「マーケの成果が見えない」と言われる原因
多くの人が見落としがちですが、マーケティング数値報告は、レポート作成だけでなくMA/SFAデータを活用した部門横断のKPI設計と改善サイクルまで含めて構築することで、経営層に伝わり営業成果に繋がる報告が実現できます。
「毎月レポートを出しているのに、経営層から『で、売上にどう繋がるの?』と言われる」「マーケの貢献度が見えにくい」——こうした課題を抱えるマーケティング担当者は少なくありません。
原因の多くは、PV数やリード獲得数といった「活動量」の報告に終始し、売上・受注への貢献が説明できていないことにあります。経営層が知りたいのは「マーケティング投資がどれだけ事業成果に繋がっているか」です。
この記事で分かること
- マーケティング報告で押さえるべきKPIの選び方と3階層構造
- PV・リード数の羅列報告が失敗する理由と改善策
- 経営層に伝わるレポート構成と具体的な書き方
- MA/SFAを活用した部門横断の報告設計
- 営業と共通のダッシュボードを構築する考え方
マーケティング数値報告の基本|報告すべきKPIの選び方
経営層への報告では、マーケティングKPIを「KGI(受注・売上)→パイプラインKPI→マーケKPI」の3階層で整理することが重要です。この構造を理解することで、マーケ活動と事業成果の繋がりを明確に説明できるようになります。
BtoBマーケ担当330名への調査(2025年)では、広告運用のKPIとして「最も重視するKPI」1位はCVR(28.7%)でした。しかし、CVRだけを報告しても経営層には響きません。CVRがどう商談化・受注に繋がるかを示す必要があります。
CPA(Cost Per Acquisition) とは、1件のリード獲得にかかった広告費用のことで、顧客獲得単価とも呼ばれます。
CVR(Conversion Rate) とは、Webサイト訪問者がリード登録などの目標行動に至った割合を指します。
LTV(Life Time Value) とは、顧客生涯価値のことで、1顧客から得られる累計利益を意味します。
CAC(Customer Acquisition Cost) とは、顧客獲得コストのことで、マーケ費用と営業コストを合算した1顧客あたりの獲得費用です。
【比較表】マーケKPI報告項目一覧表(フェーズ別)
| フェーズ | KPI項目 | 説明 | 経営層への報告重要度 |
|---|---|---|---|
| 認知 | PV・UU | サイト訪問者数 | 低(単体では意味が薄い) |
| 認知 | 広告インプレッション | 広告の表示回数 | 低 |
| 獲得 | リード獲得数 | 新規リード数 | 中 |
| 獲得 | CPA | リード1件あたりの獲得コスト | 高 |
| 獲得 | CVR | 訪問者からリードへの転換率 | 高 |
| 育成 | MQL数 | 営業パス基準を満たしたリード数 | 高 |
| 育成 | MQL転換率 | リードからMQLへの転換率 | 高 |
| 商談 | SQL数 | 営業が商談化したリード数 | 最高 |
| 商談 | 商談化率 | MQLからSQLへの転換率 | 最高 |
| 受注 | 受注数・受注金額 | 最終的な売上貢献 | 最高 |
| 受注 | CAC | 顧客1社あたりの獲得コスト | 最高 |
| 収益 | LTV/CAC比率 | 投資対効果の指標 | 最高 |
経営層には上位階層(商談・受注)と主要な中位階層(MQL・SQL)を中心に報告し、下位階層(PV・インプレッション)は補足程度に留めるのが効果的です。
MQL・SQLの定義と報告のポイント
マーケティングと営業の連携において、MQL(Marketing Qualified Lead) とSQL(Sales Qualified Lead) の定義を明確にすることが不可欠です。
MQL は、マーケティング活動で獲得・育成され、営業にパスすべき基準を満たしたリードを指します。SQL は、営業がアプローチすべきと判断した商談見込みの高いリードです。
BtoBマーケター330名の実態調査(2025年)では、広告経由リードの商談化率のボリュームゾーンは「11〜20%」であり、商談化率15%を目標値として設定するのが妥当とされています。ただし、この数値は業種・単価帯・営業モデルにより大きく変動するため、自社の過去データをベースに目標設定することが推奨されます。
MQL/SQLの定義が営業と合意されていないと、「マーケが渡すリードの質が低い」「営業がフォローしてくれない」という部門間の対立が生じやすくなります。定義を明文化し、定期的に見直すプロセスを設けることが重要です。
よくある失敗パターン|PV・リード数の羅列報告
マーケティング数値報告でよくある失敗は、PV数やリード獲得数を羅列するだけで、経営層視点の売上貢献や営業部門との連携KPIを設計しないまま報告を続けてしまうパターンです。このアプローチでは、「マーケの成果が見えない」と言われ続けることになります。
この失敗パターンの典型例:
- 「今月のPVは10万、リード獲得は200件でした」と報告するが、それが売上にどう繋がるか説明できない
- 目標値を設定せずに数値を並べるだけなので、良いのか悪いのか判断できない
- マーケ部門のツールとSFA(営業のツール)が連携しておらず、リードがその後どうなったか追跡できない
経営層が求めているのは「活動報告」ではなく「投資対効果」です。マーケティング予算に対して、どれだけの商談・受注が生まれたのか。この問いに答えられない報告は、意思決定に使えないため評価されません。
