IT企業のマーケティング課題|なぜ施策が成果につながらないのか
意外かもしれませんが、IT企業のマーケティングは施策を企画するだけでなく、MA/SFA活用やインサイドセールス連携まで含めた実装・運用体制を構築することで、リード獲得から商談化までの成果につなげられます。
JIPDEC/ITR調査によると、外向きDXの「データに基づく営業・マーケティング高度化」で成果を実感している企業は29.4%にとどまっています。つまり、マーケティング施策を実施していても、実際に成果につながっていると感じている企業は3割程度に過ぎません。
なぜこのような状況が生まれているのでしょうか。顧客データ活用実態調査2025によると、顧客データ基盤活用ができていない理由のトップは「人的リソース不足」(42.9%)、次いで「ビジネス施策への活かせなさ」(26.3%)となっています。
多くのIT企業では、「マーケティング施策は実施しているがリードが営業に活用されない」「MA/SFAを導入したが成果が出ていない」という課題を抱えています。施策を企画・実行するだけでは不十分であり、獲得したリードを商談化につなげる仕組みづくりが求められています。
この記事で分かること
- IT企業のマーケティング課題と成果が出ない理由
- リードジェネレーションからナーチャリング、商談化までの全体像
- 主要なマーケティング施策の種類と選び方
- MA/SFA活用とインサイドセールス連携の設計ポイント
- 実践に向けたチェックリストと確認項目
IT企業マーケティングの基礎|リードジェネレーションからナーチャリングの流れ
IT企業のマーケティングを成功させるためには、リード獲得から商談化までの全体像を理解し、各プロセスを連携させることが重要です。
2025年国内IT市場は26兆6,412億円(前年比8.2%増、CAGR 6.3%)と予測されており(IDC Japan)、IT企業にとって競争は激化しています。この環境で成果を出すためには、体系的なマーケティング活動が欠かせません。
リードジェネレーションとは、オンライン・オフラインを含めた新規見込客を獲得するマーケティング活動です。SEO、コンテンツマーケティング、広告、展示会、ウェビナーなど様々な施策を通じてリードを獲得します。
リードナーチャリングとは、獲得したリードを育成し、購買意欲を高めて商談化につなげるプロセスです。メール配信、セミナー案内、コンテンツ提供などを通じて、リードとの関係性を構築します。
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購買・利用に至るまでの一連の体験プロセスを指します。IT企業のマーケティングでは、このカスタマージャーニーに沿って、適切なタイミングで適切な情報を提供することが求められます。
IT企業特有のマーケティング課題
IT企業のマーケティングには、他業界とは異なる特有の課題があります。
課題1: 無形商材のため効果が伝わりにくい
ソフトウェアやサービスは形がないため、導入効果やメリットを具体的に伝えることが難しくなります。事例やデモを活用した訴求が重要になります。
課題2: 競合との差別化が難しい
類似サービスが多い市場では、機能やスペックだけでの差別化が困難です。自社の強みを明確にし、ターゲット顧客に響くメッセージを設計する必要があります。
課題3: 専門性が高くターゲットが限定的
ITサービスは専門性が高いため、ターゲット顧客が限定的になりがちです。ターゲットを明確にした上で、効率的にリーチする施策設計が求められます。
IT企業向けマーケティング施策の種類と特徴
IT企業が活用できるマーケティング施策は多岐にわたります。自社の状況やターゲット顧客に合わせて、適切な施策を選定することが重要です。
海外の調査では、B2Bマーケティングにおいてソーシャルメディアから生み出されるリードの80%がLinkedInから生成されているというデータがあります(ただし日本市場では利用状況が異なる可能性があるため、注意が必要です)。
また、ディスプレイ広告費は2024年で前年比12%増の8,500億円を突破し、AI最適化型配信の利用率は全企業の65%に達しています(Statista Japan調査引用)。デジタル広告市場は拡大を続けており、IT企業にとっても重要なチャネルとなっています。
【比較表】マーケティング施策の特徴と選び方
| 施策 | 主な目的 | リード獲得 | コスト感 | 運用負荷 |
|---|---|---|---|---|
| SEO/コンテンツマーケティング | 認知拡大・リード獲得 | ○ | 中 | 中〜高 |
| リスティング広告 | 顕在層獲得 | ◎ | 高 | 中 |
| ディスプレイ広告 | 認知拡大 | △ | 中〜高 | 中 |
| SNSマーケティング | 認知拡大・関係構築 | △〜○ | 低〜中 | 中 |
| 展示会・イベント | リード獲得・関係構築 | ◎ | 高 | 高 |
| ウェビナー | リード獲得・育成 | ○ | 低〜中 | 中 |
| メールマーケティング | リード育成 | △ | 低 | 中 |
| ホワイトペーパー | リード獲得・育成 | ○ | 中 | 中 |
施策選定にあたっては、自社のリソース状況、ターゲット顧客の行動特性、予算を考慮して優先順位を決めることを推奨します。
MA/SFA活用で施策を成果につなげる運用設計
