Marketo導入を検討する企業が増えている背景
Marketoの導入成功は、ツールの設定だけでなく、導入前の業務プロセス整理と社内定着の仕組み作りまで含めて設計することで実現できる——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
MA(Marketing Automation) とは、マーケティング活動を自動化・効率化するためのツール・仕組みです。リード獲得からナーチャリング、スコアリングまでを一元管理し、効率的なマーケティング活動を支援します。MA市場は急速に拡大しており、矢野経済研究所の調査によると、MA市場規模は2021年の600億円から2026年には865.5億円に成長すると予測されています。また、富士キメラ総研によるとMAツール市場は2021年度約151億円から2026年度には約244億円への拡大が見込まれています。
この市場成長に伴い、Marketo(Adobe Marketo Engage)の導入を検討する企業も増えています。しかし、導入後に「思ったほど活用できていない」「結局使われなくなった」という声も少なくありません。その原因の多くは、ツールの設定作業だけに注力し、業務プロセスの見直しや社内定着の仕組み作りを後回しにしてしまうことにあります。
この記事で分かること
- Marketoの基本機能と他MAツールとの違い
- 導入が失敗する典型パターンとその原因
- 導入前に整えるべき準備事項のチェックリスト
- フェーズ別の具体的なアクションと成功のポイント
- 社内定着を実現するための運用体制の考え方
Marketoとは:主要機能と他MAツールとの位置づけ
Marketo(Adobe Marketo Engage) は、Adobe社が提供するエンタープライズ向けMAツールです。リード管理、メール配信、スコアリング、ABM機能を統合したプラットフォームとして、中堅〜大企業を中心に採用されています。複数の調査による推計では、Marketoの市場シェアは7.5%〜11.24%とされており、グローバルでも国内でも一定のプレゼンスを持つMAツールとして認知されています(ただし、市場シェアの数値は調査機関・調査方法により差があるため、参考値として捉えてください)。
Marketoはエンタープライズ向け製品であり、機能が豊富な分、運用体制の整備が重要です。高機能であることが必ずしも成果に直結するわけではなく、自社の運用体制やスキルとのマッチングが成功の鍵を握ります。
Marketoの主要機能とできること
Marketoには、マーケティング業務を効率化するための複数の主要機能が備わっています。
リード管理機能は、見込み客の情報を一元管理し、獲得から商談化までのプロセスを可視化します。Webサイトでのフォーム送信、イベント参加、資料ダウンロードなど、さまざまなチャネルから獲得したリード情報を統合的に管理できます。
メール配信機能では、セグメント別のターゲティングメール、トリガーに基づく自動配信、A/Bテストなどが可能です。単なる一斉配信ではなく、顧客の行動に応じたパーソナライズされたコミュニケーションを実現します。
リードスコアリングとは、見込み客の行動履歴や属性に基づいて購買意欲を数値化し、営業へのパス優先度を判定する手法です。Marketoでは、Webサイト閲覧、メール開封・クリック、資料ダウンロードなどの行動に対してスコアを付与し、一定のスコアに達したリードを営業に引き渡すワークフローを構築できます。
ABM(Account Based Marketing) とは、特定の企業アカウントをターゲットとして、パーソナライズされたマーケティング施策を展開する手法です。Marketoでは、ターゲットアカウントの特定から、アカウント単位でのエンゲージメント測定、パーソナライズドコンテンツの配信までを一貫して実行できます。
これらの機能は非常に強力ですが、使いこなすには適切な設計と継続的な運用が必要です。機能を理解しただけでは成果は出ず、自社の業務プロセスに合わせた設計と運用体制の構築が不可欠です。
Marketo導入が失敗する典型パターン
Marketo導入が期待した成果を生まない最大の原因は、「Marketoを導入すればマーケティングが自動化される」という誤解にあります。業務プロセスの見直しをせずにツール設定だけで終わらせてしまい、結局活用されないまま放置されるパターンが非常に多いのです。
