目標を立てたものの、達成度を測る指標が曖昧で困っていませんか?
BtoB企業の経営やマーケティング、営業の現場では、「売上を伸ばす」「顧客満足度を向上させる」といった目標を掲げることがあります。しかし、「どこまで進んでいるのか」「何を改善すればいいのか」が分かりにくいと、目標達成は遠のいてしまいます。
この記事では、目標達成の進捗を測定するための指標「KPI」の設定方法を、SMARTの法則や部門別の具体例を交えて実践的に解説します。
この記事のポイント:
- KPIは目標達成の過程を評価する中間的な指標、KGIは最終的な結果を評価する目標指標
- SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)に基づいて設定する
- 設定期間は1ヵ月や3ヵ月など月単位が一般的、KGIよりも短く設定する
- シンプルで誰が見ても理解できるKPIが形骸化を防ぐ
- マーケ・営業・CS・開発など部門ごとに適したKPIがある
1. KPI目標の重要性と効果的な設定が求められる理由
(1) 目標達成の進捗を可視化する
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、最終目標達成の進捗を測定するための中間的な指標です。
KPIがない場合の問題:
- 目標達成までの距離が分からない
- どの施策が効果的か判断できない
- チーム内で進捗の認識がずれる
KPIがある場合のメリット:
- 目標までの進捗が数値で把握できる
- 改善すべきポイントが明確になる
- チーム全体で共通の進捗認識を持てる
(2) チーム全体の方向性を揃える
KPIを設定することで、チームメンバー全員が「何を目指すべきか」を共有できます。
例:営業チームの場合
- KGI(最終目標):四半期売上3,000万円
- KPI(中間指標):月間商談数50件、受注率20%
このように具体的な数値目標を設定することで、営業担当者一人ひとりが「月間何件の商談を獲得すればいいか」が明確になります。
(3) 適切なKPI設定が組織の成果を左右する
KPIの設定が不適切だと、逆効果になる場合があります。
不適切なKPI設定の例:
- 測定が難しい指標:「顧客の喜び」など数値化しにくい
- 達成困難な目標:非現実的な数値で従業員の意欲低下につながる
- KGIとの整合性がない:KPI達成してもKGI達成につながらない
※出典:NTTドコモビジネス「KPI管理とは?概要や基本手順、成功のポイントなど紹介」
2. KPIとKGIの違い・相互関係を理解する
(1) KPIとKGIの定義
KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標 最終目標達成の進捗を測定するための中間的な指標です。
KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標 企業やチームが掲げる最終的なゴールを数値化した指標です。
※出典:freee「KPIとは?目標管理を効果的にする重要指標をわかりやすく解説」
(2) KPIは過程、KGIは結果
KPIとKGIの違いは、「過程を評価するか、結果を評価するか」です。
KPI:過程を評価
- 例:月間リード数100件、商談数50件、受注率20%
- 目的:最終目標達成に向けた進捗を測定
KGI:結果を評価
- 例:四半期売上3,000万円、年間売上1億円
- 目的:最終的なゴールの達成を測定
※出典:ジンジャー「KGIとKPIの違いは?それぞれの意味をわかりやすく解説」
(3) KPIツリーでKGIとKPIを整理する
KPIツリーは、KGIから始まり、それを達成するための複数のKPIを階層的に整理した図です。
例:Webマーケティングの場合
KGI: 四半期売上3,000万円
├─ KPI1: 月間リード数100件
│ ├─ KPI1-1: Webサイト訪問者数10,000人
│ └─ KPI1-2: コンバージョン率1%
└─ KPI2: 受注率20%
├─ KPI2-1: 商談化率50%
└─ KPI2-2: 商談成約率40%
このように階層的に整理することで、KGI達成に必要なKPIが明確になります。
(4) KSF/CSF(重要成功要因)との関係
KSF/CSF(Key Success Factor/Critical Success Factor:重要成功要因)は、目標達成のために重要な要因です。
