商談管理プロセスを設計しても成果が出ない理由
ずばり、商談管理プロセスは、プロセス設計だけでなく、MA/SFA設定と組織体制整備を同時に進めることで初めて運用・定着し、成果を出せます。
商談プロセスの流れを設計し、管理項目をリストアップすれば成果が出ると思い込む失敗パターンがあります。しかし、プロセスを設計しただけでは営業メンバーが実際に活用せず、商談情報が属人化したまま放置されるケースが多いのが現実です。
2025年6月のBtoBマーケ担当者330名を対象にした調査によると、商談・受注まで追跡している企業はサイト運用企業のわずか14.8%のみでした。この低い追跡率の背景には、プロセス設計と運用定着が別の課題であることが浮き彫りになっています。
また、約半数のBtoBマーケターがリード質に課題を感じており、2024年比で+7.6ポイント増加しています(2025年調査)。リードを獲得しても商談化・受注まで追跡できなければ、施策の効果を検証できず、改善サイクルが回りません。
この記事で分かること
- 商談管理プロセスが形骸化する理由とMA/SFA設定の重要性
- BtoB商談の特徴(関与人数と検討期間の長期化)
- 商談プロセスの基本的な流れ(事前準備→商談→フォローアップ)
- 商談管理で押さえるべき項目とMA/SFA設定の具体的な方法
- 商談管理プロセス定着化のための実践ガイドとチェックリスト
商談管理プロセスとは|定義と重要性
商談管理(Deal Management) とは、BtoB営業プロセスで潜在顧客との商談を体系的に追跡・管理し、成約確率を最大化するための仕組みです。CRMツールで商談ステージを可視化し進捗を最適化することで、営業チーム全体で商談情報を共有し、属人化を防ぐことができます。
BtoB購買行動は近年大きく変化しています。BtoB購買プロセス白書2025(バイヤー600名対象)によると、営業面談前に85%のバイヤーが候補を絞り込んでおり、内訳は「ほぼ決まっている」29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」56%でした。営業が接触する時点で、すでにバイヤーは自社で情報収集を済ませており、候補を絞り込んでいるのです。
このような購買行動の変化により、商談プロセスも複雑化しています。商談の平均関与人数は、低価格帯(300万円未満)で5.6人、中価格帯で14.4人、高価格帯で18.3人となっており、高価格帯の54%が検討から契約まで半年以上を要します。複数人が関与し、長期間にわたる商談を効率的に管理するためには、体系的な商談管理プロセスが不可欠です。
さらに、2025年版販売統計レポートによると、BtoBバイヤーの77%がビデオ会議を電話より好み、BtoB平均販売サイクルは3〜6ヶ月(複雑なソリューションはさらに長期)となっています。非対面でのコミュニケーションが主流になる中、商談情報を正確に記録・共有する仕組みがますます重要になっています。
BtoB商談の特徴|関与人数と検討期間
BtoB商談の最大の特徴は、関与人数の多さと検討期間の長さです。価格帯別の関与人数と検討期間は以下の通りです。
| 価格帯 | 平均関与人数 | 検討期間半年以上の割合 |
|---|---|---|
| 低価格帯(300万円未満) | 5.6人 | データなし |
| 中価格帯 | 14.4人 | データなし |
| 高価格帯 | 18.3人 | 54% |
高価格帯商談では、経営層、事業部長、現場担当者、IT部門、購買部門など、複数の部門・階層の関係者が意思決定に関与します。それぞれの関心事や懸念点が異なるため、個別にヒアリング・提案を行う必要があります。
また、BtoB平均販売サイクルは3〜6ヶ月で、複雑なソリューションはさらに長期化します。この間、定期的なフォローアップを継続し、関与者全員との関係を維持することが成約の鍵です。
購買プロセスの変化|営業面談前の候補選定
BtoB購買では営業面談前に85%のバイヤーが候補を絞り込んでおり、内訳は「ほぼ決まっている」29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」56%です。この変化は、営業活動に以下の影響を与えています。
- 事前準備の重要性: バイヤーがすでに自社で情報収集を済ませているため、商談時には競合他社との差別化ポイントを明確に示す必要がある
