HubSpot活用事例から学ぶ前に知っておくべきこと
HubSpot活用で成功するには、導入事例から学ぶだけでなく、スコアリング設計・ワークフロー設計・部門間連携まで含めた実装と運用改善体制が必要です。
ある調査によると、日本の営業組織におけるCRMソフトウェア導入率は2024年度で37.2%(2023年度36.2%から+1.0pt)とされています(ただしこのデータはHubSpot自社調査であり、公的統計ではない点に注意が必要です)。一方で、HubSpot Japan有料顧客数は2016〜2021年の5年間で約15倍に増加し、パートナー登録企業数は約13倍に拡大したという報告があり、CRM/MA市場でのHubSpotの存在感は高まっています。
しかし、「HubSpotを導入したが期待した成果が出ていない」という声も少なくありません。導入事例を見て「うちも同じ成果が出るはず」と期待するだけでは、現実は厳しいものがあります。本記事では、HubSpot活用事例を紹介しつつ、活用できていない状態からの改善策まで解説します。
この記事で分かること
- HubSpot活用で成果を出すための基本ポイント
- 目的別のHubSpot活用事例(マーケティング・営業・CS)
- 導入後によくある課題とつまずきポイント
- 活用不全からの改善ステップとセルフ診断チェックリスト
HubSpot活用で成果を出すための基本ポイント
HubSpot活用で成果を出すためには、マーケティング部門と営業部門の連携が最も重要な要素です。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が定義した基準を満たした見込み顧客を指します。SQL(Sales Qualified Lead) は、営業部門が商談可能と判断した見込み顧客です。このMQL/SQLの定義をマーケ・営業間で事前にすり合わせることが、HubSpot活用の成否を分けるポイントとなります。
ライフサイクルステージとは、HubSpotでリードから顧客までの進捗を管理する仕組みです。Subscriber→Lead→MQL→SQL→Opportunity→Customerという流れで顧客の状態を可視化します。パイプライン管理は、商談の進捗状況を可視化し、受注予測や営業活動を管理する手法です。
これらの機能を活用するためには、部門を超えた共通認識が不可欠です。
マーケと営業の連携がHubSpot活用の鍵
成功企業に共通するのは、マーケ・営業間でMQL/SQLの定義を事前にすり合わせてからHubSpotを構築している点です。
マーケティング部門だけで導入を決定すると、営業部門がデータを入力してくれないという問題が起こりやすいです。これは、営業にとって「入力する意味がわからない」状態になってしまうためです。
導入前に「どのような条件のリードを営業に渡すか」「営業はどのような情報を入力すべきか」を合意しておくことで、スムーズな連携が実現できます。
目的別HubSpot活用事例
HubSpot導入で成果を出している企業の事例を、目的別に紹介します。ただし、以下の事例で紹介する成果数値はHubSpot公式事例に基づくもので、自己申告ベースであり第三者監査は明記されていません。また、成果は特定条件下の結果であり、業種・商材・運用体制により大きく変動する点にご注意ください。
【比較表】目的別HubSpot活用事例まとめ表
| 企業名 | 目的 | 主な成果 | 注記 |
|---|---|---|---|
| NTTPCコミュニケーションズ | マーケティング施策効率化 | 約2億円の施策コスト削減(2019年度)、売上毎年200%成長に貢献 | コスト削減額・成長率は自己申告値 |
| ピー・シー・エー株式会社 | 営業・CS強化 | MRR(月次経常収益)が導入前比5倍以上に増加 | 具体的な導入時期は非公開 |
| 製造業(代理店営業連携) | 営業効率化 | 新規案件獲得数が5倍以上に増加 | 業種・商材で変動あり |
マーケティング目的の活用事例
マーケティング施策の効率化を目的としたHubSpot活用事例として、NTTPCコミュニケーションズの事例があります。
ある事例では、NTTPCコミュニケーションズはHubSpot導入により約2億円の施策コスト削減(2019年度)を達成し、売上は毎年200%成長に貢献したとされています。マーケティング活動の自動化・効率化により、施策の実行スピードと効果測定の精度が向上したことが要因として挙げられています。
ただし、この数値は自己申告値であり、同様の成果がすべての企業で得られるわけではありません。
営業・CS目的の活用事例
営業効率化・顧客管理強化を目的とした事例も報告されています。
