商談引き渡し基準が曖昧だと商談化率が上がらない理由
商談引き渡し基準の答えは明確で、MQL/SQLの定義とスコアリングルールをMA/SFAに実装し、マーケと営業で共通認識を持つことで、リードの放置を防ぎ商談化率を改善できます。
BtoB購買行動に関する調査では、営業面談前に85%が候補選定を完了しているという結果が報告されています。つまり、リードが営業に引き渡される前の段階で、すでに購買意思決定が大きく進んでいるケースが多いのです。このタイミングを逃さないためには、マーケティング部門から営業部門への引き渡し基準を明確にしておく必要があります。
よくある失敗パターンとして、引き渡し基準を「営業の感覚」に任せ、MQL/SQLの定義やスコアリングルールを明文化せずに運用するケースがあります。この場合、リードが放置されたり、質の低いリードが営業に渡されて信頼関係が崩れてしまうことが少なくありません。この考え方は誤りです。
この記事で分かること
- MQLとSQLの違いと、それぞれの定義方法
- スコアリングとBANTを活用した引き渡し基準の設計方法
- マーケと営業の連携プロセス(SLA)の設計方法
- 引き渡し基準をMA/SFAに実装する際のチェックポイント
MQLとSQLの違いを理解する
MQLとSQLは、マーケティング部門と営業部門がリードの状態を判断するための共通言語です。この定義が両部門で異なっていると、「渡したのに対応されない」「質の低いリードが来る」といった不満が生じ、連携がうまくいきません。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が属性(業種・役職)と行動(資料DL・ページ閲覧など)のスコア基準を満たしたと判断したリードを指します。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、MQLの中から営業部門がBANT基準の3項目以上を充足し商談化可能と判断したリードです。
BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(課題)、Timeframe(導入時期)の頭文字で、リードの質を評価するフレームワークです。
MQLの定義とマーケティング部門の役割
MQLの判断は、リードスコアリングによって行うのが一般的です。リードスコアリングとは、リードの属性や行動に点数を付与し、購買意欲の高さを数値化する手法です。
スコアリングの基準は、属性スコアと行動スコアの2軸で設計します。
属性スコアの例:
- 業種がターゲット業界に該当する
- 役職が決裁権を持つ層に該当する
- 企業規模がターゲットに合致する
行動スコアの例(参考値):
- メール開封: +5点程度
- 資料ダウンロード: +10〜15点程度
- 価格ページ閲覧: +20〜25点程度
これらのスコアの閾値は企業によって大きく異なるため、自社の過去データを分析して設定することが重要です。一律の基準はなく、検証と調整を繰り返す必要があります。
SQLの定義と営業部門の役割
SQLは、営業部門がヒアリングを通じて商談化可能と判断したリードです。判断基準として、BANTの簡易版である予算・課題・導入時期の3要素で判定する運用が日本のBtoB企業では主流となっています。
SQLの判定項目:
- 解決したい課題が明確か(Need)
- 予算の確保状況(Budget)
- 導入検討の時期(Timeframe)
BANT基準の3項目以上を充足している場合にSQLとして認定し、商談化に向けたアクションを取ります。基準を満たさない場合は、未成熟リードとしてナーチャリングに戻すルールを設けることで、営業の効率化が実現できます。
商談引き渡し基準の設計方法
引き渡し基準の設計には、スコアリングアプローチとBANTアプローチの2つの方法があります。自社の営業プロセスや商材特性に応じて、適切な方法を選択または併用することが重要です。
【比較表】MQL/SQL定義項目の比較表(スコアリング vs BANT)
| 項目 | スコアリングアプローチ | BANTアプローチ |
|---|---|---|
| 判断主体 | マーケティング部門 | 営業部門 |
| 判断基準 | 属性スコア+行動スコアの合計点 | 予算・決裁権・課題・導入時期の充足度 |
| 適用段階 | MQL判定(リード → MQL) | SQL判定(MQL → SQL) |
| メリット | 定量的で判断が統一しやすい | 商談化可能性を直接確認できる |
| デメリット | スコアが高くても商談化しないケースがある | ヒアリング工数がかかる |
