SalesforceとHubSpot、どちらを選ぶべきか迷う理由
多くの方が悩むSalesforceとHubSpotの選択。結論は、Salesforce/HubSpotは機能や価格だけでなく、MA/SFA設定の難易度と自社の実装体制(内製 or 外部支援)に合わせて選ぶことで、導入後の「使いこなせない」を防ぎ、CRM活用の成果につなげられます。
BtoB企業のマーケティング・営業責任者の多くは、CRM/SFA/MAツールの導入を検討する際、「SalesforceとHubSpotのどちらを選ぶべきか」という悩みに直面します。両ツールとも豊富な機能を持ち、多くの企業で導入されているため、単純な比較では判断が難しいのが実情です。
この記事で分かること
- SalesforceとHubSpotの料金プランと機能範囲の違い
- 企業規模・実装体制別の選定判断マトリクス
- 日本国内および世界市場でのシェアと普及状況
- MA/SFA設定の難易度と実装に必要な体制の違い
- 導入後に「使いこなせない」リスクを防ぐための自社状況確認チェックリスト
よくある失敗パターンとして、機能の多さや価格の安さだけで選び、導入後のMA/SFA設定や実装フェーズで必要な体制・工数を見落とすケースがあります。この結果、ツールが使いこなせず投資が無駄になってしまいます。本記事では、ツール選定だけでなく、実装フェーズまで見据えた選び方を解説します。
CRM/SFA/MAの基礎知識とSalesforce・HubSpotの位置づけ
CRM、SFA、MAは、それぞれ顧客情報管理、営業支援、マーケティング自動化を担うシステムです。SalesforceとHubSpotは、それぞれ異なる強みを持つプラットフォームとして位置づけられます。
CRM(Customer Relationship Management) とは、顧客関係管理を指し、顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・サポート活動を効率化するシステムです。SFA(Sales Force Automation) は、営業支援システムであり、営業活動の進捗管理、案件管理、商談記録などを自動化・効率化するツールです。MA(Marketing Automation) は、マーケティング自動化ツールで、リード獲得、育成、スコアリングなどマーケティング活動を自動化するシステムです。
Salesforceは高度なカスタマイズ性を持つCRM/SFAプラットフォームとして知られています。一方、HubSpotはインバウンドマーケティング思想に基づくCRM/MA統合プラットフォームです。インバウンドマーケティングとは、顧客を引き付け、関与させ、満足させることで信頼関係を築くマーケティング手法で、HubSpotが提唱しました。
CRM・SFA・MAの違いと役割
CRM、SFA、MAは、それぞれ異なる役割を持ちながらも、連携することで営業・マーケティング活動の効率を高めます。
CRMは顧客情報の一元管理を担い、顧客の基本情報、過去のやり取り、購買履歴などを記録します。SFAは営業活動の効率化を担い、商談の進捗状況、営業担当のスケジュール、見積もり作成などを管理します。MAはマーケティング自動化を担い、リード獲得のための施策実行、リード育成のためのメール配信、リードスコアリングなどを自動化します。
BtoB企業では、MAでリードを獲得・育成し、一定のスコアに達したリードをSFAに引き渡して営業担当が商談を進めるという流れが一般的です。CRMはその基盤として、すべての顧客情報を統合的に管理します。
SalesforceとHubSpotの製品構成の違い
SalesforceとHubSpotは、それぞれ異なる製品構成と強みを持っています。
Salesforceは、Sales Cloud(SFA)、Marketing Cloud(MA)、Service Cloud(カスタマーサポート)など、目的別に複数のクラウド製品を提供しています。高度なカスタマイズ性が特徴で、ツールの機能や設定を自社の業務プロセスに合わせて柔軟に変更できる度合いが高いです。複雑な営業プロセスや独自のワークフローを持つ企業に適していますが、設定や運用には専門知識が必要になる場合があります。
