マーケティング責任者に求められるスキルとは
マーケティング責任者として成果を出すには、戦略立案スキルだけでなく、MA/SFAを活用したデータ駆動の意思決定力と営業・他部門との連携力が不可欠です。これが本記事の結論です。
アクセンチュアの「CMOスタディ2025」によると、世界のCMOの64%(日本63%)が「利益率を高める責任」を負うと認識しており、58%(日本51%)が「収益成長を牽引する責任」を担うと認識しています。もはやCMOは単なる宣伝担当ではなく、事業成長の責任者としての役割を求められています。
この記事で分かること
- マーケティング責任者(CMO)の役割と責任範囲
- 成果を出すために必要な4つのスキルカテゴリ
- 調べるだけでは身につかない実務スキルの重要性
- 自己診断チェックリストによるスキルギャップの把握方法
- スキルアップのための具体的なアクション
CMOの役割と責任範囲|単なる宣伝担当ではない理由
CMO(Chief Marketing Officer) とは、最高マーケティング責任者のことです。経営戦略をマーケティングに落とし込み、売上・利益・ブランド価値目標の達成を主導する経営ポジションです。
前述のグローバル調査によると、世界のCMOの64%が利益率向上の責任を、58%が収益成長の責任を認識しています。この数字が示す通り、CMOは「広告宣伝の責任者」ではなく「売上・利益に直結する事業成長責任者」としての位置づけに変化しています。
日本ではCMOを明示的に設置している企業がまだ少ないのが現状です。マーケティング部長やマーケティングマネージャーがCMOの役割を兼務しているケースが多く見られます。しかし、デジタルマーケティングの高度化に伴い、経営とマーケティングを橋渡しする専門職の重要性は高まっています。
デマンドジェネレーションとは、リード獲得からナーチャリング、商談創出、LTV最大化までの一連のプロセス設計とKPIマネジメントを指します。CMOはこのデマンドジェネレーション全体を統括し、マーケティング活動を売上に結びつける責任を担います。
他のCxO役職との違いと連携ポイント
CMOと他のCxO役職との違いは、責任領域にあります。CEOが全社戦略と最終意思決定を担い、COOがオペレーション全般を統括し、CFOが財務戦略を管理する中で、CMOは「顧客獲得と収益創出のエンジン」としての役割を果たします。
近年注目されているのがRevOps(Revenue Operations) です。これはマーケティング・営業・カスタマーサクセスを統合し、収益最大化を目指す組織設計・運用手法です。CMOは営業部門やCS部門と密に連携し、部門の壁を越えた収益最大化に取り組むことが求められています。
マーケティング責任者に必要なスキルセット
マーケティング責任者に必要なスキルは、大きく4つのカテゴリに分類できます。すべてを一人で網羅する必要はなく、チーム編成によって補完することが重要です。
【比較表】マーケティング責任者に必要なスキル一覧表
| カテゴリ | スキル項目 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 戦略・企画力 | 経営視点での戦略立案 | 事業計画とマーケティング計画の整合性確保 |
| 戦略・企画力 | KGI/KPI設計 | 事業貢献度を可視化する指標設計 |
| 戦略・企画力 | 市場分析・競合分析 | 市場環境の把握と競合ポジショニング |
| データ分析力 | マーケティングデータ分析 | リード獲得から商談化までのデータ分析 |
| データ分析力 | ROI測定・改善 | 施策効果の測定と継続的な改善 |
| データ分析力 | レポーティング | 経営層への定期的な成果報告 |
| テクノロジー活用力 | MA(マーケティングオートメーション)活用 | リードナーチャリング・スコアリングの設計運用 |
| テクノロジー活用力 | SFA/CRM活用 | 営業との連携・パイプライン管理 |
| テクノロジー活用力 | 各種ツール選定・導入 | 目的に応じた適切なツール選定 |
| マネジメント力 | チームビルディング | マーケティングチームの編成・育成 |
| マネジメント力 | 部門横断リーダーシップ | 営業・製品・CS部門との連携推進 |
| マネジメント力 | 予算管理 | マーケティング予算の配分と管理 |
KGI/KPIについて説明します。KGIは最終目標指標、KPIは重要業績評価指標です。マーケティング責任者は事業貢献度を可視化するため、両者を適切に設定・管理する必要があります。
戦略立案・経営視点のスキル
マーケティング責任者には、経営戦略とマーケティング戦略を統合する視点が求められます。事業計画の売上目標から逆算してマーケティング目標を設定し、必要なリード数・商談数・受注数を導き出す力が重要です。
具体的には、以下のようなスキルが求められます。
- 経営会議で事業計画との整合性を説明できる
- マーケティングROIを経営指標として報告できる
