CRMで顧客管理を効率化する方法|選び方から活用法まで徹底解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/6

CRMによる顧客管理とは?

「顧客情報が部門ごとに散在していて、営業・マーケティング・サポートで同じ顧客なのに違う対応をしてしまった」「Excelで管理しているが、誰が最新版を持っているのか分からない」——こうした課題はB2B企業の多くが抱えています。

顧客情報の属人化や散在は、機会損失や顧客満足度低下につながります。この記事では、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)による顧客管理の方法、従来手法との違い、選定基準、導入ステップを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • CRMは顧客情報・行動履歴・関係性を一元管理するシステムで、営業・マーケ・サポートの部門間連携を強化
  • Excel管理と比較すると、リアルタイム更新・履歴管理・分析機能が可能になり、属人化を解消
  • 導入費用はユーザーあたり月額3,000円〜10,000円が相場。初めての導入ならシンプルな機能から始める
  • 2024年、51%の企業が生成AIをCRMの最重要トレンドに挙げており、モバイルCRM活用も拡大中
  • 導入効果は数ヶ月〜半年以上かかるため、「導入すれば即成果」という期待は避けるべき

(1) CRMの定義と役割

**CRM(Customer Relationship Management)**とは、顧客情報、行動履歴、関係性を一元管理し、良好な顧客関係を構築・促進するための戦略・ツール・システムです。

CRMが管理する主な情報:

  • 基本情報: 企業名、担当者名、連絡先、業種、企業規模
  • 行動履歴: Webサイト訪問、資料ダウンロード、問い合わせ内容
  • 取引履歴: 商談状況、受注実績、売上金額
  • コミュニケーション履歴: メール・電話・訪問の記録

これらの情報を1つのシステムで管理し、営業・マーケティング・カスタマーサポートの各部門がリアルタイムで共有できることが、CRMの最大の役割です。

(2) CRMとSFA・MAの違い

CRMと混同されやすい概念に**SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)**があります。

項目 CRM SFA MA
対象 顧客関係管理全般 営業活動に特化 マーケティング活動に特化
主な機能 顧客情報一元管理、履歴管理 商談管理、営業プロセス管理 リード育成、メール配信
利用部門 営業・マーケ・サポート全体 営業部門 マーケティング部門

実務では統合される傾向: 近年の多くのCRM製品は、SFA・MA機能を統合して提供しています。例えば、Salesforce Sales CloudはCRM+SFA、HubSpotはCRM+SFA+MAを一体化しています。

従来の顧客管理手法との違い

CRM導入前、多くの企業は以下のような手法で顧客管理を行っていました。それぞれの課題とCRMによる解決方法を見ていきましょう。

(1) Excel・スプレッドシート管理の限界

Excel管理の典型的な課題:

  • 属人化: 各営業担当者が個別にExcelファイルを管理し、情報が散在
  • 同時編集困難: 複数人が同時に更新できず、「最新版はどれ?」問題が発生
  • 履歴管理の弱さ: 顧客とのやり取りの履歴を時系列で追跡しにくい
  • 分析機能の制約: 大量データの集計・分析には手間がかかる

CRMによる解決:

  • すべての顧客情報が1つのシステムに集約され、部門横断でリアルタイム共有
  • 複数人が同時にアクセス・更新可能
  • 顧客とのすべてのやり取りが自動記録され、時系列で表示
  • グラフ・ダッシュボードで売上・商談状況を瞬時に可視化

Excelが適しているケース: ただし、すべての企業にCRMが必要というわけではありません。顧客数が50件以下で、1〜2名の担当者のみで管理している場合は、Excelで十分なケースもあります。

(2) 名刺管理・メール管理の課題

従来の課題:

  • 名刺管理: 名刺が個人の机に散在し、他部門からアクセス不可
  • メール管理: 顧客とのやり取りが各担当者の受信箱に保存され、引き継ぎ時に情報が欠落

CRMによる解決:

  • 名刺情報をスキャン・OCRでCRMに自動登録(スマホアプリで撮影→自動取り込み)
  • メールをCRMと連携し、顧客ごとのコミュニケーション履歴として自動記録
  • 担当者変更時も過去のやり取りをすべて引き継ぎ可能

(3) CRMによる一元管理の強み

CRMによる一元管理により、以下のような実務上のメリットが生まれます:

ケース1: 営業とサポートの連携

  • サポート部門が「この顧客は最近製品に不満を持っている」という情報を記録
  • 営業担当者がCRMで確認し、アップセル提案を延期して関係修復を優先
  • 結果: 解約を防ぎ、長期的な関係維持に成功

ケース2: マーケと営業の連携

  • マーケティング部門がWebサイト訪問履歴から「この企業は料金ページを何度も閲覧している」と把握
  • 営業担当者に「高関心リード」として通知
  • 結果: タイミング良く提案を行い、商談化率が向上