| 向いているケース | リード数が多い場合 | 高単価商材・長期検討商材 |
スコアリングによる引き渡し基準の設計
スコアリングでは、属性スコアと行動スコアを組み合わせて引き渡し基準を設計します。一定のスコアに達したリードをMQLとして営業に引き渡す仕組みです。
スコアリング設計のポイント:
- 価格ページや導入事例ページの閲覧に高いスコアを付与する
- 資料ダウンロードやセミナー参加など、購買検討に近い行動を重視する
- メールのオプトアウト(配信停止)にはマイナススコアを設定する
具体的な閾値数値は、業種・商材・ターゲット企業規模により大きく異なります。自社の過去の成約データを分析し、成約に至ったリードの共通行動パターンを特定した上で設定することを推奨します。
BANTによる引き渡し基準の設計
BANTアプローチでは、営業担当者がヒアリングを通じてリードの質を直接確認します。スコアリングでMQL判定した後、BANTでSQL判定するという併用パターンが効果的です。
BANT判定の進め方:
- MQLとして引き渡されたリードに対して、インサイドセールスが初回ヒアリングを実施
- BANT基準の3項目以上を確認できた場合、SQLとして認定
- フィールドセールスに引き渡し、商談を進める
マーケと営業の連携プロセス設計(SLA)
SLA(Service Level Agreement) とは、マーケと営業間でリード引き渡し後の対応時間や基準を合意したルールです。引き渡し基準を設計しても、その後の対応ルールが曖昧だとリードが放置されてしまいます。
調査によると、BtoBマーケティング施策の投資対効果で受注金額まで追跡している企業は30.2%のみという結果があります。引き渡し基準の設計だけでなく、成果測定の仕組みまで整備することが重要です。
引き渡し後の対応期限と責任範囲の合意
SLAとして合意すべき主な項目は、対応期限とフィードバック方法です。
一般的なSLAの推奨値:
- MQL引き渡し後: 24時間以内に初回コンタクト
- SQL認定後: 48時間以内に営業アクション
これらの期限は、リードの鮮度が落ちる前に対応するための目安として設定されています。対応遅延はリード放置につながるため、期限と責任範囲を両部門で文書化し、合意しておくことが重要です。
SLA設計のポイント:
- 引き渡し後の対応期限を明確にする
- SQL認定しなかった場合のフィードバック方法を決める
- 定期的なレビュー会議でSLAの遵守状況を確認する
引き渡し基準をMA/SFAに実装する
設計した引き渡し基準は、MA/SFAに実装することで運用を定着させることができます。ツールに実装することで、手動での判断や引き渡し作業を自動化し、対応漏れを防ぐことができます。
調査によると、成功組織は戦略設計を内製化し、営業への事例装備化(商談活用戦略)を徹底していることが報告されています(ただし、調査対象は限定的な可能性があります)。ツール導入だけでなく、運用ルールの整備と社内への浸透が成功の鍵となります。
【チェックリスト】商談引き渡し基準設計チェックリスト
- MQLの定義を文書化している
- SQLの定義を文書化している
- スコアリングの属性基準を設定している
- スコアリングの行動基準を設定している
- スコアリングの閾値を設定している
- BANT判定の基準を決めている
- 引き渡しのトリガー条件を明確化している
- 引き渡し後の対応期限(SLA)を設定している
- SQL認定しなかった場合のフィードバック方法を決めている
- ナーチャリングへの戻しルールを設定している
- MA/SFAへの実装が完了している
- 営業部門との合意を文書化している
- 定期レビューの頻度を決めている
- MQL→SQL転換率のKPIを設定している
- 商談化率・受注率の追跡方法を決めている
まとめ:引き渡し基準の明確化が商談化率改善の鍵
本記事では、商談引き渡し基準の設計方法について、MQL/SQLの定義からMA/SFAへの実装まで解説しました。
重要なポイント:
- MQLはマーケティング部門がスコアリングで判断、SQLは営業部門がBANTで判断
- スコアリングの閾値は自社データで検証・調整が必要
- SLAとして対応期限を明確にし、リード放置を防ぐ
- 設計した基準はMA/SFAに実装して運用を定着させる
商談引き渡し基準は、MQL/SQLの定義とスコアリングルールをMA/SFAに実装し、マーケと営業で共通認識を持つことで、リードの放置を防ぎ商談化率を改善できます。まずは本記事のチェックリストを活用し、自社の引き渡し基準の現状を確認することから始めてみてください。
