営業効率化ツールを導入しても無駄が減らない理由
実は営業の無駄削減は、効率化ツールの導入だけでなく、戦略設計からMA/SFA設定・業務プロセス改善まで一貫して実装することで初めて実現できます。
SFA(営業支援システム) とは、Sales Force Automationの略で、営業活動の可視化・効率化を支援するシステムです。CRM(顧客関係管理) は、Customer Relationship Managementの略で、顧客情報を一元管理し関係構築を支援するシステムを指します。
日本企業のCRM導入率は2024年度で37.2%(前年度36.2%から+1.0pt)にとどまっています(HubSpot Japan調査)。一方で、すでにSFA/CRMを導入している企業でも、利用の課題として「情報の入力・更新が煩雑」43.6%、「営業メンバーが情報入力しない」40.6%という声が挙がっています(Mazrica調査、調査対象は限定的)。
つまり、ツールを導入しても活用設計が伴わなければ、新たな無駄を生んでしまうリスクがあるのです。
この記事で分かること
- 営業における「無駄」の種類と特定方法
- ツール導入だけでは成果が出ない理由
- 戦略から実装・定着まで一貫した無駄削減の進め方
- 自社の無駄を発見するためのチェックリスト
営業における「無駄」とは何か
営業における無駄は、主に「属人化」「手動作業」「KPI不在」の3つに分類できます。これらは相互に関連しており、一つを解消しても他が残っていれば根本的な改善にはつながりません。
属人化とは、業務が特定の個人の経験・勘に依存し、再現性がない状態を指します。組織的な生産性向上の障壁となる典型的な無駄です。38.5%の企業が「営業プロセスが属人化している」と回答しています(FNNプライムオンライン掲載調査)。
手動作業についても深刻な実態があります。全体では42.0%の企業が新規開拓を「ほぼ手動で行っている」と回答し、「紹介」を主力とする企業では61.5%が「ほぼ手動」です(Mail Marketing Lab調査、2025年)。さらに、紹介を主力とする企業では59%が新規開拓KPIを設定していないという実態もあります。
属人化による見えない無駄
属人化は「見えない無駄」を生みます。トップセールスのノウハウが共有されず、他のメンバーが同じ成果を出せない状況は、組織全体の機会損失につながります。
属人化が残ったままツールを導入しても、「結局あの人に聞かないと分からない」という状況は解消されません。まず暗黙知を明文化し、案件ステージや判断基準を統一することが、ツール活用の前提条件です。
営業の無駄を見つけるための自社診断
無駄を削減するには、まず自社のどこに無駄があるかを特定することが重要です。以下のチェックリストで現状を診断してみてください。
営業パーソンがSFA/CRMに情報入力しない理由の1位は「入力作業に時間がかかる」で54.5%を占めています(Mazrica調査)。このような「入力の負担感」は、無駄が存在するサインの一つです。
【チェックリスト】営業の無駄発見チェックリスト
- 営業担当者によって案件管理の方法がバラバラである
- 商談の進捗度や有望度の判断基準が統一されていない
- SFA/CRMに入力されている情報が古いまま放置されている
- 営業会議で情報共有に多くの時間を費やしている
- 見積作成や報告書作成に手作業が多い
- 新規開拓がほぼ手動で行われている
- 紹介営業に依存しているがKPIを設定していない
- 営業担当者の退職時に顧客情報が失われるリスクがある
- マーケティングから引き渡されたリードのフォロー状況が追えない
- 営業活動の効果測定ができていない
- 特定の担当者に業務が集中している
- 顧客情報が複数のシステムに分散している
上記の項目に半数以上該当する場合は、無駄削減に取り組む優先度が高い状況です。
営業効率化施策の比較と選び方
効率化施策は複数ありますが、重要なのは自社の課題に合った施策を選ぶことです。よくある失敗パターンとして、営業効率化ツールを導入するだけで無駄が削減できると考えてしまうことがあります。ツール導入と活用設計が分離し、設定が放置されたままでは成果は出ません。この考え方は誤りです。
【比較表】営業効率化施策の比較表
| 施策 | 対象とする無駄 | 効果が出るまでの期間 | 導入の難易度 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| SFA/CRM導入 | 情報分散、属人化 | 中期 | 中 | 入力負荷の設計が重要 |
| 入力項目の簡略化 | 入力工数 | 短期 | 低 | 必要な情報を削りすぎない |
| 入力自動化 | 入力工数 | 短期 | 中 | 連携設定の技術知識が必要 |
| KPI設計・可視化 | 属人化、効果測定不在 | 中期 | 中 | 現場との合意形成が必要 |
| MA/SFA連携 | リード管理、情報分断 | 中長期 | 高 | 一貫した設計が必要 |
| プロセス標準化 | 属人化 | 中期 | 中 | 現場の納得感が重要 |
ツール導入で失敗するパターン
SFA/CRM利用の課題として、「情報の入力・更新が煩雑」43.6%、「営業メンバーが情報入力しない」40.6%という調査結果があります(Mazrica調査、調査対象は限定的)。
ツール導入で失敗する典型的なパターンは以下の通りです。
- 入力項目が多すぎて現場の負担になる
- 導入後の運用ルールが曖昧なまま放置される
- 入力したデータが活用されず、入力のモチベーションが下がる
- システム間の連携ができておらず、二重入力が発生する
これらを防ぐには、導入時に入力負荷を最小化する設計と、定着支援の体制が不可欠です。
戦略から実装・定着まで一貫した無駄削減の進め方
無駄削減を成果につなげるには、戦略設計から実装・定着まで一貫して取り組むことが重要です。
デマンドジェネレーションとは、マーケティングから営業へ引き渡す見込み顧客を創出する一連のプロセスを指します。CRM/SFA/MAを連携させることで、このプロセス全体を可視化・最適化できます。
山洋電気のCRM/SFA/MA連携事例では、新規案件創出が50件→118件(約2.4倍)、新規案件金額が1.5億円→7.5億円(5.0倍)に成長しています(2022年度→2023年度)。ただし、これは単一企業の事例であり、すべての企業で同様の成果が再現されるわけではありません。
CRM/SFA/MA連携による実装のポイント
連携を成功させるためのポイントは以下の通りです。
- 入力自動化・項目簡略化で入力負荷を最小化する
- プロセスを4段階(リード獲得→MQL/SQL判定→商談化→受注)に分解し、各段階で計測する
- 進捗度・有望度の定義を統一し、暗黙知を排除する
- マーケティングと営業の連携ポイントを明確にする
まとめ:営業の無駄削減を成果につなげるために
本記事では、営業の無駄削減について、無駄の種類、特定方法、効率化施策の比較、そして一貫した実装アプローチを解説しました。
要点を整理すると以下の通りです。
- 営業の無駄は「属人化」「手動作業」「KPI不在」に分類できる
- ツール導入だけでは新たな無駄を生むリスクがある
- 入力負荷の最小化と定着支援の体制が成功の鍵
- CRM/SFA/MA連携でプロセス全体を可視化・最適化する
次のステップ
- チェックリストで自社の無駄を診断
- 優先的に取り組むべき課題を特定
- 施策の比較表を参考に、自社に合った施策を選択
- 必要に応じて専門家の支援を検討
営業の無駄削減は、効率化ツールの導入だけでなく、戦略設計からMA/SFA設定・業務プロセス改善まで一貫して実装することで初めて実現できます。自社だけでの対応が難しい場合は、戦略から実装・運用まで一貫して支援できるパートナーの活用も選択肢の一つです。