HubSpotは、CRM、Marketing Hub(MA)、Sales Hub(SFA)、Service Hub(カスタマーサポート)を統合プラットフォームとして提供しています。統合プラットフォームとしての使いやすさが特徴で、CRMとMAが同一基盤で動作するため、データの連携がスムーズで設定が比較的簡単です。インバウンドマーケティング思想に基づいており、コンテンツマーケティングやリード育成を重視する企業に適しています。
HubSpotは世界135か国・258,000社以上で利用されており、Salesforceは世界15万社で導入されています(2026年時点)。ただし、これはグローバルの導入社数であり、日本市場の実績はこれより低い可能性があります。
機能と料金体系の比較
SalesforceとHubSpotは、料金プランと機能範囲が大きく異なります。自社の企業規模や実装体制に合わせて、総費用と必要な機能を比較することが重要です。
Salesforceの料金プランと機能範囲
Salesforceの料金は、ユーザー単位で課金される仕組みです。Salesforce Sales CloudはStarter Suiteが月額3,000円/ユーザー、Enterpriseが月額19,800〜21,000円/ユーザー、Unlimitedが月額39,600〜42,000円/ユーザーとなっています(2025-2026年時点)。
Starter Suiteは、小規模チーム向けのエントリープランで、基本的なCRM機能と営業支援機能を提供します。Enterpriseプランは、高度なカスタマイズ性、ワークフロー自動化、レポート機能などを含み、中堅から大企業向けのプランです。Unlimitedプランは、最も高度な機能とサポートを提供し、大規模企業や複雑な業務プロセスを持つ企業向けです。
Salesforceは高度なカスタマイズが可能ですが、専門知識が必要なため、導入時は専門コンサルタントの支援を検討すべきと言われています。また、料金はユーザー単位のため、営業担当者が多い企業では総額が高くなる可能性があります。
HubSpotの料金プランと機能範囲
HubSpotの料金は、組織単位で課金される仕組みです。HubSpot Marketing HubはStarterが月額1,080〜1,800円、Professionalが月額96,000〜106,800円/組織、Enterpriseが月額432,000円/組織となっています(2025-2026年時点)。
Starterプランは、小規模企業向けのエントリープランで、基本的なメール配信、フォーム作成、リード管理機能を提供します。Professionalプランは、マーケティングオートメーション、スコアリング、ABテスト、レポート機能などを含み、中堅企業向けのプランです。Enterpriseプランは、高度なカスタマイズ、AI機能、複数チームでの利用などを提供し、大企業向けです。
HubSpotは無料プランから始められるため、まず無料トライアルで自社の業務に合うか検証するのが推奨されます。また、HubSpotのCRMとMAが同一基盤で動作するため、顧客育成がしやすく、メール施策やポップアップ施策も簡単に始められると言われています。
料金データは2025-2026年時点の情報であり、為替変動や公式アップデートで変動する可能性があるため、実際の導入時は公式サイトで確認が必要です。
【比較表】Salesforce/HubSpot選定判断マトリクス(企業規模・実装体制別)
| 企業規模 | 実装体制 | 営業プロセスの複雑さ | 推奨ツール | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模(従業員50名未満) | 内製可能 | シンプル | HubSpot | 無料プランから始められ、設定が比較的簡単。組織単位課金で総費用を抑えられる |
| 小規模(従業員50名未満) | 外部支援が必要 | シンプル | HubSpot | 外部支援費用を含めても総費用が抑えられる可能性が高い |
| 中規模(従業員50-300名) | 内製可能 | シンプル | HubSpot | CRMとMAの統合プラットフォームで、内製でも運用しやすい |
| 中規模(従業員50-300名) | 内製可能 | 複雑 | Salesforce | 高度なカスタマイズ性で複雑な営業プロセスに対応可能 |
| 中規模(従業員50-300名) | 外部支援が必要 | シンプル | HubSpot | 外部支援を受けながらも総費用を抑えられる |
