MAが定着しないと悩む企業の課題
MA定着は導入やツール操作の習熟だけでなく、SFA連携を前提とした運用ルールの標準化と、入力を「使わざるを得ない状態」にするマネジメントの仕組みをセットで整備することで、形骸化を防ぎ持続的な成果につながる。これが本記事の結論です。
MA(マーケティングオートメーション) とは、マーケティング活動を自動化・効率化するツールです。リード獲得から育成、スコアリング、営業連携までを支援し、BtoB企業のマーケティング活動に欠かせない存在となっています。
国内MA市場は成長を続けており、2022年度の売上金額は269億円で前年度比14.7%増を記録し、2023年度も14.9%増と好調を維持しています。また、2023年の国内BtoB MA市場は753億円(前年比+11.2%)に達しています。市場が拡大する一方で、「MAを導入したが定着しない」「入力が形骸化して成果が出ない」と悩む企業も少なくありません。
この記事で分かること
- MA運用が定着しない主な原因と、よくある失敗パターン
- MA定着のための4ステップと具体的なタスク
- SFA連携を前提とした運用ルールの標準化方法
- 形骸化を防ぐマネジメントの仕組みの作り方
- 自社の定着状況を確認できるフェーズ別チェックリスト
なお、この記事では従業員50〜300名規模のMA/SFA導入済み企業を主な対象としています。企業規模やMAツールの種類によって、最適なアプローチは異なる場合があります。
MA運用が定着しない主な原因
MA運用が定着しない根本的な原因は、ツールの機能や操作方法にあるのではなく、運用ルールの不在と組織的なマネジメントの仕組みの欠如にあります。
グローバル調査によると、B2Bマーケターの98%が自動化を成功の鍵と認識しており、リード獲得80%増・コンバージョン77%向上という効果が報告されています(ただし、この数値はグローバル調査ベースのため日本市場への適用には注意が必要です)。これほど多くのマーケターが自動化の重要性を認識しているにもかかわらず、なぜMA定着に失敗する企業が多いのでしょうか。
よくある失敗パターンとして、MAの定着を「ツールの使い方を教育すること」と捉え、操作研修やマニュアル整備だけで済ませようとするケースがあります。しかし、運用ルールやマネジメントの仕組みが不在のままでは、どれだけ操作に習熟しても形骸化してしまいます。「MAツールを導入すれば自動的に成果が出る」という考え方は誤りです。運用定着には人材教育と営業連携が不可欠であり、ツール選定以上に運用体制の構築が定着の鍵を握っています。
運用ルール不在と営業連携の欠如
入力ルールが明文化されていない、またはSFAとの連携が設計されていない状態でMAを運用すると、形骸化は避けられません。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得・育成したリードのうち、営業に引き渡す基準を満たした見込み顧客を指します。このMQLの定義が曖昧なまま運用を始めると、マーケティング部門と営業部門の間で「どのリードを渡すか」の認識がずれ、連携がうまくいきません。
「ツール選定が重要」と考えがちですが、実際には運用体制と営業連携の構築がMA定着の成否を分けます。入力ルールが属人的で、誰が・いつ・何を入力するかが明確でなければ、入力漏れや二重入力が発生し、データの信頼性が損なわれていきます。
MA定着のための基本ステップ
MA定着を実現するには、導入→設計→運用→改善のサイクルを回すことが基本です。MAシナリオ稼働後、データ変化が見え始めるまで約3ヶ月程度かかるため、短期成果を求めすぎないことが重要です。
【フロー図】MA定着のための4ステップフロー
flowchart TD
A[ステップ1: 目標設定] --> B[共通KPIの定義]
B --> C[MQL数・商談化率・受注率の設定]
C --> D[ステップ2: 運用ルール設計]
D --> E[入力ルールの明文化]
E --> F[リード引き渡し基準の設定]
F --> G[ステップ3: 営業連携体制構築]
G --> H[SFA連携の設定]
H --> I[月次定例会の設計]
I --> J[ステップ4: 継続的改善]
J --> K[KPIモニタリング]
K --> L[運用ルールの見直し]
L --> A
シナリオ設計とは、見込み顧客の行動に応じて自動配信するメールやコンテンツの流れを設計することです。ナーチャリングとは、見込み顧客を育成し、購買意欲を高めていくマーケティング活動を指します。これらの設計がMA定着の土台となります。
ステップごとの具体的なタスク
各ステップで実施すべき具体的なタスクを整理します。
ステップ1: 目標設定
MQL数・商談化率・受注率をマーケと営業の共通KPIとして設定します。両部門が同じ指標を追いかけることで、連携の基盤が整います。
ステップ2: 運用ルール設計
リードスコアリングとは、見込み顧客の行動・属性に基づきスコアを付与し、購買意欲の高さを数値化する手法です。スコアリングの基準を明確にし、「スコア○点以上になったら営業に引き渡す」といったルールを設計します。