データサイロとは、部門やシステムごとにデータが分断され、組織横断での活用ができない状態を指します。82社を対象にした調査では、データのサイロ化が高度な分析を阻む最大要因であり、大企業の約8割で改善余地があると報告されています。Marketoを導入しても、CRMやSFAとデータが連携されていなければ、リードの行動履歴と商談情報を紐づけた分析ができず、スコアリングの精度も上がりません。
「ツール導入=自動化」という誤解が招く結末
MAツールを導入すれば自動的にリードが増え、営業効率が上がるという期待は、残念ながら現実とは異なります。以下のような誤解が、導入失敗の原因となっています。
誤解1:MAを導入すれば自動的にリードが増える
実際には、MAはリードを「育てる」ツールであり、リードを「獲得する」ためにはコンテンツや施策の設計が別途必要です。メール配信やスコアリングの仕組みを構築しても、配信するコンテンツがなければ効果は出ません。
誤解2:高機能なツールほど成果が出る
Marketoは高機能ですが、機能の多さが成果に直結するわけではありません。自社の運用体制やスキルとのマッチングが重要であり、使いこなせない機能は宝の持ち腐れになります。
誤解3:スコアリングを設定すれば営業効率が上がる
スコアリングは設定して終わりではなく、継続的なチューニングが必要です。営業部門との連携ルール(MQL定義、パス条件)が未整備のままでは、「スコアは高いが商談化しないリード」が営業に渡され、営業部門からの信頼を失うことになります。
Marketo導入前に整えるべき準備事項
Marketo導入を成功させるためには、ツール設定に着手する前の準備が極めて重要です。導入前の業務プロセス整理と関係部門との合意形成が、その後の活用度を大きく左右します。
以下のチェックリストで、自社の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】Marketo導入前準備チェックリスト
- 導入目的と期待する成果指標(KPI)が明文化されている
- 経営層からの承認と予算が確保されている
- プロジェクトオーナーと担当者がアサインされている
- 導入スケジュールとマイルストーンが設定されている
- 連携するCRM/SFAが決定している
- どのデータをMarketoに連携するか整理されている
- データの更新頻度とマスタ管理の方針が決まっている
- MQL(Marketing Qualified Lead)の定義が営業部門と合意されている
- 営業へのリードパス条件が明確になっている
- 営業からマーケへのフィードバックの仕組みが設計されている
- スコアリングの初期設計(行動スコア、属性スコア)が完了している
- 配信するメールコンテンツの計画がある
- ランディングページやフォームの設計が進んでいる
- Marketo専任担当者の配置または外部パートナーの支援体制が決まっている
- 担当者向けのトレーニング計画がある
- 定例の効果測定とチューニングの運用ルールが決まっている
CRM・SFAとのデータ連携設計
Marketo導入の成否を分けるのが、CRM・SFAとのデータ連携設計です。データ統合の設計を先行させることで、導入後の活用がスムーズになります。
連携設計で検討すべきポイントは以下の通りです。
連携するデータの範囲として、リード情報、企業情報、商談情報、活動履歴など、どのデータをMarketoとCRM/SFA間で同期するかを明確にします。すべてのデータを連携する必要はなく、マーケティング活動に必要な項目に絞ることで、同期エラーのリスクを減らせます。
データの更新頻度については、リアルタイム同期が必要な項目と、日次バッチ処理で十分な項目を切り分けます。リアルタイム同期はシステム負荷が高いため、本当に必要な項目のみに限定することが推奨されます。
マスタ管理の方針として、重複レコードの処理ルール、名寄せのロジック、どちらのシステムをマスタとするかを事前に決めておきます。これが曖昧なままだと、データの不整合が発生し、スコアリングやレポーティングの精度が低下します。
営業部門との連携ルールの合意
MAツールは、マーケティング部門だけで完結するツールではありません。営業部門との連携ルールを導入前に合意しておかないと、「マーケが送ってくるリードの質が低い」「営業がフォローしてくれない」という対立が生じ、結果として「使われないMA」になってしまいます。
合意すべき主要な項目は以下の通りです。