KSFとKPIの関係:
- KGI(最終目標)を設定
- KSF(成功要因)を特定:「何をすればKGI達成できるか」
- KPI(測定指標)を設定:「KSFの進捗をどう測るか」
例:
- KGI:四半期売上3,000万円
- KSF:新規リードの獲得、商談化率の向上
- KPI:月間リード数100件、商談化率50%
3. KPI目標の設定手順(SMARTの法則)
KPI設定には、SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を活用すると効果的です。
※出典:mtame「【わかりやすく解説】KPIとKGIとは?Webマーケティング分野での設定方法や決め方など」
(1) Specific:具体的な指標を選ぶ
KPIは、誰が見ても一目で理解できる具体的な指標を選びます。
悪い例(曖昧):
- 「顧客満足度を向上させる」
- 「営業活動を強化する」
良い例(具体的):
- 「顧客満足度(NPS)を50→60に向上させる」
- 「月間商談数を30件→50件に増やす」
(2) Measurable:測定可能な数値目標にする
KPIは、客観的に測定可能な数値目標にします。
測定可能な指標の例:
- リード数、商談数、受注数
- コンバージョン率、受注率
- 顧客満足度(NPS)、継続率
測定困難な指標(避けるべき):
- 「顧客の喜び」「チームの士気」
(3) Achievable:達成可能な現実的な目標にする
過去の実績や業界平均を参考に、達成可能な現実的な目標を設定します。
目標値の設定根拠:
- 過去実績ベース:前年同期比+10%、前月比+5%など
- 業界平均ベース:業界平均を参考に設定
- 戦略的ストレッチ:挑戦的だが達成可能な目標
注意: 達成困難な目標は従業員の意欲低下につながる可能性があります。
※出典:Sansan「KPIとは?意味や目的、設定手順などをわかりやすく解説」
(4) Relevant:KGIとの関連性を確認する
KPI達成がKGI達成につながるか、整合性を確認します。
整合性チェックの例:
- KGI:四半期売上3,000万円
- KPI候補1:月間リード数100件 → ✅ KGI達成に直結
- KPI候補2:Webサイトデザイン更新回数 → ❌ KGI達成との関連性が薄い
(5) Time-bound:期限を設定する(月単位が一般的)
KPIの設定期間は、多くの場合1ヵ月や3ヵ月など月単位で設定します。KGIよりも短く設定するのが一般的です。
設定期間の目安:
- KPI:1ヵ月、3ヵ月(月単位)
- KGI:四半期、半期、1年(四半期〜年単位)
期間設定の注意点:
- 短すぎると結果が不安定になる
- 長すぎると進捗評価が難しくなる
4. 部門別・職種別のKPI設定例
(1) マーケティング部門のKPI(リード数、コンバージョン率等)
マーケティング部門では、リード獲得と育成に関するKPIを設定します。
主要KPI:
- 月間リード数:Webサイト・展示会・ウェビナー等で獲得したリード数
- コンバージョン率:Webサイト訪問者のうち、リードに転換した割合
- MQL(Marketing Qualified Lead)数:マーケティング部門が育成した質の高いリード数
- SQL(Sales Qualified Lead)数:営業部門に引き渡したリード数
具体例:
- KGI:四半期MQL数300件
- KPI:月間リード数1,000件、コンバージョン率3%、MQL転換率30%
(2) 営業部門のKPI(商談数、受注率、受注単価等)
営業部門では、商談化と受注に関するKPIを設定します。
主要KPI:
- 月間商談数:新規商談の件数
- 商談化率:リードのうち商談に進んだ割合
- 受注率:商談のうち受注に至った割合
- 受注単価:1件あたりの受注金額
- 営業サイクル:初回接触から受注までの平均日数
具体例:
- KGI:四半期売上3,000万円
- KPI:月間商談数50件、受注率20%、受注単価100万円
※出典:Manageboard「KPI目標設定の具体例【業種別・職種別】|手順やポイントも解説」(2025年)
(3) カスタマーサクセス・サポート部門のKPI(継続率、NPS等)
カスタマーサクセス・サポート部門では、顧客満足度と継続率に関するKPIを設定します。
主要KPI:
- 継続率(リテンション率):契約更新した顧客の割合
