CRM(顧客管理システム)とは?簡単に分かる基本と活用メリット

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

顧客情報がExcelや名刺で散在していて、営業活動が効率的に進められない…

B2B企業の営業・マーケティング担当者の多くが、「CRMという言葉を聞いたことはあるけど、具体的に何ができるのか分からない」「顧客情報がExcelや名刺で散在していて管理が煩雑」という悩みを抱えています。営業活動の見える化・効率化を実現したいけれど、どこから始めれば良いか分からない状況です。

この記事では、CRMの基本概念を初心者向けに平易に解説し、導入メリット(営業効率化・顧客満足度向上・データ分析)と具体的な活用シーンを提示します。Salesforce・HubSpot・Zohoなど主要CRMツールも簡単に紹介します。

この記事のポイント:

  • CRMは顧客情報を一元管理し、顧客との良好な関係を構築・維持するための戦略とツール
  • 営業・マーケティング・カスタマーサポートなど顧客接点を持つ全部門が活用できる
  • Excel管理と比べて、情報共有の効率化・データ分析・営業活動の可視化が実現できる
  • 一般的なCRMシステムにはSFA機能が内包されているオールインワン型が多い
  • 導入効果が出るまで一定期間が必要で、即効性はないため長期的な視点が重要

CRMとは何か?

(1) CRMの定義と目的

CRM(Customer Relationship Management)とは、「顧客関係管理」という意味です。顧客情報を管理・分析し、顧客と良好な関係を構築・維持するための戦略やツール・システムの総称を指します。

CRMの主な目的:

  • 顧客情報の一元管理(基本情報、商談履歴、購買履歴など)
  • 営業活動の可視化(誰が・いつ・どのようなアプローチをしたか)
  • コミュニケーション履歴の蓄積(問い合わせ内容、対応履歴など)
  • データに基づいた意思決定(どの顧客が優良顧客か、どの施策が効果的かなど)

CRMは単なるツールではなく、顧客との関係を最適化し長期的な信頼関係を構築するための包括的な戦略として捉えることが重要です。

(出典: Salesforce公式「CRMとは?機能やメリット、活用法をわかりやすく解説」、ITトレンド「CRMとは?メリットや機能、目的など基本知識を簡単解説」)

(2) 顧客関係管理が重要な理由

なぜ顧客関係管理が重要なのでしょうか?理由は以下の通りです:

既存顧客との関係深化がコスト効率が良い:

  • 新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかると言われています
  • 既存顧客との関係を深めることで、LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額)を最大化できます

顧客ニーズの多様化に対応:

  • 顧客のニーズが多様化し、画一的なアプローチでは満足度を高められない
  • CRMで顧客ごとの購買履歴や問い合わせ履歴を把握し、パーソナライズされた対応が可能になります

部門間の情報共有:

  • 営業・マーケティング・カスタマーサポートが別々に顧客情報を管理していると、重複や漏れが発生
  • CRMで共通の情報基盤を構築し、部門横断で顧客情報を共有できます

(出典: Hammock「CRMの必要性とは?ビジネスの成長に不可欠な顧客関係管理の基礎と導入メリット」)

(3) CRMが生まれた背景

CRMが注目されるようになった背景には、以下の社会的変化があります:

市場の成熟:

  • 高度成長期は「作れば売れる」時代でしたが、市場が成熟すると顧客のニーズが多様化
  • 顧客満足度を高め、長期的な関係を構築することが重要になりました

ITシステムの発展:

  • データベース技術やクラウドサービスの発展により、大量の顧客情報を効率的に管理できるようになりました
  • 2024年では、AI統合やデータドリブン意思決定の機能が強化されています

競争激化:

  • 競合他社との差別化が難しくなり、顧客との関係性が競争優位の源泉となりました

(出典: NTTデータ グローバルソリューションズ「CRMとは?CRMが生まれた背景とその機能を分かりやすくご紹介」、株式会社マフィン「【2024最新版】CRMとは?顧客満足度と売上アップを実現!基礎からツール選びまで解説」)

CRMの基本機能

(1) 顧客情報の一元管理

CRMの最も基本的な機能は、顧客情報を一元管理することです:

管理できる情報:

  • 顧客の基本情報(企業名、担当者名、連絡先、役職など)
  • 購買履歴(過去にどの製品・サービスを購入したか)
  • 商談履歴(いつ・誰が・どのような提案をしたか)
  • 問い合わせ履歴(どのような問題があり、どう対応したか)
  • キャンペーン応募状況(どのマーケティング施策に反応したか)

Excel管理との違い:

  • Excelではファイルが複数に分散し、最新情報が不明確
  • CRMは常に最新の情報が一元管理され、誰でもアクセス可能
  • 検索・フィルタリングが容易で、必要な情報をすぐに見つけられる

(出典: 日立ソリューションズ「CRMとは?基本機能と特徴を知って導入目的を明確化しよう」)

(2) 商談履歴・コミュニケーション履歴の蓄積

CRMは顧客とのやり取りを時系列で記録します:

商談履歴:

  • 商談の進捗状況(見込み客、提案中、成約など)
  • 提案内容、見積金額、成約確度
  • 次回アクション(次回訪問日、フォローメール送信など)

コミュニケーション履歴:

  • メールのやり取り
  • 電話での会話内容
  • 訪問時の商談メモ
  • チャットやSNSでのやり取り(連携可能なツールの場合)

メリット:

  • 担当者が変わっても過去の経緯を把握できる
  • 顧客との約束事を忘れない
  • チーム全体で顧客の状況を共有できる

(3) データ分析とレポート機能

CRMは蓄積されたデータを分析し、レポートを作成できます:

分析できる項目:

  • 売上推移(月別、四半期別、顧客別など)
  • 商談の成約率(提案数に対する成約数の割合)
  • 顧客セグメント分析(どの業種・企業規模が優良顧客か)
  • マーケティング施策の効果測定(どのキャンペーンが成果を上げたか)

データドリブンな意思決定:

  • データに基づいて、どの顧客に注力すべきか判断できる
  • 効果的な営業戦略・マーケティング施策を立案できる
  • 経営層への報告資料を自動生成できる

(4) 他システムとの連携

CRMは他システムと連携してデータを統合管理できます:

連携可能なシステム:

  • MAツール(マーケティングオートメーション): メール配信、リードスコアリング
  • SFAツール(営業支援システム): 営業パイプライン管理(※一般的なCRMシステムにはSFA機能が内包されているオールインワン型が多い)
  • メールシステム(Gmail、Outlookなど): メールのやり取りを自動記録
  • 会計システム: 請求・入金情報の連携
  • カスタマーサポートツール: 問い合わせ対応履歴の共有

統合管理のメリット:

  • 複数のシステムにまたがるデータを一元的に把握できる
  • 手動でのデータ転記作業が不要になる
  • リアルタイムで最新情報を共有できる

(出典: 日立ソリューションズ「CRMとは?基本機能と特徴を知って導入目的を明確化しよう」)

CRM導入のメリット

(1) 営業部門のメリット

営業部門にとってのCRM導入メリットは以下の通りです:

営業活動の可視化:

  • 誰が・いつ・どの顧客にアプローチしたかが一目で分かる
  • 商談の進捗状況をリアルタイムで把握できる
  • マネージャーが営業チーム全体の状況を俯瞰できる

営業生産性の向上:

  • 顧客情報をすぐに検索でき、準備時間を短縮
  • 次回アクションをリマインドし、フォロー漏れを防止
  • 優先順位の高い顧客に注力できる

ノウハウの共有:

  • 成功事例(どのアプローチが成約につながったか)を共有できる
  • 新人営業担当者が過去の商談履歴を参考にできる

(出典: ITトレンド「CRMの導入メリットとは?導入時に注意するべきポイントも解説!」)

(2) マーケティング部門のメリット

マーケティング部門にとってのCRM導入メリットは以下の通りです:

顧客セグメント分析:

  • 顧客を属性(業種、企業規模、役職など)や行動パターンで分類できる
  • セグメント別に効果的なマーケティング施策を展開できる

キャンペーン効果測定:

  • どのキャンペーンがリード獲得につながったかを測定できる
  • ROI(投資対効果)を算出し、予算配分を最適化できる

リードの質の向上:

  • 営業部門と連携し、どのリードが成約につながったかをフィードバックできる
  • 質の高いリードを獲得するための施策改善ができる

(3) カスタマーサポート部門のメリット

カスタマーサポート部門にとってのCRM導入メリットは以下の通りです:

問い合わせ履歴の共有:

  • 過去の問い合わせ内容と対応履歴を確認できる
  • 同じ質問を繰り返さず、顧客満足度を向上できる

迅速な対応:

  • 顧客の購買履歴や契約内容をすぐに確認できる
  • 適切な対応をスピーディに提供できる

問題の早期発見:

  • 同様の問い合わせが増えている製品・サービスを特定できる
  • 製品改善や情報提供に活用できる

(4) LTV(顧客生涯価値)の最大化

CRM導入の最終目標は、LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)の最大化です:

LTVとは:

  • 1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額
  • 例: 月額1万円のサービスを5年間利用すると、LTVは60万円

LTV最大化の戦略:

  • 既存顧客との関係を深め、継続利用を促進(チャーン率の低減)
  • クロスセル・アップセル(追加購入・上位プラン移行)を提案
  • 顧客満足度を高め、リピート率を向上

CRMの役割:

  • 顧客の購買履歴や利用状況を分析し、最適なタイミングで提案できる
  • 顧客満足度を定期的に測定し、改善施策を実施できる

(出典: Hammock「CRMの必要性とは?ビジネスの成長に不可欠な顧客関係管理の基礎と導入メリット」)

CRMとSFA・MAの違い

(1) CRMとSFAの役割の違い

CRMとSFA(Sales Force Automation / 営業支援システム)は混同されがちですが、役割が異なります:

CRMの役割:

  • 顧客関係管理全般(受注以降の顧客コミュニケーション重視)
  • 経営視点で顧客情報を管理
  • 営業・マーケティング・カスタマーサポート全体で活用

SFAの役割:

  • 営業活動支援に特化(商談から受注までのプロセス重視)
  • 営業視点で商談情報を管理
  • 営業パイプライン管理、案件進捗管理、営業予測など

実務上の違い:

  • CRMは「受注以降の顧客コミュニケーション」を重視
  • SFAは「商談から受注」までのプロセスを重視

(出典: サンブリッジ「SFAとCRMの違いを徹底解説:それぞれの役割と機能の違いとは?」)

(2) CRMとMAの関係性

CRMとMA(Marketing Automation / マーケティングオートメーション)も連携して活用されます:

MAの役割:

  • リード獲得・育成を自動化
  • メール配信、リードスコアリング、シナリオ設定など
  • マーケティング部門が主に活用

CRMとの連携:

  • MAで獲得したリードをCRMに取り込み、営業が商談化
  • CRMの顧客情報をMAに連携し、セグメント別配信を実施
  • マーケティング施策の効果を営業成果と紐付けて測定

(3) オールインワン型CRMの特徴

重要なポイント:

一般的なCRMシステムにはSFA機能が内包されているオールインワン型が多いです。別々に導入する必要がない場合がほとんどです。

オールインワン型CRMの例:

  • Salesforce: CRM・SFA・MA統合
  • HubSpot: CRM・SFA・MA統合
  • Zoho CRM: CRM・SFA統合
  • Microsoft Dynamics 365: CRM・SFA・ERP統合

メリット:

  • 一つのシステムでマーケティング〜営業〜カスタマーサポートまで一元管理
  • システム間のデータ連携が不要
  • 管理コスト・運用負荷を削減

(出典: GENIEE「SFAとCRMの違いとは?どちらを導入すべきか、それぞれの役割を徹底解説」)

主要なCRMツールの紹介

(1) Salesforce:世界最大手の特徴

特徴:

  • 世界最大手のCRMベンダー(世界シェア1位)
  • オールインワン型(CRM・SFA・MA統合)
  • 高度なカスタマイズが可能

適性:

  • 中〜大規模企業(従業員100人以上)
  • 高度な分析・カスタマイズが必要な企業

料金:

  • Essentials: 月額3,000円/ユーザー〜
  • Professional: 月額9,600円/ユーザー〜
  • Enterprise: 月額19,800円/ユーザー〜

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(出典: Salesforce公式サイト)

(2) HubSpot:無料プランから始められるツール

特徴:

  • オールインワン型(CRM・SFA・MA統合)
  • 無料プランあり(基本機能のみ)
  • 使いやすいインターフェース

適性:

  • 小〜中規模企業(従業員10〜500人)
  • 初めてCRMを導入する企業
  • インバウンドマーケティング(コンテンツマーケティング)を重視する企業

料金:

  • 無料プラン: 0円(基本機能のみ)
  • Starter: 月額約2万円〜
  • Professional: 月額約10万円〜

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(出典: HubSpot公式サイト)

(3) Zoho CRM:中小企業向けの特徴

特徴:

  • コストパフォーマンスに優れたCRM
  • 日本語サポートあり
  • 無料プランあり(3ユーザーまで)

適性:

  • 小〜中規模企業(従業員10〜300人)
  • 予算を抑えたい企業
  • 日本語サポートを重視する企業

料金:

  • 無料プラン: 0円(3ユーザーまで)
  • Standard: 月額1,680円/ユーザー
  • Professional: 月額2,760円/ユーザー

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(出典: Zoho CRM公式サイト)

(4) その他の主要ツール

Microsoft Dynamics 365:

  • Microsoft 365(Teams、Outlookなど)との連携が強力
  • CRM・SFA・ERP統合
  • 中〜大規模企業向け

kintone:

  • ノーコードでカスタマイズ可能
  • 日本企業向けに使いやすい
  • 小〜中規模企業向け

複数のツールを比較検討し、無料トライアルで試すのが推奨されます。

まとめ:CRM導入の検討ポイント

CRMは顧客情報を一元管理し、顧客との良好な関係を構築・維持するための戦略とツールです。営業・マーケティング・カスタマーサポートなど顧客接点を持つ全部門が活用でき、Excel管理と比べて情報共有の効率化・データ分析・営業活動の可視化が実現できます。

CRM導入の検討ポイント:

導入前に確認すべきこと:

  • 自社の課題を明確にする(顧客情報の散在、営業活動の見える化、情報共有の効率化など)
  • CRMで達成したい目標を設定する(売上向上、営業生産性向上、顧客満足度向上など)
  • 予算と導入期間を決定する

ツール選定の基準:

  • 企業規模と予算(小規模企業はHubSpot無料プラン、Zoho CRM、中〜大規模企業はSalesforce、Microsoft Dynamics 365など)
  • 必要な機能(オールインワン型か、CRMのみか)
  • 既存システムとの連携性(メール、会計システムなど)
  • 使いやすさと情報の見やすさ(現場で定着するかが成功の鍵)

導入時の注意点:

  • 導入効果が出るまで一定期間が必要で、即効性はない
  • 短期的な成果を期待すると失敗しやすい(ROIは6ヶ月〜1年で評価するのが一般的)
  • 使いやすさと情報の見やすさが担保されないと、現場で定着せず投資が無駄になる

次のアクション:

  • 自社の課題と目標を整理する
  • 3〜5社の公式サイトで詳細を確認する(最新の料金・機能)
  • 無料トライアルで実際に操作性を試す
  • 導入実績のある企業の事例を参考にする

自社に合ったCRMで、顧客情報の一元管理と営業活動の効率化を実現し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指しましょう。

よくある質問

Q1CRMとSFAの違いは何ですか?

A1CRMは顧客関係管理全般(受注以降の顧客コミュニケーション重視)、SFAは営業活動支援に特化(商談から受注まで)です。ただし、一般的なCRMシステムにはSFA機能が内包されているオールインワン型が多く、別々に導入する必要がない場合がほとんどです。

Q2CRMは何を管理するのですか?

A2顧客の基本情報(企業名、担当者名、連絡先など)、商談履歴、購買履歴、問い合わせ内容、キャンペーン応募状況などを管理します。複数のシステムと連携してデータを一元管理できるため、常に最新の情報を共有できます。

Q3CRM導入でどんなメリットがありますか?

A3営業生産性向上、顧客満足度向上、情報共有の効率化、データに基づいた意思決定が可能になります。既存顧客との関係を深め、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。営業・マーケティング・カスタマーサポートなど顧客接点を持つ全部門が活用できます。

Q4導入してすぐに効果が出ますか?

A4一定期間の稼働が必要で、即効性はありません。導入コストがかかり、効果が出るまで時間がかかる点がデメリットです。短期的な成果を期待すると失敗しやすく、ROIは6ヶ月〜1年で評価するのが一般的です。

Q5どの部門がCRMを使うべきですか?

A5営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、顧客接点を持つ全部門が使うべきです。部門横断で共通の情報基盤として活用するのが理想で、顧客情報を一元管理することで情報共有の効率化が実現できます。

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Decisense編集部

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