カスタマーサクセスとインサイドセールスの連携|顧客体験を高める協業体制

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/15

顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を目指すB2B SaaS企業へ

B2B SaaS企業の営業・CS責任者にとって、顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を実現することは重要な課題です。「インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携がうまくいかない」「情報引き継ぎが不十分で顧客満足度が低下している」「アップセル・クロスセルの機会を逃している」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

インサイドセールスとカスタマーサクセスの効果的な連携により、リードや案件の取りこぼしを防ぎ、組織全体の生産性を向上できます。情報共有の仕組みを整備し、両部門が協業することで、顧客体験の質を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。

この記事では、インサイドセールスとカスタマーサクセスの役割の違い、THE MODELにおける位置づけ、効果的な連携体制の構築方法まで、実務担当者が知っておくべきポイントを解説します。

この記事のポイント:

  • インサイドセールスは見込み客対象で商談創出が目的、カスタマーサクセスは既存顧客対象でLTV最大化が目的
  • THE MODELは4部門(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)が密に連携する手法
  • 連携が分断されるとリードや案件の取りこぼしが起こり、組織全体の生産性が下がる
  • CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが重要
  • タッチモデル構築により、カスタマーサクセスの効果を最大化できる

カスタマーサクセスとインサイドセールスの連携が求められる背景

B2B SaaS企業では、顧客獲得から継続利用まで、複数の部門が関わります。従来のような営業担当者1人がすべてを担当する体制では、以下のような課題があります。

従来の課題:

  • 情報の分断: 見込み顧客の情報が営業担当者個人に依存し、契約後の引き継ぎが不十分
  • 顧客体験の断絶: 契約前後で担当者が変わり、顧客が再度説明を求められる
  • アップセルの機会損失: 既存顧客の状況を営業が把握できず、拡販機会を逃す
  • 解約リスクの見逃し: 顧客の利用状況を把握できず、解約の兆候を見逃す

インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携を強化することで、これらの課題を解決し、顧客体験の質を向上できます。

両部門の基礎知識とTHE MODELにおける位置づけ

(1) インサイドセールスとは(見込み客対象・非対面営業)

インサイドセールスは、メール、電話、Web会議ツールなど顧客と対面しない営業活動を通して、見込み顧客を獲得する手法です。

インサイドセールスの主な特徴:

  • 対象顧客: 見込み客(リード)
  • 目的: 見込み顧客の育成、商談創出
  • 活動: 電話・メール・Web会議での非対面営業
  • KPI: 商談化数、メール開封率、架電数、コンタクト率

※この記事は2024年11月時点の情報を基に執筆しています。営業手法やツールは進化が速いため、最新情報をご確認ください。

(2) カスタマーサクセスとは(既存顧客対象・成功支援)

カスタマーサクセスは、顧客の成功体験を能動的にサポートし、継続的にサービスや商品を利用してもらえるように誘導する手法です。

カスタマーサクセスの主な特徴:

  • 対象顧客: 既存顧客(契約済み顧客)
  • 目的: LTV(顧客生涯価値)最大化、解約防止、アップセル・クロスセル
  • 活動: オンボーディング支援、活用支援、継続利用促進
  • KPI: オンボーディング完了率、解約率(チャーンレート)、顧客維持率、アップセル率

カスタマーサクセスの真の目的:

カスタマーサクセスは、頼まれたことにだけ対応するのではなく、能動的にアクションを起こします。最終的に顧客が自走していけるように導くことが真の目的です。

カスタマーサポートとの違い:

項目 カスタマーサクセス カスタマーサポート
対応姿勢 能動的(先回りして支援) 受動的(問い合わせに対応)
目的 顧客の成功・LTV最大化 問題解決
活動内容 オンボーディング、活用支援、継続利用促進 問い合わせ対応、トラブルシューティング

(3) THE MODELにおける4部門連携(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)

THE MODEL(ザ・モデル)は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門で密に連携し、高品質な営業活動を実現する手法です。Salesforceが提唱し、B2B SaaS企業で広く採用されています。