経営層に伝わるレポートの構成と書き方
経営層に伝わるマーケティングレポートは、「全体サマリー→ファネル数値→チャネル別内訳」のパイプライン連動型で構成することが効果的です。売上への貢献を最初に示し、その根拠となる数値を階層的に説明する流れです。
BtoBマーケ担当者326名調査(2025年)では、目標CPA(リード獲得単価)は「5,000〜10,000円未満」が21.8%で最多、「10,000〜15,000円未満」が15.3%でした。ただし、CPAの適正値は業種・単価帯・営業モデルにより大きく変動するため、この数値をそのまま自社の目標とするのではなく、参考値として捉えてください。
事業インパクトを伝えるには、「CPA × 商談化率 = 商談1件あたりコスト」のように、経営層が理解しやすい形に加工して報告することが重要です。例えば、「CPAが8,000円で商談化率が15%の場合、商談1件あたりのコストは約53,000円」といった形です。
報告資料の具体的な構成例
経営層向けのマーケティング報告資料は、以下のような3部構成が効果的です。
1ページ目:全体サマリー
- 当月の主要KPI(MQL数、SQL数、受注貢献金額)
- 前月比・前年同月比の増減
- 目標に対する達成率
2ページ目:ファネル推移
- リード→MQL→SQL→受注のファネル図
- 各段階の転換率と推移グラフ
- ボトルネックの特定と改善ポイント
3ページ目:チャネル別内訳
- 広告・SEO・イベント等のチャネル別リード数とCPA
- チャネル別の商談化率比較
- 次月の施策方針
この構成であれば、経営層は1ページ目で全体像を把握し、詳細を知りたい場合に2〜3ページ目を確認できます。
MA/SFAデータを活用した部門横断の報告設計
マーケティングと営業の連携を実現するには、MA(マーケティングオートメーション)とSFA(営業支援システム)のデータを統合し、リードから受注までを一気通貫で可視化する報告設計が必要です。
BtoB企業経営者のリード獲得施策調査(n=87〜93、2025年)では、実施施策として「SNS:33.3%」が最多という結果が出ています。ただし、この調査は経営者対象でサンプル数が限定的なため、一般化には注意が必要です。
ある国産MAツールの導入事例では、プロモーション予算に対して150%を超える成果を達成し、獲得リード760件、受注115件という結果が報告されています。ただし、これは特定企業の成功事例であり、自社への適用可能性は個別に検討が必要です。
【チェックリスト】マーケ数値報告の準備チェックリスト
- KGI(受注・売上目標)が明確に設定されている
- MQLの定義が営業部門と合意されている
- SQLの定義が営業部門と合意されている
- MAツールでリード獲得数を自動計測している
- SFAで商談化・受注を追跡できる状態になっている
- MAとSFAのデータが連携されている
- チャネル別のCPAを算出できる
- チャネル別の商談化率を算出できる
- 月次の報告フォーマットが標準化されている
- 報告の目的と対象者(経営層/営業)が明確になっている
- 前月比・前年同月比の比較ができる
- 目標に対する達成率を算出できる
- ファネル全体の転換率を可視化できる
- ボトルネックを特定できる分析体制がある
- 改善アクションを報告に含める運用ができている
営業と共通のダッシュボードを構築する
部門横断のレポートを実現する最も効果的な方法は、「営業が見ている数字」と「マーケが見ている数字」を1枚のファネルで統合するダッシュボードを構築することです。
具体的には、以下の要素を1つの画面で確認できる状態を目指します:
- リード獲得数(マーケ指標)
- MQL数・MQL転換率(マーケ→営業の接点)
- SQL数・商談化率(営業指標)
- 受注数・受注金額(事業成果)
特定のツールを推奨するものではありませんが、CDP/DWH+CRM/SFA+MA+BIを組み合わせた部門横断ダッシュボードの構築が、成熟した企業では一般的になりつつあります。
重要なのは、マーケと営業が「同じ数字」を見て議論できる状態を作ることです。それぞれが別々のツールで別々の数字を見ていては、建設的な改善議論ができません。
まとめ|報告で終わらせず改善サイクルに繋げる
マーケティング数値報告は、単なるレポート作成で終わらせるのではなく、改善サイクルに繋げることが重要です。
本記事で解説したポイントを振り返ります:
KPIは3階層で整理する:KGI(受注・売上)→パイプラインKPI→マーケKPIの構造で、売上への貢献を説明できるようにする
PV・リード数の羅列は避ける:活動量ではなく投資対効果を報告し、経営層の意思決定に使える情報を提供する
MQL/SQLの定義を営業と合意する:部門間の共通言語を作り、リードの質に関する対立を防ぐ
MA/SFAデータを統合する:リードから受注までを一気通貫で追跡し、マーケの貢献を可視化する
共通のダッシュボードを構築する:マーケと営業が同じ数字を見て改善議論できる状態を作る
まず取り組むべきは、MQL/SQLの定義を営業部門と合意することです。この共通言語がなければ、どれだけ精緻なレポートを作成しても、部門間の連携は進みません。
マーケティング数値報告は、レポート作成だけでなくMA/SFAデータを活用した部門横断のKPI設計と改善サイクルまで含めて構築することで、経営層に伝わり営業成果に繋がる報告が実現できます。本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社の報告体制を見直してみてください。
