MAを導入しても成果が出ない企業が多い理由
MAを活用して成果を出すには、ツールの機能を覚えるだけでなく、マーケと営業の部門間連携とデータ連携を設計し、運用定着まで見据えた体制を構築することが重要です。これが本記事の結論です。
MAを導入したものの「期待した成果が出ていない」「リードは増えたが商談につながらない」という声は多く聞かれます。2024年時点で、日本市場全体のMA導入率は約1.5%(約62.6万社中9,444社)ですが、上場企業に限ると14.6%(3,850社中562社)と高い水準にあります。しかし、導入済み企業であっても「活用できていない」状態に陥っているケースは少なくありません。
この記事で分かること
- MA活用不全に陥る典型的な失敗パターンと原因
- 成功企業と失敗企業の違いを比較表で可視化
- 部門間連携とSLA策定の具体的なポイント
- 自社の活用度を診断できるセルフ診断チェックリスト
- KPIを売上目標から逆算する設計方法
本記事では、MA導入済みだが成果が出ていない企業のマーケティング責任者・部門長を対象に、活用不全からの脱却方法を解説します。
MA活用の前提となる基本用語とSFA/CRMとの役割分担
MAを正しく活用するためには、関連する基本用語を理解し、MA・SFA・CRMの役割の違いを明確にすることが前提となります。特に、MQLからSQLへの引き渡しがMA活用成否の分岐点となるため、用語の定義を社内で統一しておくことが重要です。
MA活用に関わる基本用語
- MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が一定の基準を満たしたと判断し、営業に引き渡す見込み顧客を指します
- SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門が商談可能と判断した見込み顧客です。MQLから営業が精査して認定します
- リードスコアリング とは、顧客の行動や属性に点数を付け、購買意欲の高さを数値化する仕組みです
- SLA(Service Level Agreement) とは、マーケと営業間でMQL定義や対応期限などを明文化した合意事項を指します
- リードナーチャリング とは、見込み顧客を育成し、購買意欲を高めるためのコミュニケーション活動です
MA・SFA・CRMの役割と連携ポイント
MA・SFA・CRMはそれぞれ異なる役割を持ち、連携して初めて成果につながります。
| ツール | 主な役割 | 担当フェーズ |
|---|---|---|
| MA | リード獲得・育成(ナーチャリング) | 認知〜MQL化 |
| SFA | 商談管理・営業活動の効率化 | MQL〜商談〜受注 |
| CRM | 既存顧客との関係管理 | 受注後〜継続 |
MA活用で成果が出ない企業の多くは、MA単体で運用しており、SFA・CRMとのデータ連携が不十分な状態にあります。マーケティング部門がMAで育成したリードを営業部門がSFAで受け取れない、あるいは受け取っても対応状況がフィードバックされないといったデータ分断が、活用不全の大きな原因となっています。
MA活用不全に陥る典型的な失敗パターン
MA活用不全の多くは、導入して初期設定を済ませただけで、メール配信やスコアリングの設定が放置され、マーケと営業でデータが分断されたまま「活用できていない」状態が続くことが原因です。「MAを導入すれば自動で成果が出る」という考え方は誤りです。
2025年のBtoBマーケティングに関する調査によると、重点施策としてターゲット見直し(36.6%)、データ分析強化(24.7%)、コンテンツ見直し(22.6%)が上位を占めています(調査対象は限定的)。この傾向からも、単にリードを量産するだけでなく、データに基づいてターゲットを絞り込み、質の高いリードを育成する方向へシフトしていることがわかります。MA活用もこの流れに沿って設計する必要があります。
スコアリング・MQL定義の不在がもたらす問題
スコアリングやMQL定義がないままMA運用を続けると、リードの質が見えず営業との連携が破綻しやすくなります。
(失敗例)ある企業では、MAで獲得したリードをすべて営業に渡していたが、営業担当が対応しても「まだ情報収集段階」のリードが大半で商談に発展せず、次第に営業がMAからのリードを後回しにするようになった。結果としてMAへの信頼が失われ、導入前と変わらない状態に戻ってしまった。
このような失敗を防ぐためには、MQL定義を明文化し、スコアリングルールを設計することが不可欠です。次のセクションでは、成功企業と失敗企業の違いを比較しながら、具体的な改善ポイントを解説します。
MA活用の成功パターンと失敗パターンの違い
MA活用で成果を出す企業と出せない企業の違いは、MQL定義・SLA策定・データ連携・KPI設計の有無に集約されます。以下の比較表で自社のポジションを確認してください。
【比較表】MA活用の成功パターンと失敗パターン比較表
| 比較項目 | 成功パターン | 失敗パターン |
|---|---|---|
| MQL定義 | 明文化されており、マーケ・営業で合意 | 定義がない、または部門間で認識がずれている |