- MA活用の必要性: 営業面談前のバイヤーの行動履歴(Webサイト閲覧、資料ダウンロード等)を把握し、関心領域を特定する
- コンテンツ整備: バイヤーが自社で情報収集する際に参照できる、Webサイトやホワイトペーパーの充実が重要
MA(マーケティングオートメーション) とは、マーケティング活動を自動化・効率化するツールです。リードの行動履歴や属性情報を一元管理し、スコアリングやナーチャリングを実施することで、営業に引き渡すタイミングを最適化できます。
商談プロセスの基本的な流れ
商談プロセスは、大きく「事前準備」「商談」「フォローアップ」の3段階に分けられます。以下のフロー図は、各段階での主要なアクションを示したものです。
【フロー図】商談プロセスフロー
flowchart TD
A[リード獲得] --> B[リード情報収集]
B --> C[リードスコアリング]
C --> D{ホットリード判定}
D -->|スコア高| E[営業アプローチ]
D -->|スコア低| F[ナーチャリング継続]
E --> G[初回商談]
G --> H[ヒアリング・提案]
H --> I[関与者全員への個別アプローチ]
I --> J[見積提示・交渉]
J --> K[クロージング]
K --> L{受注判定}
L -->|受注| M[契約締結]
L -->|失注| N[失注理由分析]
F --> C
N --> O[改善策検討]
営業面談前に85%のバイヤーが候補を絞り込んでいるため、事前準備段階での情報収集とスコアリングが成果を大きく左右します。MAを活用してリードの行動履歴を把握し、関心領域や購買意欲を見極めることが重要です。
事前準備段階|リード情報の収集と優先順位付け
事前準備段階では、以下のアクションを実施します。
- リード情報の収集: MAツールでリードの行動履歴(Webサイト閲覧、資料ダウンロード、メール開封等)を収集
- リードスコアリング: 行動スコアと属性スコアを組み合わせて、購買意欲と優先度を点数化
- ホットリード判定: スコアが一定以上のリードを営業に引き渡す
- 事前調査: 企業規模、業種、競合状況、過去の接触履歴等を確認
リードスコアリングとは、見込み顧客の購買意欲や優先度を点数化し、営業効率を高める手法です。行動スコア(資料ダウンロード、価格ページ閲覧等)と属性スコア(役職、企業規模等)を組み合わせて評価します。
リードスコアリングにより、営業が優先的にアプローチすべきリードを特定できます。営業面談前に85%のバイヤーが候補を絞り込んでいる状況では、早期にホットリードを見極め、迅速にアプローチすることが競合優位につながります。
商談段階|ヒアリングと提案
商談段階では、以下のアクションを実施します。
- 初回商談: バイヤーの課題・ニーズをヒアリングし、自社ソリューションの概要を説明
- 関与者の特定: 意思決定に関与する人物(経営層、事業部長、現場担当者、IT部門、購買部門等)を特定
- 個別アプローチ: 各関与者の関心事や懸念点に応じて、個別にヒアリング・提案を実施
- 提案内容のカスタマイズ: バイヤーの課題に合わせて提案内容を調整
高価格帯商談では平均18.3人が関与するため、関与者全員との関係構築が成約の鍵です。各関与者の役割、関心事、懸念点を正確に把握し、個別に対応することが重要です。
また、BtoBバイヤーの77%がビデオ会議を電話より好むため、オンライン商談への対応も必要です。画面共有で資料を提示したり、録画機能で議事録を残したりすることで、商談の質を高めることができます。
フォローアップとクロージング
商談後のフォローアップとクロージングでは、以下のアクションを実施します。
- 定期的なフォローアップ: 検討状況の確認、追加情報の提供、関与者との関係維持
- 見積提示・交渉: 予算に応じた見積を提示し、条件交渉を実施
- クロージング判断: 受注確度を見極め、最終提案のタイミングを判断
- 失注時の分析: 失注理由を分析し、改善策を検討
高価格帯の54%が検討から契約まで半年以上を要するため、長期的なフォローアップ体制が不可欠です。定期的に進捗を確認し、バイヤーの検討状況に応じた情報提供を継続することで、競合他社との差別化を図ります。
商談管理で押さえるべき項目とMA/SFA設定
