顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を目指すB2B SaaS企業へ
B2B SaaS企業の営業・CS責任者にとって、顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を実現することは重要な課題です。「インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携がうまくいかない」「情報引き継ぎが不十分で顧客満足度が低下している」「アップセル・クロスセルの機会を逃している」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの効果的な連携により、リードや案件の取りこぼしを防ぎ、組織全体の生産性を向上できます。情報共有の仕組みを整備し、両部門が協業することで、顧客体験の質を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。
この記事では、インサイドセールスとカスタマーサクセスの役割の違い、THE MODELにおける位置づけ、効果的な連携体制の構築方法まで、実務担当者が知っておくべきポイントを解説します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは見込み客対象で商談創出が目的、カスタマーサクセスは既存顧客対象でLTV最大化が目的
- THE MODELは4部門(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)が密に連携する手法
- 連携が分断されるとリードや案件の取りこぼしが起こり、組織全体の生産性が下がる
- CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが重要
- タッチモデル構築により、カスタマーサクセスの効果を最大化できる
カスタマーサクセスとインサイドセールスの連携が求められる背景
B2B SaaS企業では、顧客獲得から継続利用まで、複数の部門が関わります。従来のような営業担当者1人がすべてを担当する体制では、以下のような課題があります。
従来の課題:
- 情報の分断: 見込み顧客の情報が営業担当者個人に依存し、契約後の引き継ぎが不十分
- 顧客体験の断絶: 契約前後で担当者が変わり、顧客が再度説明を求められる
- アップセルの機会損失: 既存顧客の状況を営業が把握できず、拡販機会を逃す
- 解約リスクの見逃し: 顧客の利用状況を把握できず、解約の兆候を見逃す
インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携を強化することで、これらの課題を解決し、顧客体験の質を向上できます。
両部門の基礎知識とTHE MODELにおける位置づけ
(1) インサイドセールスとは(見込み客対象・非対面営業)
インサイドセールスは、メール、電話、Web会議ツールなど顧客と対面しない営業活動を通して、見込み顧客を獲得する手法です。
インサイドセールスの主な特徴:
- 対象顧客: 見込み客(リード)
- 目的: 見込み顧客の育成、商談創出
- 活動: 電話・メール・Web会議での非対面営業
- KPI: 商談化数、メール開封率、架電数、コンタクト率
※この記事は2024年11月時点の情報を基に執筆しています。営業手法やツールは進化が速いため、最新情報をご確認ください。
(2) カスタマーサクセスとは(既存顧客対象・成功支援)
カスタマーサクセスは、顧客の成功体験を能動的にサポートし、継続的にサービスや商品を利用してもらえるように誘導する手法です。
カスタマーサクセスの主な特徴:
- 対象顧客: 既存顧客(契約済み顧客)
- 目的: LTV(顧客生涯価値)最大化、解約防止、アップセル・クロスセル
- 活動: オンボーディング支援、活用支援、継続利用促進
- KPI: オンボーディング完了率、解約率(チャーンレート)、顧客維持率、アップセル率
カスタマーサクセスの真の目的:
カスタマーサクセスは、頼まれたことにだけ対応するのではなく、能動的にアクションを起こします。最終的に顧客が自走していけるように導くことが真の目的です。
カスタマーサポートとの違い:
| 項目 | カスタマーサクセス | カスタマーサポート |
|---|---|---|
| 対応姿勢 | 能動的(先回りして支援) | 受動的(問い合わせに対応) |
| 目的 | 顧客の成功・LTV最大化 | 問題解決 |
| 活動内容 | オンボーディング、活用支援、継続利用促進 | 問い合わせ対応、トラブルシューティング |
(3) THE MODELにおける4部門連携(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)
THE MODEL(ザ・モデル)は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門で密に連携し、高品質な営業活動を実現する手法です。Salesforceが提唱し、B2B SaaS企業で広く採用されています。
THE MODELの4つの役割:
マーケティング: 見込み顧客(リード)を獲得
