業務が属人化して、誰も全体を把握できない…
B2B SaaS企業の経営企画・オペレーション・CS担当者の多くが、業務の標準化・効率化・自動化に課題を抱えています。「特定の担当者しか業務を処理できない」「業務プロセスが複雑でボトルネックが見えない」「マニュアルがなく、新人の育成に時間がかかる」といった悩みは尽きません。
オペレーション業務を適切に設計し、改善することで、業務品質の均一化とコスト削減を実現できます。この記事では、オペレーション業務の基礎知識から種類、効率化手法、改善ステップまで、実務的な観点で解説します。
この記事のポイント:
- オペレーション業務は企業の日常的な運営に必要な定型業務や管理業務の総称
- バックオフィス(経理・人事・総務)とフロントオフィス(営業サポート・CS)に分類される
- 属人化防止、業務プロセス可視化、標準化、ITツール・RPA活用が効率化の鍵
- KPIを設定して定量的に業務効率を測定し、継続的な改善サイクルを回す
- 経済産業省DXレポート2024では、業務デジタル化とプロセス改革の重要性が指摘されている
1. オペレーション業務とは?定義と企業における役割
(1) オペレーション業務の定義
オペレーション業務とは、企業の日常的な運営に必要な定型業務や管理業務の総称です。具体的には、経理、人事、総務、営業サポート、カスタマーサポート(CS)、製造管理など、企業活動を支える幅広い業務を指します。
オペレーション業務の特徴:
- 定型的: 一定のルールや手順に従って処理される
- 反復的: 日次・週次・月次など、定期的に繰り返される
- 支援的: 企業の主要なビジネス(営業・開発など)を支える
カオナビHRテクノロジー総研の調査では、オペレーション業務の標準化により、属人化を防ぎ業務品質を均一化できると報告されています。
(2) 企業におけるオペレーション業務の重要性
オペレーション業務は、企業の競争力を左右する重要な要素です。以下の理由から、適切な管理と改善が求められます。
重要性:
- 業務の継続性: 担当者が不在でも業務が止まらない体制を構築
- コスト削減: 無駄な業務や重複作業を削減し、人的リソースを最適化
- 品質の均一化: 標準化により、誰が担当しても一定の品質を維持
- スケーラビリティ: 事業拡大に応じて、業務を効率的にスケールできる
経済産業省の「DXレポート2024」では、企業のデジタル化と業務プロセス改革の実態と課題が報告されており、オペレーション改革の重要性が強調されています。
2. オペレーション業務の種類とバックオフィスとの違い
(1) バックオフィス業務(経理・人事・総務)
バックオフィスとは、経理・人事・総務など、間接部門の業務全般を指します。顧客と直接接触しない業務が中心です。
主なバックオフィス業務:
- 経理: 請求書発行、入金管理、月次決算、経費精算
- 人事: 採用、労務管理、給与計算、勤怠管理
- 総務: オフィス管理、備品発注、社内規程整備
特徴:
- 定型的で反復性が高い
- 法令遵守(コンプライアンス)が重要
- ITツールやRPAによる自動化が進んでいる
(2) フロントオフィス業務(営業サポート・CS)
フロントオフィスとは、営業サポート、カスタマーサポート(CS)など、顧客と直接接触する業務を指します。
主なフロントオフィス業務:
- 営業サポート: 見積書作成、契約書管理、営業データ分析
- カスタマーサポート(CS): 問い合わせ対応、トラブルシューティング、満足度調査
特徴:
- 顧客満足度に直結する
- 柔軟な対応が求められる(定型化が難しい場合もある)
- CRMツールやヘルプデスクツールで効率化が可能
(3) SaaS企業特有のオペレーション業務(オンボーディング・サポート)
B2B SaaS企業では、以下のような特有のオペレーション業務があります。
SaaS特有の業務:
- オンボーディング: 新規顧客の初期設定・導入支援
- テクニカルサポート: 製品の技術的な問い合わせ対応
- プロダクト分析: ユーザー行動データの分析、チャーン(解約)防止
- アップセル・クロスセル: 既存顧客へのプラン提案
特徴:
- 継続的な顧客接点があり、オペレーションの品質が解約率(チャーンレート)に直結
- データドリブンな業務設計が重要
- BizOps(ビジネスオペレーション)やRevOps(レベニューオペレーション)などの新しい組織設計が導入されている
3. オペレーション業務の課題と改善の必要性
(1) 属人化による業務の停滞リスク
属人化とは、特定の個人のみが業務を遂行でき、他者が代替できない状態を指します。
属人化のリスク:
- 担当者が不在の場合、業務が止まる
- 引き継ぎが困難で、退職時に業務が継続できない
- 特定の担当者に業務が集中し、負担が偏る
対策:
- 業務プロセスをフロー図で可視化
- マニュアル化とナレッジ共有
- 複数名での業務ローテーション
(2) 非効率なプロセスによるコスト増大
業務プロセスが整備されていない場合、以下のような非効率が発生します。
非効率の例:
- 重複作業(同じデータを複数のシステムに手入力)
- 無駄な承認フロー(形骸化した承認ステップ)
- 不要な会議や報告業務
対策:
- 業務プロセスを可視化し、ボトルネックや無駄を特定
- 不要なステップを削減
- ITツールで業務を統合・自動化
野村総合研究所の調査では、業務プロセス最適化により、コスト削減と品質向上を同時に実現できると報告されています。
(3) 標準化の欠如と品質のばらつき
業務が標準化されていない場合、担当者ごとに処理方法が異なり、品質がばらつきます。
標準化の欠如によるリスク:
- 顧客対応の品質が担当者により異なる
- ミスや漏れが発生しやすい
- 新人の育成に時間がかかる
対策:
- 業務手順をマニュアル化