商談管理では、商談の進捗を可視化し、チーム全体で情報共有するための項目を定義する必要があります。商談・受注まで追跡している企業はサイト運用企業のわずか14.8%のみという現状を踏まえると、MA/SFAツールの活用が推奨されます。
MA導入率は全企業で1.5%、上場企業で14.6%(Nexal調査、62.6万社対象、2023年5月)であり、国内BtoB MA市場は753億円(2023年、事業者売上ベース、前年比11.2%増)です。導入率はまだ低いものの、市場規模は成長しており、今後普及が加速すると見込まれます。
成功事例として、株式会社リクルートはSalesforce導入で商談ステージ管理を自動化し、成約率22%向上(2023年度)、マーケティング連携でリード変換率35%増を実現しました。ただし、この事例はSalesforce自社事例であり、企業規模や業種により成果は異なる可能性があります。
商談管理で管理すべき主要項目
商談管理で管理すべき主要項目は以下の通りです。
- 商談ステージ: 初回接触→提案→交渉→クロージングなどの段階を可視化し、各ステージでの適切なアクションを管理
- 担当者情報: バイヤー側の窓口担当者の氏名、役職、連絡先、関心事
- 予算: バイヤーの予算規模、支払条件、稟議承認プロセス
- 決裁権限: 最終意思決定者の特定、決裁フローの把握
- 関与者情報: 意思決定に関与する全員(経営層、事業部長、現場担当者、IT部門、購買部門等)の情報
- タイムライン: 商談開始日、提案予定日、見積提示日、契約予定日等のスケジュール
- 提案内容: 提案したソリューション、カスタマイズ内容、見積金額
- 競合状況: 競合他社の有無、競合製品の比較結果
- 受注確度: 現時点での受注確度(%)、受注見込み時期
商談ステージとは、商談の進捗段階を指します。初回接触→提案→交渉→クロージングなどの段階を可視化し、各ステージでの適切なアクションを管理します。
高価格帯商談では平均18.3人が関与するため、関与者情報の管理が特に重要です。各関与者の役割、関心事、懸念点を記録し、個別アプローチの履歴を残すことで、チーム全体で情報を共有できます。
MA/SFAツールの活用方法|ExcelからSFAへ
Excel管理の限界として、以下の点が挙げられます。
- 属人化: 営業担当者ごとにファイルが分散し、チーム全体での情報共有が困難
- 情報更新の遅れ: 手動更新のため、最新情報の反映が遅れる
- 分析機能不足: 商談ステージ別の成約率、平均商談期間等の分析が困難
MA導入率は全企業で1.5%、上場企業で14.6%という現状を踏まえると、SFA活用の余地は大きいと言えます。SFAツールを活用することで、商談情報をリアルタイムで可視化し、チーム全体で共有できます。
株式会社リクルートの事例では、Salesforce導入で商談ステージ管理を自動化し、成約率22%向上、マーケティング連携でリード変換率35%増を実現しました。この事例から、MA/SFAツールの活用により、以下の効果が期待できます。
- 商談進捗の可視化: 商談ステージ別の件数、受注確度別の売上予測をリアルタイムで把握
- マーケティング連携: MAで収集したリード行動履歴をSFAに連携し、営業が事前に把握
- 予測分析: 過去の商談データから、受注確度の高い商談パターンを分析
ただし、特定のSFAツールを推奨するものではなく、自社の規模や予算に応じて適切なツールを選択することが重要です。
商談管理プロセス定着化のための実践ガイド
商談プロセスを設計し、管理項目をリストアップしただけでは成果は出ません。MA/SFA設定と運用ルールの整備を同時に進めることが、プロセス定着の鍵です。
商談・受注まで追跡している企業はわずか14.8%のみという現状は、プロセス設計と運用定着が別の課題であることを示しています。以下のチェックリストを活用して、プロセス設計・MA/SFA設定・運用ルールの3軸で取り組むべきことを明確化しましょう。
【チェックリスト】商談管理プロセス定着チェックリスト
プロセス設計
- 商談ステージを定義した(初回接触→提案→交渉→クロージング等)
- 各ステージでの実施アクションを明確化した
- 管理すべき項目をリスト化した(商談ステージ、担当者情報、予算、関与者情報等)
- 商談プロセスフロー図を作成した