ステップ3: 営業連携体制構築
SFAとの連携を設定し、MAで育成したリードが自動的にSFAに連携される仕組みを構築します。併せて、月次定例会でKPIを振り返る体制を整えます。
ステップ4: 継続的改善
KPIのモニタリング結果をもとに、スコアリング基準やシナリオの見直しを行います。定着には継続的な改善サイクルが欠かせません。
SFA連携を前提とした運用ルールの標準化
MA定着を実現するには、マーケティング部門だけでなく、営業部門との連携を前提とした運用ルールの標準化が不可欠です。
MQLの定義を明確にし、「どのような条件を満たしたリードを営業に引き渡すか」を文書化します。たとえば、「スコアが一定以上かつ、直近1ヶ月以内にサービスページを3回以上閲覧したリード」といった具体的な基準を設定します。
入力ルールについても、誰が・いつ・何を入力するかを明文化します。属人的な運用を排し、誰でも同じ基準で入力できる状態を目指します。
入力が「使わざるを得ない状態」を作る仕組み
形骸化を防ぐためには、「入力しないと業務が進まない」状態を意図的に設計することが有効です。
具体的には、以下のような仕組みが考えられます。
- 会議体でのKPI確認: 週次・月次の営業会議でMAのデータを確認する時間を設け、入力がなければ進捗が報告できない状態を作る
- 入力率のモニタリング: 担当者ごとの入力率を可視化し、未入力が続く場合はアラートを出す
- 商談化の前提条件: SFAで商談を作成する際、MAからのリード情報が紐づいていることを必須条件にする
これらの仕組みにより、MAへの入力が「任意」ではなく「必須」になり、定着が促進されます。
MA定着のためのフェーズ別チェックリスト
自社のMA定着状況を確認するためのチェックリストを用意しました。導入フェーズ・運用フェーズ・定着フェーズの3段階に分けて、現状を診断してみてください。
ある国内MAツールでは、導入2,000社超で継続率99%を達成しています。この高い継続率の背景には、伴走サポートによる運用支援があるとされています(ただし、ベンダー公表データのため、プロモーションバイアスがある可能性があります)。伴走サポートを重視するMAツールが中小企業で定着率を高めている傾向がみられ、ツール選定時にはサポート体制も重要な判断基準となります。
【チェックリスト】MA定着フェーズ別確認チェックリスト
- 導入目的と達成すべきKPIを明文化している
- MQLの定義を営業部門と合意している
- リードスコアリングの基準を設定している
- 入力ルール(誰が・いつ・何を)を明文化している
- SFAとのデータ連携を設定している
- リード引き渡しのタイミングと方法を決めている
- 担当者への操作研修を実施している
- シナリオ設計を完了している
- 週次または月次の定例会を設定している
- 定例会でMAのKPIを確認する時間がある
- 入力率をモニタリングする仕組みがある
- 未入力者へのフォロー体制がある
- マネージャーがMAデータを活用して意思決定している
- 営業部門がMQLの質にフィードバックしている
- スコアリング基準を定期的に見直している
- シナリオの効果測定と改善を行っている
- 入力が形骸化していないか定期的に確認している
- 成功事例を社内で共有する仕組みがある
- MAデータを経営報告に活用している
- 運用ルールの改訂履歴を管理している
上記のチェックリストで、チェックが付かない項目が多い場合は、そのフェーズの課題に優先的に取り組むことをお勧めします。
まとめ:MA定着は運用ルールとマネジメントの仕組みで実現する
本記事では、MA定着を実現するための方法を解説しました。重要なポイントを整理します。
- MA市場は年率10%以上の成長を続けているが、導入後の定着に課題を抱える企業が多い
- 定着しない原因は、ツールの問題ではなく運用ルールの不在と営業連携の欠如にある
- 「ツールの使い方を教育する」だけでは形骸化を防げない
- MA定着には4ステップ(目標設定→運用ルール設計→営業連携体制構築→継続的改善)のサイクルを回すことが基本
- SFA連携を前提とした運用ルールの標準化が不可欠
- 「入力しないと業務が進まない」仕組みを設計することで形骸化を防ぐ
- MAシナリオ稼働後、データ変化が見え始めるまで約3ヶ月程度かかるため、短期成果を求めすぎない
明日から取り組めるアクション
- チェックリストで自社のMA定着状況を確認する
- 営業部門と共通KPI(MQL数・商談化率・受注率)を設定する
- 月次定例会でMAのKPIを確認する時間を設ける
MA定着は導入やツール操作の習熟だけでなく、SFA連携を前提とした運用ルールの標準化と、入力を「使わざるを得ない状態」にするマネジメントの仕組みをセットで整備することで、形骸化を防ぎ持続的な成果につながります。本記事のチェックリストとフローを参考に、自社のMA定着に取り組んでみてください。