- Webサイト、広告、展示会などでリードを創出
- MAツールでリードを管理し、インサイドセールスにトスアップ
インサイドセールス: リードを育成し、商談機会を創出
- 非対面営業でリードをナーチャリング
- 受注確度の高い商談をフィールドセールスにトスアップ
フィールドセールス: 商談を受注
- 対面営業で提案・デモンストレーション
- 契約締結後、カスタマーサクセスに引き継ぎ
カスタマーサクセス: 既存顧客の成功をサポート
- オンボーディング、活用支援、継続利用促進
- アップセル・クロスセルの機会を創出
この分業体制により、各部門が専門性を高め、顧客体験を向上できます。
重要な注意点:
THE MODELは一つのフレームワークであり、すべての企業に適用できるわけではありません。企業規模・商材特性・市場環境により、最適な体制は異なります。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの役割の違い
(1) 対象顧客の違い(購入前 vs 購入後)
インサイドセールスとカスタマーサクセスの最も大きな違いは、対象顧客の時間軸です。
対象顧客の違い:
| 項目 | インサイドセールス | カスタマーサクセス |
|---|---|---|
| 対象 | 購入前(見込み客) | 購入後(既存顧客) |
| 顧客の状態 | 製品・サービスを検討中 | 製品・サービスを利用中 |
| 顧客のニーズ | 課題解決方法の模索、比較検討 | 製品の最大限活用、成功体験の実現 |
(2) 目的の違い(見込み顧客の育成・商談創出 vs LTV最大化)
インサイドセールスとカスタマーサクセスでは、目的が異なります。
目的の違い:
インサイドセールス:
- 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
- 商談機会の創出
- フィールドセールスへの質の高い商談トスアップ
カスタマーサクセス:
- LTV(顧客生涯価値)最大化
- 解約防止(チャーン削減)
- アップセル・クロスセル機会の創出
- 顧客の成功体験実現
(3) KPIの違い(商談化数・メール開封率 vs オンボーディング完了率・解約率)
インサイドセールスとカスタマーサクセスでは、KPI(重要業績評価指標)が異なります。
KPIの違い:
インサイドセールスのKPI:
- 商談化数: リードから商談に至った件数
- メール開封率: 配信したメールの開封率
- 架電数: 見込み顧客への架電件数
- コンタクト率: 架電した中で実際に会話できた割合
- 商談化率: リードから商談に至った割合
カスタマーサクセスのKPI:
- オンボーディング完了率: 顧客が商材を自らで活用できるようになるまでの基準を示す指標
- 解約率(チャーンレート): 顧客が商材を解約してしまう割合
- 顧客維持率: 既存顧客が継続利用している割合
- アップセル率: 既存顧客へのアップセル・クロスセル成功率
- NPS(Net Promoter Score): 顧客満足度を測る指標
これらのKPIを設定することで、各部門の成果を適切に評価できます。
効果的な連携体制の構築方法
(1) 役割の把握と連携の重要性の理解
インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携を成功させるためには、まず両部門の役割を把握し、連携の重要性を理解することが重要です。
連携の重要性:
連携が不十分な場合のリスク:
- リードや案件の取りこぼしという弊害が起こる
- 組織全体の生産性が下がる
- 顧客体験の質が低下し、解約率が上がる
- アップセル・クロスセルの機会を逃す
連携が成功した場合のメリット:
- 顧客が一貫した体験を得られる
- 顧客の課題・期待を正確に引き継げる
- 解約率が下がり、LTVが向上する
- アップセル・クロスセルの成功率が上がる
(2) CRM・Slackなどのツールによる情報共有の仕組み
効果的な連携には、CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが不可欠です。
ツール活用のポイント:
CRM(Customer Relationship Management):
- 顧客の基本情報(企業名、担当者、連絡先)を一元管理
- インサイドセールスが獲得したリード情報を記録
- フィールドセールスが契約した内容を記録
- カスタマーサクセスが顧客の利用状況・課題を記録
Slack・Teamsなどのコミュニケーションツール:
- 部門横断のチャンネルを作成し、リアルタイムで情報共有
- 契約後の引き継ぎ時に、Slackで顧客情報を共有
- 解約リスクのある顧客情報を早期に共有
情報共有の内容:
- 顧客の課題・期待(インサイドセールスがヒアリングした内容)
- 契約内容(フィールドセールスが締結した契約)
- 導入の背景・目的(なぜこの製品を選んだか)
- 重要な利害関係者(決裁者、利用者)
これらの情報をCRMに蓄積し、両部門が常にアクセスできる状態にすることが重要です。
(3) タッチモデル構築による効果最大化
タッチモデルは、顧客との接点(タッチポイント)を顧客ごとに最適化し、顧客の状況やニーズに応じた適切なフォローアップやコミュニケーションを行う手法です。
