BPRの成功と失敗を分ける要因
意外かもしれませんが、BPRの成功は、戦略立案だけでなく、MA・SFA設定やツール開発まで含めた「動くもの」としての実装支援で実現します。
約7割の企業がBPRを実施していますが(1990年代から2010年代、JMAC調査)、その一方で1990年代の日本企業BPR導入時には失敗率が70%超に達したという調査結果があります(人員削減重視で失敗)。なぜ多くの企業がBPRに取り組むにもかかわらず、失敗する企業とうまくいく企業に分かれるのでしょうか。
BPR(Business Process Reengineering) とは、業務プロセスや組織構造を根本から見直し、抜本的に再設計する取り組みです。劇的な改善を目指す点が特徴です。
失敗する企業の共通点は、戦略策定だけで終わらせてしまうことです。コンサルタントが作成した戦略レポートを受け取るだけで、実際のMA・SFA設定やツール開発、現場への定着支援まで手が回らず、絵に描いた餅になってしまうケースが多く見られます。
この記事で分かること
- BPRの成功と失敗を分ける決定的な要因
- BPRと業務改善の違いと定義
- 民間企業・自治体の具体的な成功事例と成果
- BPRを実装レベルで成功させる5ステップ
- 戦略策定だけでは失敗する理由と実装支援の重要性
本記事では、MA/SFA導入済みだが活用できていない企業向けに、BPRの成功事例と実装支援の重要性を解説します。戦略策定から現場定着までのロードマップを具体的に示し、あなたの会社でも実装レベルでBPRを成功させるためのヒントを提供します。
BPRとは何か|業務改善との違いと定義
BPRと業務改善は、どちらも業務を改善する取り組みですが、その目的・範囲・変革規模が大きく異なります。この違いを理解することが、BPR成功の第一歩です。
BPR(Business Process Reengineering) とは、業務プロセスや組織構造を根本から見直し、抜本的に再設計する取り組みです。既存の枠組みを壊し、全社・部署横断で業務を再構築することで、劇的な改善(コスト、品質、サービス、スピードの向上)を目指します。
一方、業務改善とは、現状を肯定し、無駄削減で部分効率化を図る継続的な取り組みです。PDCAサイクルによる小規模改善を積み重ねることで、特定業務の効率を高めます。
BPRの定義
BPR(Business Process Reengineering) は、1993年にマイケル・ハンマーとジェームズ・チャンプイが著書『リエンジニアリング革命』で提唱した概念です。彼らは「コスト、品質、サービス、スピードを劇的に改善するために、業務プロセスを根本から考え直し、抜本的にデザインし直すこと」と定義しました。
BPRは1990年代に日本でも注目されましたが、当時は人員削減を主目的とした企業が多く、失敗率が70%超に達したと言われています。人員削減重視では現場の反発を招き、業務プロセス再設計が進まず、結果として定着しませんでした。
近年は、少子高齢化による人手不足への対応策として、BPRが再評価されています。DX(デジタルトランスフォーメーション)との連携により、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI-OCR、クラウドシステムなどのデジタルツールを活用したBPRが主流となり、成功率が向上傾向にあります。
業務改善との違い
BPRと業務改善の違いは、以下の3つの軸で整理できます。
| 比較軸 | BPR | 業務改善 |
|---|---|---|
| 目的 | 業務プロセスの抜本的改革 | 既存業務の無駄削減・効率化 |
| 範囲 | 全社・部署横断 | 特定業務・部署内 |
| 変革規模 | 抜本的・短期的大変化 | 継続的・小規模積み重ね |
| 例 | 全社の契約処理プロセスを刷新し、RPAで自動化 | 特定部署の承認フローを簡略化 |
BPRは「根本から見直す」ため、既存の枠組みを壊して再構築します。例えば、契約処理プロセス全体を見直し、不要な承認ステップを削減し、RPAで自動化するといった大規模な変革が該当します。
一方、業務改善は「現状を肯定し、無駄を削減する」ため、既存の枠組みの中で効率化を図ります。例えば、特定部署の承認フローで、承認者を減らして処理時間を短縮するといった部分的な改善が該当します。
具体的な成功事例|民間企業・自治体のBPR実績
BPRの成功事例を、民間企業と自治体に分けて紹介します。具体的な成果を知ることで、自社のBPRプロジェクトの参考になります。
業務時間削減率は10-50%が一般的です(事例ベース)。ただし、企業規模・業種・導入範囲により大きく変動するため、自社の状況に応じた目標設定が重要です。
民間企業の成功事例
サービス業C社: 契約処理時間を30分から10分以下に短縮