CRM導入のメリット

CRM導入により、具体的にどのような効果が期待できるのかを解説します。

(1) 顧客情報の一元管理と部門間連携

従来、営業・マーケティング・カスタマーサポートの各部門が別々のシステムで顧客情報を管理していた場合、「同じ顧客なのに部門ごとに違う対応をしてしまう」という事態が発生します。

CRMで一元管理することで:

  • 情報の齟齬防止: 全部門が同じ情報を参照するため、誤った対応を回避
  • 迅速な対応: サポート部門が営業の商談状況を確認して、適切なサポートを提供
  • 顧客満足度向上: 「以前お伝えした内容を覚えていてくれた」という顧客体験の向上

(2) データに基づいた意思決定

CRMに蓄積されたデータは、経営判断や戦略立案に活用できます。

活用例:

  • 商談の勝敗分析: 受注した商談と失注した商談の特徴を比較し、勝ちパターンを発見
  • 顧客セグメント分析: 業種・企業規模別の購買傾向を把握し、マーケティング施策を最適化
  • LTV(顧客生涯価値)の算出: 長期的に利益を生む顧客セグメントを特定し、リソース配分を最適化

(3) 営業・マーケティング活動の効率化

CRMは、日々の業務を効率化する機能を多数備えています。

営業活動の効率化:

  • タスク管理: 「○○社に今週中に提案書送付」等のタスクを自動リマインド
  • レポート自動作成: 週次・月次の営業レポートを自動生成
  • 商談進捗の可視化: パイプライン管理で「どの商談がどの段階にあるか」を一目で把握

マーケティング活動の効率化:

  • リードスコアリング: 見込み客の関心度を数値化し、優先度を自動判定
  • キャンペーン効果測定: どの施策が何件の商談を生んだかを追跡

(4) 生成AIとモバイルCRMの活用(2024年トレンド)

2024年、グローバル調査によると51%の企業が生成AIをCRMの最重要トレンドに挙げています。

生成AI活用例:

  • チャットボットによる顧客対応自動化: よくある質問に自動回答し、サポート工数削減
  • 予測分析: 過去データから「この顧客は来月解約する可能性が高い」と予測し、先手を打った対策
  • コンテンツ自動生成: メール文面やレポートのドラフトをAIが作成

モバイルCRMの普及: 70%の企業がモバイルCRMプラットフォームを活用しており、モバイルCRM利用企業は販売目標達成率が150%高いというデータもあります(Freshworks調査)。

外出先でも顧客情報を確認・更新でき、商談直後にメモを記録することで情報の鮮度が向上します。

CRMツールの選び方

CRMツールは日本市場だけで約70製品が存在します(2025年時点)。失敗しない選び方の5つのポイントを解説します。

(1) 導入目的の明確化

最も重要なステップは、「なぜCRMを導入するのか」「何を達成したいのか」を明確にすることです。

目的の例:

  • 顧客情報の属人化を解消し、部門間で共有したい
  • 営業プロセスを可視化し、商談の勝率を向上させたい
  • マーケティング施策の効果を正確に測定したい

目的が曖昧なまま導入すると、「ツールを入れたが使いこなせない」という事態に陥りやすいです。

(2) 機能とシンプルさのバランス

初めての導入ならシンプルな機能のものを選ぶのが推奨されます。

高機能なCRMは魅力的ですが、機能が多すぎると:

  • 現場が使い方を覚えきれない
  • 設定が複雑で、導入に時間がかかる
  • 結果的に「機能の10%しか使っていない」状態に

段階的な拡張戦略:

  1. 初期: シンプルなCRMで顧客情報の一元管理のみ
  2. 慣れてきたら: SFA機能(商談管理)を追加
  3. さらに成熟: MA機能(リード育成)を統合

(3) UI・UX(使いやすさ)の重視

UI・UXや操作性が悪いと現場が使わなくなるのが、CRM導入失敗の典型的なパターンです。

確認すべきポイント:

  • 直感的に操作できるか(マニュアルなしで基本操作が可能か)
  • スマホアプリが使いやすいか(外出先での利用を想定)
  • 日本語サポートが充実しているか

多くのCRMベンダーは無料トライアルを提供しているため、実際に現場の担当者に試用してもらうことが重要です。

(4) 他ツールとの連携性

既存のツールとCRMがシームレスに連携できるかを確認しましょう。

連携すべき主なツール:

  • メール: Gmail、Outlook等のメールクライアント
  • カレンダー: Google Calendar、Outlookカレンダー
  • MAツール: HubSpot、Pardot等
  • 会計システム: freee、マネーフォワード等
  • ECサイト: Shopify、BASE等

API連携やZapier等の連携ツールで接続できるかを事前に確認してください。

(5) コスト(導入費用・ランニングコスト)

CRMの料金体系は製品により大きく異なります。

料金の相場(2024-2025年):

  • ユーザーあたり月額3,000円〜10,000円が一般的
  • 初期費用: 0円〜数十万円(クラウド型は0円が多い)
  • カスタマイズ費用: 機能追加・設定代行で数十万円〜

注意点: 導入費用だけでなく、**運用コスト(担当者の人件費、教育コスト)**まで見積もることが重要です。また、ユーザー数が増えるほど月額費用が増加するため、将来的な拡張も考慮しましょう。