MA(マーケティングオートメーション) とは、マーケティング活動を自動化し、リード管理・育成・スコアリングを効率化するツールです。日本のマーケティングオートメーション市場は2024年に4億810万米ドル、2033年までに8億4810万米ドルへ成長が予測されています(年間成長率8.5%、IMARC Group、米ドルベースのため為替変動による影響に注意)。
グローバル調査によると、マーケティングチームの51%がAIでコンテンツ最適化を実施し、88%が日常業務でAIを活用しているとされています(SurveyMonkey、グローバル調査のため日本市場との差異がある可能性があります)。
しかし、MAツールを導入すれば自動的に成果が出るという考え方は誤りです。 よくある失敗パターンとして、マーケティング施策を企画・実行しても、MA/SFAの活用や営業部門との連携が後回しになり、獲得したリードが活用されないまま放置されてしまうケースがあります。
MAツール導入だけでは不十分で、以下の運用設計が必要です。
- リードの定義とスコアリング基準の設定
- ナーチャリングシナリオの設計
- 営業部門へのリード引き渡し基準の明確化
- 効果測定とPDCAサイクルの構築
リードスコアリングとは、リードの行動履歴や属性に基づいて点数を付け、商談化可能性を評価する手法です。適切にスコアリング基準を設計することで、営業リソースを効率的に配分できます。
ABM(アカウントベースドマーケティング) とは、特定のターゲット企業に絞ってマーケティング・営業活動を展開する戦略です。IT企業のB2Bマーケティングでは、ABMとMAを組み合わせたアプローチが有効なケースがあります。
インサイドセールス連携の設計
マーケティングで獲得したリードを商談化につなげるためには、インサイドセールスとの連携設計が不可欠です。
リード引き渡しの基準設計
マーケティングからインサイドセールスへリードを引き渡す基準を明確にします。スコアリングの閾値や、特定のアクション(資料請求、デモ申し込みなど)を条件として設定します。
営業フィードバックの仕組み化
インサイドセールスから「このリードは商談化した」「このリードは対象外だった」といったフィードバックを受け取り、マーケティング施策の改善に活かす仕組みを構築します。
マーケと営業のKPI連動
マーケティング部門と営業部門のKPIを連動させることで、部門間の壁を越えた協力体制を構築します。単にリード数だけでなく、商談化率や受注金額への貢献を指標に含めることが重要です。
IT企業マーケティングの実践ステップとチェックリスト
IT企業のマーケティングを実践する際は、以下のステップで進めることを推奨します。
ステップ1: 戦略設計
ターゲット顧客の定義、カスタマージャーニーの設計、KPIの設定を行います。
ステップ2: 施策選定
自社のリソースと予算を考慮し、優先的に取り組む施策を決定します。
ステップ3: MA/SFA設定
リード管理・育成・スコアリングの仕組みを構築します。
ステップ4: インサイドセールス連携
リード引き渡し基準の設定、フィードバックの仕組み化を行います。
ステップ5: 効果測定
KPIの進捗を定期的に確認し、PDCAサイクルを回します。
【チェックリスト】マーケティング施策の確認項目
- ターゲット顧客(業種・企業規模・役職)が明確に定義されている
- カスタマージャーニーに基づいた施策設計ができている
- KPI(リード数、商談化率、受注金額など)が設定されている
- リードの定義(MQL/SQL)が営業部門と合意されている
- MAツールでリード管理・スコアリングの設定ができている
- ナーチャリングシナリオ(メール配信等)が設計されている
- インサイドセールスへのリード引き渡し基準が明確である
- 営業からのフィードバックを受け取る仕組みがある
- マーケティング施策の効果測定ができている
- 定期的なPDCAサイクルが回っている
- マーケと営業のKPIが連動している
- リードが放置されていないか定期的に確認している
まとめ:施策企画から実装・運用まで一気通貫で成果を出す
IT企業のマーケティングで成果を出すためのポイントを整理します。
JIPDEC/ITR調査によると、データに基づくマーケティング高度化で成果を実感している企業は29.4%にとどまっています。多くの企業が施策を実施しても成果につながっていない現状があります。
日本のマーケティングオートメーション市場は2024年から2033年にかけて年間成長率8.5%で拡大が予測されており、MAツールの活用は今後さらに重要になっていきます。しかし、ツール導入だけでは成果は出ません。
成功のポイント
- 施策企画だけで終わらせない: リード獲得施策だけでなく、獲得後の育成・引き渡しまで設計する
- MA/SFAを活用する: リード管理・スコアリング・ナーチャリングの仕組みを構築する
- インサイドセールスと連携する: リード引き渡し基準を明確にし、フィードバックを仕組み化する
- PDCAを回す: 効果測定を行い、継続的に改善する
まずは本記事のチェックリストを活用して、自社のマーケティング体制を点検することから始めてみてください。
IT企業のマーケティングは施策を企画するだけでなく、MA/SFA活用やインサイドセールス連携まで含めた実装・運用体制を構築することで、リード獲得から商談化までの成果につなげられます。
