チャーン(解約率)とは?SaaSビジネスでの計算方法と改善施策を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/18

顧客解約が止まらない、原因が分からない...

BtoB SaaS企業のカスタマーサクセス担当者や事業責任者の多くが、「顧客解約が止まらない」「チャーン率が高止まりしている」「どこから改善すればいいか分からない」と悩んでいます。サブスクリプション型ビジネスでは、新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍のコストがかかると言われており、チャーン(解約)の管理は経営の生命線です。

しかし、チャーンレートの正しい計算方法や業界平均、効果的な改善施策を体系的に理解している企業は意外と少ないのが実情です。本記事では、チャーンの基本概念から計算方法、業界平均、具体的な改善施策までを徹底解説します。

この記事のポイント:

  • チャーンとは顧客がサービスを解約すること。サブスクリプション型ビジネスの重要指標
  • カスタマーチャーンレート(顧客数ベース)とレベニューチャーンレート(収益ベース)の両方を見る必要がある
  • 一般的な平均は3%~10%だが、業界・価格帯により大きく変動する
  • 新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍のコストがかかるため、チャーン防止が経営効率向上の鍵
  • カスタマーサクセスの充実とAI活用の解約予測モデルが2024年のトレンド

1. チャーンが注目される背景

チャーンが経営上の重要指標として注目される背景には、ビジネスモデルの変化があります。

(1) サブスクリプション型ビジネスの成熟(2024年)

2024年現在、サブスクリプション型ビジネスは成熟期を迎えています:

  • BtoB SaaS市場の拡大: 企業向けクラウドサービスが急増し、競合も増加
  • 顧客の選択肢の増加: 同じ機能を提供する競合サービスが複数存在し、乗り換えが容易に
  • 差別化の困難: 機能面での差別化が難しく、顧客体験(CX)やサポート品質が重要に

この環境下では、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客を維持し続けることが企業の成長に直結します。

(2) 新規顧客獲得コストの増大(既存顧客維持の5倍)

新規顧客獲得には、以下のようなコストがかかります:

  • 広告費: Google広告・SNS広告のクリック単価上昇
  • 営業活動: 商談・デモ・契約交渉の人件費
  • マーケティング: コンテンツ制作・イベント・ウェビナー開催費用

一方、既存顧客の維持コストは相対的に低く、新規獲得の1/5程度と言われています。つまり、チャーン率を1%下げることは、新規獲得を5%増やすことと同等の価値 があります。

(3) カスタマーサクセスの重要性の高まり

カスタマーサクセス(CS) とは、顧客がサービスを通じて成功体験を得られるよう支援する取り組みです。

2024年のトレンド:

  • 契約後のフォローを手厚くする企業が増加
  • AIやデータ分析を活用した解約予測モデルの導入
  • プロアクティブなチャーン防止施策(顧客が解約を考える前に先回りして支援)

カスタマーサクセスの充実により、顧客満足度が向上し、チャーン率の低減が期待できます。

2. チャーンとは|基本概念と種類

チャーンの定義と、関連する概念を整理します。

(1) チャーンの定義(解約・退会)

チャーン とは、顧客が継続利用を前提としたサービスを解約することです。

該当する例:

  • SaaSサービスの解約
  • サブスクリプション型動画配信サービスの退会
  • 有料会員から無料会員へのダウングレード(レベニューチャーンとして扱う)

該当しない例:

  • 単発購入型の商品の購入停止(継続利用を前提としていないため)

チャーンはサブスクリプション型・SaaS型ビジネスの健全性を測る最重要指標の一つです。

(2) 任意チャーンと非任意チャーンの違い

チャーンは大きく2種類に分けられます:

種類 定義 主な原因 対策
任意チャーン 顧客が自らの意思で解約 価格不満、機能不足、サポート不満、競合への乗り換え カスタマーサクセス強化、機能改善、価格見直し
非任意チャーン 顧客の意思によらない解約 支払い遅延、クレジットカード期限切れ、企業倒産 自動決済リトライ、支払い方法の多様化、リマインド強化

非任意チャーンは比較的対策が容易で、システム改善により大幅に削減できるケースが多いです。

(3) カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレート

チャーンレートには2つの視点があります:

カスタマーチャーンレート(顧客数ベース):

  • 顧客数の減少を測定する指標
  • 計算式: 解約顧客数 ÷ 期初顧客数 × 100
  • 例: 月初100社、月末に5社解約 → 5%

レベニューチャーンレート(収益ベース):

  • 収益の減少を測定する指標
  • 計算式: (サービス単価 × 解約顧客数)÷ 期初総収益 × 100
  • 例: 月初総収益100万円、月末に高単価顧客(20万円)が解約 → 20%

重要なポイント: カスタマーチャーンレートが低くても、レベニューチャーンレートが高い場合は深刻な問題です。つまり、高単価顧客が離脱している ことを意味します。両方の指標を並行して確認することが重要です。

(4) グロスチャーンとネットチャーンの違い

グロスチャーン:

  • 解約による減収のみを計測
  • 計算式: 解約による損失収益 ÷ 期初総収益 × 100

ネットチャーン:

  • 解約による減収から、アップセル・クロスセルによる増収を差し引いて計測
  • 計算式: (解約による損失収益 - アップセル/クロスセルによる増収)÷ 期初総収益 × 100
  • ネットチャーンがマイナスになる(解約より増収が多い)と、「ネガティブチャーン」と呼ばれ、理想的な状態

NRR(ネットレベニューリテンション) との関係: NRR = 100% - ネットチャーン NRRが100%を超える(ネットチャーンがマイナス)と、新規顧客獲得がゼロでも売上が伸びる状態になります。

3. チャーンレートの計算方法

正確なチャーンレートの計算方法を解説します。

(1) カスタマーチャーンレートの計算式

基本の計算式:

カスタマーチャーンレート = (期間内の解約顧客数 ÷ 期初の顧客数) × 100

計算例:

  • 月初の顧客数: 200社
  • 月内の解約顧客数: 6社
  • カスタマーチャーンレート = (6 ÷ 200) × 100 = 3%

(2) レベニューチャーンレートの計算式

基本の計算式:

レベニューチャーンレート = ((解約顧客の月額料金合計) ÷ 期初の総収益) × 100

計算例:

  • 月初の総収益(MRR): 1,000万円
  • 解約顧客の月額料金合計: 50万円
  • レベニューチャーンレート = (50 ÷ 1,000) × 100 = 5%

(3) 計算時の注意点(分母の定義、期間設定)

チャーンレートの計算には、いくつかの注意点があります:

分母の定義:

  • 期初の顧客数 を使うのが一般的
  • 一部企業では「期初と期末の平均顧客数」を使うこともある
  • 業界平均と比較する際は、計算方法が同じかを確認

期間設定:

  • 月次チャーンレート が最も一般的
  • 年次チャーンレートは「12ヶ月分の月次チャーンレートを単純に12倍」するのは不正確(複利効果を考慮する必要がある)

新規顧客の扱い:

  • 期間中に獲得した新規顧客は、分母に含めない(期初の顧客数のみ)
  • 新規顧客を分母に含めると、チャーンレートが実際より低く見える

4. チャーンレートの業界平均と目安

自社のチャーンレートが適切かどうかを判断するための目安を紹介します。

(1) 一般的な平均値(3%~10%)

一般的に、チャーンレートの月次平均は 3%~10% 程度とされています。

業界による違い:

業界 月次チャーンレート目安 年次チャーンレート換算
エンタープライズ向けBtoB SaaS 0.5%~2% 6%~24%
中小企業向けBtoB SaaS 3%~7% 36%~84%
BtoC SaaS 5%~10% 60%~120%

エンタープライズ向けは契約期間が長く、乗り換えコストが高いためチャーン率が低い傾向があります。

(2) BtoB SaaSにおける目安

BtoB SaaSでは、以下の目安が参考になります:

月次カスタマーチャーンレート:

  • 優秀: 2%未満
  • 標準: 2%~5%
  • 要改善: 5%以上

月次レベニューチャーンレート:

  • 優秀: 3%未満
  • 標準: 3%~7%
  • 要改善: 7%以上

ただし、サービス内容・価格帯・契約期間により大きく変動するため、自社の過去データとの比較 が最も重要です。

(3) 顧客セグメント別の分析の重要性

全体のチャーンレートだけでなく、顧客セグメント別 に分析することで、より効果的な改善施策が見えてきます。

セグメント例:

  • プラン別(ライト / スタンダード / プロフェッショナル)
  • 企業規模別(従業員数・売上規模)
  • 業種別
  • 契約期間別(3ヶ月未満 / 3~12ヶ月 / 12ヶ月以上)

分析のメリット:

  • 解約率が高いセグメントを特定し、優先的に改善
  • セグメントごとに異なる対策を実施(例: 中小企業向けはオンボーディング強化、大企業向けはカスタマイズ対応強化)

5. チャーン発生要因と改善施策

チャーンが発生する主な要因と、効果的な改善施策を解説します。

(1) 主な発生要因(価格不満、機能不足、サポート不満)

チャーンの主な原因は以下の通りです:

価格不満:

  • 費用対効果が感じられない
  • 競合の方が安い
  • 予算削減により継続が困難

機能不足:

  • 必要な機能がない
  • 使いにくい・操作が複雑
  • 競合の方が高機能

サポート不満:

  • 問い合わせへの回答が遅い
  • サポート担当者の対応が不十分
  • オンボーディング(初期導入支援)が不足

その他:

  • 導入効果が実感できない
  • 利用頻度が下がり、必要性を感じなくなった
  • 企業の倒産・事業撤退

(2) カスタマーサクセスによるチャーン防止

カスタマーサクセスの充実が、チャーン防止の最も効果的な施策です。

具体的な施策:

オンボーディング強化:

  • 導入初期(最初の3ヶ月)に手厚いサポートを提供
  • チュートリアル動画・マニュアルの充実
  • 専任担当者による個別支援

定期的なヘルスチェック:

  • 利用頻度・アクティブユーザー数をモニタリング
  • 利用頻度が低下した顧客に、プロアクティブに連絡

成功事例の共有:

  • 他社の導入事例・活用方法を紹介
  • 顧客が気づいていない便利な機能を提案

顧客満足度調査:

  • 定期的にNPS(ネットプロモータースコア)やCSAT(顧客満足度)を測定
  • 不満を持つ顧客を早期に発見し、改善

(3) AIとデータ分析による解約予測モデル(2024年トレンド)

2024年のトレンドとして、AIやデータ分析を活用した解約予測モデルの導入が進んでいます。

予測に使うデータ:

  • ログイン頻度の推移
  • 機能の利用状況
  • サポート問い合わせ内容・頻度
  • 契約更新までの期間
  • 類似顧客の過去の行動パターン

活用方法:

  • 解約リスクが高い顧客を自動的に抽出
  • カスタマーサクセスチームが優先的にフォロー
  • リスクが高まる前に先回りして支援

導入できるツール: Salesforce、HubSpot、Zendeskなどの主要CRMツールには、解約予測機能が搭載されています(※導入費用・運用体制の整備コストを事前に確認してください)。

(4) 過度な値引き・引き止めのリスク

解約を防ごうと、値引きや強引な引き止めを行うケースがありますが、注意が必要です。

リスク:

  • 一時的にチャーンを防げても、顧客満足度は改善されない
  • 値引きが広まると、他の顧客も値引き要求をする可能性
  • 根本的な問題(機能不足・サポート不満)が解決されず、再度解約リスクが高まる

推奨される対応:

  • 解約理由を丁寧にヒアリングし、根本的な課題を理解
  • 値引きではなく、機能改善・サポート強化で対応
  • 価格が理由の場合、ダウングレードプランを提案(完全解約よりはマシ)

6. まとめ|チャーン管理のベストプラクティス

チャーン(解約率)は、サブスクリプション型・SaaS型ビジネスの健全性を測る最重要指標です。新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍のコストがかかるため、チャーン率を1%下げることは、新規獲得を5%増やすことと同等の価値があります。

チャーン管理のベストプラクティス:

  • カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートの両方を測定する
  • 月次で定期的にチャーンレートを追跡し、変動要因を分析する
  • 顧客セグメント別(プラン別・企業規模別・業種別)にチャーンレートを分析する
  • 高単価顧客の離脱(レベニューチャーンレート高)を優先的に防止する
  • オンボーディング(導入初期支援)を充実させ、早期解約を防ぐ
  • 利用頻度が低下した顧客をプロアクティブにフォローする
  • NPS・CSAT(顧客満足度)を定期的に測定し、不満を早期発見する
  • AIやデータ分析を活用し、解約リスクの高い顧客を予測する
  • 過度な値引き・引き止めではなく、根本的な課題解決を優先する

次のアクション:

  • 自社のカスタマーチャーンレート・レベニューチャーンレートを計算する
  • 顧客セグメント別にチャーンレートを分析し、改善すべきセグメントを特定する
  • 解約顧客にヒアリングを行い、主な解約理由を把握する
  • カスタマーサクセスチームの体制を整備し、オンボーディング・定期フォローを強化する
  • 解約予測モデルの導入を検討する(主要CRMツールの機能を調査)

チャーン管理は一度の施策で劇的に改善するものではありませんが、継続的な取り組みにより、着実に成果が現れます。まずは現状を正確に把握することから始めましょう。

※本記事で紹介する平均値はあくまで目安であり、業種・サービス内容・価格帯により大きく変動します。チャーンレートの計算方法は企業により異なるため、業界平均との比較時は定義を確認してください。

よくある質問

Q1チャーンレートの計算方法は?

A1基本は「解約顧客数÷期初顧客数×100」です。カスタマーチャーンレート(顧客数ベース)とレベニューチャーンレート(収益ベース)の両方を並行して確認することが重要です。

Q2チャーンレートの平均・目安はどれくらいですか?

A2業界により異なりますが、一般的に3%~10%程度です。BtoB SaaSでは、エンタープライズ向けは0.5~2%、中小企業向けは3~7%が目安です。ただし計算方法や業種により変動するため、自社の過去データとの比較が重要です。

Q3有料会員から無料会員への変更もチャーンですか?

A3はい、ダウングレードもレベニューチャーンとして扱われます。カスタマーチャーンレートには含まれませんが、収益減少として重要な指標です。

Q4チャーンとアップセル・クロスセルの関係は?

A4既存顧客のLTV最大化において、チャーン防止とアップセル・クロスセルは表裏一体の重要施策です。ネットチャーン(解約による減収からアップセル・クロスセルによる増収を差し引いた値)がマイナスになると、新規獲得ゼロでも売上が伸びる理想的な状態になります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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