サービス業C社では、契約処理に30分かかっていた業務をRPAで10分以下に短縮しました(事例として報告されています)。同社は、契約書の作成から承認、データ入力までの一連のプロセスを可視化し、定型作業をRPAで自動化することで、劇的な時間短縮を実現しました。
RPA(Robotic Process Automation) とは、ソフトウェアロボットによる業務自動化技術です。定型業務の効率化に活用されます。
同社の成功要因は、試験導入でPDCAサイクルを回し、段階的に適用範囲を拡大したことです。最初は小規模な契約処理から始め、効果を検証した上で全社展開することで、失敗リスクを低減しました。
ハナマルキ株式会社: 人事総務負荷を5割削減
ハナマルキ株式会社では、人事総務部を2名で担っていた負荷をBPOサービス活用により5割削減しました(事例として報告されています)。同社は、給与計算や勤怠管理などの定型業務を外部委託することで、人事総務担当者が戦略的業務に集中できる体制を構築しました。
BPO(Business Process Outsourcing) とは、業務プロセスの外部委託です。人事・総務・経理等の間接業務を専門企業に委託する手法です。
BPOサービスは、BPRの一環として活用されるケースが多く、内製にこだわらず外部リソースを活用することで、コストと負荷を大幅に削減できます。
自治体の成功事例
東海村・日立システムズ共同研究: 12,680時間相当の業務量削減案を創出
茨城県東海村と日立システムズの共同研究では、全29課・4,339業務を可視化し、総労働時間の1.21%にあたる12,680時間相当の業務量削減案が創出されました(事例として報告されています)。
業務可視化とは、現行の業務プロセスを詳細に把握し、フローチャートやデータで明示化することです。BPRの第一ステップとして重要です。
同研究では、全業務をフローチャート化し、各業務の処理時間・頻度・担当者を詳細に記録しました。この可視化により、どの業務が最も時間を消費しているか、どの業務を自動化すべきかが明確になり、具体的な削減案の策定につながりました。
北海道札幌市: 年間232時間の業務削減に成功
北海道札幌市では、RPA/AI-OCRを組み合わせた業務自動化により、年間232時間の業務削減に成功しました(事例として報告されています)。同市は、紙の申請書をAI-OCRでデータ化し、RPAで自動入力することで、手作業による入力業務を大幅に削減しました。
RPA単体では紙の申請書に対応できませんが、AI-OCRと組み合わせることで、紙からデジタルへの変換を含めた一気通貫の自動化が可能になります。このように、複数のデジタルツールを組み合わせることが、BPR成功の鍵となります。
BPRの進め方|実装を成功させる5ステップ
BPRを実装レベルで成功させるには、以下の5ステップを順番に進めることが重要です。各ステップで具体的なアクションを実行し、PDCAサイクルを回しながら進めることで、失敗リスクを低減できます。
- 現状分析・業務の可視化
- 目標設定と改善領域の特定
- 新しい業務設計・デジタルツール活用
- 試験導入とプロセス見直し
- 実行と検証(PDCAサイクル)
ステップ1: 現状分析・業務の可視化
業務可視化とは、現行の業務プロセスを詳細に把握し、フローチャートやデータで明示化することです。BPRの第一ステップとして、最も重要なプロセスです。
東海村・日立システムズ共同研究では、全29課・4,339業務を可視化し、総労働時間の1.21%にあたる12,680時間相当の業務量削減案が創出されました(事例として報告されています)。この事例が示すように、業務可視化により、削減可能な業務が明確になります。
業務可視化の具体的な手順は以下の通りです。
- 全業務のリストアップ: 各部署で行っている業務を全てリスト化する
- フローチャート作成: 各業務のプロセスをフローチャートで図示する
- 処理時間・頻度の記録: 各業務にかかる時間と頻度を記録する
- ヒアリング: 現場担当者にヒアリングし、ボトルネックや無駄を把握する
- 自動化可能工程の洗い出し: 定型業務や繰り返し作業を特定する
この可視化プロセスにより、「どの業務が最も時間を消費しているか」「どの業務を削減・自動化すべきか」が明確になります。
ステップ2: 目標設定と改善領域の特定
業務可視化が完了したら、次は具体的な目標を設定します。目標設定では、可視化データに基づく具体的な数値目標を設定することが成功の鍵です。
サービス業C社では、契約処理に30分かかっていた業務をRPAで10分以下に短縮するという明確な目標を設定しました(事例として報告されています)。このように、「30分→10分以下」という具体的な数値目標があることで、達成度を測定でき、PDCAサイクルを回しやすくなります。
目標設定のポイントは以下の通りです。
- SMART原則に従う: Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限明確)