MQL(Marketing Qualified Lead)の定義として、どのような条件を満たしたリードを営業にパスするかを明確にします。スコアだけでなく、企業規模、役職、直近の行動(資料請求、価格ページ閲覧など)を組み合わせた条件設計が効果的です。
営業へのパスタイミングについて、MQL条件を満たしたら即時にパスするのか、一定期間ナーチャリングしてからパスするのかを決めます。商材や販売サイクルによって最適なタイミングは異なります。
フィードバックの仕組みとして、営業がパスされたリードに対してアクションを取った結果(商談化した/しなかった、理由など)をマーケティングに戻す仕組みを設計します。このフィードバックがないと、スコアリングの精度を改善できません。
Marketo導入フェーズ別のアクションと成功のポイント
Marketo導入は一度に完璧を目指すのではなく、段階的に活用範囲を広げていくアプローチが成功率を高めます。MA活用企業では営業プロセス改善率が20〜47%向上したという報告があり、リードスコアリング活用により成約率が25%向上した事例もあります(ただし、これらは成功事例であり、すべての導入企業で同様の結果が得られるわけではありません)。
以下の比較表で、各フェーズでのアクションと成功のポイントを整理します。
【比較表】Marketo導入フェーズ別アクション比較表
| フェーズ | 主なアクション | 成功のポイント | 期待される成果 |
|---|---|---|---|
| 計画 | 導入目的の明確化、KPI設定、予算確保、チーム編成 | 経営層の巻き込み、営業部門との早期合意 | 明確なゴールと体制の確立 |
| 導入 | 初期設定、CRM連携、データ移行、テスト配信 | 連携テストの徹底、小規模から開始 | 基盤の構築完了 |
| 初期運用 | メール配信開始、基本スコアリング稼働、効果測定 | 全機能を使わず優先機能に絞る、週次で効果確認 | 最初の成功体験の獲得 |
| 定着・拡大 | スコアリング精度改善、ABM展開、高度なセグメンテーション | 営業フィードバックの反映、段階的な機能拡張 | 営業連携の強化、ROI向上 |
初期運用で成果を出すための絞り込み
導入初期に最も重要なのは、「最初から全機能を使おうとしない」ことです。Marketoは高機能ですが、すべての機能を同時に使いこなそうとすると、設定の複雑さに追われて成果が出る前に疲弊してしまいます。
推奨されるステップは以下の通りです。
ステップ1:メール配信の確立として、まずはセグメント別のメール配信を安定的に運用できる状態を目指します。開封率、クリック率、配信停止率などの基本指標を把握し、改善サイクルを回せるようになることが第一歩です。
ステップ2:スコアリングの導入として、メール配信が安定したら、リードスコアリングを導入します。最初は行動スコア(メール開封、Webサイト訪問など)をベースにシンプルなルールから始め、営業からのフィードバックを受けながら徐々に精度を高めていきます。
ステップ3:ABMへの展開として、スコアリングが機能し始めたら、ABM機能を活用したアカウント単位でのアプローチに展開します。ターゲットアカウントの特定から、アカウント単位でのエンゲージメント測定、パーソナライズ施策の実行へと進みます。
また、社内にMarketo専任担当者を配置するか、外部パートナーの支援体制を確保することも重要です。Marketoは継続的な運用とチューニングが必要なツールであり、片手間での運用では成果を出すことが難しいのが現実です。
まとめ:Marketo導入成功はプロセス設計で決まる
本記事では、Marketo導入を成功させるために必要な準備と、社内定着までのポイントを解説しました。
記事のポイント
- Marketo導入の成否を分けるのは、ツール設定ではなく、導入前の業務プロセス整理と関係部門との合意形成である
- 「導入すれば自動化される」という誤解は失敗の原因であり、CRM/SFA連携、営業との連携ルール、コンテンツ準備を先行させる必要がある
- 初期運用では全機能を使おうとせず、メール配信→スコアリング→ABMと段階的に活用範囲を広げることが成功への近道である
Marketoの導入成功は、ツールの設定だけでなく、導入前の業務プロセス整理と社内定着の仕組み作りまで含めて設計することで実現できます。
本記事で紹介したチェックリストを活用して、まずは自社の準備状況を確認してみてください。準備が不十分なまま導入を進めても、活用されないまま放置されるリスクが高まります。導入前の準備に時間をかけることが、結果として導入後の成果を最大化することにつながります。