タッチモデルのメリット:
2024年の調査によると、タッチモデル構築がカスタマーサクセスの効果を最大化し、売上・顧客満足向上に直結することが実証されています。
タッチモデルの例:
高単価顧客(エンタープライズ):
- 専任のカスタマーサクセスマネージャーを配置
- 月1回の定期ミーティングを実施
- カスタマイズ対応・個別トレーニングを提供
中単価顧客(スモールビジネス):
- 複数顧客を担当するカスタマーサクセスマネージャー
- 四半期ごとのチェックイン
- オンラインセミナー・Webコンテンツで支援
低単価顧客(フリーミアム):
- セルフサービス中心(FAQ、チュートリアル動画)
- 自動化されたメール配信
- コミュニティフォーラムでのサポート
顧客ごとに最適な接点を設計することで、リソースを効率的に配分し、顧客満足度を向上できます。
情報引き継ぎとアップセル・クロスセルでの協業
(1) インサイドセールスからカスタマーサクセスへの情報引き継ぎ
インサイドセールスからカスタマーサクセスへの情報引き継ぎは、顧客体験の質を左右する重要なプロセスです。
引き継ぐべき情報:
顧客の課題と期待
- なぜこの製品を導入したいのか
- どのような課題を解決したいのか
- どのような成果を期待しているのか
契約内容
- 契約プラン(機能・ユーザー数・料金)
- 契約期間・更新日
- オプション機能の有無
導入背景
- 意思決定プロセス(誰が決裁者か)
- 競合との比較検討内容
- 重要な利害関係者(決裁者、利用者、影響力のある人)
コミュニケーション履歴
- インサイドセールスとのやり取り履歴
- フィールドセールスとの商談履歴
- 顧客の懸念点・質問内容
これらの情報をCRMに記録し、カスタマーサクセスがスムーズに引き継げるようにします。
(2) カスタマーサクセスの能動的アプローチ(顧客の自走を促す)
カスタマーサクセスは、顧客からの問い合わせに受動的に対応するだけでなく、能動的にアクションを起こします。
能動的アプローチの例:
オンボーディング期間(契約後1-3ヶ月):
- 初回キックオフミーティングの実施(目標設定・利用開始支援)
- 定期的なチェックイン(週1回→隔週→月1回)
- 活用状況のモニタリング(ログイン頻度・機能利用状況)
- 早期アラート(利用が停滞している顧客への先回りフォロー)
定常期(契約後3ヶ月以降):
- 定期的なビジネスレビュー(四半期ごと)
- 新機能の案内・トレーニング
- ベストプラクティスの共有
- ROI測定支援(導入効果の可視化)
真の目的: 顧客の自走を促す:
カスタマーサクセスの最終目標は、顧客が自走していけるように導くことです。過度な支援に依存させるのではなく、顧客自身が製品を最大限活用できるようにトレーニング・ガイドを提供します。
(3) アップセル・クロスセルでの協業とKPI連携
インサイドセールスとカスタマーサクセスは、アップセル・クロスセルでも協業できます。
協業のパターン:
カスタマーサクセス主導:
- カスタマーサクセスが顧客の利用状況を把握し、アップセルの機会を発見
- 例: ユーザー数が増えている顧客に上位プランを提案
- 例: 特定機能の利用が活発な顧客に関連オプションを提案
インサイドセールス主導:
- カスタマーサクセスから情報を受け取り、インサイドセールスがアップセル商談を実施
- 例: 新製品リリース時に、既存顧客へインサイドセールスが提案
KPI連携:
- カスタマーサクセスの「アップセル機会発見数」
- インサイドセールスの「既存顧客向け商談化数」
- 両部門で「既存顧客からのアップセル売上」を共有KPIとする
これにより、両部門が協力してLTV最大化に貢献できます。
まとめ:連携による顧客体験向上のポイント
インサイドセールスとカスタマーサクセスの効果的な連携により、顧客獲得から継続利用までのシームレスな体験を実現し、LTVを最大化できます。
重要なポイント:
- インサイドセールスは見込み客対象で商談創出が目的、カスタマーサクセスは既存顧客対象でLTV最大化が目的
- THE MODELは4部門(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)が密に連携する手法
- 連携が分断されるとリードや案件の取りこぼしが起こり、組織全体の生産性が下がる
- CRM・Slackなどのツールを活用した情報共有の仕組みが重要
- タッチモデル構築により、カスタマーサクセスの効果を最大化できる
次のアクション:
- 自社のインサイドセールスとカスタマーサクセスの役割を整理する
- CRMツールを導入し、顧客情報の一元管理を実現する
- 引き継ぎプロセスを明確化し、Slackなどで情報共有の仕組みを構築する
- タッチモデルを設計し、顧客ごとに最適な接点を設定する
- 両部門で定期的にミーティングを実施し、連携の改善点を話し合う
- アップセル・クロスセルでの協業KPIを設定する
両部門の連携により、顧客体験を向上し、ビジネスの成長を加速させましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報です。営業手法やツールは進化が速いため、最新情報をご確認ください。