THE MODELの4つの役割:

  1. マーケティング: 見込み顧客(リード)を獲得

    • Webサイト、広告、展示会などでリードを創出
    • MAツールでリードを管理し、インサイドセールスにトスアップ
  2. インサイドセールス: リードを育成し、商談機会を創出

    • 非対面営業でリードをナーチャリング
    • 受注確度の高い商談をフィールドセールスにトスアップ
  3. フィールドセールス: 商談を受注

    • 対面営業で提案・デモンストレーション
    • 契約締結後、カスタマーサクセスに引き継ぎ
  4. カスタマーサクセス: 既存顧客の成功をサポート

    • オンボーディング、活用支援、継続利用促進
    • アップセル・クロスセルの機会を創出

この分業体制により、各部門が専門性を高め、顧客体験を向上できます。

重要な注意点:

THE MODELは一つのフレームワークであり、すべての企業に適用できるわけではありません。企業規模・商材特性・市場環境により、最適な体制は異なります。

インサイドセールスとカスタマーサクセスの役割の違い

(1) 対象顧客の違い(購入前 vs 購入後)

インサイドセールスとカスタマーサクセスの最も大きな違いは、対象顧客の時間軸です。

対象顧客の違い:

項目 インサイドセールス カスタマーサクセス
対象 購入前(見込み客) 購入後(既存顧客)
顧客の状態 製品・サービスを検討中 製品・サービスを利用中
顧客のニーズ 課題解決方法の模索、比較検討 製品の最大限活用、成功体験の実現

(2) 目的の違い(見込み顧客の育成・商談創出 vs LTV最大化)

インサイドセールスとカスタマーサクセスでは、目的が異なります。

目的の違い:

インサイドセールス:

  • 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
  • 商談機会の創出
  • フィールドセールスへの質の高い商談トスアップ

カスタマーサクセス:

  • LTV(顧客生涯価値)最大化
  • 解約防止(チャーン削減)
  • アップセル・クロスセル機会の創出
  • 顧客の成功体験実現

(3) KPIの違い(商談化数・メール開封率 vs オンボーディング完了率・解約率)

インサイドセールスとカスタマーサクセスでは、KPI(重要業績評価指標)が異なります。

KPIの違い:

インサイドセールスのKPI:

  • 商談化数: リードから商談に至った件数
  • メール開封率: 配信したメールの開封率
  • 架電数: 見込み顧客への架電件数
  • コンタクト率: 架電した中で実際に会話できた割合
  • 商談化率: リードから商談に至った割合

カスタマーサクセスのKPI:

  • オンボーディング完了率: 顧客が商材を自らで活用できるようになるまでの基準を示す指標
  • 解約率(チャーンレート): 顧客が商材を解約してしまう割合
  • 顧客維持率: 既存顧客が継続利用している割合
  • アップセル率: 既存顧客へのアップセル・クロスセル成功率
  • NPS(Net Promoter Score): 顧客満足度を測る指標

これらのKPIを設定することで、各部門の成果を適切に評価できます。

効果的な連携体制の構築方法

(1) 役割の把握と連携の重要性の理解

インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携を成功させるためには、まず両部門の役割を把握し、連携の重要性を理解することが重要です。

連携の重要性:

連携が不十分な場合のリスク:

  • リードや案件の取りこぼしという弊害が起こる
  • 組織全体の生産性が下がる
  • 顧客体験の質が低下し、解約率が上がる
  • アップセル・クロスセルの機会を逃す

連携が成功した場合のメリット:

  • 顧客が一貫した体験を得られる
  • 顧客の課題・期待を正確に引き継げる
  • 解約率が下がり、LTVが向上する
  • アップセル・クロスセルの成功率が上がる

(2) CRM・Slackなどのツールによる情報共有の仕組み

効果的な連携には、CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが不可欠です。

ツール活用のポイント:

CRM(Customer Relationship Management):

