エンゲージメントとは?ビジネスでの意味を理解する
「エンゲージメントって、よく聞くけれど、具体的にどういう意味なんだろう?」
B2B SaaS企業のマーケティング・カスタマーサクセス・人事担当者の中には、顧客エンゲージメントや従業員エンゲージメントという言葉を耳にしても、その具体的な意味や測定方法、向上施策がよくわからず悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
この記事では、エンゲージメントの基本的な意味から、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの違い、測定方法、向上施策まで体系的に解説します。
この記事のポイント:
- エンゲージメントとは「深いつながりを持った関係性」を示す言葉
- ビジネスでは従業員エンゲージメント(企業と従業員)と顧客エンゲージメント(企業と顧客)の2種類がある
- 従業員エンゲージメントは理解度・共感度・行動意欲の3要素で構成される
- エンゲージメント測定には総合指標・レベル指標・ドライバー指標を活用
- 向上施策は継続的な取り組みが必要で、短期的な成果を求めると逆効果になる可能性がある
(1) エンゲージメントの定義
エンゲージメント(Engagement)とは、本来「深いつながりを持った関係性」や「約束」「契約」を意味する英語です。
ビジネスの文脈では、企業と個人(従業員や顧客)との間に生まれる強い結びつきや信頼関係を指す言葉として使われています。
(2) ビジネスにおける2つのエンゲージメント(従業員・顧客)
ビジネスにおいて、エンゲージメントは主に2つの意味で使われます。
①従業員エンゲージメント(Employee Engagement):
- 従業員が企業の方向性に共感し、自発的に会社に貢献したいと思う意欲のこと
- 企業と従業員の深い結びつきを示す
②顧客エンゲージメント(Customer Engagement):
- 企業と顧客との間に生まれる信頼性や絆
- 長期間にわたって顧客と親密な関係性を築き上げること
この記事では、この2つのエンゲージメントについて詳しく解説します。
(3) なぜ今エンゲージメントが注目されているのか
エンゲージメントが注目される理由は、生産性向上、離職率低下、売上・収益アップに直結するためです。
エンゲージメントが高いことのメリット:
- 従業員エンゲージメント: 業務への能動的取り組み、モチベーション向上、離職率低下
- 顧客エンゲージメント: 顧客ロイヤリティ向上、リピート率増加、口コミによる新規顧客獲得
2024年のGallupメタ分析では、上位25%のビジネスユニットは離職率が51%低いことが判明しており、エンゲージメントの高さがビジネス成果に直結することが実証されています。
エンゲージメントの基礎知識
(1) エンゲージメントと従業員満足度の違い
エンゲージメントと従業員満足度は、しばしば混同されますが、異なる概念です。
従業員満足度:
- 従業員が仕事や職場環境にどれだけ満足しているかを示す指標
- 受動的な状態(与えられた環境に満足している)
従業員エンゲージメント:
- 従業員が企業に対して自発的に貢献したいと思う意欲
- 能動的な状態(自ら進んで貢献しようとする)
重要な違い: 満足度が高くてもエンゲージメントが低い場合があります。例えば、給料や福利厚生には満足しているが、会社の方向性に共感せず、最低限の仕事しかしない状態です。
(2) エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い
ワークエンゲージメントは、エンゲージメントの一種ですが、焦点が異なります。
ワークエンゲージメント:
- 業務内容に対するエンゲージメント
- 仕事にポジティブな感情を持ち、やる気や熱意を感じながら業務に取り組めている状態
従業員エンゲージメント:
- 企業(組織)に対するエンゲージメント
- 企業の方向性への共感と自発的な貢献意欲
ワークエンゲージメントは「仕事そのもの」、従業員エンゲージメントは「企業への帰属意識」に焦点が当たっています。
(3) B2B SaaS企業におけるエンゲージメントの重要性
B2B SaaS企業では、エンゲージメントが特に重要です。
従業員エンゲージメントの重要性:
- カスタマーサクセスチームの高いモチベーションが顧客満足度に直結
- プロダクト開発チームの自発的貢献が製品改善スピードを加速
顧客エンゲージメントの重要性:
- SaaSはサブスクリプションモデルのため、顧客の継続利用が収益の要
- 顧客エンゲージメントが高いと解約率(Churn Rate)が低下し、LTV(顧客生涯価値)が向上