- 市場環境の変化を踏まえた戦略修正ができる
データ分析・MA/SFA活用スキル
MA/SFAを「導入している」だけでは不十分です。「活用して成果を出している」レベルが求められます。
多くの企業がMAやSFAを導入していますが、機能の一部しか使っていないケースが多いのが実情です。マーケティング責任者には、ツールの機能を理解し、リード獲得から商談化までのパイプラインをデータで可視化・改善する能力が必要です。
具体的には、リードスコアリングの設計、ナーチャリングシナリオの構築、営業との共通KPI管理などが実務で問われます。
見落としがちな実務スキル|調べるだけでは身につかない力
ここでよくある失敗パターンを指摘します。CMOの一般的なスキル要件を調べるだけで満足し、実務でMA/SFA活用や営業連携の経験を積まないまま、知識と実践力のギャップが埋まらないケースが多いです。
スキル要件をリストアップして「知っている」状態と、実際にそのスキルを「使える」状態には大きな差があります。特に営業連携や部門横断リーダーシップは、実務経験を通じてしか身につかないスキルです。
営業・他部門との連携力
マーケ起点で営業・製品・CS・人事などを巻き込む横断的リーダーシップは、マーケティング責任者に不可欠なスキルです。
日本ではプロダクトアウト的な発想や営業主導文化が根強く、マーケティング部門が「支援部門」として位置づけられがちです。しかし、収益成長を牽引するためには、マーケティング部門が主体的に他部門と連携し、顧客獲得の起点となる必要があります。
RevOpsの考え方を取り入れ、マーケティング・営業・カスタマーサクセスが共通のKPIを追いかける体制を構築することが重要です。具体的には、商談化率や受注率を共通指標とし、リードの質と量のバランスを取りながらパイプラインを最適化します。
スキルアップの実践法|自己診断と成長計画
まずは現状のスキルを棚卸しすることから始めましょう。以下のチェックリストで自己診断を行い、強み・弱みを把握してください。
【チェックリスト】マーケティング責任者スキル自己診断チェックリスト
- 事業計画からマーケティング目標を逆算して設定できる
- マーケティングROIを計算し、経営層に報告できる
- 競合分析に基づいた差別化戦略を立案できる
- KGI/KPIを適切に設定し、進捗管理できる
- リード獲得から商談化までのデータを分析できる
- MAでリードスコアリングを設計・運用できる
- SFAで営業との共通パイプラインを管理できる
- マーケティングツールの選定・導入を主導できる
- マーケティングチームのメンバー育成ができる
- 営業部門と定期的に連携会議を実施している
- CS部門と顧客フィードバックを共有する仕組みがある
- 製品部門にマーケット情報をインプットできる
- 予算配分の根拠を説明できる
- 施策の優先順位を論理的に決定できる
- 経営会議でマーケティング成果をプレゼンできる
チェックが8個以下の場合は、まず基礎的なスキル強化から始めることをおすすめします。9-12個の場合は中級レベルとして、弱みを重点的に補強しましょう。13個以上の場合は上級レベルですが、組織全体のマーケティング力向上に目を向けてみてください。
経験を積むための具体的アクション
チェックリストで見つけた弱みを強化するための実践的なアクションを紹介します。
戦略・企画力を高めるアクション
- 経営会議への参加・傍聴を上長に依頼する
- 事業計画の策定プロセスに関与する機会を求める
- 競合分析レポートを定期的に作成し、経営層に報告する
データ分析力を高めるアクション
- MAの高度な機能(リードスコアリング、ABテスト等)を実際に設定・運用する
- 週次・月次のマーケティングレポートを自ら作成する
- SFAのデータを使った商談分析を営業と共同で行う
連携力を高めるアクション
- 営業との定例ミーティングを設定し、リード品質のフィードバックをもらう
- 営業同行や商談への同席を通じて顧客理解を深める
- CS部門との情報共有会を設け、顧客の声をマーケティング施策に反映する
まとめ|マーケティング責任者として成果を出すために
マーケティング責任者として成果を出すには、戦略立案スキルだけでなく、MA/SFAを活用したデータ駆動の意思決定力と、営業・他部門との連携力が不可欠です。
グローバル調査によると、世界のCMOの64%(日本63%)が利益率向上の責任を認識しています。CMOは単なる宣伝担当ではなく、事業成長の責任者として、経営に直結する成果を求められるポジションです。
必要なスキルは4つのカテゴリ(戦略・企画力、データ分析力、テクノロジー活用力、マネジメント力)に整理できますが、すべてを一人で網羅する必要はありません。チーム編成と役割分担でカバーしながら、自身の強みを活かしたリーダーシップを発揮することが重要です。
まずは本記事のチェックリストで自己診断を行い、現状のスキルを棚卸ししてみてください。強みと弱みを把握した上で、具体的なアクションに落とし込むことが成長への第一歩です。