- 営業チーム全員でプロセスフローをレビューした
MA/SFA設定
- MA/SFAツールを選定した
- 商談ステージをツール上で設定した
- 管理項目をカスタムフィールドとして追加した
- MAとSFAの連携を設定した(リード行動履歴の自動連携)
- リードスコアリング基準を設定した
- 商談進捗ダッシュボードを作成した
- 受注予測レポートを設定した
- 営業メンバー向けのツール研修を実施した
運用ルール整備
- 商談情報の入力ルールを明確化した(いつ・何を・どのように入力するか)
- 入力タイミングを定義した(商談後24時間以内等)
- 必須入力項目を設定した
- 商談レビュー会議の頻度を決定した(週次/月次)
- マネージャーによる進捗確認ルールを設定した
- KPI設定を行った(商談進捗率、平均商談期間、成約率等)
- KPIをダッシュボードで可視化した
- 入力漏れ・更新漏れのチェック体制を整備した
- 失注理由の分析会議を定期的に実施する体制を作った
- プロセス改善のPDCAサイクルを設計した
プロセス定着でよくある失敗パターン
プロセス定着でよくある失敗パターンは、商談プロセスの流れを設計し、管理項目をリストアップすれば成果が出ると思い込み、MA/SFA設定や運用ルールの整備を後回しにすることです。このパターンでは、以下のような問題が発生します。
- ツール導入だけで満足: MA/SFAツールを導入したものの、商談ステージや管理項目を設定せず、営業メンバーが活用しない
- 運用ルール未整備: 入力ルールが曖昧で、営業メンバーごとに入力内容や更新頻度がバラバラになる
- 営業メンバーへの教育不足: ツールの使い方を研修せず、入力負荷が高いと感じた営業メンバーがExcelに戻る
商談追跡率14.8%という低水準の背景には、これらの失敗要因が潜んでいると考えられます。プロセス設計と同時に、MA/SFA設定と運用ルールの整備を進めることが、定着化の鍵です。
運用体制の整備|入力ルールとレビュー体制
運用体制整備では、以下の3点を明確化します。
1. 入力ルールの設計
- いつ入力するか: 商談後24時間以内、提案後48時間以内など、入力タイミングを明確化
- 何を入力するか: 必須入力項目(商談ステージ、担当者情報、予算、受注確度等)を設定
- どのように入力するか: 入力フォーマットを統一し、選択肢を設けて入力負荷を軽減
2. レビュー体制の構築
- 週次レビュー: 営業チーム全体で商談進捗を共有し、受注確度の高い案件に集中
- 月次レビュー: マネージャーが各営業メンバーの商談状況を確認し、フォローアップ方針を協議
- 失注理由分析: 失注案件の理由を分析し、改善策を検討
3. KPI設定
- 商談進捗率: 各商談ステージの通過率(提案→交渉の通過率等)
- 平均商談期間: 商談開始から受注までの平均日数
- 成約率: 商談件数に対する受注件数の割合
これらのKPIをダッシュボードで可視化し、定期的にモニタリングすることで、プロセスの改善点を特定できます。
まとめ|商談管理プロセスは設計と運用体制整備の両輪で成果を出す
商談管理プロセスは、プロセス設計だけでなく、MA/SFA設定と組織体制整備を同時に進めることで初めて運用・定着し、成果を出せます。
記事の要点
- 商談・受注まで追跡している企業は14.8%のみで、プロセス定着には設計と運用体制整備の両輪が必要
- BtoB購買では営業面談前に85%のバイヤーが候補を絞り込んでおり、事前準備段階でのMA活用が重要
- 高価格帯商談では平均18.3人が関与し、54%が半年以上要するため、関与者管理と長期フォローアップが不可欠
- 商談管理ではステージ・担当者情報・予算・関与者情報・タイムライン等を管理し、MA/SFAツールで可視化
- プロセス定着には、プロセス設計・MA/SFA設定・運用ルール整備の3軸で取り組むことが重要
次のアクションとして、まず自社の商談追跡状況を確認し、チェックリストを活用してプロセス設計・MA/SFA設定・運用ルールの3軸で取り組むべきことを明確化してください。企業規模や業種により最適なアプローチは異なるため、自社の状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。専門家への相談も選択肢として検討する価値があります。
