Marketo Salesforce連携を成功させるために必要なこと
実はMarketo-Salesforce連携は技術設定より先に「どのデータを、何のために、誰が使うか」を明確にする業務プロセス設計が成功の鍵です。連携機能を調べてすぐに設定を始めても、業務プロセスの要件定義ができていなければ、せっかくの連携が活用されないまま終わってしまうことが少なくありません。
国内MAツールシェアではMarketoが7.5%(4位)、Pardot(Salesforce系)が13.4%(3位)となっており、多くのBtoB企業がMAとSFA/CRMの連携を検討しています。しかし、連携設定の方法を調べることはできても、自社の業務プロセスに合わせた設計の考え方がわからないという声をよく聞きます。
この記事で分かること
- Marketo-Salesforce連携の仕組みと同期対象オブジェクト
- 両ツール間の用語の違いとマッピング設計の考え方
- 連携前に必要な業務プロセス要件定義の方法
- 連携設定の実践手順とカスタムフィールド同期のポイント
Marketo Salesforce連携の仕組みと同期対象オブジェクト
Marketo-Salesforce連携では、Native CRM Connectorを通じてデータがリアルタイムに近い形で共有されます。同期は毎日連続的に実行され、各同期サイクル後に5分間一時停止してから再開する仕組みです。
処理能力の目安として、1時間あたり最大20万レコード、1日あたり最大200万レコードの同期が可能とされています。ただし、これは契約プランや環境により異なる場合がありますので、大量のデータを扱う場合は事前に確認することをおすすめします。
双方向同期とは、SalesforceとMarketo両方からの変更が即時反映される同期方式を指します。ただし、全てのオブジェクトが双方向同期されるわけではありません。
双方向同期と一方向同期の違い
Marketo-Salesforce連携で双方向同期されるのは、リード、取引先責任者(Contact)、キャンペーンの3オブジェクトのみです。この点を誤解している方が多いため、注意が必要です。
| 同期方向 | 対象オブジェクト |
|---|---|
| 双方向同期 | リード、取引先責任者(Contact)、キャンペーン |
| 一方向同期(SF→Marketo) | 商談、アカウント、カスタムオブジェクト |
商談やアカウントなどはSalesforceからMarketoへの一方向同期となります。Marketo側で商談情報を更新してもSalesforceには反映されないため、運用設計の際には同期方向を意識することが重要です。
MarketoとSalesforceの用語の違いと対応関係
Marketo-Salesforce連携を設計する際、両ツール間で用語が異なることが混乱の原因になりがちです。主要な用語の対応関係を理解しておくことで、設計時のミスを防げます。
フィールドマッピングとは、MarketoとSalesforceのカスタムフィールドを対応付ける設定のことです。同期開始後は変更不可となるため、事前の設計が極めて重要です。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、マーケティング部門がスコアリング等で営業引き渡し適格と判断したリードを指します。これがSalesforceへプッシュする基準となります。
【比較表】同期オブジェクト・フィールドのマッピング設計表
| Marketo用語 | Salesforce用語 | 同期方向 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 顧客(Person) | リード | 双方向 | 新規リードの同期先 |
| 顧客(Person) | 取引先責任者(Contact) | 双方向 | 商談化後の同期先 |
| キャンペーンメンバー | キャンペーンメンバー | 双方向 | ステータスも同期 |
| 商談(参照のみ) | 商談 | 一方向(SF→MK) | Marketo側は参照専用 |
| アカウント(参照のみ) | 取引先 | 一方向(SF→MK) | Marketo側は参照専用 |
| スコア | カスタム項目で同期 | 双方向 | フィールドマッピングが必要 |
| アクティビティ | タスク/イベント | 設定次第 | 同期範囲を要検討 |
| カスタムフィールド | カスタム項目 | 双方向(設定次第) | SF側で作成→MK側に自動反映 |
業務プロセス視点での連携要件定義
連携を成功させるためには、技術設定の前に業務プロセス視点での要件定義が必要です。よくある失敗パターンは、連携機能を調べてすぐに設定を始めることです。業務プロセスの要件定義をせずに進めると、誰も活用しない連携が出来上がり、マーケと営業のデータ分断が解消されないままになってしまいます。