従業員エンゲージメント:企業と従業員の深い結びつき
(1) 従業員エンゲージメントの定義と構成要素(理解度・共感度・行動意欲)
従業員エンゲージメントは、3つの要素で構成されます。
①理解度(Understanding):
- 企業の方向性やビジョンを理解し支持する態度
- 会社が何を目指しているのかを理解している
②共感度(Affection):
- 組織や共に働く従業員に対して誇りや愛着を持つ度合い
- 「この会社で働けて良かった」と感じる
③行動意欲(Commitment):
- 企業の成功に向け自発的に貢献しようとする意欲
- 「会社のために何かしたい」と思う
従業員エンゲージメントを向上させるには、これら3つの要素をバランスよく高めることが重要です。
(2) 従業員エンゲージメントが高い企業のメリット
従業員エンゲージメントが高い企業には、以下のメリットがあります。
メリット:
- 生産性向上: 能動的に業務に取り組むため、業務効率が上がる
- 離職率低下: 会社への愛着が強いため、離職率が低下(2024年Gallup調査: 上位25%は離職率が51%低い)
- 顧客満足度向上: モチベーションの高い従業員が質の高いサービスを提供
- イノベーション促進: 自発的な改善提案や新しいアイデアが生まれやすい
- 採用力向上: 従業員が会社を推奨し、優秀な人材が集まりやすくなる
(3) 従業員エンゲージメントの測定方法(パルスサーベイ・センサス)
従業員エンゲージメントは、以下の方法で測定します。
①パルスサーベイ(Pulse Survey):
- 短いサイクル(月次・四半期など)で実施する簡易的なアンケート調査
- 5〜10問程度の質問で、短時間で回答可能
- 変化をリアルタイムで追跡できる
②センサス(Census):
- 全数調査。従業員全員を対象としたエンゲージメント調査
- 年1〜2回実施
- 詳細な分析が可能
測定時の注意点:
- 継続的に同じ手法で測定する(測定手法を変えると比較が困難)
- 匿名性を担保する(本音を引き出すため)
- 結果を基にアクションを起こす(測定だけでは意味がない)
(4) 従業員エンゲージメントを向上させる7つの施策
従業員エンゲージメントを向上させるための効果的な施策は以下の通りです。
①企業理念・ビジョンの浸透:
- 定期的な社内コミュニケーションで理念を共有
- 経営層からのメッセージ発信
②適切な評価・報酬制度:
- 成果を適切に評価し、フィードバックする
- 貢献度に応じた報酬設定
③キャリア開発支援:
- 研修プログラムの提供
- キャリアパスの明確化
④働きやすい職場環境の整備:
- リモートワーク・フレックスタイム制度
- 福利厚生の充実
⑤コミュニケーションの活性化:
- 1on1ミーティングの実施
- チームビルディング活動
⑥権限委譲と裁量の付与:
- 従業員に意思決定の権限を与える
- 自律的に働ける環境づくり
⑦定期的なフィードバック:
- パルスサーベイの結果共有
- 改善施策の実施と進捗報告
顧客エンゲージメント:企業と顧客の信頼関係構築
(1) 顧客エンゲージメントの定義とメリット
顧客エンゲージメントとは、企業と顧客との間に生まれる信頼性や絆を指します。長期間にわたって顧客と親密な関係性を築き上げることを目指します。
顧客エンゲージメントが高い顧客の特徴:
- 企業や製品に対して積極的に口コミを発信
- リピート購入率が高い
- アップセル・クロスセルに前向き
- 解約率(Churn Rate)が低い
メリット:
- 顧客ロイヤリティ向上: 長期的な関係構築
- LTV(顧客生涯価値)向上: 継続利用による収益増加
- 口コミによる新規顧客獲得: 紹介・推奨による顧客拡大
- カスタマーサクセスコスト削減: 自律的に製品を活用してくれる
(2) SaaSビジネスにおける顧客エンゲージメントの重要性
SaaSビジネスでは、顧客エンゲージメントが特に重要です。
SaaSの特性:
- サブスクリプションモデルのため、顧客の継続利用が収益の要
- 初期獲得コスト(CAC)が高く、継続利用で回収するモデル
- 解約(Churn)が最大のリスク
顧客エンゲージメントの役割:
- 製品への愛着を高め、解約を防ぐ
- 使用頻度・活用度を向上させ、価値を実感してもらう
- コミュニティやサポートを通じて信頼関係を構築
(3) 顧客エンゲージメントを高めるマーケティング手法
顧客エンゲージメントを高めるための効果的なマーケティング手法は以下の通りです。
①パーソナライゼーション:
- 顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせてコミュニケーションや体験をカスタマイズ
