営業・マーケティングのAI活用、どこから始めるべきか?
「AIで営業効率を上げたい」「顧客データを活かして成約率を高めたい」——こうした課題を抱えるB2B企業の中で、SalesforceのAI機能「Einstein(アインシュタイン)」への関心が高まっています。
しかし、「Einsteinは何ができるのか」「追加費用はいくらか」「自社のエディションで使えるのか」といった基本的な疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Salesforce Einsteinの概要・主要機能・料金体系を解説し、他CRMのAI機能との比較や導入事例を通じて、AI活用の判断材料を提供します。
この記事のポイント:
- Salesforce Einsteinは予測AIと生成AIを組み合わせたCRM向けAI機能群
- 主要機能はリードスコアリング、Einstein Copilot、Service Repliesなど
- 料金はEinstein for Salesが月額9,000円/ユーザー〜
- 利用にはEnterprise Edition以上が必要(Professional以下は利用不可)
- 導入事例ではアポ獲得率向上やACW50%削減の実績あり
Salesforce Einsteinとは?AI機能の概要と注目される背景
Salesforce Einsteinについて、歴史と位置づけ、AIの種類を解説します。
Einsteinの歴史と位置づけ(2016年発表からの進化)
Salesforce Einsteinは、2016年にSalesforceが発表したAI機能群です。世界No.1シェアを持つCRMに組み込まれたAIとして、営業・マーケティング・カスタマーサービスの各領域でデータ活用を支援します。
発表当初は予測AI(機械学習)が中心でしたが、2023年にはEinstein GPT、2024年にはEinstein Copilot Studioと進化を続け、生成AI機能が大幅に強化されています。
2024年3月には日本市場でEinstein 1 StudioおよびData Cloudの新機能が提供開始され、国内企業でも活用が進んでいます。
予測AIと生成AIの違い
Salesforce Einsteinは、予測AIと生成AIの両方を搭載しています。
予測AI(Predictive AI):
- 過去データから将来の結果を予測する
- リードスコアリング(成約確率の予測)
- 商談のクローズ予測
- 売上フォーキャスト
生成AI(Generative AI):
- 新しいコンテンツを自動生成する
- メール文面の自動作成
- カスタマーサポート返信の生成
- レポートのサマリー作成
目的に応じて予測AI・生成AIを使い分けることで、営業・マーケティング業務の効率化が可能です。
Salesforce Einsteinの主要機能と対応エディション
Einsteinが提供する主要機能と、利用に必要なエディションを解説します。
リードスコアリングで優先案件を自動特定
Einsteinのリードスコアリング機能は、見込み客の成約確率を数値化し、優先順位付けを自動化します。
主な特徴:
- CRM内の過去データ(商談履歴、行動履歴)から学習
- リードごとにスコアを付与し、優先度を可視化
- 営業リソースを高確度案件に集中配分可能
- スコアの根拠(どの要因がスコアに影響しているか)を表示
営業担当者が「どのリードに注力すべきか」を判断する際の客観的指標として活用できます。
Einstein Copilotによる自然言語CRM操作
Einstein Copilotは、自然言語でCRM操作を指示できる対話型AIアシスタントです。
できること:
- 「このリードを商談ステージに進めて」などの操作指示
- 「今週の商談サマリーを教えて」などの情報照会
- CRMデータに基づく回答生成(企業固有のコンテキストを反映)
ChatGPTのような汎用AIとの違いは、Salesforce CRM内のデータでグラウンディング(根拠付け)するため、企業固有のビジネスコンテキストに最適化されている点です。
Service Repliesでカスタマーサポート返信を自動生成
Service Repliesは、カスタマーサポートの返信文を自動生成する機能です。
主な特徴:
- 顧客からの問い合わせ内容を分析し、適切な返信を生成
- ワンクリックで送信可能(確認後に修正も可能)
- ナレッジベースや過去の対応履歴を参照して回答を生成
イーデザイン損保の事例では、Service Repliesの導入によりACW(平均後処理時間)を50%削減した実績が報告されています。
Enterprise Edition以上が必要な理由