実際に連携を成功させた企業の事例を見てみましょう。日本エスリード株式会社ではMarketo-Salesforce連携後にリード成約率が3%から9%に向上したという報告があります。また、日商エレクトロニクスでは30億円規模の商談機会を創出したとされています。HENNGEでは失注フォローアラートの同期により営業活動入力率がほぼ100%に向上した事例もあります。
ただし、これらは単一企業の成果であり、業種・規模・運用体制により結果は大きく異なります。重要なのは、各社が連携前に業務プロセスを整理し、明確な目的を持って設計したことです。
連携前にはフィールド対応表(Excel等)を作成し、双方向同期仕様を整理するのが日本BtoB企業の標準的なアプローチです。以下のチェックリストを活用して、要件定義を進めてください。
【チェックリスト】Marketo-Salesforce連携の事前要件定義チェックリスト
- 連携の目的を明文化している(例:マーケと営業のデータ統合、商談化率向上)
- 同期対象のオブジェクトを決定している(リード、Contact、キャンペーン等)
- 双方向同期と一方向同期の違いを理解している
- 同期するカスタムフィールドの一覧を作成している
- フィールドの命名規則を両ツールで統一している
- マーケ部門が必要とするSalesforceのデータを特定している
- 営業部門が必要とするMarketoのデータを特定している
- SQL(営業引き渡し基準)の定義を明確にしている
- リードの所有者ルール(アサインメント)を決定している
- 重複リードの処理ルールを決定している
- 同期タイミングの要件を確認している(リアルタイム性の必要度)
- 初回同期のデータ量とスケジュールを見積もっている
- テスト環境でのPoC計画を立てている
- 運用開始後のメンテナンス担当者を決定している
- 同期エラー時の対応フローを定義している
どのデータを、何のために、誰が使うかを明確にする
要件定義の具体的な進め方として、マーケ部門と営業部門の両者へヒアリングを行うことが重要です。
マーケ部門へのヒアリングポイント
- どのスコアに達したらSalesforceへプッシュするか
- 営業に渡した後のリード状況をどう把握したいか
- キャンペーン効果測定にどのデータが必要か
営業部門へのヒアリングポイント
- リードのどの情報を優先的に確認したいか
- Marketoのアクティビティ(メール開封、ページ閲覧等)をどう活用するか
- 商談化後のフォローにどのデータを使いたいか
これらを整理することで、「どのデータを、何のために、誰が使うか」が明確になります。
連携設定の実践手順とカスタムフィールド同期
業務プロセス要件定義が完了したら、実際の連携設定に進みます。フィールドマッピングは同期開始後に変更不可となるため、事前の要件定義に基づいて慎重に設計してください。
カスタムフィールドの同期には注意点があります。Salesforce側でカスタムフィールドを作成すると、Marketo側にも自動で作成されます。一方、Marketo側で作成したカスタムフィールドはSalesforce側には自動作成されません。そのため、両ツールで同期させたいカスタムフィールドはSalesforce側で作成することが推奨されます。
最新動向として、Salesforce Data Cloud経由でMarketoのキャンペーン・リード・アクティビティデータをインポートできるようになっています(2024年Summerリリース、ベータ機能)。また、SansanやFORCASとの追加連携により、名刺データや企業データベースとの統合も進んでいます。
初回同期とテスト環境でのPoC
初回同期はデータ量や環境により異なりますが、1日程度かかる場合があります。本番移行前にテスト環境でPoCを実施することを強く推奨します。
PoCで確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 同期対象のフィールドが正しくマッピングされているか
- 双方向同期が意図どおりに動作しているか
- 同期エラーが発生していないか
- 処理時間が許容範囲内か
テスト環境での検証を経てから本番環境に移行することで、予期せぬトラブルを防ぐことができます。
まとめ:業務プロセス設計で連携を成功させる
Marketo-Salesforce連携を成功させるポイントを整理します。
- 連携機能を調べる前に、業務プロセス要件定義を行う
- 双方向同期と一方向同期の違いを理解し、適切な設計を行う
- フィールドマッピングは同期開始後に変更不可のため、事前設計が重要
- マーケ部門と営業部門の両者にヒアリングし、必要なデータを特定する
- 初回同期前にテスト環境でPoCを実施する
日本エスリード株式会社の事例では、連携後にリード成約率が3%から9%に向上しています。ただし、この成果は業務プロセスを整理し、明確な目的を持って設計した結果であることを忘れないでください。
Marketo-Salesforce連携は技術設定より先に「どのデータを、何のために、誰が使うか」を明確にする業務プロセス設計が成功の鍵です。この記事で紹介したチェックリストとマッピング設計表を活用して、自社の業務に合った連携設計を進めてください。