- 利用状況に応じたおすすめ機能の提示
②コンテンツマーケティング:
- 顧客の課題解決に役立つ記事・動画・ウェビナーの提供
- 製品の活用方法を伝えるコンテンツ
③コミュニティ構築:
- ユーザーコミュニティ・ユーザー会の運営
- 顧客同士の情報交換の場を提供
④カスタマーサクセス活動:
- オンボーディングプログラムの充実
- 定期的な活用状況レビューと改善提案
⑤フィードバック収集と反映:
- NPS(Net Promoter Score)・顧客満足度調査
- 顧客の声を製品改善に反映
(4) 顧客エンゲージメント向上の注意点
顧客エンゲージメント向上には、以下の注意点があります。
注意点:
- 過剰な接触を避ける: 頻繁すぎるメール・通知は逆効果
- 顧客のタイミングを尊重: 顧客が必要なときに情報提供
- 価値提供を優先: 売り込みではなく、顧客の課題解決を優先
- 継続的な改善: 一度施策を実施したら終わりではなく、継続的に改善
エンゲージメントの測定方法と向上施策
(1) エンゲージメント指標の3つの種類(総合指標・レベル指標・ドライバー指標)
エンゲージメントを測定するには、3つの指標を活用します。
①総合指標:
- エンゲージメント全体を示す総合スコア
- 全体的な状況を把握するための指標
②レベル指標:
- 理解度・共感度・行動意欲など、構成要素ごとのスコア
- どの要素が高い/低いかを把握
③ドライバー指標:
- エンゲージメントに影響を与える要因(上司との関係、評価制度、働きやすさなど)
- 改善施策の優先順位を決める
(2) エンゲージメント測定の実施サイクル
エンゲージメント測定は、定期的なサイクルで実施することが推奨されます。
測定サイクルの例:
- パルスサーベイ: 月次または四半期ごと
- センサス: 年1〜2回
- NPS調査(顧客エンゲージメント): 四半期ごと
測定→分析→改善→再測定のPDCAサイクルを回すことが重要です。
(3) 測定結果に基づく改善施策の立案と実行
測定結果に基づき、以下のステップで改善施策を立案・実行します。
改善施策の立案ステップ:
- 結果の分析: どの指標が低いか、どの部署・チームで課題があるかを特定
- 原因の特定: ドライバー指標を分析し、何が原因かを把握
- 優先順位の決定: 影響度が大きく、実行可能な施策を優先
- 施策の実行: 具体的なアクションプランを立て、実行
- 効果測定: 次回の測定で効果を確認
(4) エンゲージメント向上施策の注意点(継続的取り組みの重要性)
エンゲージメント向上施策には、以下の注意点があります。
注意点:
- 即効性はない: 継続的な取り組みが必要
- 短期的な成果を求めない: 短期的な成果を求めるとかえって逆効果になる可能性
- 測定だけでは不十分: 結果を基にした改善施策の実施が重要
- 経営層のコミットメント: トップダウンの支援が不可欠
- 全社的な取り組み: 一部の部署だけでなく、全社で取り組む
2024年のGallupレポートによると、グローバルの従業員エンゲージメントは71%に安定し、コロナ前の水準に戻っています。継続的な取り組みが成果につながることが示されています。
まとめ:エンゲージメントを高め、ビジネス成果につなげる
エンゲージメントとは、「深いつながりを持った関係性」を示す言葉で、ビジネスでは従業員エンゲージメント(企業と従業員)と顧客エンゲージメント(企業と顧客)の2種類があります。
従業員エンゲージメントは理解度・共感度・行動意欲の3要素で構成され、顧客エンゲージメントは企業と顧客の信頼関係を示します。両者ともに、生産性向上、離職率低下、売上・収益アップに直結します。
エンゲージメント向上のポイント:
- 総合指標・レベル指標・ドライバー指標の3つでエンゲージメントを測定
- パルスサーベイ・センサスで定期的に測定し、PDCAサイクルを回す
- 従業員エンゲージメント向上には7つの施策(理念浸透、評価制度、キャリア開発など)
- 顧客エンゲージメント向上にはパーソナライゼーション、コンテンツマーケティング、コミュニティ構築
- 継続的な取り組みが必要で、短期的な成果を求めない
次のアクション:
- 自社のエンゲージメント現状を測定する(従業員・顧客の両方)
- 測定結果を分析し、課題を特定する
- 優先順位をつけて改善施策を立案・実行する
- 定期的に測定し、PDCAサイクルを回す体制を整える
エンゲージメントを高めることで、従業員の定着率向上、顧客の継続利用促進、ビジネス成果の向上を実現しましょう。
※エンゲージメント向上施策の効果は企業文化や業種により異なるため、自社の状況に合わせた判断が必要です。(この記事は2025年12月時点の情報です)