MRR(Monthly Recurring Revenue) とは、月次経常収益のことで、SaaS企業で重視される、毎月継続して発生する収益を指します。
ピー・シー・エー株式会社の事例では、HubSpot導入前と比較してMRRが5倍以上に増加したとされています。また、製造業・代理店営業連携事例では、HubSpot導入後に新規案件獲得数が5倍以上に増加したという報告があります。
これらの事例も特定条件下の結果であり、業種・商材・運用体制により成果は大きく変動します。
HubSpot導入でよくある課題とつまずきポイント
HubSpotを導入し初期設定を済ませただけで、スコアリングやワークフローを適切に設計せず、データ入力も定着しないまま「活用できていない」状態が続くケースは失敗パターンの典型です。
「ツールを入れれば自動的にシステムが繋がる」という誤解が失敗の原因になりやすいです。HubSpotは導入しただけでは成果を生みません。設定・運用・改善のサイクルを回すことで初めて効果を発揮します。
スコアリング・ワークフロー設計の失敗パターン
スコアリング設定だけ行い、ABテストや定期的な見直しをしないと「スコアが高いのに受注につながらない」問題が発生します。
この問題の原因は、スコアリングの配点基準が実際の受注傾向と乖離していることにあります。設定時点での仮説をそのまま放置すると、時間の経過とともにスコアの精度が低下していきます。
定期的にスコアリング結果と実際の受注データを突き合わせ、配点基準を見直すことが重要です。
データ入力が定着しない問題
マーケティング部門だけで導入を決定した場合、営業部門がデータを入力してくれないという問題が起こりやすいです。
営業にとって「なぜこのデータを入力する必要があるのか」が理解できていないと、入力作業は「余計な仕事」として認識されてしまいます。導入時に営業部門を巻き込み、入力データがどのように活用されるかを共有することが定着の鍵です。
活用不全からの改善ステップ
HubSpotを導入済みだが活用できていない場合、まず現状を診断し、課題を可視化することから始めます。以下のチェックリストで自社の活用度を確認してください。
【チェックリスト】HubSpot活用度セルフ診断チェックリスト
- MQL/SQLの定義がマーケ・営業間で合意されている
- リードのライフサイクルステージが適切に設定されている
- スコアリングルールが設定されている
- スコアリング結果と受注データの突き合わせを定期的に行っている
- ワークフローが稼働している
- 営業がコンタクト情報を定期的に更新している
- 商談のパイプライン管理が行われている
- マーケ・営業の定例ミーティングでHubSpotのデータを確認している
- ダッシュボードでKPIを可視化している
- リードソース別の成果を分析している
- メールマーケティングの開封率・クリック率を計測している
- フォームのコンバージョン率を改善するABテストを実施している
- 不要なコンタクトの整理(クリーニング)を定期的に行っている
- HubSpotの新機能・アップデートを把握している
- 活用に関する課題が明文化されている
現状診断と課題の可視化
上記チェックリストで「チェックがつかない項目」が改善すべき課題です。すべてを一度に改善しようとせず、優先順位をつけて取り組むことが重要です。
特に「MQL/SQLの定義合意」「営業のデータ入力定着」「定例ミーティングでのデータ確認」は、他の項目の前提となる基盤的な要素です。まずはこれらから着手することを推奨します。
運用改善の進め方
成功企業では、初期段階で運用設計とオンボーディングに投資し、週次でダッシュボードを見ながら改善する定例会を設けています。
具体的には、マーケ・営業・CS部門が参加する週次ミーティングで、リード数・商談数・受注率などのKPIを確認し、課題と改善策を議論します。このサイクルを継続することで、徐々に活用度が向上していきます。
まとめ|HubSpot活用で成果を出すために
本記事では、HubSpot活用事例と、活用できていない状態からの改善策を解説しました。
ポイントの整理
- マーケ・営業間でMQL/SQLの定義を事前にすり合わせることが活用の前提
- 事例の成果数値は特定条件下の結果であり、自社への適用には運用体制の構築が必要
- 「初期設定だけで放置」は典型的な失敗パターン。スコアリング・ワークフローの定期見直しが重要
- 週次の定例ミーティングでKPIを確認し、改善サイクルを回すことが成功の鍵
HubSpot活用で成果を出すには、導入事例から学ぶだけでなく、スコアリング設計・ワークフロー設計・部門間連携まで含めた実装と運用改善体制が必要です。
活用に課題がある場合は、MA/SFA設定から運用改善まで一気通貫で支援できる専門家への相談も有効な選択肢です。