主要CRMツールの料金例(2024-2025年):

ツール 月額料金(ユーザーあたり) 特徴
HubSpot 無料〜 無料版が充実、中小企業向け
Salesforce 3,000円〜 大企業向け高機能CRM
Zoho CRM 1,680円〜 コストパフォーマンス重視
Microsoft Dynamics 365 7,070円〜 Microsoft製品との統合

※最新の料金は各ベンダー公式サイトでご確認ください。

CRM導入の成功事例

実際の導入企業の事例から、CRMの活用方法と成果を見ていきましょう。

(1) 小売業の事例(靴のヒラキ、三越伊勢丹)

靴のヒラキ(通販事業):

  • 課題: 顧客データが散在し、効果的なメールマーケティングができない
  • 施策: CRMで顧客の購買履歴・閲覧履歴を統合し、セグメント別メール配信
  • 成果: メールマーケティングで前年比2倍の売上達成

三越伊勢丹:

  • 課題: 従業員が生産性向上を実感できていない(実感率2%)
  • 施策: SalesforceのCRMで顧客情報を一元化、接客履歴をデジタル化
  • 成果: 生産性向上を実感する従業員が2%から14%に増加

(2) スポーツ業界の事例(福岡ソフトバンクホークス)

福岡ソフトバンクホークス:

  • 課題: ファンクラブ会員60万人以上の情報を効率的に管理したい
  • 施策: CRMで会員情報・購買履歴・試合観戦履歴を統合管理
  • 成果: セグメント別のプロモーション施策で会員満足度向上、リピート率改善

(3) 飲食業の事例(日本ピザハット)

日本ピザハット:

  • 課題: 全国の顧客に画一的なマーケティング施策を実施していた
  • 施策: Salesforce Marketing Cloudでセグメント別メールキャンペーンを実施
  • 成果: 地域・購買履歴別の最適化で開封率・コンバージョン率が向上

事例から学ぶポイント:

  • CRMは「導入すれば即成果」ではなく、データ蓄積と継続的改善が前提
  • 企業規模・業種に応じて最適なCRMと活用方法が異なる
  • セグメント別の施策最適化が成果の鍵

まとめ:失敗しないCRM導入のポイント

CRMによる顧客管理は、顧客情報の一元化と部門間連携を実現し、営業・マーケティング活動の効率化に寄与します。ただし、「導入すれば即成果」ではなく、データ蓄積と継続的改善が成功の鍵です。

CRM導入を成功させるポイント:

  • 目的を明確に: 「なぜCRMを導入するのか」を全社で共有
  • シンプルに始める: 高機能より使いやすさ重視、段階的に拡張
  • 現場の声を聞く: 無料トライアルで実際の担当者に試用してもらう
  • データ活用を前提に: 入力ルールを整備し、継続的にデータ品質を維持
  • 効果測定は長期視点: 数ヶ月〜半年の時間軸で評価

次のアクション:

  • 自社の顧客管理の課題を整理する(属人化、情報散在、部門間連携不足等)
  • CRM導入の目的を明確化する(一元管理、営業効率化、マーケティング最適化等)
  • 3〜5社のCRMベンダーの公式サイトで機能・料金を比較する
  • 無料トライアルで現場担当者に試用してもらい、使いやすさを確認する
  • 導入後の運用体制(担当者、入力ルール、定期レビュー)を事前に設計する

自社の課題と目的に合ったCRMを選定し、顧客管理の効率化と顧客満足度向上を実現しましょう。

よくある質問

Q1CRMとSFA、MAの違いは?

A1CRMは顧客関係管理全般を対象とし、顧客情報の一元管理や履歴管理が主な機能です。SFAは営業活動に特化した商談管理・営業プロセス管理、MAはマーケティング活動の自動化(リード育成・メール配信)を行います。近年の多くのCRM製品は、SFA・MA機能を統合して提供しています。

Q2Excel管理からCRMに移行するメリットは?

A2Excelは属人化しやすく、複数人同時編集が困難です。CRMに移行すると、リアルタイム更新、部門間共有、履歴管理、高度な分析機能が可能になります。顧客とのやり取りが自動記録され、担当者変更時の引き継ぎもスムーズです。ただし、顧客数が50件以下の小規模企業ではExcelで十分な場合もあります。

Q3CRM導入で効果が出るまでどのくらいかかる?

A3一般的に数ヶ月から半年以上かかります。CRMはデータ蓄積と継続的な活動改善が前提のため、導入後すぐには効果を実感しにくいです。「導入すれば即成果」という期待は避け、長期視点での評価が重要です。

Q4小規模企業でもCRMは必要?

A4顧客数が50件以下で1〜2名の担当者のみならExcelで十分です。それ以上の規模なら、低価格CRM(HubSpot無料版、Zoho CRM等、月額3,000円〜)から始めるのが推奨されます。シンプルな機能から始め、慣れてきたら段階的に拡張するのが成功パターンです。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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