| 中規模(従業員50-300名) | 外部支援が必要 | 複雑 | Salesforce | 専門コンサルタントの支援でカスタマイズを実現 |
| 大規模(従業員300名以上) | 内製可能 | 複雑 | Salesforce | 高度なカスタマイズ性と拡張性で大規模組織に対応 |
| 大規模(従業員300名以上) | 外部支援が必要 | 複雑 | Salesforce | 専門コンサルタントと連携して大規模導入を実現 |
年間経常収益500万ドル以上の企業規模でSalesforceがトップシェアを占め、500万ドル未満ではHubSpotがトップシェアを占めるという傾向があります。ただし、これは傾向を示すものであり、個別企業の状況により異なる可能性があることに注意してください。
市場シェアから見る両ツールの普及状況
日本国内および世界市場でのSalesforceとHubSpotのシェアを見ることで、両ツールの普及状況や導入実績を把握できます。ただし、シェアの高さが自社に最適とは限らないため、あくまで参考情報として活用してください。
日本国内のCRM・MA市場シェア
日本国内CRM市場では、Salesforce Sales Cloudが38.82%のシェアでトップ、HubSpotが6.40%で5位となっています。CRM市場ではSalesforceが圧倒的なシェアを持っており、日本国内での導入実績が豊富です。
一方、国内MA市場では、HubSpot Marketing Hubが20.3%のシェアで2位、Salesforce Marketing Cloud Account Engagementが13.4%で3位となっています(2026年調査)。MA市場では、HubSpotがSalesforceを上回るシェアを持っており、マーケティングオートメーションの分野で強みを発揮しています。
日本企業のCRM導入率は37.2%で、米国の91%と比べると普及の余地があります。今後も導入が進む見込みであり、CRM/MA市場は成長が期待されています。
シェアデータは調査対象企業や時期により異なり、サンプルバイアスの可能性があることに注意してください。また、シェアの高さ=自社に最適とは限らないため、自社の業務プロセスや実装体制に合わせて判断することが重要です。
世界市場での利用企業数
HubSpotは世界135か国・258,000社以上で利用されており、Salesforceは世界15万社で導入されています(2026年時点)。ただし、これはグローバルの導入社数であり、日本市場の実績はこれより低い可能性があります。
HubSpotの方が利用企業数が多い理由として、無料プランの存在や中小企業での導入のしやすさが挙げられます。一方、Salesforceは大企業や複雑な業務プロセスを持つ企業での導入が多く、企業あたりの規模が大きい傾向があると言われています。
利用企業数の多さ=自社に最適とは限らないため、自社の企業規模や業務プロセスに合わせて判断してください。
MA/SFA設定の難易度と実装体制を考慮した選定基準
機能や料金だけでツールを選ぶと、導入後のMA/SFA設定や実装フェーズで必要な体制・工数を見落とし、ツールが使いこなせず投資が無駄になります。導入後の「使いこなせない」リスクを防ぐには、MA/SFA設定の難易度と自社の実装体制(内製 or 外部支援)を事前に考慮することが重要です。
【チェックリスト】CRM選定前の自社状況確認チェックリスト
- 企業規模(従業員数・年間売上)を確認し、年間経常収益が500万ドル(約7億円)以上か未満かを把握する
- 営業担当者の人数を確認し、ユーザー単位課金と組織単位課金のどちらが総費用を抑えられるかを試算する
- 営業プロセスの複雑さを確認し、シンプルな商談管理で十分か、複雑な案件管理が必要かを判断する
- 自社の案件管理要件を整理し、商談ステージ、承認フロー、カスタム項目の必要性を確認する
- MA/SFA設定を内製できる人材がいるかを確認し、専門知識を持つ担当者の有無を把握する
- 外部支援が必要な場合の予算を確認し、コンサルティング費用を含めた総費用を試算する
- マーケティング自動化の必要性を確認し、リード育成・スコアリング・メール配信の優先度を判断する
- インバウンドマーケティング(コンテンツマーケティング)を重視するかを確認する
- CRMとMAを統合プラットフォームで運用したいかを確認する
- 既存システム(基幹システム、メールツール、Webサイトなど)との連携要件を整理する