  • 顧客の基本情報(企業名、担当者、連絡先)を一元管理
  • インサイドセールスが獲得したリード情報を記録
  • フィールドセールスが契約した内容を記録
  • カスタマーサクセスが顧客の利用状況・課題を記録

Slack・Teamsなどのコミュニケーションツール:

  • 部門横断のチャンネルを作成し、リアルタイムで情報共有
  • 契約後の引き継ぎ時に、Slackで顧客情報を共有
  • 解約リスクのある顧客情報を早期に共有

情報共有の内容:

  • 顧客の課題・期待(インサイドセールスがヒアリングした内容)
  • 契約内容(フィールドセールスが締結した契約)
  • 導入の背景・目的(なぜこの製品を選んだか)
  • 重要な利害関係者(決裁者、利用者)

これらの情報をCRMに蓄積し、両部門が常にアクセスできる状態にすることが重要です。

(3) タッチモデル構築による効果最大化

タッチモデルは、顧客との接点(タッチポイント)を顧客ごとに最適化し、顧客の状況やニーズに応じた適切なフォローアップやコミュニケーションを行う手法です。

タッチモデルのメリット:

2024年の調査によると、タッチモデル構築がカスタマーサクセスの効果を最大化し、売上・顧客満足向上に直結することが実証されています。

タッチモデルの例:

高単価顧客(エンタープライズ):

  • 専任のカスタマーサクセスマネージャーを配置
  • 月1回の定期ミーティングを実施
  • カスタマイズ対応・個別トレーニングを提供

中単価顧客(スモールビジネス):

  • 複数顧客を担当するカスタマーサクセスマネージャー
  • 四半期ごとのチェックイン
  • オンラインセミナー・Webコンテンツで支援

低単価顧客(フリーミアム):

  • セルフサービス中心(FAQ、チュートリアル動画)
  • 自動化されたメール配信
  • コミュニティフォーラムでのサポート

顧客ごとに最適な接点を設計することで、リソースを効率的に配分し、顧客満足度を向上できます。

情報引き継ぎとアップセル・クロスセルでの協業

(1) インサイドセールスからカスタマーサクセスへの情報引き継ぎ

インサイドセールスからカスタマーサクセスへの情報引き継ぎは、顧客体験の質を左右する重要なプロセスです。

引き継ぐべき情報:

  1. 顧客の課題と期待

    • なぜこの製品を導入したいのか
    • どのような課題を解決したいのか
    • どのような成果を期待しているのか
  2. 契約内容

    • 契約プラン(機能・ユーザー数・料金)
    • 契約期間・更新日
    • オプション機能の有無
  3. 導入背景

    • 意思決定プロセス(誰が決裁者か)
    • 競合との比較検討内容
    • 重要な利害関係者(決裁者、利用者、影響力のある人)
  4. コミュニケーション履歴

    • インサイドセールスとのやり取り履歴
    • フィールドセールスとの商談履歴
    • 顧客の懸念点・質問内容

これらの情報をCRMに記録し、カスタマーサクセスがスムーズに引き継げるようにします。

(2) カスタマーサクセスの能動的アプローチ(顧客の自走を促す)

カスタマーサクセスは、顧客からの問い合わせに受動的に対応するだけでなく、能動的にアクションを起こします。

能動的アプローチの例:

オンボーディング期間(契約後1-3ヶ月):

  • 初回キックオフミーティングの実施(目標設定・利用開始支援)
  • 定期的なチェックイン(週1回→隔週→月1回)
  • 活用状況のモニタリング(ログイン頻度・機能利用状況)
  • 早期アラート(利用が停滞している顧客への先回りフォロー)

定常期(契約後3ヶ月以降):

  • 定期的なビジネスレビュー(四半期ごと)
  • 新機能の案内・トレーニング
  • ベストプラクティスの共有
  • ROI測定支援(導入効果の可視化)

真の目的: 顧客の自走を促す:

カスタマーサクセスの最終目標は、顧客が自走していけるように導くことです。過度な支援に依存させるのではなく、顧客自身が製品を最大限活用できるようにトレーニング・ガイドを提供します。

(3) アップセル・クロスセルでの協業とKPI連携

インサイドセールスとカスタマーサクセスは、アップセル・クロスセルでも協業できます。

協業のパターン:

カスタマーサクセス主導:

  • カスタマーサクセスが顧客の利用状況を把握し、アップセルの機会を発見
  • 例: ユーザー数が増えている顧客に上位プランを提案
  • 例: 特定機能の利用が活発な顧客に関連オプションを提案

インサイドセールス主導:

  • カスタマーサクセスから情報を受け取り、インサイドセールスがアップセル商談を実施
  • 例: 新製品リリース時に、既存顧客へインサイドセールスが提案

KPI連携:

  • カスタマーサクセスの「アップセル機会発見数」
  • インサイドセールスの「既存顧客向け商談化数」
  • 両部門で「既存顧客からのアップセル売上」を共有KPIとする

これにより、両部門が協力してLTV最大化に貢献できます。

まとめ:連携による顧客体験向上のポイント

インサイドセールスとカスタマーサクセスの効果的な連携により、顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を実現し、LTVを最大化できます。

重要なポイント:

  • インサイドセールスは見込み客対象で商談創出が目的、カスタマーサクセスは既存顧客対象でLTV最大化が目的
  • THE MODELは4部門(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)が密に連携する手法
  • 連携が分断されるとリードや案件の取りこぼしが起こり、組織全体の生産性が下がる
  • CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが重要
  • タッチモデル構築により、カスタマーサクセスの効果を最大化できる

次のアクション:

  • 自社のインサイドセールスとカスタマーサクセスの役割を整理する
  • CRMツールを導入し、顧客情報の一元管理を実現する
  • 引き継ぎプロセスを明確化し、Slackなどで情報共有の仕組みを構築する
  • タッチモデルを設計し、顧客ごとに最適な接点を設定する
  • 両部門で定期的にミーティングを実施し、連携の改善点を話し合う
  • アップセル・クロスセルでの協業KPIを設定する

両部門の連携により、顧客体験を向上し、ビジネスの成長を加速させましょう。

※この記事は2024年11月時点の情報です。営業手法やツールは進化が速いため、最新情報をご確認ください。

よくある質問

Q1インサイドセールスとカスタマーサクセスの違いは?

A1インサイドセールスは見込み客対象で商談創出が目的です。カスタマーサクセスは既存顧客対象でLTV(顧客生涯価値)最大化が目的です。KPIもインサイドセールスは商談化数・メール開封率、カスタマーサクセスはオンボーディング完了率・解約率と異なります。

Q2連携がうまくいかないとどうなる?

A2リードや案件の取りこぼしという弊害が起こり、組織全体の生産性が下がります。連携の分断により、顧客が一貫した体験を得られず、顧客体験の質も低下します。情報引き継ぎが不十分だと、顧客満足度が低下し、解約率が上がる可能性があります。

Q3THE MODELとは?

A3マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門で密に連携し、高品質な営業活動を実現する手法です。Salesforceが提唱し、B2B SaaS企業で広く採用されています。各部門が専門性を高め、顧客体験を向上できます。

Q4情報引き継ぎで重要なポイントは?

A4CRM・Slackなどのツールを活用し、顧客の課題・期待・契約内容・導入背景・コミュニケーション履歴などを共有します。インサイドセールスからカスタマーサクセスへスムーズな引き継ぎが、顧客満足度向上の鍵です。CRMに情報を蓄積し、両部門が常にアクセスできる状態にすることが重要です。

Q5タッチモデルとは?

A5顧客ごとに接点(タッチポイント)を最適化する手法です。顧客の状況やニーズに応じた適切なフォローアップやコミュニケーションを行うことで、カスタマーサクセスの効果を最大化します。2024年の調査によると、タッチモデル構築が売上・顧客満足向上に直結することが実証されています。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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