングは?

A2購入の意思決定後、または購入完了時が最適です。B2B SaaSの場合は、オンボーディング完了後や定期レビュー時など、顧客がサービスを活用できている段階での提案が効果的です。購入前に提案すると、本来の購入を見送られるリスクがあります。

Q3クロスセルで失敗しないためのポイントは?

A3最も重要なのは「顧客にとって価値がある提案かどうか」です。関連性の低い商品を提案したり、頻繁に売り込んだりすると、顧客離れにつながるリスクがあります。顧客の課題解決に役立つ提案を、適切なタイミング・頻度で行うことが成功の鍵です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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