- 他ツールとの連携費用を確認し、連携費用が200万円超になる可能性を考慮する
- 無料トライアルで実際に操作して、自社の業務フローに合うかを検証できるかを確認する
- カスタマイズ性を重視するか、標準機能での運用を重視するかを判断する
- 導入後の運用体制を確認し、管理者・利用者・サポート担当の役割分担を明確にする
- 導入スケジュールを確認し、いつまでに運用開始したいかを明確にする
年間経常収益500万ドル以上の企業規模でSalesforceがトップシェアを占め、500万ドル未満ではHubSpotがトップシェアを占める傾向がありますが、企業規模だけでなく、営業プロセスの複雑さや実装体制も考慮することが重要です。
Salesforceの実装難易度と必要な体制
Salesforceは高度なカスタマイズ性を持ち、自社の業務プロセスに合わせて柔軟に設定できる一方、専門知識が必要になる場合があります。
Salesforceは高度なカスタマイズが可能ですが、専門知識が必要なため、導入時は専門コンサルタントの支援を検討すべきと言われています。特に、複雑な営業プロセスを持つ企業や、独自のワークフローを構築したい企業では、専門コンサルタントの支援が推奨されます。
実装体制が整っていない場合のリスクとして、以下のようなケースが考えられます。
- MA/SFA設定に時間がかかりすぎて、導入スケジュールが大幅に遅れる
- カスタマイズを誤って、営業プロセスに合わない設定になり、現場で使われなくなる
- 運用開始後に設定変更が必要になるが、社内に対応できる人材がいない
外部支援を利用する場合、連携費用が200万円超のケースもあるため、総費用で判断する必要があります。ただし、専門コンサルタントの支援により、自社の業務プロセスに最適化された設定を短期間で構築できる可能性があります。
HubSpotの実装難易度と必要な体制
HubSpotは統合プラットフォームとしての使いやすさが特徴で、内製で始めやすい一方、複雑な営業プロセスには向かない場合があります。
HubSpotは無料プランから始められるため、まず無料トライアルで自社の業務に合うか検証するのが推奨されます。また、HubSpotのCRMとMAが同一基盤で動作するため、顧客育成がしやすく、メール施策やポップアップ施策も簡単に始められると言われています。
ただし、HubSpotは案件管理機能が弱いため、複雑な営業プロセスを管理する場合はSalesforceとの連携が必要になるケースがあります。例えば、複数の承認フローがある商談プロセスや、詳細なカスタム項目が必要な案件管理では、HubSpot単体では対応が難しい場合があります。
内製で始めやすい一方、複雑な要件には向かない場合があることを公平に理解し、自社の営業プロセスに合わせて判断してください。
まとめ:実装体制まで見据えたCRM選定で「使いこなせない」を防ぐ
Salesforce/HubSpotは機能や価格だけでなく、MA/SFA設定の難易度と自社の実装体制(内製 or 外部支援)に合わせて選ぶことで、導入後の「使いこなせない」を防ぎ、CRM活用の成果につなげられます。
記事全体の要点
- SalesforceとHubSpotは料金体系(ユーザー単位 vs 組織単位)が異なり、企業規模により総費用が変わる
- 年間経常収益500万ドル以上の企業ではSalesforce、500万ドル未満ではHubSpotがトップシェアを占める傾向があるが、営業プロセスの複雑さや実装体制も考慮すべき
- 機能の多さや価格の安さだけで選ぶと、導入後のMA/SFA設定や実装フェーズで必要な体制・工数を見落とし、ツールが使いこなせず投資が無駄になる
- SalesforceとHubSpotそれぞれの実装難易度と必要な体制を理解し、自社の状況に合わせて選定する
次のアクション
- CRM選定前の自社状況確認チェックリストを使って、企業規模・営業プロセス・実装体制を確認する
- HubSpotの無料トライアルで実際に操作し、自社の業務フローに合うかを検証する
- Salesforceを検討する場合は、専門コンサルタントに相談し、導入費用と実装期間を確認する
- 料金プランだけでなく、外部支援費用や連携費用を含めた総費用で判断する
導入後の活用フェーズまで見据えた選定が成功のカギです。自社の状況に合ったツールを選び、実装体制を整えることで、CRM/SFA/MAを効果的に活用し、営業・マーケティング活動の効率化につなげられます。