- 解約率(チャーンレート):契約解約した顧客の割合
- NPS(Net Promoter Score):顧客の推奨意向を測る指標
- サポート対応時間:問い合わせ対応の平均時間
- 顧客満足度(CSAT):サポート対応への満足度
具体例:
- KGI:年間継続率95%
- KPI:四半期NPS 60、サポート対応時間24時間以内、顧客満足度85%
(4) 開発・プロダクト部門のKPI(リリース頻度、バグ件数等)
開発・プロダクト部門では、開発スピードと品質に関するKPIを設定します。
主要KPI:
- リリース頻度:新機能のリリース回数
- 開発速度(ベロシティ):スプリントごとの完了タスク数
- バグ件数:本番環境で発生したバグの件数
- 機能利用率:リリースした機能が実際に利用された割合
- 技術的負債の削減率:リファクタリングによる改善率
具体例:
- KGI:年間主要機能リリース12件
- KPI:月間リリース頻度1回、本番バグ件数5件以下、機能利用率30%以上
5. KPI運用とモニタリングのポイント
(1) 定期的な振り返りと進捗確認
KPIは設定して終わりではなく、定期的に振り返りながら成果や改善点を把握する必要があります。
振り返りの頻度:
- 週次:進捗確認、短期的な調整
- 月次:KPI達成度評価、改善策の検討
- 四半期:KGI達成度評価、KPIの見直し
(2) 形骸化させないシンプルな設計
シンプルで誰が見ても一目で理解できるKPIを設定することが重要です。
シンプルなKPI設計のポイント:
- KPI数は3〜5個程度に絞る
- 測定が容易な指標を選ぶ
- ダッシュボードで可視化する
注意: 追うべき指標が多すぎたり分かりにくいと、従業員の意欲低下につながる可能性があります。
(3) 目標未達時の軌道修正と目標見直し
目標到達が困難な場合は、固執せず軌道修正して目標を見直す必要があります。
見直しのタイミング:
- 外部環境の変化(市場・競合・規制等)
- 内部リソースの変化(人員・予算等)
- KPIとKGIの整合性が取れていない
(4) KPI管理ツールの活用
KPI管理ツール(BIツール、ダッシュボードツール等)を活用することで、効率的に運用できます。
主な機能:
- リアルタイムでのKPI可視化
- 自動レポート作成
- アラート通知
注意: ツールの機能や料金は変更の可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認してください。
(5) MBO・OKRとの使い分け
多くの企業が、MBO、OKR、KPIなど複数の目標管理手法を組み合わせて活用しています。
MBO(Management by Objectives): 組織と個人の目標を連動させる目標管理制度です。個人の業績評価に活用されることが多いです。
OKR(Objectives and Key Results): 目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)を合わせて管理するフレームワークです。挑戦的な目標設定が特徴です。
KPI: 目標達成の進捗を測定する指標です。MBOやOKRと組み合わせて活用されます。
※出典:カオナビ「KPIとは? 意味や指標の具体例、設定方法、KGIとの違いを簡単に」
6. まとめ:形骸化させないKPI運用に向けて
KPI(重要業績評価指標)は、最終目標達成の進捗を測定するための中間的な指標です。SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)に基づいて設定し、シンプルで誰が見ても理解できる指標を選ぶことが重要です。
マーケティング、営業、カスタマーサクセス、開発など、部門ごとに適したKPIがあります。定期的に振り返りながら進捗を確認し、目標未達時は軌道修正して柔軟に対応しましょう。
次のアクション:
- 自社のKGI(最終目標)を明確にする
- KGI達成に必要なKSF(重要成功要因)を特定する
- SMART原則に基づいてKPIを設定する(3〜5個程度に絞る)
- KPIツリーを作成し、KGIとKPIの整合性を確認する
- 定期的な振り返りの仕組みを作り、進捗を可視化する
KPI目標を効果的に設定・運用し、組織の成果最大化を目指しましょう。
※この記事は2025年12月時点の情報です。最新の目標管理手法やツールについては、各専門メディアや公式サイトをご確認ください。