- 業務時間削減率: 一般的には10-50%が目安(事例ベース)だが、自社の状況に応じて設定
- 優先順位付け: 最も効果が大きく、実現可能性が高い業務から着手
ステップ3: 新しい業務設計・デジタルツール活用
目標が設定できたら、新しい業務プロセスを設計し、デジタルツールの活用を計画します。既存の枠組みを壊し、抜本的に再設計することがBPRの本質です。
RPA(Robotic Process Automation) は、定型業務の自動化に最も効果的なツールです。契約書作成、データ入力、承認プロセスなど、ルールが明確で繰り返し発生する業務に適しています。
その他のデジタルツールとして、以下が挙げられます。
- AI-OCR: 紙の申請書や請求書をデータ化し、手入力を削減
- クラウドシステム: 部署横断でのデータ共有を実現し、情報の一元管理が可能
- MA・SFA: マーケティング・営業プロセスを自動化し、リード管理を効率化
札幌市の事例では、RPA/AI-OCRを組み合わせることで年間232時間の業務削減に成功しました。このように、複数のデジタルツールを組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。
ステップ4: 試験導入とプロセス見直し
新しい業務プロセスとデジタルツールの計画ができたら、いきなり全社展開するのではなく、試験導入でPDCAサイクルを回すことが重要です。
サービス業C社では、最初は小規模な契約処理から始め、効果を検証した上で全社展開することで、失敗リスクを低減しました。試験導入により、以下のような問題を早期に発見し、修正できます。
- RPAの設定ミスによるエラー発生
- 現場担当者の操作ミス
- 業務フローの想定外のボトルネック
試験導入のポイントは以下の通りです。
- 小規模から開始: 一部の業務・部署で試験導入し、効果を検証
- PDCAサイクルを回す: 問題点を洗い出し、改善を繰り返す
- 段階的に適用範囲を拡大: 効果が確認できたら、全社展開
ステップ5: 実行と検証(PDCAサイクル)
試験導入で効果が確認できたら、全社展開に移ります。ただし、BPRは一度実行すれば終わりではありません。継続的にPDCAサイクルを回し、業務プロセスを改善し続けることが重要です。
PDCAサイクルの具体例:
- Plan(計画): 新しい業務プロセスとKPIを設定
- Do(実行): 実際に業務を運用
- Check(検証): KPIを測定し、目標達成度を確認
- Act(改善): 問題点を改善し、次のサイクルに反映
サービス業C社では、試験導入後もPDCAサイクルを継続し、さらなる業務改善を実現しました。BPRは「やって終わり」ではなく、「やり続ける」ことが成功の鍵です。
実装支援の重要性|戦略策定だけでは失敗する理由
BPRの成功には、戦略策定だけでなく、実装支援が不可欠です。多くの企業が失敗する理由は、戦略レポートを受け取るだけで、実際のMA・SFA設定やツール開発、現場への定着支援まで手が回らないことです。
1990年代の日本企業BPR導入時、失敗率が70%超に達したという調査結果があります(人員削減重視で失敗)。この失敗の主要因は、戦略策定だけで終わらせたこと、そして人員削減を主目的としたことです。
ここでは、BPR手法別の実装スコープ比較表とBPR実装チェックリストを提供します。
【比較表】BPR手法別実装スコープ比較表
項目,戦略策定のみ,実装支援込み,備考
戦略レポート作成,○,○,両方とも提供
業務可視化支援,○,○,両方とも提供
MA・SFA設定,×,○,実装支援込みのみ
ツール開発(フルスクラッチ),×,○,実装支援込みのみ
現場への定着支援,×,○,実装支援込みのみ
PDCAサイクル支援,×,○,実装支援込みのみ
期間,1-3ヶ月,3-6ヶ月以上,実装支援込みは長期
成果,戦略レポートのみ,動くもの(実装済みシステム),決定的な違い
注意点
戦略策定のみの場合、戦略レポートは受け取れますが、実際のMA・SFA設定やツール開発は含まれません。そのため、自社で実装する必要があり、リソースや専門知識が不足している場合は、結局実装が進まず、絵に描いた餅になってしまいます。
実装支援込みの場合、MA・SFA設定からフルスクラッチツール開発、現場定着支援まで含まれるため、「動くもの」として納品されます。これにより、現場に定着しやすく、成果につながりやすくなります。
【チェックリスト】BPR実装チェックリスト(戦略策定から現場定着まで)
- 現状分析・業務可視化が完了している(全業務のフローチャート化、処理時間・頻度の記録)
- 具体的な数値目標が設定されている(SMART原則に従った目標設定)
- 改善領域が特定され、優先順位が明確になっている
- 新しい業務プロセスが設計されている(既存の枠組みを壊した抜本的設計)
- デジタルツール(RPA、AI-OCR、クラウドシステム等)の活用計画が策定されている