Sales Cloud Einsteinを利用するには、Enterprise Edition以上のSalesforceライセンスが必要です。
エディション別の対応状況:
| エディション | Sales Cloud Einstein |
|---|---|
| Essentials | 利用不可 |
| Professional | 利用不可 |
| Enterprise | 利用可能 |
| Unlimited | 利用可能 |
Professional以下のエディションを利用している企業は、Einsteinを使うためにエディションアップグレードが必要になります。アップグレードコストを含めた総費用を検討することが重要です。
Salesforce Einsteinの料金体系と導入コスト
Einsteinの料金プランと、導入時に考慮すべきコストを解説します。
Einstein for Sales(月額9,000円/ユーザー)の内容
Einstein for Salesは、Sales Cloudのアドオンとして提供されるAI機能パッケージです(2024年時点の情報)。
含まれる機能:
- リードスコアリング
- 商談インサイト
- 活動キャプチャ
- フォーキャスト(売上予測)
月額9,000円/ユーザー(税抜)で、Enterprise Edition以上に追加できます。
Einstein 1 Sales(月額60,000円)の上位プラン
Einstein 1 Salesは、Sales CloudとEinstein機能が統合された上位プランです。
含まれる機能:
- Einstein for Salesの全機能
- Einstein Copilot(対話型AIアシスタント)
- 高度なAI分析機能
- Data Cloud連携
月額60,000円/ユーザー(税抜)で、Einstein Copilotをフル活用したい企業向けです。
従量課金(Agentforce:1会話240円)の注意点
Agentforce(旧Einstein Service Agent)は、自律型AIエージェントとして従量課金で提供されます。
料金モデル:
- 1会話あたり240円(2024年時点)
- チャットボット対応を自動化する際に利用
- 利用量に応じてコストが変動
従量課金のため、利用量が多い場合はコストが想定以上になる可能性があります。導入前に月間の会話数を見積もり、予算を確保することが推奨されます。
※料金は変更される可能性があります。最新情報はSalesforce公式サイトでご確認ください。
導入メリット・デメリットと他CRM AIツールとの比較
Einstein導入のメリット・デメリットと、競合CRMのAI機能との違いを解説します。
Salesforce既存ユーザーにとっての統合性メリット
主なメリット:
- シームレスな統合: 既存のSalesforceデータをそのまま活用
- 追加構築不要: API連携や外部ツール導入なしでAI機能を利用
- データのグラウンディング: 企業固有のCRMデータに基づく回答生成
- 継続的な進化: Salesforceのアップデートに合わせて機能が拡張
すでにSalesforceを導入している企業にとっては、新たなAIツールを別途導入するよりも、統合性のメリットが大きいケースが多いです。
データ品質・量に依存するデメリット
主なデメリット:
- データ品質への依存: AIの精度はCRM内のデータ品質に左右される
- 導入初期の学習期間: 十分なデータが蓄積されるまで精度が安定しない
- エディション制約: Enterprise Edition以上が必要
- 追加コスト: アドオン費用が月額9,000円/ユーザー〜発生
特にデータ品質については、導入前にCRM内のデータクレンジング(重複排除、不備の修正)を行うことが成功の鍵です。
HubSpot AI・Dynamics 365 AIとの機能比較
他の主要CRMが提供するAI機能との比較です。
| 比較項目 | Salesforce Einstein | HubSpot AI | Dynamics 365 AI |
|---|---|---|---|
| 予測AI | リードスコアリング、商談予測 | リードスコアリング | リードスコアリング、需要予測 |
| 生成AI | Einstein Copilot、Service Replies | AI Content Assistant | Copilot for Dynamics 365 |
| 対応エディション | Enterprise以上 | Professional以上 | 上位エディション |
| 特徴 | CRM統合の深さ | 使いやすさ | Microsoft製品連携 |
選定のポイント:
- Salesforce既存ユーザー: Einsteinが統合性で有利