| スコアリング | 行動・属性に基づくルールを設計・運用 | 設定されていない、または初期設定のまま放置 |
| SLA策定 | MQL対応期限・フィードバックルールを明文化 | 対応期限やルールが不明確 |
| データ連携 | MA-SFA間でリードステータスが双方向同期 | MAとSFAが分断、手動でのデータ転記 |
| KPI設計 | 売上目標から逆算してMQL数・商談化率を設定 | リード数のみを追跡、質の指標がない |
| 部門間MTG | 週次・月次で振り返りMTGを実施 | MTGがない、または形骸化している |
| ナーチャリング | セグメント別にシナリオを設計・改善 | 一斉配信のみ、パーソナライズなし |
BtoB広告経由リードの商談化率はボリュームゾーンが11〜20%で、15%前後を目標値とするのが妥当とされています。成功企業はこうしたベンチマークを把握した上でKPIを設計しています。また、BtoB企業の広告運用で最も重視されるKPIは「コンバージョン率(CVR)」が28.7%で1位となっており、成功企業はCVRだけでなく商談化率・受注率まで一気通貫で追跡しています。
部門間連携とSLA策定のポイント
SLA(Service Level Agreement) を策定することで、マーケと営業の連携を強化できます。SLAで明文化すべき主な項目は以下のとおりです。
- MQLの定義(スコア基準、対象とする行動・属性)
- MQL発生から営業対応までの期限(例:24時間以内、48時間以内)
- 営業からマーケへのフィードバックルール(商談化可否、失注理由の報告)
- フィードバックの頻度と形式(週次MTG、Slack報告など)
SLAの内容は企業規模や業種、商材の特性によって異なります。まずはシンプルなルールから始め、運用しながら改善していくことが現実的です。
MA活用を改善するための実践コツとセルフ診断
MA活用を改善するには、まず自社の現状を正確に把握することが出発点となります。以下のチェックリストで自社の活用度を診断してみてください。
【チェックリスト】MA活用度セルフ診断チェックリスト
- MQLの定義が明文化され、マーケ・営業で合意されている
- リードスコアリングのルールが設計・運用されている
- スコアリングルールは定期的に見直し・更新されている
- MAとSFA間でデータ連携が設定されている
- SLAが策定され、MQL対応期限が明確になっている
- 営業からマーケへのフィードバックルールが運用されている
- マーケ・営業の定期MTG(週次または月次)が実施されている
- KPIが売上目標から逆算して設計されている
- MQL数だけでなく商談化率・受注率も追跡している
- ターゲットセグメントの見直しを定期的に行っている
- ナーチャリングシナリオがセグメント別に設計されている
- コンテンツの効果測定と改善サイクルが回っている
チェックが付かない項目が多い場合は、まずMQL定義の明文化とSLA策定から着手することをおすすめします。
KPIは売上目標から逆算して設計する
MA活用のKPIは、売上目標から逆算して設計することが重要です。「リード数だけを追いかける」のではなく、受注件数→商談数→MQL数→リード数と段階的に必要数を算出します。
(例)年間売上目標1億円、平均受注単価500万円の場合
- 必要受注件数: 20件
- 商談化率を15%と仮定すると、必要商談数: 約134件
- 商談からの受注率を15%と仮定すると、必要商談数: 約134件(20÷0.15)
- MQL→商談化率を15%と仮定すると、必要MQL数: 約893件(134÷0.15)
※実際の商談化率・受注率は業種や単価、リード獲得経路によって大きく変動します。自社の過去実績を確認した上で目標を設定してください。
運用定着に向けた継続改善サイクル
MA活用は一度設定して終わりではなく、継続的な改善が必要です。週次・月次で以下の指標を確認し、改善アクションにつなげましょう。
週次で確認する指標
- 新規リード数、MQL数
- 営業のMQL対応率・対応スピード
- ナーチャリングメールの開封率・クリック率
月次で確認する指標
- MQL→商談化率
- 商談→受注率
- チャネル別のリード品質(商談化率の比較)
- スコアリングルールの妥当性(高スコアリードの商談化率)
確認した結果をもとに、MQL定義の見直し、スコアリングルールの調整、ナーチャリングシナリオの改善といったアクションを実行していきます。
まとめ:MA活用成功の鍵は部門連携と運用定着にある
MA活用で成果を出すためのポイントを整理します。
- MQL定義を明文化し、マーケ・営業で合意する:リードの質を可視化し、連携の土台を作る
- SLAを策定して部門間連携を強化する:対応期限・フィードバックルールを明確にする
- KPIは売上目標から逆算して設計する:リード数だけでなく商談化率・受注率まで追跡する
MAを導入して初期設定を済ませただけで放置し、マーケと営業でデータが分断されたままでは成果は出ません。ツールの機能を覚えるだけでなく、部門間連携とデータ連携を設計し、運用定着まで見据えた体制を構築することが、MA活用成功の鍵です。
まずは本記事のセルフ診断チェックリストで自社の現状を把握し、チェックが付かない項目から優先的に改善に取り組んでみてください。