- MA・SFA設定が完了している(リード管理・営業プロセスの自動化)
- 必要に応じてフルスクラッチツール開発が完了している(標準ツールでは対応できない要件に対応)
- 試験導入が実施され、効果が検証されている(小規模から開始し、PDCAサイクルを回す)
- 試験導入で発見された問題点が改善されている
- 全社展開の計画が策定されている(段階的に適用範囲を拡大)
- 現場担当者へのトレーニングが実施されている(新しい業務プロセスの操作方法を教育)
- 現場定着支援が実施されている(導入後のフォローアップ、問い合わせ対応)
- PDCAサイクルの運用体制が構築されている(KPI測定、定期レビュー、改善アクション)
- 継続的な改善プロセスが確立されている(BPRは一度で終わりではなく、やり続けることが重要)
- 実装支援パートナーの選定が完了している(戦略策定だけでなく、実装まで支援できるパートナー)
戦略策定だけで終わる失敗パターン
1990年代の日本企業BPR導入時、失敗率が70%超に達した主要因は、戦略策定だけで終わらせたこと、そして人員削減を主目的としたことです。
失敗パターン1: 戦略レポート提出だけで終わる
コンサルタントが作成した戦略レポートを受け取るだけで、実際のMA・SFA設定やツール開発が進まないケースです。レポートには「RPAを導入すべき」「クラウドシステムを活用すべき」と書かれていても、自社でどう実装すれば良いか分からず、結局放置されてしまいます。
失敗パターン2: 既存ツールの設定変更だけで済ませる
MA/SFAツールの設定を少し変更するだけで、抜本的な業務プロセス再設計を行わないケースです。既存の枠組みの中での小規模改善に留まり、BPR本来の「根本から見直す」という目的が達成されません。
失敗パターン3: 人員削減を主目的とする
1990年代の失敗事例が示す通り、人員削減を主目的とすると、現場の反発を招き、業務プロセス再設計が進みません。BPRは「業務プロセスの抜本的改革」が目的であり、人員削減はその結果として発生するものです。最初から人員削減を目的とすると、失敗する可能性が高くなります。
実装支援込みのBPRが成功する理由
実装支援込みのBPRが成功する理由は、戦略策定から現場定着までをワンストップで支援できるためです。
理由1: MA・SFA設定からツール開発まで「動くもの」として納品
一般的なコンサルが「戦略レポート提出」で終わるのに対し、MA・SFA設定からNext.js+Supabaseでのフルスクラッチツール開発まで「動くもの」を実装・納品することで、現場に定着しやすくなります。
理由2: HR Tech・SaaS業界での36名組織統括経験を活かした実践力
戦略だけでなく現場の業務BPRから採用まで関与できる実践力があることで、机上の空論ではなく、実際に現場で使える業務プロセスを設計できます。
理由3: PDCAサイクル支援で継続的改善
導入後もPDCAサイクルを回し、継続的に改善することで、BPRの効果を最大化できます。一度実装すれば終わりではなく、やり続けることが成功の鍵です。
まとめ|BPR成功のポイント
BPRの成功は、戦略立案だけでなく、MA・SFA設定やツール開発まで含めた「動くもの」としての実装支援で実現します。
本記事で解説した重要ポイントをまとめます。
1. BPRと業務改善の違いを理解する
BPRは業務プロセスを根本から見直し抜本的に再設計する取り組みで、全社・部署横断の大規模変革を目指します。業務改善は現状を肯定し、特定業務の無駄削減で部分効率化を図る継続的な小規模改善です。目的、範囲、変革規模が大きく異なります。
2. 業務可視化がBPRの第一ステップ
東海村・日立システムズ共同研究では、全29課・4,339業務を可視化し、12,680時間相当の業務量削減案が創出されました。業務可視化により、削減可能な業務が明確になります。
3. デジタルツール活用で劇的な改善を実現
RPA、AI-OCR、クラウドシステム、MA・SFA等のデジタルツールを組み合わせることで、業務時間削減率10-50%が期待できます(事例ベース)。サービス業C社では契約処理を30分から10分以下に短縮、札幌市では年間232時間業務削減に成功しました。
4. 試験導入でPDCAサイクルを回す
小規模から開始し、効果を検証した上で全社展開することで、失敗リスクを低減できます。サービス業C社では試験導入で問題点を改善し、段階的に適用範囲を拡大しました。
5. 実装支援が成功の鍵
戦略策定だけで終わらせず、MA・SFA設定、フルスクラッチツール開発、現場定着支援まで含めることが重要です。1990年代の失敗率70%超が示す通り、戦略レポートだけでは現場に定着せず失敗します。
次のアクション
BPR実装チェックリストを活用し、自社の現状を確認してください。戦略策定から実装・現場定着までをワンストップで支援できるパートナーを選定することで、BPRの成功確率を高めることができます。