- HubSpot既存ユーザー: HubSpot AIがシームレス
- Microsoft製品を多用する企業: Dynamics 365 AIがOffice連携で有利
CRMのAI機能は、どのCRMを主軸にしているかで最適解が変わります。AIツール単体で比較するよりも、既存のCRM環境との統合性を重視することが推奨されます。
導入事例と効果測定のポイント
実際のEinstein導入事例と、ROI評価の考え方を解説します。
サンレディース社:3週間導入でアポ獲得率5.1%→6.5%
サンレディース社は、Einstein導入を3週間で完了し、営業効率の向上を実現しました。
導入のポイント:
- 「たった一人の先駆者」が推進役として導入をリード
- まずは特定業務(リードスコアリング)に絞って導入
- 小さく始めて、効果を確認しながら拡大
成果:
- アポイント獲得率が5.1%から6.5%に向上(+1.4pt)
- 営業担当者が優先度の高いリードに集中できるように
イーデザイン損保:ACW(平均後処理時間)50%削減
イーデザイン損保は、コンタクトセンターでEinsteinを活用し、顧客対応効率を大幅に改善しました。
導入のポイント:
- Service Repliesで返信文を自動生成
- オペレーターの後処理作業を効率化
成果:
- ACW(平均後処理時間)を50%削減
- オペレーターがより多くの顧客対応に注力可能に
ROI評価の考え方と効果測定指標
Einstein導入のROIを評価する際は、以下の指標が参考になります。
営業領域の指標:
- リードの成約率変化
- 商談サイクルの短縮
- 営業担当者あたりの商談数
カスタマーサービス領域の指標:
- ACW(平均後処理時間)の削減
- 初回解決率の向上
- 顧客満足度(CSAT)の変化
共通の考慮事項:
- 導入初期(3〜6ヶ月)はデータ蓄積・学習期間
- 効果測定は6ヶ月〜1年のスパンで評価
- 導入前のベースライン数値を記録しておく
まとめ:Einstein導入に向いている企業と次のステップ
Salesforce Einsteinは、予測AIと生成AIを組み合わせたCRM向けAI機能群として、営業・マーケティング・カスタマーサービスの効率化を支援します。
Einstein導入に向いている企業:
- すでにSalesforceを導入しており、Enterprise Edition以上を利用している
- CRM内に一定量のデータ(商談履歴、リード情報)が蓄積されている
- 営業効率やカスタマーサービス品質の向上を目指している
- AI活用に月額9,000円/ユーザー〜の追加投資が可能
次のステップ:
- Salesforce公式サイトで自社エディションの対応状況を確認
- 導入前にCRMデータのクレンジング(重複排除、不備修正)を実施
- まずは特定業務(リードスコアリングなど)に絞って小さく始める
- 6ヶ月〜1年のスパンで効果を測定し、拡大を検討
※この記事は2025年12月時点の情報に基づいています。料金・機能の最新情報はSalesforce公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q: Salesforce Einsteinの導入にどのくらいの期間がかかりますか?
A: 最短3週間から導入可能です。まずは特定業務(リードスコアリングなど)に絞って小さく始めることが成功の鍵です。全社展開には3〜6ヶ月程度かかるケースが一般的です。
Q: Salesforce Einsteinの追加費用はいくらですか?
A: Einstein for Salesは月額9,000円/ユーザー(税抜)、上位プランのEinstein 1 Salesは月額60,000円/ユーザーです。従量課金のAgentforceは1会話240円です。料金は変更される可能性があるため、公式サイトで最新情報をご確認ください。
Q: Salesforce EinsteinとChatGPTの違いは何ですか?
A: EinsteinはSalesforce CRM内のデータでグラウンディング(根拠付け)するため、企業固有のビジネスコンテキストに最適化されています。ChatGPTは汎用的な知識ベースに基づく回答を生成します。企業のCRMデータを活用した回答が必要な場合はEinsteinが適しています。
Q: Professional EditionでもSalesforce Einsteinは使えますか?
A: Sales Cloud EinsteinはEnterprise Edition以上が必要です。Professional以下のエディションを利用している場合は、エディションアップグレードが必要になります。アップグレードコストを含めた総費用を検討してください。