- チェックリストやテンプレートを作成
- KPIを設定して品質を定量的に測定
4. オペレーション業務効率化の具体的手法
(1) 業務プロセスの可視化と分析
効率化の第一歩は、現状の業務プロセスを可視化することです。
可視化の手法:
- 業務フロー図の作成: 業務の開始から完了までの流れを図式化
- 業務量の測定: 各タスクにかかる時間を記録
- ボトルネックの特定: 業務が滞っている箇所を明確化
ツール例:
- Miro、Lucidchart(フロー図作成)
- Excel、Google スプレッドシート(業務量測定)
カオナビHRテクノロジー総研の調査では、業務プロセスを可視化することで、無駄やボトルネックを特定し、改善策を立案しやすくなると報告されています。
(2) 標準化とマニュアル化
業務を標準化し、マニュアルを作成することで、属人化を防ぎます。
標準化の手順:
- ベストプラクティスの特定: 最も効率的な処理方法を確認
- 手順書の作成: ステップごとに処理方法を記載
- チェックリストの作成: ミスや漏れを防ぐためのチェック項目をリスト化
マニュアル化のポイント:
- 画面キャプチャを活用し、視覚的に分かりやすく
- FAQ形式でよくある質問をまとめる
- クラウドで共有し、常に最新版にアクセスできるようにする
(3) ITツール・RPAによる自動化
ITツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用することで、定型業務を自動化できます。
自動化の対象業務:
- データ入力・転記
- レポート作成
- 請求書発行
- メール送信
主要なRPAツール:
- UiPath: エンタープライズ向け、高機能
- WinActor: 国産、日本語対応に強い
- Microsoft Power Automate: Office 365との連携が容易
UiPath公式の調査では、RPA導入により月間数十〜数百時間の工数削減が期待できると報告されています。ただし、導入前に業務の標準化が必須であり、クラウド型RPAなら月額数万円から導入可能です。
(4) KPI設定と効果測定
業務効率化の効果を定量的に測定するため、KPI(重要業績評価指標)を設定します。
オペレーション業務の主要KPI:
- 処理時間: 1件あたりの業務処理時間
- 処理件数: 一定期間内の処理件数
- エラー率: ミスや漏れの発生率
- コスト: 業務にかかる人件費・システム費用
- 顧客満足度: CSやサポート業務の満足度スコア
効果測定の手順:
- 改善前のKPIを測定(ベースライン)
- 改善施策を実行
- 改善後のKPIを測定
- 効果を評価し、PDCAサイクルを回す
5. オペレーション業務改善の実践ステップ
(1) 現状把握と課題特定
ステップ1: 業務の洗い出し
- 現在行っているすべてのオペレーション業務をリストアップ
- 業務ごとに担当者、頻度、所要時間を記録
ステップ2: 課題の特定
- 属人化している業務はどれか
- 時間がかかりすぎている業務はどれか
- エラーが多発している業務はどれか
(2) 改善優先順位の設定
改善すべき業務の優先順位を設定します。
優先順位の判断基準:
- 影響度(大): 業務量が多い、コストが高い、顧客満足度に直結
- 実現性(高): 改善が容易、短期間で効果が出る
優先度マトリクス: | 影響度\実現性 | 高 | 低 | |--------------|----|----|| | 大 | 最優先 | 中優先 | | 小 | 低優先 | 後回し |
月次決算や請求書発行など、定型的で頻度の高い業務が効果を出しやすい傾向があります。
(3) 改善施策の実行とPDCAサイクル
ステップ3: 改善施策の立案
- 標準化・マニュアル化
- ITツール・RPAの導入
- 業務フローの見直し
ステップ4: 小規模で試験導入
- まず1つの業務や部門で試験導入
- フィードバックを収集し、改善
ステップ5: 全社展開
- 成功事例を横展開
- 定期的にKPIを測定し、PDCAサイクルを回す
(4) 外部委託(BPO)の検討
**BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)**とは、業務プロセスを外部企業に委託することです。
BPOが有効な業務:
- 経理(記帳代行、給与計算)
- 人事(採用代行、労務管理)
- カスタマーサポート(一次対応、FAQ対応)
BPOのメリット:
- 社内のコア業務に人的リソースを集中できる
- 専門性の高いサービスを受けられる
- 固定費を変動費化できる
BPOのデメリット:
- 情報管理のリスク(機密情報の取り扱い)
- コミュニケーションコスト(指示・確認の手間)
- ノウハウの社内蓄積が難しい
野村総合研究所の調査では、経理・人事など定型業務でBPOの効果が高いと報告されています。ただし、情報管理やコミュニケーションコストを考慮する必要があります。
6. まとめ:成功するオペレーション改善のポイント
オペレーション業務の改善では、まず業務プロセスを可視化し、属人化・非効率・品質のばらつきを特定することが重要です。標準化、ITツール・RPA活用、KPI設定により、業務品質の均一化とコスト削減を実現できます。
次のアクション:
- 現在のオペレーション業務をリストアップし、課題を特定する
- 属人化しやすい業務の可視化・マニュアル化から始める
- 定型的で頻度の高い業務(月次決算、請求書発行など)を優先的に改善
- KPIを設定し、効果測定しながらPDCAサイクルを回す
- 必要に応じて外部委託(BPO)やRPA導入を検討
オペレーション業務の改善により、業務の継続性、コスト削減、品質の均一化、スケーラビリティを実現し、企業の競争力を高めましょう。
